人権経済
人権経済（じんけんけいざい；ヒューマンライツ・エコノミー；英語：Human Rights Economy）とは、国際人権法に合致した経済を想定したものである。
これは国連人権高等弁務官事務所（OHCHR）が導入した概念的枠組みであり、社会のすべての個人および機関が人権を尊重する必要があることを示している（前文、第29条）[1]。OHCHRは、経済的および社会的意思決定が国際人権法によって導かれることを保証するために、人権経済の採用を提唱している[2]。 この概念は、社会のあらゆる側面に国際人権法を適用することによって、より公平で持続可能な経済が創出されると仮定している。人権経済は、人権と同様に、あらゆる政治・経済システムに適用される[3]。
定義 編集
OHCHRによれば、人権経済は、すべての経済・社会・環境政策、計画、プログラムの中核に個人と地球を据えるものである[4]。人権経済の枠組みは、開発、経済、産業、貿易政策、投資決定、ビジネス、消費者の選択が、人権規範と基準によって導かれ、その成功が測定されるようにすることを目指す[5]。さらに、人権経済は、自由で意義のある参加を積極的に奨励し、社会から疎外された集団に力を与え、差別を撤廃し不平等を是正するよう意図的に努力する[6]。国内および国際的なレベルで、平等、正義、幸福、持続可能な成長、繁栄の共有に対する構造的な障壁や阻害要因を解体することを目指す[7]。
歴史 編集
人権経済とは、世界人権宣言（UDHR）の文言と精神を再び呼び起こそうとする試み[8]である[9]。
UDHRは、第二次世界大戦と世界大恐慌の残虐行為の中で書かれたものである[10]。起草者たちは、平和で豊かで包括的な社会、恐怖と欠乏のない世界を創造するために、社会のあらゆる側面に適用されるようにこの文書を設計した[11]。
人権はすべての政治・経済体制に適用されることになっていた[12]。
人権経済は、新古典派経済学が富、所得、権力の不平等[13]を急増させ、環境悪化と気候変動に大きく寄与してきたというコンセンサスが高まっていることから、新古典派経済学の時代の次に何があるかを考えることに貢献するように設計されている[14]。
人権経済を支える規範と原則 編集
人権経済は、世界人権宣言（UDHR）[15]のビジョンに基づき、すべての人権の普遍性、不可分性、相互依存性、そしてすべての人への適用を反映している。
人権経済は、ジェノサイド犯罪の防止及び処罰に関する条約（1948年）、 あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約（1965年）、 経済的、社会的及び文化的権利に関する国際条約（1976年）、 市民的及び政治的権利に関する国際条約（1976年）、第1選択議定書（1976年）および第2選択議定書（1989年）、 女性差別撤廃条約（1979年）、 子どもの権利条約（1989年）、 障害者の権利に関する条約（2006年）など、すべての国際人権条約を運用している[16]。
人権経済の関連概念 編集
人権経済は、グリーン・エコノミー、サーキュラー・エコノミー、ブルー・エコノミー、フェミニスト・エコノミーと関連し、いくつかの目標を共有している。人権経済と、人権に基づく経済。人権経済は、国際人権条約に見られる既存の法的義務に完全に立脚しており[17]、それによって、表向きには、経済に適用される合意された法的拘束力のある枠組みを提供している[18]。
人権経済の活用 編集
最近、人権理事会（HRC）は決議A/HRC/53/28「すべての人権の享受に対する開発の貢献」において、人権経済の概念を認めた[1]。 さらに、HRC報告書A/HRC/51/20「コロナウイルス感染症（COVID-19）の大流行からの復興における不平等への対処という文脈における経済的、社会的、文化的権利の促進と保護」、HRC報告書A/HRC/54/35「経済的、社会的、文化的権利の促進と保護における国連人権高等弁務官事務所の活動強化のためのビジョン」、HRC報告書A/HRC/54/35「経済的、社会的、文化的権利の促進と保護という文脈における国連人権高等弁務官事務所の活動強化のための国連人権高等弁務官事務所のビジョン」、HRC報告書A/HRC/54/35「経済的、社会的、文化的権利の促進と保護という文脈における国連人権高等弁務官事務所の活動強化のための国連人権高等弁務官事務所のビジョン」ある、 COVID-19パンデミックからの復興における不平等への取り組みという文脈における経済的・社会的・文化的権利の促進・保護に関する国連人権高等弁務官事務所のビジョンに関するHRC報告書A/HRC/54/35、経済的・社会的・文化的権利報告書E/2021/77は、いずれも人権経済の概念を利用している[19][20][21]。2023年12月12日に開催されたラウンドテーブル3「人権75」ハイレベル・イベントでは、「人権、開発、経済の未来」の議論に照らして「人権経済」が使用された[22]。ヒューマン・ライツ・ウォッチやユニバーサル・ライツ・グループなどの市民社会組織（CSO）もこのコンセプトを活用している[23]。経済学者のジャヤティ・ゴーシュ教授、マリアナ・マズカート教授、ダリック・ハミルトン教授[24]も同様に、人権経済の実現への支持を表明している[25]。 さらに、ニュースクールl[26]、ラウール・ヴァレンベルク研究所[27]、東京大学(キハラハント愛教授)などの学術機関も、人権経済のコンセプトとビジョンへの支持と賛同を示している[28]。
参考文献 編集
- ^ a b UN General Assembly (2023年7月18日). “Resolution adopted by the Human Rights Council on 14 July 2023”. 2024年4月6日閲覧。
- ^ OHCHR (2023年4月20日). “Türk issues call to build economies that advance human rights for all”. 2024年4月6日閲覧。
- ^ OHCHR (2023年2月6日). “Türk calls for a human rights economy”. 2024年4月6日閲覧。
- ^ OHCHR (2023年4月6日). “Building economies that place people’s human rights at the center”. 2024年2月24日閲覧。
- ^ Aspeninstitute (2023年1月19日). “Economics Reimagined: A Discussion on Building a Human Rights Economy”. 2024年2月24日閲覧。
- ^ Bartmann, Y., & Lienert, S (2020年10月). “BUILDING BACK BETTER”. 2024年2月24日閲覧。
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- ^ OHCHR (2023年1月24日). “In Colombia, High Commissioner Türk vows to rekindle the spirit of the Universal Declaration of Human Rights”. 2024年4月6日閲覧。
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- ^ OHCHR (2023年5月17日). “Türk calls on G7 countries to rekindle the spirit of the Universal Declaration of Human Rights”. 2024年4月6日閲覧。
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- ^ UPR (2023年10月19日). “Integrating a human rights economy in public policies”. 2024年4月6日閲覧。
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- ^ UN General Assembly (2023年7月28日). “Vision of the Office of the United Nations High Commissioner for Human Rights for reinforcing its work in promoting and protecting economic, social and cultural rights within the context of addressing inequalities in the recovery from the COVID-19 pandemic”. 2024年4月6日閲覧。
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- ^ OHCHR (2023年2月6日). “Workshop on promoting and protecting economic, social and cultural rights within the context of addressing inequalities in the recovery from the COVID-19 pandemic”. 2024年4月6日閲覧。
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- ^ Raoul Wallenberg Institute (2021年8月26日). “Human Rights Strategies”. 2024年4月6日閲覧。
- ^ The new school (2023年4月20日). “The Office of the High Commissioner for Human Rights and The Institute on Race, Power and Political Economy presents: Hernán Santa Cruz Dialogue”. 2024年4月6日閲覧。