囲碁十訣(圍棋十訣、いごじっけつ)は、囲碁の心構えを説いた、中国古より伝わる10の格言。唐代の名手王積薪の作と伝えられるが、北宋時代の作とする説もある。

宋代詰碁集『玄玄碁経』の序の部に王積薪作として収められ、その後の多くの棋書にも収録された。南唐の高官から北宋の太祖に仕えて碁の相手を務めた、潘慎修が太祖に献上した書物『棋説』の中で、「十要」として記した碁の原理が囲碁十訣であるとも言われる。

「碁経十三篇」(囲碁九品を含む)や、「碁法四篇」などと並んで、古典的な囲碁論の代表的なものの一つとなっている。本因坊秀策は十訣の書を石谷広策に残し、これが後に打碁集『敲玉余韵』の冒頭に掲げられた。

十訣と大意
  1. 不得貪勝(貪って勝とうとしてはいけない)
  2. 入界宜緩(敵の勢力圏では緩やかにすべし)
  3. 攻彼顧我(攻める時には自分を顧みよ)
  4. 棄子争先(石を捨てて先手を取れ)
  5. 捨小就大(小を捨て大を取れ)
  6. 逢危須棄(危険になれば捨てるべし)
  7. 慎勿軽速(足早になりすぎるのは慎め)
  8. 動須相応(敵の動きに応じるべし)
  9. 彼強自保(敵が強ければ自らを安全にすべし)
  10. 勢孤取和(孤立している時には穏やかにすべし)

(注)一の「不得貪勝」を日本で「貪れば勝ちを得ず」と訳して、「貪不得勝」と誤記する場合がある。

また後世にはこれに倣って、新囲碁十訣なども種々考案されている。

参考文献 編集

  • 安藤如意、渡辺英夫『坐隠談叢』新樹社 1955年
  • 田振林、祝士維「中国囲碁外史 27」(『棋道』1988年11月号)
  • 高木祥一解説『玄々碁経』教育社 1989年
  • 平本弥星『囲碁の知・入門編』集英社 2001年