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{{coord|51|31|46|N|0|707|37|W|region:GB_type:landmark|display=title}}
{{Infobox_Library
[[ファイル:British library london.jpg|thumb|280px|大英図書館(セント・パンクラス)]]
| library_name = 大英図書館<br/>British Library
'''大英図書館'''(だいえいとしょかん、'''British Library''')は、[[イギリス]]の[[国立図書館]]である。'''英国図書館'''とも訳される。
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| scope = イギリス及びアイルランドの出版物の法定納本図書館
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'''大英図書館'''(だいえいとしょかん、{{Lang-en-short|British Library}}、略称: {{Lang|en|BL}})は、[[イギリス]]の[[国立図書館]]である<ref>{{Cite web |url= https://www.bl.uk/aboutus/quickinfo/intvisitors/japanese.pdf |title=British Library(大英図書館) |publisher=British Library |format=PDF |accessdate=2016-12-24 }}</ref>。'''英国図書館'''とも訳される<ref group=注>[http://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/135 カレントアウェアネス・ポータル]の例にあるように、[[国立国会図書館]]では主にこちらの名称が用いられている。</ref>。世界最大級の1億5000万点以上もの資料を所蔵する、世界で最も重要な研究図書館であり、世界的な図書館の一つである。[[ロンドン]]の{{仮リンク|セント・パンクラス (ロンドン)|en|St Pancras, London|label=セント・パンクラス}}に本館、[[ウェスト・ヨークシャー]]の{{仮リンク|ボストン・スパ|en|Boston Spa}}に分館が置かれている。古今東西のあらゆる言語の[[書籍]]を収集しているほか、[[雑誌]]、[[新聞]]、[[パンフレット]]、[[録音]]、[[特許]]、[[データベース]]、[[地図]]、[[切手]]、[[版画]]、[[絵画]]、その他多くの資料を保存している。その2500万冊以上の網羅的なコレクションを数で上回るのは、今や[[ワシントンD.C.]]の[[アメリカ議会図書館]]のみである<ref name="Britannica">オンライン版の[[ブリタニカ百科事典]]の[http://www.britannica.com/topic/British-Library こちら]から確認できる。</ref>。このコレクションに含まれる作品には、紀元前1600年頃の時代にまで遡るものもある<ref>[http://www.bl.uk/whatson/permgall/treasures/writtenworld.html ''In Our Time: The Written World.'']</ref>。[[大英博物館図書館]]といくつかの他の国立図書館との合併により[[1973年]]に設立された大英図書館は、[[文化・メディア・スポーツ省]]に従属し、[[納本制度|法定納本制度]]の下で、イギリスおよび[[アイルランド]]で出版されたすべての図書を1部ずつ受け取り、イギリスの全国書誌を作成する。
 
== 歴史 ==
イギリスの法定納本図書館のひとつであり、[[納本制度]]に基づいてイギリス国内で流通する出版物は、出版の1ヶ月以内に出版者により1部が収められることが義務付けられている。
1972年大英図書館法 (British Library Act 1972) に基づき、1973年に大英博物館図書館を母体として、ロンドンの国立中央図書館、国立科学発明参考図書館、国立科学技術貸出図書館など、既存のいくつかのイギリスの国立図書館が組織的に統合され、大英図書館が設立された。大英図書館の発足当初は、イギリスの景気が長期にわたって停滞した時期にあたり、新しい図書館施設の建設は行われず、蔵書は大英図書館に統合された各図書館の書庫に分散して保存された。しかし、資料数の増大とともに書庫スペースの不足が問題となり、[[1982年]]よりロンドン郊外のセント・パンクラスに建設される新館への移行事業が開始された。[[1998年]]、新聞図書館など専門図書館的な機能をもつ一部の図書館を除いて、大英図書館に所属する各図書館の蔵書が新館(セント・パンクラス館)に集約され、大英図書館は完全統合した。
 
