「熱ルミネッセンス線量計」の版間の差分

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熱ルミネッセンス線量計は、個人の被曝線量の測定、および環境モニタリングに用いられる。
一定期間(1ヶ月または3ヶ月)ごとに回収し、TLD読み取り装置でその期間の積算線量を読み取る。
 
== 原理 ==
結晶には通常[[不純物]]、[[応力|ストレス]]による[[転位]]などさまざまな理由による[[格子欠陥]]が存在する。
これによって[[ポテンシャル]]が乱れ、部分的にポテンシャルの高いところ低いところなど、でこぼこができる。そこへ自由な電子が導かれてトラップされ、蓄積される。
 
放射線を被爆することにより、結晶原子中の電子が[[励起]]され[[伝導帯]]へ移り、[[自由電子]]となる。ほとんどはすぐに結晶と[[再結合]]されることになるが、そのうちいくらかトラップに捕らえられるものもあり、これが放射線の[[エネルギー]]を電気的に蓄えることになる。
 
被爆した結晶が熱や強い光にさらされると、トラップされた電子は十分なエネルギーを得て開放され、格子中の[[イオン]]と再結合して観測可能な特定周波数の光子を放出する。放出される光子はトラップされた電子の量に比例し、さらに累積された被爆量に関係する。
 
== 年代測定 ==
[[宇宙線]]や[[自然放射線]]の被爆総量を測ることを応用し、土器・岩石などの年代測定にも熱ルミネッセンスは用いられる。
土器や堆積した土砂などに含まれる鉱物の結晶が、高温にさらされたときや太陽の光を受けたときからの蓄積線量を測定することによって時間の経過を測定する。
 
準位の深さ(トラップから抜け出るために必要なエネルギー)によってトラップされた電子を蓄えておくことのできる時間が異なる。トラップには蓄えておくことのできる時間が数十万年に及ぶほど十分に深いものもあり、熱ルミネッセンス年代測定では、これら長寿命のトラップを利用する。
 
トラップの密度は大きく変動する未知数であり、測定中に放出される光の量と、被爆した線量を関係付けるために[[キャリブレーション]]をする必要がある。
また年代を決定するには、1年間あたりに試料が被爆した線量を推定する必要もある。
 
年代測定には、トラップされた電子を一掃する「起点」となるイベントが前提となり、土器や岩石の測定では熱にさらされることを、土砂などの堆積物の測定では太陽光にさらされることを仮定する。そののち、被爆する放射線によってた電子がトラップされ、蓄積されていく。
年間の被爆線量を測定するには、通常、試料の[[ウラン]]・[[トリウム]]([[アルファ線]])と[[カリウム|カリウム40]]の量([[ベータ線]]・[[ガンマ線]])を測定する。さらに、試料のおかれていた場所のガンマ線量を測定し、宇宙線量とともに加味することが多い(ガンマ線量は試料のカリウム40の含有量から計算されることもある)。
こうして得られた年間線量で計測された試料の蓄積線量を割れば、起点から経過した時間が計算される。
 
熱ルミネッセンス年代測定法は、土器など[[放射性炭素年代測定法]]が利用できない場合によく利用される。
また、河川の砂の堆積の様子などを知るために応用する試みもある。
 
 
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