松田 治助(まつだ じすけ、1964年- )は、東京を拠点に活動するデザイナー。本名は松田 治(まつだ おさむ)。「Atelier Jisuke」主宰。

人物・来歴編集

山口県出身。小学生の頃は吉本新喜劇と日活映画、テレビが大好きな少年だった。中学の頃、親からくすねたお金で買った小さいテレビの画面で、初めて「絵描き」と名乗る人を見た。11PMのリポーターとして出演していた黒田征太郎である。それからは、「将来は絵描きになる」と決める。高校時代は、『SUPER ART GOCOO』などカルチャー誌を愛読、横尾忠則・粟津潔・田中一光等に刺激を受ける。建設会社を経営していた父親から、跡継ぎとして期待されていたが、反対を押し切って高校卒業後に上京。美大受験の為に美大予備校に通う。同時期に金原次郎・佐藤由紀夫、佐藤可士和、服部一成、玉川竜等も在籍していた。仲間内では、「オサム」と呼ばれていた。

購入したアンディ・ウォーホルの版画が手持ちの額に入らず、ナンバリングの部分を切り落としたり、「それどこの服?」と聞かれて「俺の」と答えたり、若い頃から世間的な価値には無関心だった。予備校の講師から「天才」と呼ばれたが、同じ講師から講評会で「ピーターパンシンドローム」とも評された。自宅に石膏を持ち込んで練習するほど、デッサンには熱心だった。

20代前半、家庭の事情から、学術としての美術と決別。自活するためにイラストレーションの売り込みを始め、営業力の重要性に気づく。レッグウェアの会社に、営業を希望して入社。足元の隠れるぶかぶかした奇妙なソックスを売りまくった。これが後に「ルーズソックス」と呼ばれ、流行語大賞トップ10入りを果たし、当時の社長が表彰された。他に、ぴあ広告部では、ぴあの自社広告「イヤホンくん」を担当した。ペンギンカフェの入社歓迎会で「僕は花です。花は、いい具合に水を差してもらったり、陽当りの良い場所に置いてもらえなければ、良い塩梅に成長しません。しかし、僕は水をくれる人や、陽を当ててくれる人を選ぶことができます。僕はこの会社に入りました。いい水といい陽当りをいただけると信じています。」と語った。

職場では演劇人やミュージシャンなど、個性豊かな人たちと出会っている。仕事の傍ら読書に耽り、近所のレンタルビデオ店では映画を片っ端から鑑賞していた。有島武郎・星新一・谷崎潤一郎・立原道造(文学)、本多勝一等(ジャーナリスト)、一ノ瀬泰造・ロバート・キャパ(写真)、つげ義春・林静一・バロン吉元・鴨川つばめ(漫画)など、守備範囲は広い。この頃に吸収した哲学・文学・映像・音楽は現在の作品の礎となっている。フェリーニの映画に登場する女性のような、ふくよかな人物画もそのひとつである。

1989年の天安門事件・ベルリンの壁崩壊にインスパイアされ、24歳で個展を開催。その際、平面だけでなく立体を制作しようと発泡スチロールを発注したが、窓からクレーンで搬入したスチロールが部屋中を占有する事態に陥り、引き取ってもらうことになった。代表作『BERLIN BERLIN』はこの時の作品である。

その後、イラストや漫画などで独立する道を模索する。一時期、人にデッサンを教えていたが、作品を制作することに立ち返って、2010年に自身のデザインスタジオ『アトリエ・ジスケ(Atelier Jisuke)』を設立。「Jisuke(治助)」は祖父の名前に由来しているが、「助けて治める」という意味も込めた。

作品・作風編集

作品は表面的な美学よりも、哲学・思想の現れとして、既存のデザイン論に囚われない強烈な色と緻密な構成を持つ。若い頃に、渋谷西武に自作の詩集を置いていたこともあり、デザインの際にも、「言葉」や「イデオロギー」を出発点にしている。一方で美術の数学的要素(論理)も重視している。(詩人の立原道造を愛読するのは、建築も手掛ける故に、詩の中に数字要素を持っているからである)

Create Theatre Poster編集

Create Theatre Posterは、シェイクスピアの作品を取り扱った、一連のワークショップポスターである。古典を現代の目線で捉え直して、現代のポスターとして再構築することをテーマにしている。 シェイクスピア作として知られる全37作品を制作予定。既に作品化されているものは、以下のタイトル。