=== 大英図書館の前身 ===
== 沿革 ==
==== 大英博物館図書館 ====
[[1973年]]に[[大英博物館図書室|大英博物館図書館]]や、[[ロンドン]]の国立中央図書館を初めとするいくつかのイギリスの国営図書館が、大英図書館法(1972年)に基づいて組織的に統合され、成立した。大英博物館は[[18世紀]]の創立で[[オックスフォード大学]][[ボドレー図書館]]などに比べると組織の歴史も納本図書館としての歴史も浅いが、[[1842年]]以降にイギリス国内で出版された蔵書を保存しており、[[古書]]や外国文献の収集も盛んに行われている。
{{main|大英博物館図書室}}
大英図書館所蔵の図書の大部分は、[[ハンス・スローン]]の蔵書(後のスローン文庫)が遺贈されて1753年に創設されたロンドンの[[大英博物館]]に併設されていた、大英博物館図書館からのものである<ref name="his">{{Cite web |url=http://www.bl.uk/aboutus/quickinfo/facts/history/index.html |title=History of the British Library |publisher=British Library |accessdate=2016-12-25 }}</ref>。これに加えて、後に{{仮リンク|コットン文庫|en|Cotton library}}として知られるようになる{{仮リンク|ロバート・コットン (コニントンの初代準男爵)|en|Sir Robert Cotton, 1st Baronet, of Connington|label=ロバート・コットン}}の蔵書、および[[ロバート・ハーレー (初代オックスフォード=モーティマー伯)|ロバート・ハーリー]]と{{仮リンク|エドワード・ハーレー (第2代オックスフォード=モーティマー伯)|en|Edward Harley, 2nd Earl of Oxford and Earl Mortimer|label=エドワード・ハーリー}}による{{仮リンク|ハーリー文庫|en|Harleian Library}}も、共にそれぞれ図書館の基礎として利用された。その後、{{仮リンク|チャールズ・タウンリー|en|Charles Townley}}のコレクションと国王[[ジョージ2世 (イギリス王)|ジョージ2世]]の17,000冊の蔵書が、1757年に図書館に寄贈された。1823年、国王[[ジョージ3世 (イギリス王)|ジョージ3世]]の私設文庫であった{{仮リンク|キングズ・ライブラリー|en|King's Library}}(王室文庫)の65,000冊の書籍が図書館に統合された<ref>[http://www.bl.uk/reshelp/findhelprestype/prbooks/georgeiiicoll/george3kingslibrary.html ''George III Collection: the King’s Library''] from ''bl.uk''</ref>。1846年、{{仮リンク|トーマス・グレンヴィル|en|Thomas Grenville}}の蔵書の写真が加わった<ref name="Britannica" /><ref>Barry Taylor: ''Thomas Grenville (1755–1846) and his Books.'' In: Giles Mandelbrote (Hrsg.): ''Libraries within the library. The origins of the British Library’s printed collections.'' British Library, London 2009, ISBN 978-0-7123-5035-8, pp. 321–340.</ref>。新しく取得した図書のための書庫スペースが不足したため、大英博物館は、モンタギュー・ハウスから、1823年から1826年にモンタギュー・ハウスの庭に建てられた建物へと移転した。なお、この建物は、今もなお大英博物館の本館として使用されている。1857年に開館したドーム型の図書閲覧室は、世界で最も有名な図書館建築の一つであった。
 
初めて図書館の蔵書の目録を作成した[[アントニオ・パニッツィ]]が大英博物館の館長を務めた1856年から1866年の間に、大英博物館図書館の蔵書数は100万冊に達した。大英博物館図書館は、1950年から{{仮リンク|英国全国書誌|en|British National Bibliography}}の作成準備の責任を負った<ref>Andy Stephens: ''The history of the British national bibliography 1950–1973''. British Library, Boston Spa 1994, ISBN 0-7123-1069-X.</ref>。大英博物館図書館の利用者の中には、[[チャールズ・ディケンズ]]、[[ウラジーミル・レーニン]]、[[カール・マルクス]]、[[ジョージ・バーナード・ショー]]、[[ヴァージニア・ウルフ]]などの著名人もいた<ref>{{Wayback |url=http://infobritain.co.uk/British_Library.htm |title=The British Library, London |date=20110702125747 }}</ref>。例えば、カール・マルクスは毎日図書館に通い詰め、著書『[[資本論]]』の一部を大英博物館の資料を基に図書閲覧室で執筆した。ウラジーミル・レーニンは、Jacob Richterという偽名を使って、1902年から1911年の間に数回、大英博物館図書館を訪れた。レーニンは1907年に大英博物館図書館について次のように記している: 「一言言わせていただくと、大英博物館ほどの図書館は他にはありません。他のどの図書館よりも蔵書の差が少ないのです。」
当初は新しい図書館の建物の建設は行われず、蔵書は大英図書館に統合された各図書館の書庫において分散保存が行われた。しかし、資料の増大とともに書庫スペースの不足が問題となり、[[1982年]]よりロンドン郊外のセント・パンクラスに建造される新館への移行事業が開始された。[[1998年]]、新聞図書館など一部の専門図書館的な機能をもつ図書館を除いて大英図書館に所属する諸図書館の蔵書が新館に集約されて全面開館を果たし、大英図書館は完全統合した。
 
