ロテプレドノール: loteprednol)は、そのエステルであるエタボン酸ロテプレドノール(ロテプレドノールエタボナート、: loteprednol etabonate)の形で、眼の炎症の治療に用いられる副腎皮質ホルモンである。ボシュロムからLotemax[1]Loterexの名称で販売されている。

Loteprednol etabonate
IUPAC命名法による物質名
臨床データ
販売名 Lotemax
Drugs.com Micromedex Detailed Consumer Information
胎児危険度分類
  • US: C
法的規制
薬物動態データ
生物学的利用能None
血漿タンパク結合95%
代謝エステル加水分解
代謝物質Δ1-コルチエン酸とそのエタボン酸塩
作用発現≤2 hrs (アレルギー性結膜炎)
半減期2.8 hrs
データベースID
CAS番号
82034-46-6 チェック
ATCコード S01BA14 (WHO)
PubChem CID: 444025
IUPHAR/BPS 7085
DrugBank DB14596 ×
ChemSpider 392049 ×
UNII YEH1EZ96K6 ×
KEGG D01689  チェック
ChEBI CHEBI:31784 ×
ChEMBL CHEMBL1200865 ×
別名 11β,17α,Dihydroxy-21-oxa-21-chloromethylpregna-1,4-diene-3,20-dione 17α-ethylcarbonate
化学的データ
化学式C24H31ClO7
分子量466.96 g·mol−1
物理的データ
融点220.5 - 223.5 °C (428.9 - 434.3 °F)
水への溶解量0.0005 mg/mL (20 °C)
テンプレートを表示

特許は1980年に取得され、1998年に医療用途で承認された[2]

医学的用途

編集

ロテプレドノールは、眼の手術後の炎症の低減[1]ドライアイ、季節性アレルギー性結膜炎英語版[3]などに利用される。

禁忌

編集

副腎皮質ホルモンは免疫抑制作用があるため、ロテプレドノールは、ウイルス真菌マイコバクテリウムによる眼の感染症の患者に対しては禁忌である[1][3][4]

有害作用

編集

ゲル製剤による治療が行われた患者で一般的な有害作用は、前房の炎症(5%)、眼痛(2%)、異物感(2%)である[5]

相互作用

編集

ロテプレドノールの長期(10日以上)の使用は眼圧の上昇を引き起こすため、緑内障の治療の妨げとなる可能性がある。薬剤は点眼後、非常にゆっくりと血中に吸収されるため血中濃度は極めて低い濃度に限定され、経口など点眼以外の経路で摂取した薬剤との相互作用の可能性は極めて低い[1]

薬理

編集

作用機序

編集

薬物動態

編集

エタボン酸ロテプレドノールとその不活性代謝産物であるΔ1-コルチエン酸およびΔ1-コルチエン酸エタボナートは、経口投与後した場合でも血流中に検出されない。ロテプレドノール点眼薬を42日間にわたって投与した患者を対象とした研究では、臨床的意義のあるレベルで薬物が血流に到達したことを示す、副腎皮質機能抑制は認められなかった[1]

動物研究では、ステロイドホルモン受容体英語版に対する親和性はデキサメタゾンの4.3倍であった[1]

レトロメタボリックドラッグデザイン

編集

エタボン酸ロテプレドノールは、レトロメタボリックドラッグデザイン英語版によって開発された。いわゆる「ソフトドラッグ」であり、不活性な物質へ代謝されるようデザインされている。代謝産物はΔ1-コルチエン酸とそのエタボン酸塩であり、これらはヒドロコルチゾンの不活性代謝産物であるコルチエン酸の誘導体である[1][4][6]

化学

編集

エタボン酸ロテプレドノールはロテプレドノールとエタボン酸英語版(エチル炭酸)のエステルである。純粋な化合物の融点は 220.5 °C (428.9 °F) から 223.5 °C (434.3 °F) の間である。水への溶解度は1:2,000,000であり[4]、そのため眼科用には軟膏、ゲルまたは懸濁液の形で製剤される[3]

ロテプレドノールは副腎皮質ホルモンの一種である。ヒドロコルチゾンのような古典的な副腎皮質ホルモンのケトン側鎖は、切断可能なエステルに置き換えられており、これが迅速な不活性化の理由となっている[7]

 
ヒドロコルチゾール
 
エタボン酸ロテプレドノール

化学合成

編集

  [8]

出典

編集
  1. ^ a b c d e f g Haberfeld H, ed. (2015). Austria-Codex (in German). Vienna: Österreichischer Apothekerverlag
  2. ^ Fischer, Jnos; Ganellin, C. Robin (2006) (英語). Analogue-based Drug Discovery. John Wiley & Sons. p. 488. ISBN 9783527607495. https://books.google.com/books?id=FjKfqkaKkAAC&pg=PA488 
  3. ^ a b c Loteprednol (Professional Patient Advice)” (英語). Drugs.com. 2021年8月29日閲覧。
  4. ^ a b c Arzneistoff-Profile : Basisinformation uber arzneiliche Wirkstoffe. U. Fricke, V. Dinnendahl, Arbeitsgemeinschaft fur Pharmazeutische Information. Frankfurt am Main: Govi-Verlag. (1982). ISBN 3-7741-9846-2. OCLC 8776185. https://www.worldcat.org/oclc/8776185 
  5. ^ Highlights of Prescribing Information: Lotemax”. 2021年9月4日閲覧。
  6. ^ Bodor N, Buchwald P (2002). "Design and development of a soft corticosteroid, loteprednol etabonate". In Schleimer RP, O'Byrne PM, Szefler SJ, Brattsand R (eds.). Inhaled Steroids in Asthma. Optimizing Effects in the Airways. Lung Biology in Health and Disease. 163. Marcel Dekker, New York. pp. 541–564.
  7. ^ Pavesio, C. E.; Decory, H. H. (2008-04). “Treatment of ocular inflammatory conditions with loteprednol etabonate”. The British Journal of Ophthalmology 92 (4): 455–459. doi:10.1136/bjo.2007.132621. ISSN 1468-2079. PMID 18245274. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18245274. 
  8. ^ Druzgala, P.; Hochhaus, G.; Bodor, N. (1991-02). “Soft drugs--10. Blanching activity and receptor binding affinity of a new type of glucocorticoid: loteprednol etabonate”. The Journal of Steroid Biochemistry and Molecular Biology 38 (2): 149–154. doi:10.1016/0960-0760(91)90120-t. ISSN 0960-0760. PMID 2004037. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/2004037. 

関連文献

編集
  • “Double-masked, placebo-controlled evaluation of loteprednol etabonate 0.5% for postoperative inflammation. Loteprednol Etabonate Post-operative Inflammation Study Group 1”. Journal of Cataract and Refractive Surgery 24 (11): 1480–9. (November 1998). doi:10.1016/s0886-3350(98)80170-3. PMID 9818338.