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アネモイは、あるときには一陣の突風として表現され、またあるときは翼を備えた人間として擬人化される。『[[オデュッセイア]]』においては、風神[[アイオロス]]の厩舎に繋がれた[[ウマ|馬]]として描写された。[[ヘーシオドス]]によれば、星空の神[[アストライオス]]が父で、暁の女神[[エーオース]]が母である。
 
主要なアネモイは4柱いる。'''ボレアス'''は冷たい冬の空気を運ぶ北風で、'''ノトス'''は晩夏と秋の嵐を運ぶ南風であり、'''ゼピュロス'''は春と初夏のそよ風を運ぶ西風であった。東風の'''エウロス'''はいかなる季節とも関連付けられておらず、ヘーシオドスによる『[[神統記]]』や、後代の『[[オルペウス]]賛歌』の中で言及されていない唯一の上位のアネモイである。このほか、北東、南東、北西、南西の風を表現する下位の4柱が言及される。
 
[[ローマ神話]]においてアネモイにあたる神格は'''ウェンティ'''(<small>[[古典ラテン語]]</small>:Venti, 「風」の意)である。ウェンティはアネモイとは名前こそ異なるが、その他の点では非常によく似ていた。
 
== 上位のアネモイ ==
=== 北風ボレアス ===
[[ファイル:Boreas Oreithyia Louvre K35.jpg|thumb|ボレアスのオレイテュイア略奪。[[プーリァ州]]、紀元前360年頃の[[赤像式陶器]]]]
'''ボレアス'''({{lang|grc|Βορέας, Boreas}})は冬を運んでくる冷たい[[北]]風の神である。ボレアスの名は、「北風」あるいは「むさぼりつくす者」を意味する。
 
ボレアスは非常に強力な神であり、それと同様に粗暴であった。ボレアスはしばしばほら貝を持ち突風にうねる外套を纏い、もじゃもじゃ頭に顎鬚を生やした、翼のある老人として描写された。[[パウサニアス]]はボレアスの足が蛇になっていると記しているが、通常の絵画においては、彼は人間の足に翼が付いている神として描かれている。
 
ボレアスは馬と密接に関連付けられている。ボレアスは雄馬の姿を取り、[[イリオス]]の王[[エリクトニオス]]の雌馬たちとの間に12匹の仔馬をもうけたと言われている。これらの仔馬は、作物を踏みにじることなく穀物畑を走り抜けることができたと伝えられている。[[ガイウス・プリニウス・セクンドゥス|大プリニウス]]は『[[博物誌]]』の4章35節および8章67節において、雌馬の臀部を北風に向けて立たせれば、雄馬なしに仔馬を種付けできるのではないかと述べている。
 
ギリシ人はボレアスの住居は[[トラキア]]にあると考えており、[[ヘロドトス]]とプリニウスは[[ヒュペルボレイオス|ヒューペルボリア]](「北風の向こうの国」の意)として知られる、人々が幸福を完うしつつ非常な長命を保って暮らしている北方の地域について記述している。
ボレアスは馬と密接に関連付けられている。ボレアスは雄馬の姿を取り、[[イリオス]]の王[[エリクトニオス]]の雌馬たちとの間に12匹の仔馬をもうけたと言われている。これらの仔馬は、作物を踏みにじることなく穀物畑を走り抜けることができたと伝えられている。[[ガイウス・プリニウス・セクンドゥス|大プリニウス]]は『[[博物誌]]』の4章35節および8章67節において、雌馬の臀部を北風に向けて立たせれば、雄馬なしに仔馬を種付けできるのではないかと述べている。
 
また、ボレアスはイリソス河から[[アテナイ]]の王女[[オレイテュイア]]を略奪したとも伝えられている。オレイテュイアーに惹かれたボレアスは、最初は彼女の歓心を得んとして説得を試みていた。この試みが失敗に終わると、ボレアスは生来の荒々しい気性を取り戻し、イソス河の河辺で踊っていたオレイテュイアを誘拐した。ボレアスは風で彼女を雲の上に吹き上げてトラキアまで連れ去り、彼女との間に二人の息子[[ゼス]]と[[カライス]]および二人の娘[[キオネー]]と[[クレオパトラー]]をもうけた。
ギリシャ人はボレアスの住居は[[トラキア]]にあると考えており、ヘロドトスとプリニウスは[[ヒュペルボレイオス|ヒューペルボリア]](「北風の向こうの国」の意)として知られる、人々が幸福を完うしつつ非常な長命を保って暮らしている北方の地域について記述している。
 