<gallery>
== 納本制度と蔵書構成 ==
Milkau British Museum - Gleitschrank 320-2.jpg|大英博物館のスライドする書架
[[ファイル:BritishLibraryInterior02.jpg|thumb|230px|図書館内部]]
2008 KingsLibrary London 2393709701.jpg|1823年から大英博物館図書館の蔵書となった、国王ジョージ3世の私設文庫
大英図書館はイギリスの国立中央図書館の機能をもち、出版後1ヶ月以内に納本された出版物を半永久的に保存するとともに、これを用いてイギリスの全国[[書誌]]を編纂する。
British Museum Reading Room Panorama Feb 2006.jpg|大英図書館に属する大英博物館図書館の図書閲覧室のパノラマ写真
</gallery>
 
==== その他の前身機関 ====
イギリスの納本図書館は大英図書館のほかに5館(ボドレー図書館、[[ケンブリッジ大学]]図書館、[[トリニティ・カレッジ (ダブリン大学)#図書館|トリニティ・カレッジ]]図書館、[[スコットランド国立図書館]]、[[ウェールズ国立図書館]])あるが、出版後すぐに納本することが義務付けられているのは全国書誌を作成する大英図書館だけで、他の5館は1年以内に納本を要求する権利を有するのみである。
大英図書館のもう一つの重要な構成要素は、1851年の特許法に遡る[[イギリス知的財産庁|英国特許局]]の図書館である、1855年に開館した特許局図書館 (Patent Office Library) であった<ref name="his"/>。特許文書の保管場所の不足に悩まされて早数年が過ぎた後、特許局図書館は大英博物館図書館と提携を結んだ<ref name="his"/>。1962年に特許局図書館は国立科学発明参考図書館 (National Reference Library of Science and Invention) と改称した。
 
1916年には、学生中央図書館 (Central Library for Students) が創設され、学生に教育の場を提供した。1927年に学生中央図書館は[[図書館間相互貸借]]のための中央情報センター(クリアリングハウス)として提案された。1931年に王室認可を受けて、学生中央図書館は国立中央図書館 (National Central Library) と改称された<ref name="his"/>。
大英図書館はその設立の経緯から、イギリスの旧王室図書館を経て大英博物館に集められた蔵書を数多く所有し、世界中の3000年分にわたる写本、稀覯本と言ったものが多数蔵書として管理されているのが特徴である。また、館内には人文、科学技術、貴重書、手稿本、東洋・インド文献などの複数の主題閲覧室が設置されており、いずれも世界有数の研究図書館である。
 
また、1916年に国立科学技術貸出図書館 (National Lending Library for Science and Technology) が創設された。国立科学技術貸出図書館は、1961年からボストン・スパに所在し、1973年に大英図書館の貸出部門と合併した<ref name="his"/>。1950年に設立された英国全国書誌 (British National Bibliography) の組織は、大英博物館図書館の支局として、イギリスで一週間のうちに出版された全ての図書の一覧表を作成する作業を担っていた。インドの独立後、インド省図書館 (India Office Library and Records) は[[外務・英連邦省|英国外務省]]から分離された。インド省図書館の所蔵資料には、[[イギリス東インド会社]]の文書が含まれていた<ref name="his"/>。
== トリビア ==
英国へ亡命中の[[カール・マルクス]]が30年間通い詰めた図書館として知られている。この間『[[資本論]]』をはじめ主要な著作が本館の資料を基に作成されている。
 
