暗い雲》S.199 は、フランツ・リスト1881年に作曲したピアノ曲である。

冒頭の2小節で提示される四度和音

概要 編集

晩年のリストの作風はより実験的かつ短く単純になっている。4度音程(ならびに増4度)による和声進行に依拠しており、増三和音の響きも含んでいる。当時としては異例の非機能的な和声法によっており(シェーンベルクの実験より四半世紀も先んじている)、調性感に極めて乏しい。最後から2つ目の和音は、20年近く後にスクリャービンが用いた神秘和音と同一と見なすことができる[1]

原題はフランス語で“Nuages Gris ”。これは日本語にすると「灰色の雲」となるが、リスト自身によってドイツ語の題名“Trübe Wolken”も付けられており、「暗い雲」「不安な雲」という訳名は、後者に由来する。このような事情から、日本における訳語はいずれも通用しており、今のところ一本化されていない。

スタンリー・キューブリックの遺作映画『アイズ・ワイド・シャット』のサウンドトラックにも利用されている。

関連事項 編集

出典 編集

  1. ^ 野本由紀夫『新編 世界大音楽全集 リスト ピアノ曲集II』音楽之友社、1991年。 

外部リンク 編集