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水死 (大江健三郎の小説)

水死』(すいし)は、2009年講談社から出版された大江健三郎の長編小説である。講談社100周年の書き下ろし100冊の一冊として出版された。その後2012年に講談社文庫から文庫版が出版されている。

水死
著者 大江健三郎
発行日 2009年12月(講談社)
2012年12月(講談社文庫)
発行元 講談社
ジャンル 純文学
日本の旗日本
言語 日本語
ページ数 450(ハードカバー)
前作 『美しいアナベル・リイ』
次作 『晩年様式集』
コード ISBN
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2016年に“Death by Water”として英訳が出版され(翻訳 Deborah Boehm)、ブッカー国際賞にノミネートされた。

あらすじ編集

70代の小説家、長江古義人は、死んだ母の残した赤革のトランクに入っているはずの父の日誌や書簡をもとに、終戦の夏に、増水した川に短艇で漕ぎ出して謎の死を遂げた超国家主義者の父についての「水死小説」を書くことを目論み、故郷の「森の谷間の村」に帰郷する。

古義人に演劇集団 「穴居人 (ザ・ケイヴ・マン)」の代表の穴井マサオと所属女優のウナイコが接触してくる。彼らは古義人の全作品を総合した演劇をつくる構想をたてており、その取材のためである。

古義人がトランクを開けてみると、思惑に反してめぼしい資料はなかった。早々に「水死小説」の構想は頓挫してしまった。

水死小説の頓挫に落胆した古義人は「大眩暈」と作中で称される病気に襲われる。病身の古義人は知的障害を持つ息子アカリに対して、あることから思わず「君はバカだ」と言ってしまい親子はかつてない断絶状態になる。

「水死小説」の頓挫でマサオの構想も暗礁に乗り上げる。ウナイコは独自の企画を立てて「死んだ犬を投げる芝居」と作中で称される特殊な形式の芝居を始めて、夏目漱石の『こころ』を題材にする。そして『こころ』で作中の「先生」の自殺の引き鉄をひいた「明治の精神」とは何かを問う。

古義人は、超国家主義者の父の一番弟子であった、中国引揚者の大黄から話を聞きながら、父の死の真相や意味を掘り下げていく。

ウナイコは、古義人の故郷に伝わる一揆の伝承を素材に一揆指導者で性的に陵辱された「メイスケ母」の芝居を作ろうと奔走するようになる。ウナイコはこの芝居を通して、高校生時代に文部科学省の高級官僚の叔父から受けたレイプ事件を告発しようとしていた。叔父夫婦はそれを止めようと説得にあたる。

そして事件が起こる。クライマックスに向けて物語は怒涛の勢いで進み、一気に幕を閉じる。

出版編集

  • 『水死』講談社、2009年
  • 『水死』講談社文庫、2012年