この時より以降、アテナイの人々はボレアスを姻戚による親類と見なすようになった。アテナイが[[クセルクセス1世|クセルクセス]]により脅かされたとき、人々はボレアスに祈りを捧げ、ボレアスは暴風で400隻のペルシアの船を沈めたと伝えられている。同様の出来事がその12年前に起こっており、[[ヘロドトス]]は以下の様に記している。
また、ボレアスはイリソス河から[[アテナイ]]の王女[[オレイテュイアー]]を略奪したとも伝えられている。オレイテュイアーに惹かれたボレアスは、最初は彼女の歓心を得んとして説得を試みていた。この試みが失敗に終わると、ボレアスは生来の荒々しい気性を取り戻し、イリソス河の河辺で踊っていたオレイテュイアーを誘拐した。ボレアスは風で彼女を雲の上に吹き上げてトラキアまで連れ去り、彼女との間に二人の息子[[ゼテス]]と[[カライス]]および二人の娘[[キオネー]]と[[クレオパトラー]]をもうけた。
 
{{cquote|私はペルシアの舟が暴風により難破したというのが本当かどうか断言することはできないが、アテナイの人々はボレアスが以前に彼らを救ったようにして、この奇跡を起こしたのであると信じている。そして、アテナイの人々は故郷に帰還すると、イソス河にボレアスの神殿を建造した。}}
この時より以降、アテナイの人々はボレアスを姻戚による親類と見なすようになった。アテナイが[[クセルクセス1世|クセルクセス]]により脅かされたとき、人々はボレアスに祈りを捧げ、ボレアスは暴風で400隻のペルシアの船を沈めたと伝えられている。同様の出来事がその12年前に起こっており、[[ヘロドトス]]は以下の様に記している。
 
レイテュイアの略奪はペルシアとの戦争前後のアテナイで有名であり、頻繁に古甕の文様として描かれていた。これらの文様においては、ボレアスはチュニックを着込み、しばしば霜に覆われて逆立ったもじゃもじゃの髪を持つ、髭の男として描写された。オレイテュイアの略奪は[[アイスキュロス]]の失われた戯曲『オレイテュイア』の題材となっている。
{{cquote|私はペルシアの舟が暴風により難破したというのが本当かどうか断言することはできないが、アテナイの人々はボレアスが以前に彼らを救ったようにして、この奇跡を起こしたのであると信じている。そして、アテナイの人々は故郷に帰還すると、イリソス河にボレアスの神殿を建造した。}}
 
より後の時代の記録では、ボレアスは[[ビュート]]および[[リュクルゴス]](母親は別の女性)の父親であり、松の[[ニュンペー]]である[[ピテュス]]の愛人であった。
オレイテュイアの略奪はペルシアとの戦争前後のアテナイで有名であり、頻繁に古甕の文様として描かれていた。これらの文様においては、ボレアスはチュニックを着込み、しばしば霜に覆われて逆立ったもじゃもじゃの髪を持つ、髭の男として描写された。オレイテュイアの略奪は[[アイスキュロス]]の失われた戯曲『オレイテュイアー』の題材となっている。
 
ローマ神話においてボレアスに相当する神格は'''アクィロー'''(Aquilo)あるいは'''アクィロン'''(Aquilon)であった。北風の神に与えられたより珍しい別名としては、[[おおぐま座]]の七つ星(septem triones)に由来する'''セプテントリオ'''(Septentrio)がある。セプテントリオは、「北方」を意味する英語 septentrional の語源でもある。
より後の時代の記録では、ボレアスは[[ビュート]]および[[リュクルゴス]](母親は別の女性)の父親であり、松の[[ニュンペー]]である[[ピテュス]]の愛人であった。
 
ローマ神話においてボレアスに相当する神格は'''アクィロー'''(Aquilo)あるいは'''アクィロン'''(Aquilon)であった。北風の神に与えられたより珍しい別名としては、[[おおぐま座]]の七つ星(septem triones)に由来する'''セプテントリオ'''(Septentrio)がある。セプテントリオは、「北方」を意味する英語 septentrional の語源でもある。
 
=== 南風ノトス ===
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=== 西風ゼピュロス ===
'''ゼピュロス'''({{lang|grc|Ζέφυρος, Zephyros}})は[[西]]風の神である。アネモイの中で最も温和なゼピュロスは、春の訪れを告げる豊穣の風として知られている。ゼピュロスは[[トラキア]]の洞窟に住んでいると考えられていた。
 
