多層アーキテクチャ
多層アーキテクチャ(たそうアーキテクチャ、英: multitier architecture)とは、ソフトウェアアーキテクチャパターンである。
アプリケーションを複数の"層"に分け、それらを独立したモジュールとして開発・保守する。各層はインタフェースを定義しモジュール化されたソフトウェアであり、テクノロジーの進歩や要求の変化に合わせて各層を個別に置換できる。
各層をそれぞれ異なるプラットフォーム上で動かし、層ごとにプラットフォームの変更が可能である。 例えばクライアントのオペレーティングシステムをMicrosoft WindowsからUNIXに変更しても、他の層(ビジネス層、データベース層など)は変更しない。
多層アーキテクチャの起源編集
「三層(three-tierまたはthree-layer)」という用語や「多層アーキテクチャ」という用語はラショナルが起源とされている[要出典]。
多層アーキテクチャの例編集
アプリケーションが複数のソフトウェアエージェントによって実行されるクライアントサーバモデルの一形態である。例えば、ユーザーとデータベース間のデータ要求サービスにミドルウェアを利用するアプリケーションは多層アーキテクチャである。代表的な多層アーキテクチャに三層アーキテクチャがある。
三層アーキテクチャ編集
クライアントサーバモデルにおける「三層」とは、
- ユーザインタフェース
- ビジネスロジック
- データベース(およびデータアクセス)
である。
ユーザインタフェースは、デスクトップPCやワークステーション上で標準のGUIを使って動作するのが一般的である。ビジネスロジックは1つ以上のモジュールで構成され、ワークステーションやアプリケーションサーバ上で動作する。データベースにはサーバやメインフレーム上のRDBMSが使われる。中間層自体が多層化されることもある。
三層アーキテクチャでの各層の名称は以下の通り。
- プレゼンテーション層
- アプリケーション層/ロジック層/ビジネスロジック層/トランザクション層/ファンクション層
- データ層/データベース層/データベースアクセス層
MVCアーキテクチャとの比較編集
一見したところ、三層アーキテクチャは、 Model View Controller (MVC) に似ている。しかし、トポロジー的には異なっており、適用分野も異なる。三層アーキテクチャの基本原則として、プレゼンテーション層は決してデータ層と直接通信せず、全ての通信は必ず中間層を通過するというものがある。したがって、三層は一本の直線で表される。それに対して、 MVCでは 3つがそれぞれ相互に通信するため、三角形を形成している。つまり、三層アーキテクチャはデータベースとユーザーの間の情報経路を表しているのに対して、MVCはユーザインタフェースにおける画面上のコンポーネントの管理方法を表している。MVCに基づくコンポーネントは、三層アーキテクチャのアプリケーションでもよく使われる。
歴史的に見れば、三層アーキテクチャは1990年代に生まれたものである。これは、Webアプリケーションなどの分散システムにおいて、クライアント、ミドルウェア、データベースの3者がそれぞれ物理的に別のプラットフォームで動作するようになったことから生じたものである(つまり、実装が先にあって、後から概念として抽象化された)。一方、MVCは1980年代(パロアルト研究所での1970年代末から1980年代初期にかけてのこと)に、1つのグラフィカルワークステーション上で動作するアプリケーション群の仕組みから生まれた。MVCが分散アプリケーションに適用される(コンテンツとプレゼンテーションの分離がされた)のはもっと後のことである。
Web開発での利用編集
Web開発の分野では、三層モデルはウェブサイト、特に電子商取引のウェブサイトの構成の説明に使われる。その場合、各層は以下のようになる。
- プレゼンテーション層: 変化しないコンテンツを供給するWebサーバ
- 中間層: 動的コンテンツを生成するアプリケーションサーバ。例えばJava EEプラットフォームなど。
- データ層: データベースとその管理システム。RDBMSなど。
参考文献編集
- Erik Meijer; Danny van Velzen (2001). “Haskell Server Pages Functional Programming and the Battle for the Middle Tier” (PDF). Electronic Notes in Theoretical Computer Science 41 (1) .
- “Three Tier Software Architectures (HTML)”. 2008年2月7日閲覧。
- “MVC XEROX PARC 1978–79 (HTML)”. 2008年2月7日閲覧。
関連項目編集
- ウェブアプリケーション
- ビジネスロジック
- リッチインターネットアプリケーション (RIA)
- クライアントサーバモデル
- フロントエンド
- Model View Controller (MVC)
- SAP R/3 は三層モデルを使ったクライアントサーバ型アプリケーションである。
この記事は2008年11月1日までGFDLバージョン1.3以降の再ライセンス規約に基づいていたFree On-line Dictionary of Computingにある項目の資料が元になっている。