文語訳聖書
概要編集
明治時代、キリスト教諸派の働きにより、様々な日本語訳聖書が文語体で編まれ、宣教に用いられた。
口語文を唱導する言文一致運動が起こるなど、日本語の書き言葉が大きく揺れ動いていた時代ではあったが、第二次世界大戦の後まで、外国語の和訳には文語文を用いるのが常であった。
特に、次のようなものが知られている。
- 『舊新約聖書』
- 単に『文語訳聖書』『文語聖書』とも。日本聖書協会またその前身などが主に発行してきた訳およびその写し。本稿で詳述。
- 『我主イエズスキリストの新約聖書』(ラゲ訳)
- 『日本正教会訳聖書』(ニコライ・中井訳)
- 日本正教会によるもので、西方教会でいう『詩編』すなわち『聖詠經』など旧約聖書として用いるものや、『福音經』『使徒經』その他のいわゆる新約聖書すなわち『我主イイススハリストスの新約』がある。日本のキリスト教会で今日ただひとつ、公式に教派を挙げて奉神礼すなわち西方教会でいう礼拝に用いる訳である。
『我主イエズスキリストの新約聖書』と『我主イイススハリストスの新約』とは、カトリック教会と正教会の訳者がそれぞれ別々に訳したものである。名前が似ており、述べる内容も等価といってよいが、言い回しは同一でなく、あくまで別の訳である。
舊新約聖書編集
『舊新約聖書』あるいは『文語訳聖書』として知られる。日本語で単に文語訳聖書と言えば、あるいは聖書に関して文語訳と言えば、ほとんどの場合、主に日本聖書協会が今日、目録番号の冒頭にJLを付して出版するこの文語訳『舊新約聖書』を指すのである。
書名はほかにも、奥付などには、その類にしたがって『大形文語聖書』『小形印照つき文語聖書』などのようにあるほか、同協会のウェブ上では同様に『文語訳 大型聖書』『文語訳 小型聖書』などとあり、表紙や背表紙、外函などでは同じく『舊新約聖書 文語訳』『舊新約聖書 印照附』などとある。抜粋のものには『文語訳 小型新約聖書詩篇附』などがある。
なお、「舊」は「旧」の異体字である。「訳」の異体字に「譯」があるが、『舊新約聖書 文語譯』などとはしないようである。
元来、この翻訳は大英国聖書会社、米国聖書会社、北英国聖書会社の日本支社の共同事業であった。
1874年、ヘボン、ブラウンらからなる翻訳委員社中によって新約聖書の翻訳がはじまり、約5年半の歳月をへて完成。1878年に聖書常置委員会が組織され、これによる旧約聖書が1887年完成[1]。今日、これらをあわせて『明治元訳聖書』という。この旧約部分と、1917年に新約聖書のみ完成した『大正改訳聖書』が本書に収録されている。
これらをあわせて考えると、明治期より昭和中期ごろまでに、日本でもっとも普及した聖書であると言える。広く日本の思想・文学に影響を与えた[2]、愛読者が絶えない名訳[3]である。
購入は各社オンラインショップまた各地の書店でも可能。キリスト教書店でも取り寄せ可能である[4]。また、パブリックドメイン化もされており、有志による電子版が安価もしくは無料で入手できる。
エホバの証人は、日本語版『新世界訳』全訳を最初に発行する1982年まで主要な聖書として使用してきた。彼らの組織の出版物では、本書について「この翻訳では,創世記 2章4節を初めとして,一貫してエホバという名が用いられています」[証人 1]と述べているが、正しくは「ヱホバ」である。
ISBN編集
- 小型クロス装文語聖書 JL43
- ISBN 978-4-8202-1275-1
- 小型ビニールクロス装文語聖書 JL44
- ISBN 978-4-8202-1315-4
- 小型革装文語聖書 JL49S
- ISBN 978-4-8202-1276-8
- 大型クロス装文語聖書 JL63
- ISBN 978-4-8202-1235-5
- ISBN 4-8202-1136-6
- ISBN 4-8202-1027-0
- 大型合成皮革装文語聖書 JL65
- ISBN 4-8202-1028-9
- 大型折革装文語聖書 JL69S
- ISBN 978-4-8202-1236-2
- ISBN 4-8202-1137-4
- ISBN 4-8202-1029-7
- 大型講壇用革装文語聖書 JL98
- ISBN 4-8202-0050-X
- 小型クロス装文語聖書引照つき JLO43
- ISBN 4-8202-1007-6
- ISBN 4-8202-0046-1
- 小型折革装文語聖書引照つき JLO49S
- ISBN 4-8202-1016-5
- ISBN 4-8202-0047-X
- 中型クロス装文語聖書引照つき JLO63
- ISBN 4-8202-1008-4
- ISBN 4-8202-0048-8
- 中型折革装文語聖書引照つき JLO69S
- ISBN 4-8202-1021-1
- ISBN 4-8202-0049-6
新約聖書詩編つき編集
旧約聖書がほとんど収録されていないため『舊新約聖書』という書名は付されないが、関連性を重視し本セクションに併記する。
- 小型クロス装文語新約聖書詩編つき JL343 ※文字の大きさ7ポイント
- ISBN 978-4-8202-3218-6
- 小型クロス装文語新約聖書詩編つき JLR353 ※文字の大きさ8.5ポイント
- ISBN 4-8202-2012-8
- ISBN 4-8202-0052-6
- 中型クロス装文語新約聖書詩編つき JLR373
- ISBN 4-8202-0051-8
- 大型クロス装文語新約聖書詩編つき JLR383
- ISBN 4-8202-0053-4
文庫判編集
脚注編集
キリスト教会編集
- ^ バイブルハウス南青山 『文語訳聖書とは』
- ^ 日本聖書協会 『文語訳 小型聖書』(「明治初期、J.C.ヘボンを中心とした委員会が翻訳し、広く日本の思想・文学に影響を与えた旧新約聖書です。スマートかつコンパクトに仕上げました」と書いてある)
- ^ バイブルハウス南青山 『日本語文語訳聖書』(「ヘボンらを中心とした翻訳委員社中および聖書翻訳出版常置委員会により翻訳され、聖書協会として初めて発行した記念すべき日本語聖書。愛読者が絶えない名訳です」と書いてある)
- ^ “文語訳 大型聖書 JL63”. biblehouse.jp. 2018年10月20日閲覧。
その他の宗教編集
- ^ ものみの塔聖書冊子協会(エホバの証人)「エホバ」『聖書から論じる』 88ページ、1985年、1989年、2009年。
関連項目編集
外部リンク編集
- 文語訳聖書電子化計画
- 聖書翻訳の歴史(日本聖書協会)
- 文語訳聖書に将来はあるか?(佐藤研)
- 日本語の聖書(文語訳を含む聖書を掲載)
- ortodoksa biblio - ウェイバックマシン(2014年11月10日アーカイブ分)(日本正教会訳聖書を掲載)