3He-4He希釈冷凍法

冷却法
希釈冷凍機から転送)

3He-4He希釈冷凍法3He-4Heきしゃくれいとうほう、: 3He/4He dilution refrigerator)とは、ヘリウムの二つの同位体3He4Heをそれぞれ液化し、3He相を4He相に注ぎ希釈する際の希釈熱を利用する冷却法である。極低温領域での冷却法のひとつ。液体ヘリウムの蒸発潜熱を使った冷却では到達できない、さらに低温の冷却を行う。現在 100 mK 以下の極低温を連続的に実現する唯一の方法である。

3He-4He希釈冷凍法
水色が3He濃厚相(C相)、緑色が希薄相(D相)にあたる
相分離を示す液体 3He-4Heの混合物の相図。
およそ6.6%の3Heを、4Heは溶解することができる。(6.6%=0.066のグラフ上の位置は、左下の横軸上でのFermi liquidとFobidden regionの境界部分)

4He中への3He溶解度はおよそ6.6%である。極低温では、3He4Heの蒸気圧は異なり、溶媒の4Heの中から選択的に3Heを蒸発させる事ができる。すると、4He中の3He濃度が低下するので、4Heは引き続き3Heを溶解させることができ、3He-4He混合液が潜熱を奪い続けて、冷却をする。蒸発させた3Heは回収し、液化させたのち、再び4Heに溶解させて繰り返し使うことができる。

3He-4He希釈冷凍法の量子論的原理

編集

ヘリウムには、3He4Heが同位体として存在しており、自然界では4Heが主体である。3Heフェルミ粒子であり、4Heボース粒子である。4Heは極低温で超流動を起こす。

3He4Heの混合液は 0.87 K 以下で「多くの4Heの中に少しの3Heが混ざった希薄相(D相)」と「ほとんどが3Heの濃厚相(C相)」とに相分離する。3He-4He希釈冷凍機で最も低温になる部分は混合器(mixing chamber)と呼ばれ、その中では図のように2相が接している。図でD相につながっているパイプの先は分溜器(still)とよばれる内部に熱交換器を持った部分につながっており、そこは約 0.8 K に保たれている。0.8 K においては4Heの蒸気圧はほぼ0だが、3He蒸気圧は有限であるため、3Heを選択的に蒸発させることが出来る。するとD相の3He濃度が平衡状態より低くなり、3HeはC相からD相へ溶解する。このときC相とD相の間のエントロピー差を利用することによって混合液から熱を奪うことができるのである。このような操作により10 mK 程度の極低温を連続的に生成することが可能である。

関連項目

編集

出典

編集
  • 伊達宗行『新しい物性物理』講談社ブルーバックス〉。ISBN 4-06-257483-7 
  • 小林俊一; 大塚洋一『低温技術』東京大学出版会ISBN 978-4-13-063042-9 
  • 《超流体 》/ (美)沈星揚著 (1982). - 北京: 科学出版社
  • Mendelssohn, Kurt Alfred Georg (1966). The Quest for Absolute Zero: The Meaning of Low Temperature Physics. New York: World University Library. McGraw-Hill.

外部リンク

編集