姫かたり(ひめかたり)は古典落語の演目の一つ。

主な演者として、5代目古今亭志ん生3代目三遊亭金馬2代目三遊亭円歌など、現在では 7代目立川談志などがいる。

あらすじ

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耳を澄ますと、正月の飾りを売る男の声が聞こえてくる。

「市やまけた。市やまけた。しめか飾りかだいだいか」

時は十二月の十七日。浅草寺の境内は、年の市でにぎわっていた。
そんな喧騒の中を、お供を連れたお嬢様が通りかかった。年のころは17・8、水も滴るようないい女だ。

「あれは楊貴妃の再来か。普賢菩薩常盤御前袈裟御前か晩の御前…」

見物人がうっとりと見とれていると、そのお嬢様がいきなりひっくり返った。
どうやら持病の『癪』が出たらしい。お供のものは大慌てで、お嬢様を近くの【大野林庵】と言う先生の所へ担ぎ込む。

「この方は、とあるお大名の姫だ。浅草観音へご参詣の折、にわかの緒差込で難渋しておる。如何か見て差し上げてくれ」
「かしこまりました」

一世一代の大仕事に、林庵先生、張り切ってお嬢様の診察を開始した。

「苦しうない。もそっと近うへ…」
「は、ハイ…」

とりあえず触診と言う事になり、お嬢様の胸に手をかける。柔らかい肌…ふくよかな胸…。つい、力をこめてムギュッ!!

途端にお嬢様が「あれぇ!」。
すぐさま長いものを引っこ抜いたお供がなだれ込み、先生哀れ捕まった。

「観世音参詣の帰りゆえ、殺生はしたくないが、こんなことが漏れたらみどもは切腹をまぬがれない。一同の者へ口止め料を出してくれぬか?」
「ハイ!! で、いかほど…」
「二百両で如何じゃ?」

二百両渡すと、いきなりお嬢様が跳ね起きて先生をにらみつけた。

「やい、東庵、医者のくせに金貸しまでして、たいそうため込んだそうじゃないか。だから、一芝居うったんだ。これにこりて妙なまねをするんじゃないぞ。」

尻っぱしょりで、懐手。啖呵を切ると、お供とともに意気揚々と引き上げていく。ぽかんとする先生の耳に、売り子の声が聞こえてきた。

「医者負けた。医者負けた。姫かかたりか。」

先生思わず「大胆な…」

その他

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いわゆる『艶笑落語』と言う奴で、しかも落ちが売り声にかけたものであるため、現在はあまり演じられていない。