量子力学において数演算子(すうえんざんし)、個数演算子(こすうえんざんし)あるいは粒子数演算子(りゅうしすうえんざんし、: particle number operator)とは、全粒子数が保存されないような系での粒子数を表すオブザーバブルである。

定義 編集

生成消滅演算子を以下の交換関係を満たす演算子として定義する。

 

数演算子は以下のように定義される。

 

性質 編集

エルミート性 編集

数演算子 はエルミート演算子である。

証明
数演算子の定義 、エルミート演算子の性質 と、 より、
 

生成消滅演算子との交換関係 編集

数演算子と生成消滅演算子との交換関係は以下のようになる。これは、数演算子の固有値を増減させる昇降演算子の定義でもある。

 
 
証明
交換関係の性質として が成り立つ。ここへ   を代入すると、
 

数演算子の定義 、交換関係の性質 、生成消滅演算子の定義 を代入すると、

 

2つ目の式についても同様。

固有値は非負 編集

数演算子の固有値方程式は、

 

この固有値 は非負である。

証明
固有値方程式 の左から をかけると、
 

数演算子の定義 、固有ベクトルの規格化 を代入すると、

 

この左辺は

 

固有ベクトルへの消滅演算子の作用 編集

数演算子の固有ベクトルに消滅演算子が作用すると、

 
証明
 の両辺に をかけると、
 

左辺第2項を右辺に移項すると、

 

この式は、 の固有値 に対する固有ベクトル  であることを言っている。

ただし は規格化されていないので、より正確にいえば比例している。

 

上述の に代入すると なので、正に選べば

 

よって

 

固有値は整数 編集

数演算子の固有値は整数である。

証明

固有値 が整数でないとする。

上述のように、ある固有値 に対する固有ベクトル に消滅演算子を作用させると ができる。

 

よって消滅演算子をくり返し作用させていくと、いつかは である が作れてしまい、 の非負性と矛盾する。

固有値 が整数だと、 に対する固有ベクトル に消滅演算子が作用すると以下のようにベクトルは消えてしまい、  が作れないことがわかる。

 

よって の非負性と整合している。

よって数演算子の固有値は非負の整数である。

固有ベクトルへの生成演算子の作用 編集

固有ベクトルに生成演算子が作用すると、

 

となる。真空状態 に生成演算子N回作用させた場合は、

 

よって、

 

n粒子状態 編集

数演算子はフォック空間で作用する。与えられているフォック状態 ν は1粒子基底状態 i から成る。

 

ここで数演算子を生成消滅演算子 ˆa(φi), ˆa(φi) を用いて以下のように定義する。

 

数演算子は以下の性質を持つ。

 

ここで Ni は状態 |ψi の粒子の数である。

証明
 

よって

 

参考文献 編集

  • 清水明『新版 量子論の基礎―その本質のやさしい理解のために―』サイエンス社、2004年。ISBN 4-7819-1062-9 
  • Bruus, Henrik, Flensberg, Karsten. (2004). Many-body Quantum Theory in Condensed Matter Physics: An Introduction. Oxford University Press. ISBN 0-19-856633-6 
  • Second quantization notes by Fradkin

関連項目 編集