  • King Lear
    シリーズ最初の作品。「King Lear」の文字に、リアの心理と行動 ー悲しみ、怒り、ゆらぎ、絶望、鋭角な狂気ー を象徴させ、独自のタイポグラフィとして確立させている。氷の彫刻のような奥行きと色彩の反射は、頑なさ故に悲劇を呼び込んだ彼の運命を象徴する。
  • Hamlet
    その高名なセリフは、無数の渦から浮かび上がる。渦は、逡巡、迷い、波紋。オフィーリアの浮かんだ水を思い起こさせる暗い青、血のような赤。流れる涙の中に、悲劇に突き進むしかなかったハムレットの苦悩がうかがえる。
  • Romeo and Juliet
    短刀は、彼らの愛の象徴である。それはジュリエットの命を奪っただけでなく、全ての悲劇の始まりであった。愛情の持つ、鮮やかで美しい側面と、冷たく残酷な一面を、1枚の絵の中で表現した作品。
  • Macbeth
    マクベスを破滅に導いたのは、彼自身であった。自分の手を汚して王の座に登った後、その心は休まることなく、中央の剣は王冠を貫き、彼の名「Macbeth」は炎に包まれる。
  • Richard Ⅲ
    暴君として名高いリチャード3世は魅力的な悪役である。彼の迷いが、彼に亡霊を見せた。無数の石の欠片は、彼を閉じ込めた城壁であり、石のように脆い彼の王座でもある。
  • The Merchant of Venice
    正義とは何か。この物語は法廷を舞台にしたゲームである。チェスの駒は登場人物たちを表現している。一筋縄ではいかない正義、本当の悪役はここにはおらず、全てはグレーなのだ。
  • A Midsummer Night's Dream
    幻想の守りの中では、人間も妖精も、愛し合い嫉妬し合う、ユーモラスで愛すべき人物として描かれる。ポスターを埋める粒は、彼らの涙であり、溢れる感情は画面の外へと流れ出る。
  • Julius Caesar
    シーザーの驚き、叫び、嘆き。カタカナという鋭角的なサーフェスを持つ文字は、暗殺されたシーザーの心情の表出であると同時に、壊れやすい暗殺者たちの行く末も予感させる。
  • Antony and Cleopatra
    成就することのない、浮気でありつつも真摯な愛。運命に翻弄されるしかなかったアントニーとクレオパトラの愛を、触れることの許されない感染症の時代に重ね合わせた作品。

主な入賞・受賞歴編集

  • RedDot Communication Design Award, reddot winner (2021)
  • 27th International Poster Biennale in Warsaw, honourable mention (2021)
  • 67th TDC Communication Design Competition, winner (2021)
  • 16 INTERNATIONAL POSTER BIENNIAL IN MEXICO, selected (2020)
  • Moscow Global Biennale of Graphic Design (Golden Bee 14), participants (2020)
  • Ninth International Triennial of Stage Poster Sofia 2019, AWARD EX AEQUO (2019)
  • BIENAL DEL CARTEL BOLIVIA 2019, second mention (2019)
  • 16th International Biennale of Theatre Poster Rzeszów / PL selected (2018)
  • Moscow Global Biennale of Graphic Design (Golden Bee 13), Awards (2018)
  • 15 INTERNATIONAL POSTER BIENNIAL IN MEXICO, selected (2018)
  • 28th International Biennial of Graphic Design Brno 2018, selected (2018)
  • LAHTI poster triennial 2017, selected(2017)
  • Co2 poster biennial 2017, selected (2017)
  • Graphic Matters Poster Competition 2017: Shut Up Speak Up!,selected(2017)
  • BIENAL DEL CARTEL BOLIVIA 2017, selected (2017)
  • Graphis Poster Annual 2018, Platinum Award, Gold Award (2017)
  • ZGRAF 12 Honorable Mention (2016)
  • 8th International Triennial of Stage Poster Sofia, Nominated authors (2016)
  • Graphic Design Festival Scotland shortlisted (2016)
  • Moscow Global Biennale of Graphic Design (Golden Bee 12), Awards (2016)
  • Graphis Poster Annual 2017, Platinum Award, Gold Award, Silver Award (2016)
  • Strelka2016 International Design Festival, Finalist (2016)
  • 15th International Biennale of Theatre Poster Rzeszów / PL“qualified” selected (2015)
  • Trnava poster Triennial 2015, Finalist (2015)
  • Graphis Poster Annual 2016, Platinum Award, Silver Award (2015)
  • BIENAL DEL CARTEL BOLIVIA 2015, selected (2015)
  • IX International Eco-poster Triennial “the 4th Block”, participant (2015)
  • Graphis Poster Annual 2015, Gold Award (2014)
  • 13 INTERNATIONAL POSTER BIENNIAL IN MEXICO, selected (2014)
  • Moscow Global Biennale of Graphic Design(Golden Bee 11), selected (2014)
  • Hong Kong International Poster Triennial, selected (2014)
  • 7th INTERNATIONAL TRIENNIAL OF STAGE POSTER – SOFIA, selected (2013)
  • Trnava poster Triennial 2012, Finalist (2012)
  • 12 INTERNATIONAL POSTER BIENNIAL IN MEXICO, selected (2012)
  • Moscow Global Biennale of Graphic Design(Golden Bee 10), participant (2012)
  • The 10th International Poster Triennial in Toyama, selected (2012)

参考文献編集

  • Graphis Journal #360 (Graphis Inc. 2019)

THERE IS NO ROUTINE IN JISUKE MATSUDA’S WORK. LIKE A FINE ARTIST, HE SHIFTS AND PILES COLORS,FORMS, AND LETTERS INTO A BEAUTIFUL UNITY. WITH EACH DIFFERENT VISUALIZATION, WE FALL INLOVE WITH A SO-CALLED JISUKE MATSUDA STYLE. Matthias Hofmann

外部リンク編集