=== 有名な蔵大英図館への統合 ===
[[ファイル:British Library gate words.jpg|thumb|150px|大英図書館の入口]]
* [[オーレル・スタイン]]コレクション([[敦煌文献]])
上記の図書館の多くは、膨大な資料の書庫スペースの不足に苦労していた。1960年に大英博物館図書館は、資料の書庫スペースが不足していた特許局図書館と合併した。{{仮リンク|フレデリック・デイントン (デイントン男爵)|en|Frederick Dainton, Baron Dainton|label=フレデリック・シドニー・デイントン}}は、1969年に単一の国立図書館および国家遺産委員会 (National Heritage Committee) の創設を提案した。
* 『[[グーテンベルク聖書]]』(2冊)
 
* [[マグナ・カルタ]]手稿本
1972年に[[イギリスの議会|英国議会]]が大英図書館法を可決したことにより、大英博物館図書館は、国立科学発明参考図書館、国立中央図書館、国立科学技術貸出図書館のような、国家として重要ないくつかの図書館と合併した。大英図書館の設立をもって、大英図書館は、納本を受け取る権利および全国書誌の作成業務を引き継いだ。正式には1973年7月1日に設立された。大英図書館の監督責任は大英図書館理事会 (British Library Board) が負うことになった。1974年には英国全国書誌 (British National Bibliography) と科学技術情報局 (Office for Scientific and Technical Information) が大英図書館に加わった。1982年にインド局図書館 (India Office Library and Records) が、1983年には大英録音音響研究所 (British Institute of Recorded Sound) が、それぞれ大英図書館に統合された<ref name="his"/>。大英図書館の本館は、1998年にロンドン市[[カムデン区]]のセント・パンクラスに建てられた新館に移転した。2003年には、270曲の楽譜を含む、[[ロイヤル・フィルハーモニック協会]]の資料が大英図書館に100万ポンドで売却された。
* [[ベオウルフ|ベオウルフ叙事詩]]古写本
 
* [[リンディスファーンの福音書]]
== 法定納本図書館として ==
[[ファイル:BritishLibraryInterior02.jpg|thumb|230px|大英図書館の内部]]
イングランドにおける納本制度の歴史は、1610年に{{仮リンク|トーマス・ボドリー|en|Thomas Bodley}}が[[書籍出版業組合]]と協定を結んで、同組合が登録した全ての書籍を1部ずつボドリー図書館に納めさせたところまで遡ることができる<ref>Robert C. Barrington Partridge "The history of the legal deposit of books throughout the British Empire", London: Library Association, 1938</ref><ref>平野 2005, p.95</ref>。1662年出版許可法 (Press Licensing Act of 1662) により王室図書館 (Royal Library) に対する最初の法定納本制度が敷かれた後、幾度かの制度の改定を経て<ref>平野 2005, pp.95-97</ref>、{{仮リンク|1911年著作権法|en|Copyright Act 1911}}の成立により、大英図書館およびイギリスとアイルランドにある他の5館の納本図書館が、イギリスで出版または頒布された全ての出版物を1部ずつ受け取る資格があることを保証する、現行の[[納本制度|法定納本制度]]の基礎が確立された。大英図書館以外の5館の納本図書館とは、[[オックスフォード]]の[[ボドリアン図書館|ボドリー図書館]]、[[ケンブリッジ]]の{{仮リンク|ケンブリッジ大学図書館|en|Cambridge University Library|label=大学図書館}}、[[ダブリン]]の{{仮リンク|トリニティ・カレッジ図書館|en|Trinity College Library}}、{{仮リンク|スコットランド国立図書館|en|National Library of Scotland}}、{{仮リンク|ウェールズ国立図書館|en|National Library of Wales}}である<ref>平野 2005, p.97</ref>。これらの図書館の中で、上記の5館については、納本を受ける資格は与えられているが、実際に納本を受けることができるのは、出版日から12ヶ月以内に納本エージェンシー (Agency for the Legal Deposit Libraries) を介して出版者に納本の請求をした場合に限られるのに対して、大英図書館は、イギリスで出版される全ての出版物を出版日から起算して1ヶ月以内に自動的に1部ずつ受け取ることになっていて、出版者に納本を義務付ける唯一の法定納本図書館である<ref>{{Cite web |url=http://www.bl.uk/aboutus/legaldeposit/printedpubs/depositprintedpubs/deposit.html |title=How to deposit printed publications |publisher=The British Library |accessdate=2016-12-28 }}</ref><ref>平野 2005, p.96</ref>。また、1869年以降、大英図書館はイギリスで印刷された全ての新聞も1部ずつ受け取っている。
 
