法印
法印(ほういん、梵: dharmoddāna [dharma-uddāna], 音訳: 達磨憂檀那)とは、仏教の特徴をあらわすしるしを意味する[1]。法印とされる3つないし4つの経句は三法印、四法印と呼ばれ、中国仏教で経典の仏説・非仏説を識別する判定規準とみなされた[1]。三法印、四法印を構成する教説は初期仏教から存在するが、法印という用語自体は後代に成立したものであり、漢訳語の初出は5世紀の鳩摩羅什と言われる[2]。法印のパーリ語における対応語は現存資料には見出されない[2]。
三法印と四法印
編集一般に法印に挙げられるのは以下の4項である[3]。
- 諸行無常 (巴: sabbe saṅkhārā aniccā)
- 一切行苦 (巴: sabbe saṅkhārā dukkhā)
- 諸法無我 (巴: sabbe dhammā anattā)
- 涅槃寂静 (巴: santaṁ nibbānaṁ)
これらは初期仏教以来の仏法の要となる教えであるが[2]、後世、「一切行苦」を除く3句をまとめて三法印という[4]。また、「一切行苦」を含む4句が四法印である[1]。智顗の著作『法華玄義』では、三法印は小乗の教説と非仏説とを区別する標徴であるとされた[5]。
初期教典には三法印の説はみられないが[6]、上記4項のうち「涅槃寂静」を除く前3項にあたる「無常・苦・無我」は、『ダンマパダ』をはじめとする初期教典、パーリ経蔵や漢訳の阿含経にしばしば説かれている[2]。パーリ仏教ではこの3句をまとめて「3つの特相」(巴: tilakkhaṇa)とする[7]。なお、三法印は漢訳仏教圏で普及した用語であり、パーリ聖典にはこれに対応する用語はない[8]。
一実相印
編集出典
編集参考文献
編集- 室寺義仁「「三法印」(dharmamudrā trilaksanā) : 古典インドにおける三句の發端と展開の諸樣相」『東方学報 88』2013年12月、NAID 120005367779。
- 三枝充悳『仏教入門』岩波書店〈岩波新書〉、1990年。
- 水野弘元『仏教要語の基礎知識』(新版)春秋社、2006年(原著1972年)。
- 中村元・福永光司・田村芳朗・今野達・末木文美士 編『岩波 仏教辞典 第二版』岩波書店、2002年10月。
- 多屋頼俊・横超慧日・舟橋一哉 編『新版 仏教学辞典』法蔵館、1995年4月。