公序良俗

公序良俗違反から転送)

公序良俗(こうじょりょうぞく)とは、公の秩序又は善良の風俗の略であり、これに反する事項を目的とする法律行為無効とされる。

近代の私法は私的自治の原則を採用しており、私人の生活においてはその自由が尊重される。具体的には、法律行為はその当事者の意図した通りの効果が認められる法律行為自由の原則が挙げられる。しかしながら、法律行為の自由を無制限に認めると、財産的秩序や倫理的秩序などが害されるおそれがあるため公序良俗違反として法律行為を無効とする。

目次

日本法における公序良俗編集

意義編集

民法第90条は「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。」としている。

公の秩序は国家および社会の一般的利益を、善良の風俗は社会の一般的倫理をそれぞれ意味する。しかし両者は一体的に扱われるべきであり、両者を厳密に区別する実益はないとされている。

類型編集

公序良俗は様々な角度から用いられるが、大きく次の3つに分類することができる。

  • 財産的秩序に反する行為
    • 例:貸金債務が弁済されない場合には、貸金の約2倍になる保険の解約返戻金を債務の弁済に充てる旨の特約(大判昭和9年5月1日民集13巻875頁)。
  • 倫理的秩序に反する行為
    • 例:配偶者のある者と、それを知っている第三者との間で結ばれた、将来婚姻をする旨の予約、およびそれに基づき婚姻・入籍するまで扶養料を支払う旨の契約(大判大正9年5月28日民録26輯773頁)。
  • 自由人権を害する行為
    • 例:16歳にも達しない少女が酌婦として稼働する旨の契約、およびこれに伴う消費貸借契約・連帯保証契約(最判昭和30年10月7日民集9巻11号1616頁)。

1980年代以降、経済活動に関する紛争において公序良俗違反を認める裁判例が増えてきた[1]

憲法の人権規定の私人間効力編集

憲法の人権規定は主として国家と私人の間の関係を規定するものであるが、これが私人間に適用されるかという人権規定の私人間効力問題につき、公序良俗が持ち出されることがある。(例:日産自動車事件

英米法におけるパブリック・ポリシー編集

公序良俗は英米法ではパブリック・ポリシーの原則(public policyまたはpolicy of the law)がこれに相当する[2]。パブリック・ポリシーとは、何人も公共の利益や公共の福祉に反するような他者に危害を与えうる行為を行うことは認められず無効とするという法原理である[2]。英米法の法原理ではこれに反する契約や私的取引等の行為(againsts public policy)は無効とされる[2]

関連項目編集

脚注編集

  1. ^ 山本敬三民法における公序良俗論の現状と課題、2006年10月14日講演。
  2. ^ a b c 鴻常夫、北沢正啓編修『英米商事法辞典』、1998年、765頁