さらに、{{仮リンク|アイルランドの著作権法|en|Copyright law of Ireland}}(直近では2000年著作権及び関連の諸権利に関する法律)の条項の下、{{仮リンク|アイルランド国立図書館|en|National Library of Ireland}}、ダブリンのトリニティ・カレッジ図書館、[[リムリック大学]]の図書館、[[ダブリンシティ大学]]の図書館、[[アイルランド国立大学]]を構成する4大学の図書館と並んで、大英図書館は、アイルランドで出版された全ての図書を1部ずつ自動的に受け取る資格を有する。ボドリー図書館、ケンブリッジ大学図書館、スコットランド国立図書館、ウェールズ国立図書館も、アイルランドで出版された資料の納本を受け取る権利があるが、イギリスでの法定納本の権利と同様に、出版者に正式に請求した場合に限られる。
 
2002年12月にイギリスの{{仮リンク|クリス・モール|en|Chris Mole}}下院議員が議員立法法案を提出し、後に{{仮リンク|2003年法定納本図書館法|en|Legal Deposit Libraries Act 2003}}となった。この法律は、それまでのイギリスの著作権法による法定納本制度の対象に含まれていなかった、マイクロ形態資料や[[CD-ROM]]、電子ジャーナル、精選された[[ウェブサイト]]をはじめとする電子出版物などの非印刷出版物にまで納入対象を拡大するものであり<ref>{{cite web|url=http://www.opsi.gov.uk/acts/acts2003/ukpga_20030028_en_1 |title=Legal Deposit Libraries Act 2003 |publisher=Office of Public Sector Information |accessdate=7 February 2010 |archivedate=7 February 2010 |archiveurl=http://www.webcitation.org/5nNN5GQdv?url=http%3A%2F%2Fwww.opsi.gov.uk%2Facts%2Facts2003%2Fukpga_20030028_en_1 |deadurl=yes |df=dmy }}</ref>、イギリスの新しい法定納入制度として、2004年2月1日に施行された<ref>平野 2005, p.101</ref>。
 
== 所蔵資料 ==
大英図書館はその設立の経緯から、イギリスの旧王室図書館を経て大英博物館に集められた蔵書を数多く所有し、世界中の3000年分にわたる写本、稀覯本と言ったものが多数蔵書として管理されているのが特徴である。[[古書]]や外国文献の収集も盛んに行われている。また、セント・パンクラス館内には、人文、科学技術、貴重書、手稿、東洋・インド文献などの複数のテーマ別閲覧室が設置されている<ref>{{Cite web |url= http://www.bl.uk/reshelp/inrrooms/stp/rrbysubj/rrcollfocus.html |title=St Pancras Reading Rooms - Reading Rooms subject focus |publisher=The British Library |accessdate=2016-12-28 }}</ref>。
 
大英図書館の蔵書は、毎年およそ300万冊のペースで増加しており、一日あたりに換算すると、毎日8,000冊ほどの新刊が納められていることになる。図書館の書架の長さの総延長は625kmで、一年に12km延びている計算になる。所蔵する最古の資料は中国の[[甲骨]]で、紀元前1600年にまで遡る。蔵書(所蔵品)の構成は、2500万冊以上の書籍、5800万件の特許、92万部の新聞・雑誌、160万曲の音楽、800のデータベース、40万リールの[[マイクロフィルム]]、800万点の切手・証紙、430万点の地図制作用品である。
 
