「かわいさ」の版間の差分
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{{otheruses|かわいさ|日本特有の美的感覚|可愛い}}
'''かわいさ'''([[:en:Cuteness|Cuteness]])とは、ある事物に対して「'''[[かわいい]]'''」と感じる[[鍵刺激]]・[[因子]]・[[性質]]・[[概念]]・[[美学]]。類語として「かわいげ」「かわいらしさ」「いとおしさ」「愛くるしさ」などがある。
== 子供の形態的特徴と生物学的機能 ==
[[File:Animal human growth skull neoteny cuteness maturation.png|thumb|250px|ローレンツが示した「かわしらしい」形態的特徴<ref name="masaT"/>]]
[[動物行動学]]者の[[コンラート・ローレンツ]]は、[[1943年]]に『可能な経験の生得的形態(経験できることには生まれつき決まった形がある)』という論文を発表した<ref>Lorenz, K. (1943). Die angeborenen Formen möglicher Erfahrung [The innate forms of potential experience / 可能な経験の生得的形態(経験できることには生まれつき決まった形がある)].</ref>。この論文では、赤ちゃん固有の形態的特徴が、大人にとって「[[かわいい]]」という感情を刺激し、子育て行動へと駆り立てるとされた<ref name="masaT">[[正高信男]]『子どもはことばをからだで覚える メロディから意味の世界へ』中公新書 2001,p.108-112.</ref>。赤ちゃん固有の形態的特徴とは'''「体に比して頭が大きい」「顔面より脳頭蓋が大きい」「目が大きくて丸い」「頭全体に対して目鼻口が低い所に位置している」「短い四肢」'''などが挙げられる<ref name="masaT"/>。これら幼い動物の身体的特徴は「'''{{仮リンク|ベビースキーマ|de|Kindchenschema}}'''」(幼児図式<ref name="masaT"/><ref>{{Cite journal|和書|author=扇原貴志 |date=2017-10 |url=https://hdl.handle.net/2309/148368 |title=乳幼児との接触経験と接触時感情が子どもへの関心に及ぼす影響 |journal=学校教育学研究論集 |ISSN=1344-7068 |publisher=東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科 |volume=36 |page=1 |hdl=2309/148368 |id={{CRID|1050569943996897408}}}}</ref>、Kindchenschema)と呼ばれている。またこれは[[科学的方法]]に基づく「かわいい」研究の出発点となった<ref>入戸野(2019), p.55</ref>。
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== 文化的意義 ==
ベビースキーマは本来の[[生物学]]的な領域以外にデザインや産業の分野でも絶大な効果があり、特に有名な例が日本の[[漫画]]や[[アニメ]]などの[[ポップカルチャー]]([[おたく|おたく文化]])である。たとえば[[キャラクター]]の「無垢さ」「従順さ」「幼さ」を演出・強調するために、しばしば
* 身体に比して大きな頭と小さな鼻
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== 「かわいさ」を喚起させる対象と構造 ==
[[File:Kawaisa_Factor.png|thumb|250px|かわいさを構成する要素。図からも分かるように、かわいさを醸し出す要素には相矛盾する要素が含まれており、かわいいものは我々との共感やコミュニケーションに失敗していることが多い<ref>椎塚久雄「かわいい感情の構造ー製品の中におけるかわいさとインタラクション」日本感性工学会『感性工学』11巻2号, pp.98-108, 2012年9月</ref>。]]
「かわいさ」を感じさせ、大人の庇護を喚起するものは、男らしさ([[マチズモ]])とは対極的な存在であるといえる。[[美術評論家]]の[[松井みどり (美術評論家)|松井みどり]]は「かわいい」という感情の発露について「無作法で非生産的な行動、すなわち合理性と能率を旨とする『大人社会』の規範から逸脱した行動に対して、相手が『弱く』『未熟な』ために許し、保護してあげるという慈しみの視点から発せられる」と推察している{{sfn|松井(1996)|p=25}}。
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これらに加えて、世の中から[[逸脱]]([[超俗]])して、'''社会との調和を喪失した対象'''(例:[[電波系]]・[[不思議ちゃん]]・[[天然ボケ|天然]]・[[中二病]]・[[メンヘラ]]・[[陰キャ]]・[[コミュ障]]・[[猫耳]]・[[人外]]・[[巫女]])も「かわいい」とされることがある<ref name="yamamoto39"/>。
[[宮元健次]]は「かわいい」という不完全で未熟なものに惹かれる日本特有の美意識が、世界中で注目されるようになった理由を「'''ひと言でいえば、それは[[20世紀]]社会の経済的発展に対する[[アンチテーゼ]]といえるだろう。『かわいい』は、成長や成熟を否定する美意識である'''」と、[[モラトリアム]]の文脈でまとめている<ref>[[宮元健次]]『日本の美意識』[[光文社新書]] 2008年3月 p.215</ref><ref>石川(2016), p.23</ref>。
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