ゼピュロスは異なる物語の中で、幾人もの妻を持っていたと伝えられている。ゼピュロスは姉妹である虹の女神[[イリス]]の夫であると言われていた。ゼピュロスは別の姉妹である女神[[クロリス]]を誘拐し、彼女に花の女神の地位を与えた。クロリスとの間に、ゼピュロスは果実の神[[カルポス]]をもうけた。ゼピュロスは兄弟であるボレアスと、クロリスの愛を巡って争い、最後にクロリスの歓心を勝ち取ったと伝えられている。更に別の姉妹にして愛人でもあった[[ハーピー|ハルピュイア]]の一人である[[ポダルゲー]](ケライノーとしても知られる)との間に、[[アキレウス]]の馬である[[バリオス]][[クサントス (ギリシア神話)|クサントス]]をもうけたとも伝えられている。
'''ゼピュロス'''({{lang|grc|Ζέφυρος, Zephyros}})は[[西]]風の神である。アネモイの中で最も温和なゼピュロスは、春の訪れを告げる豊穣の風として知られている。ゼピュロスは[[トラキア]]の洞窟に住んでいると考えられていた。
 
ゼピュロスは異なる物語の中で、幾人もの妻を持っていたと伝えられている。ゼピュロスは姉妹である虹の女神[[イリス]]の夫であると言われていた。ゼピュロスは別の姉妹である女神[[クロリス]]を誘拐し、彼女に花の女神の地位を与えた。クロリスとの間に、ゼピュロスは果実の神[[カルポス]]をもうけた。ゼピュロスは兄弟であるボレアスと、クロリスの愛を巡って争い、最後にクロリスの歓心を勝ち取ったと伝えられている。更に別の姉妹にして愛人でもあった[[ハーピー|ハルピュイア]]の一人である[[ポダルゲー]](ケライノーとしても知られる)との間に、[[アキレウス]]の馬である[[バリオスとクサントス]]をもうけたとも伝えられている。
 
現存する神話の内でゼピュロスが最も重要な役割を演ずるのは、[[ヒュアキントス]]の物語である。ヒュアキントスは美貌と強壮で鳴らした[[スパルタ]]の王子であった。ヒュアキントスに恋したゼピュロスは彼を求め、[[アポロン]]も同様であった。二人の神々は少年への愛を競ったが、ヒュアキントスは[[アポロ]]を選び、ゼピュロスは嫉妬に狂わんばかりとなった。後に円盤投げをしているアポロンとヒュアキントスを見付けたゼピュロスは、一陣の突風を彼らに吹き付け、落下した円盤を少年の頭に打ち付けた。ヒュアキントスが死ぬと、アポロンはヒュアキントスの血から[[ヒヤシンス]]の花を創造した。
 
[[エロス]]と[[プシュ]]の物語では、ゼピュロスはエロスのためにプシュをエロスの洞窟に送り届けていた。
 
ローマ神話においてゼピュロスに相当する神格は、植物と花々の支配者である'''ファウォーニウス'''(Favonius)であった。この語は「好意」を意味し、またローマにおける一般的な人名でもあった。
 
== 下位のアネモイ ==
[[アテナイ]]の[[ホロロゲイオン]](風神の塔)のように、少数の古代の資料には下位の4柱のアネモイが散見できる。ヘシオドスや[[ホメロス]]が記述しているように、元来はこれらの下位のアネモイたちは[[テューポーン]]によって生み出された邪悪で粗暴な精霊'''アネモイ・テュエライ'''({{lang|grc|Ἄνεμοι θύελλαι, Anemoi Thyellai}}, 「嵐」の意)であり、雄の[[ハーピー|ハルピュイア]]であるテュエライであった。これらのアネモイがアイオロスの厩舎に繋がれており、ほかの4柱の天上のアネモイは繋がれていなかった。しかしながら、後世の記述者は二種のアネモイを混同して習合させてしまい、上の区分はほとんど忘れ去られた。
 
;カイキアス
:[[北東]]の風の神。カイキアスは雹を散りばめた盾を構えた髭の男として描写され、カイキアスの名はギリシ語で「邪悪」を意味する {{lang|grc|κακία}} に由来する。カイキアスは美徳の精霊[[アレーテ]]の姉妹である悪徳の精霊の名前でもある。ローマ神話におけるカイキアスに相当する神格は、'''カエキウス'''(Caecius)であった。
 
;アペリオテス
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* [http://www.theoi.com/Titan/Anemoi.html Theoi.com]: The ''Anemoi''
 
[[Category{{DEFAULTSORT:ギリシア神話の神|あねもい]]}}
[[Category:ギリシア神話の|あねもい]]
[[Category:風神]]
 
[[az:Borey]]