ランカー炎上[1]』(ランカーえんじょう、Lanka Dahan)は、1917年インドサイレント映画ヴァールミーキが編纂した『ラーマーヤナ』を題材にしており、ダーダーサーヘブ・パールケーが監督を務めた。パールケーにとって『ハリシュチャンドラ王』に続く長編映画第2作であり、彼は2作品の製作期間中に複数の短編映画も製作している[2]

ランカー炎上
Lanka Dahan
ガンパット・G・シンデー演じるハヌマーン
監督 ダーダーサーヘブ・パールケー
脚本 ダーダーサーヘブ・パールケー
原作 ヴァールミーキ
ラーマーヤナ
製作 ダーダーサーヘブ・パールケー
出演者 アンナ・サルンケー
ガンパット・G・シンデー
撮影 トリンバク・B・テラング英語版
製作会社 パールケー・フィルムズ・カンパニー
公開 1917年9月17日
製作国 イギリス領インド帝国の旗 イギリス領インド帝国
言語 サイレント
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『ハリシュチャンドラ王』でタマラティ王妃役を演じたアンナ・サルンケーが一人二役で出演している。当時は女性が商業的な演劇活動に参加することは禁止されていたため、男性が女性役を演じていた。本作でサルンケーはラーマと、彼の妻シーターを演じており[3]、インド映画史の中で初めて一人二役を演じた俳優となった[4]

ストーリー 編集

アヨーディヤー英語版の王子ラーマは14年間森に追放され、後にラーマを追って妻シーターと弟ラクシュマナが合流する。しかし、シーターとの結婚を望んでいたラーヴァナによって、シーターが連れ去れてしまう。ラーマは行方不明になったシーターを捜す中でハヌマーンと出会い、ハヌマーンはラーマへの協力を約束する。

ハヌマーンはランカー島に飛び、そこでシーターを発見する。ハヌマーンはシーターに対して、自分がラーマの信奉者であること、間もなくラーマが助けにやって来ることを告げた後、その証しとしてラーマの指輪を手渡す。ハヌマーンはラーマの元に戻ろうとするが、その途中でラーヴァナの兵たちに捕縛されてしまう。ラーヴァナは兵たちに対して、ハヌマーンの尻尾に火をつけるように命令するが、ハヌマーンは縄を解いて飛び去っていく。その際、ハヌマーンは尻尾に付けた火でランカー島の町を焼き払う。町を焼き払ったハヌマーンはランカー島を飛び立ち、インド洋の海水を使い火を消す。

キャスト 編集

反響 編集

『ランカー炎上』はヒンドゥー神話を題材にしたこともあり、観客からは好評だった。ボンベイ上映時、主人公ラーマが登場したシーンでは観客たちが神であるラーマに敬意を示すため靴を脱いだという[6]。また、トリック写真や特殊効果を活かした映像が人気を集めた[7][8]

映画史家アムリート・ガンガル英語版によると、売上の硬貨は麻袋に詰められて牛車でパールケーの事務所に運ばれたという。また、ボンベイのマジェスティック劇場ではチケットを買うための長蛇の列ができた挙句、劇場が満席になったことでチケットの奪い合いが起きたり、チケット売り場に硬貨を投げ込む人々が続出したという[9]

出典 編集

  1. ^ 夏目深雪、松岡環、高倉嘉男『新たなるインド映画の世界』PICK UP PRESS、2021年、134頁。 
  2. ^ Mankekar, Purnima (1999). Screening Culture, Viewing Politics: An Ethnography of Television, Womanhood, and Nation in Postcolonial India. Duke University Press. p. 375. ISBN 0822323907. https://books.google.com/books?id=fZf8wmVdpaIC&q=lanka+dahan+1917&pg=PA375 2012年10月4日閲覧。 
  3. ^ Dadasaheb Phalke - Father of Indian Cinema”. Dadasaheb Phalke Academy. 2012年12月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年10月4日閲覧。
  4. ^ Majumdar, Neepa (2009). Wanted Cultured Ladies Only!: Female Stardom and Cinema in India, 1930s-1950s. University of Illinois Press. p. 224. ISBN 978-0252076282. https://books.google.com/books?id=TdM2Ben3alIC&q=lanka+dahan+1917&pg=PA224 2012年10月4日閲覧。 
  5. ^ Eric Michael Mazur (2011). Encyclopedia of Religion and Film. ABC-CLIO. p. 517. ISBN 978-0313330728. https://books.google.com/books?id=m3oLA1ThOBYC&q=salunke&pg=PA517 2012年10月4日閲覧。 
  6. ^ Ghosh, Bishnupriya (2011). Global Icons: Apertures to the Popular. Duke University Press. p. 92. ISBN 978-0822350163. https://books.google.com/books?id=DWdPpKmnC6kC&q=lanka+dahan+1917&pg=PA380 2012年10月4日閲覧。 
  7. ^ Woods, Jeannine (2011). Visions of Empire and Other Imaginings: Cinema, Ireland and India 1910-1962. Peter Lang. p. 97. ISBN 978-3039119745. https://books.google.com/books?id=Jw-2w-SpuZMC&q=lanka+dahan+1917&pg=PA97 2012年10月4日閲覧。 
  8. ^ Ramchandani, Indu (2000). Hoiberg, Dale. ed. Students' Britannica India, Volumes 1-5. Popular Prakashan. p. 172. ISBN 0852297602. https://books.google.com/books?id=ISFBJarYX7YC&q=lanka+dahan+1917&pg=PA172 2012年10月4日閲覧。 
  9. ^ Unny, Divya (2014年3月16日). “B-Town Rewind: The tale of the first Bollywood crore”. Mid-Day. http://www.mid-day.com/articles/b-town-rewind-the-tale-of-the-first-bollywood-crore/15162064 2014年7月2日閲覧。 

外部リンク 編集