=== 図書コレクション ===
大英図書館の蔵書の中で最も重要なものは、[[マグナ・カルタ]]の手稿(2部)<ref>{{Cite web |url=http://www.bl.uk/treasures/magnacarta/index.html |title=''Treasures in full: Magna Carta'' |publisher=The British Library |accessdate=2016-12-27 }}</ref>、[[ベオウルフ|ベオウルフ叙事詩]]の唯一保存された古写本、[[グーテンベルク聖書]](2冊)<ref>{{Cite web |url=http://www.bl.uk/treasures/gutenberg/prtgutreferences.html |title=''Treasures in full: Gutenberg-Bible'' |publisher=The British Library |accessdate=2016-12-27 }}</ref>、シェイクスピアの[[ファースト・フォリオ]](5冊)<ref>{{Cite web |url=http://www.bl.uk/onlinegallery/onlineex/landprint/shakespeare/index.html |title=''Shakespeare’s First Folio'' |publisher=The British Library |accessdate=2016-12-27 }}</ref>、[[シナイ写本]]<ref>Bruce Metzger: ''The Text of the New Testament: Its Transmission, Corruption and Restoration.'' Oxford University Press, Oxford 1992, p.46</ref>である。大英図書館によると、同館の2500万冊以上の蔵書は、これまでにイギリスで印刷されたほぼ全ての図書を網羅しているという。さらに、図書の購入については、大英図書館にとって必要なものだけに留まらない。例えば、2012年に大英図書館はヨーロッパで最も古い有名な書物である{{仮リンク|聖カスバートの福音書|en|St Cuthbert Gospel}}の写本を購入した。この写本は、聖カスバートの死後、698年頃に棺とともに埋められたもので、大英図書館はこれを900万ポンドで購入した。印刷されたものとして世に知られた世界最古の書物は、グーテンベルク聖書よりも600年近く前に出された、中国の[[金剛般若経]]の868年5月11日の版で、大英図書館に所蔵されている。このほか、サントメール、ボーフォート、パリ、スフォルツァ家、テイマウス城、エティエンヌ・シュヴァリエの各[[時祷書]]を所蔵する。また、世界最大の聖書コレクションも大英図書館に所蔵されており、前述したグーテンベルク聖書とシナイ写本の他に、グランヴァルの聖書、フランケンタールの聖書、[[リンディスファーンの福音書]]などがある。
 
