ヴォークレイン式複式蒸気機関

ヴォークレイン式複式蒸気機関(ヴォークレインしきふくしきじょうききかん)とは、蒸気機関車に搭載された複式機関である。

山陽鉄道 126(後の鉄道院 3381)
五日市鉄道 3(旧鉄道院 3705)
D&RGW 453
ヴォークレイン式複式蒸気機関の構造

概要 編集

1889年ボールドウィン・ロコモティブ・ワークスサミュエル・ヴォークレインSamuel M. Vauclain) はヴォークレイン式機関車を考案した。この設計では在来の単式膨張機関と同じスペースに収められる複式膨張機関を用い、在来型の弁装置により高圧・低圧両方のシリンダーを単一のピストンバルブで駆動できた。

この方法で燃費効率は改善したが、同時にレシプロマスの増大が起きた[注釈 1]ことで振動が激しくなるという副作用があり、メリットの燃費も過熱器が使われるようになると単式との差が小さくなったことで生産されなくなった[1]

なお、燃費効率以外ではトルク変動が2気筒単式より小さくなった(空転しにくくなった)が、これは複式でカットオフの長いことが要因である[2]

デンバー・アンド・リオグランデ・ウェスタン鉄道K-27国鉄8000形蒸気機関車国鉄8450形蒸気機関車で採用された。

代表的なヴォークレイン複式機関車の形式 編集

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 同じ4気筒複式でも「台枠内部にもう一対シリンダーを設ける」か「関節式にして前後に置く」といった方式の複式ならば、前者は内外で逆向きにロッドを動かせばレシプロマスを相殺でき、後者は前後の走り装置が別々で同出力なら個々は小さくなるため振動は小さくなるが、ヴォークレイン式の場合は一斉に同じ方向にピストンが動くのでレシプロマスは打ち消されずに増えた分だけ重くなる。詳しくは「ハンマーブロー」参照。

出典 編集

  1. ^ 齋藤晃「蒸気機関車の技術史 (改訂増補版)  (交通ブックス117)」、成山堂書店、2018年、 ISBN 978-4425761623。p.72-74。
  2. ^ 齋藤晃「蒸気機関車200年史」、NTT出版、2007年、 ISBN 978-4-7571-4151-3。p.190-191

外部リンク 編集