=== 貴重な所蔵品 ===
大英図書館が選ぶ貴重な所蔵品には以下のような品がある:<ref>{{cite web|url=http://www.bl.uk/onlinegallery/hightours/index.html |title=Highlights tour |publisher=British Library |date=30 November 2003 |accessdate=2011-02-06}}</ref>
* [[金剛般若経]](出版年が確認できる世界最古の印刷書で<ref>{{cite web|url=http://www.bl.uk/aboutus/quickinfo/facts/index.html |title=BL, Facts & figures|work=British Library|accessdate=12 April 2010}}</ref>、[[唐|唐代]]の868年に印刷された)
* [[シナイ写本]]の大部分(4世紀ごろに[[コイネー|コイネー・ギリシャ語]]で書かれた、世界で2番目に古い聖書の写本<ref>''Sinai: The Site & the History'' by Mursi Saad El Din, Ayman Taher, Luciano Romano 1998 ISBN 0-8147-2203-2 page 101</ref>)
* [[アレクサンドリア写本]](コイネー・ギリシャ語で書かれた初期の聖書の写本)
* [[リンディスファーンの福音書]](ノーサンブリアで製作された福音書のラテン語装飾写本)
* {{仮リンク|聖カスバートの福音書|en|St Cuthbert Gospel}}(西洋風の装丁がなされた最古のノーサンブリアの福音書)
* 2冊の[[グーテンベルク聖書]](1450年代にドイツのマインツで印刷されたラテン語聖書)<!-- 以下は、日本語の情報が得られなかったため、記事への掲載を一時見送ります。
* Giant medieval bibles such as the [[:de:Frankenthaler Bibel|Worms Bible]], [[Stavelot Bible]], [[Parc Abbey Bible]] and [[:fr:Bible de Floreffe|Floreffe Bible]]
* [[Schuttern Gospels]], an early illuminated gospel book produced in [[Baden]], Germany
* Bible from [[Moutier-Grandval Abbey]], one of three illustrated bibles made in Tours in the 9th century -->
* 1215年の[[マグナ・カルタ]]の手稿(2部)
* 唯一保存された叙事詩『[[ベオウルフ]]』の{{仮リンク|ノーウェル写本|en|Nowell Codex|label=古写本}}<ref>{{cite web |url=http://www.bl.uk/onlinegallery/onlineex/englit/beowulf/ |title=Beowulf: sole surviving manuscript |accessdate=2008-10-22 |publisher=The British Library |work= }}</ref>
* {{仮リンク|ベッドフォードの時祷書|en|Bedford Hours}}(かつて[[ジョン・オブ・ランカスター|ベッドフォード公]]が所有していた、豊かに彩られた中世後期の時祷書)
* {{仮リンク|皇帝イヴァン・アレクサンダルの諸福音書|en|Gospels of Tsar Ivan Alexander}}(1355年から1356年にかけて製作された、最も重要な中世ブルガリアの装飾写本)
* {{仮リンク|アランデル手稿|en|Codex Arundel}}([[レオナルド・ダ・ヴィンチ手稿]]の一つ)
* 1534年の[[ウィリアム・ティンダル]]訳『新約聖書』英語版([[アン・ブーリン]]の蔵書より<ref>{{cite web|url=http://www.loc.gov/loc/lcib/9707/tyndale.html|title=Let There Be Light|date=July 1997|work= Library of Congress Information Bulletin|publisher=Library of Congress|accessdate=12 April 2010}}</ref>)
* ヘンデル作曲の『[[メサイア (ヘンデル)|メサイア]]』の自筆譜
* [[ルイス・キャロル]]の『[[不思議の国のアリス]]』の手稿
 
== 歴代館長 ==
* 初代:ハリー・フックウェイ(1973年 - 1984年)
* 第2代:ケネス・クーパー(1984年 - 1991年)
* 第3代:ブライアン・ラン(1991年 - 2000年)
* 第4代:リン・ブリンドリー(2000年 - 2012年)
* 第5代:ロリー・キーティング(2012年 - )
 
== 脚注・出典 ==
{{脚注ヘルプ}}
;脚注
{{reflist|group=注}}
;出典
{{reflist}}
 
== 参考文献 ==
* {{Cite journal |url= http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/legis/223/022305.pdf |title=イギリスにおける2003年法定納本図書館法の制定─デジタル時代への対応─ |author=平野美惠子 |publisher=国立国会図書館 |year=2005 |format=PDF }}
* {{Cite journal |url= http://aska-r.aasa.ac.jp/dspace/bitstream/10638/700/3/0008-020-200703-029-049.pdf |title=国立科学技術貸出図書館 (NLLST) の設立と1960-70年代イギリス図書館政策にたいする影響 |author=藤野寛之 |publisher=愛知淑徳大学図書館情報学会 |year=2007 |format=PDF }}
* {{Cite journal |url=http://www.ronsyu.hannan-u.ac.jp/open/n002147.pdf |title=ブリティッシュ・ライブラリー創設の背景─20世紀におけるイギリス国立図書館の変遷と機能の再検討─ |author=藤野寛之 |publisher=阪南大学 |year=2012 |format=PDF }}
 
== 関連項目 ==
* [[イギリス国立公文書館]]
 
== 外部リンク ==
{{Commonscat|British Library}}
* [http://www.bl.uk/ The British Library](公式サイト)
 
* [http://www.bl.uk/collections/orientalandindian.html Oriental and India Office Collections]
{{UK-stub}}
{{Normdaten}}
{{DEFAULTSORT:たいえいとしかん}}
[[Category:大英博物館]]
[[Category:国立図書館]]
[[Category:イギリスの図書館]]
[[Category:国立図書館]]
[[Category:納本図書館]]
[[Category:アジア研究]]
[[Category:東洋学]]
[[Category:納本図書館]]