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[[Image:Staphylococcus aureus (AB Test).jpg|200px|right|thumb|[[培地]]上での実験。抗生物質を含むディスクの周囲では、[[黄色ブドウ球菌]]の繁殖が抑制される。菌が繁殖していない円形の部分を'''阻止円'''と呼ぶ。]]
'''抗生物質'''(こうせいぶっしつ、{{lang-en|''Antibiotics''antibiotics}})とは、[[微生物]]が産生し、ほかの微生物など[[生体]][[細胞]]の[[増殖]]や[[機能]]を阻害する[[物質]]の総称<ref name="SeikagakuDic471-3">[[#生化学辞典(2版)|生化学辞典第2版]]、p.471【抗生物質】</ref>。一般に「[[抗菌薬]]({{lang-en|''Antibacterialantibacterial drugs''}})」と同義であるが、広義には[[抗ウイルス剤]][[抗真菌剤]][[抗がん剤]]も含む。
 
[[アレクサンダー・フレミング]]が[[1928年]]に[[アオカビ]]から見付けた[[ペニシリン]]が世界初の抗生物質である。ペニシリンの発見から実用化までの間には10年もの歳月を要したものの、いったん実用化されたのちは[[ストレプトマイシン]]などの抗生物質を用いた抗菌薬が次々と開発され、人類の医療に革命をもたらした。ペニシリンの開発は20世紀でもっとも偉大な発見のひとつと呼ばれることがあるのも、このことによる<ref>http://archive.fo/xnQ5N  「20世紀の代表的なくすりとは?」- 日本製薬工業協会  2016年9月14日閲覧</ref>。
 
1990年頃には、天然由来の抗生物質は5,000~6000〜6,000種類があると言われ、約70種類(微量成分を含めると約100種類)が実用に使われている。この他にも半合成抗生物質も80種が利用されている<ref name="SeikagakuDic471-3" />。
 
== 名称と定義 ==
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言い換えると、抗生物質とは「微生物の産生物に由来する抗菌薬、抗真菌薬、抗ウイルス薬、そして抗がん剤であり、その大半が抗菌薬」である。現在、感染症を専門とする研究機関・医療機関では「抗生物質」という名称はあまり用いられず、それぞれ「[[抗菌薬]]」・「[[抗ウイルス薬]]」・「[[抗真菌薬]]」・「[[抗寄生虫薬]]」と言う名称を用いる。
 
近年では[[化学合成]]で生産されるものや、天然の[[誘導体]]から[[半合成]]されるものもある<ref name="SeikagakuDic471-3" />。ピリドンカルボン酸系([[テトラサイクリキノロン系]][[ニューシサイクリノロ]]や[[ミノイクリンルファ剤]]は天然には存在せずなど完全に人工的に合成された抗菌性物質、一般的に「抗生物質」と呼ばれることが多いが、厳密には「合成抗菌薬」と呼ぶが正しいドキシサイクリンは癌作用も示された菌性の抗生物質、合成抗菌薬をあわせて、広義の[[抗菌薬]]と呼ぶ
 
ピリドンカルボン酸系([[キノロン系]]、[[ニューキノロン系]])や[[サルファ剤]]など、完全に人工的に合成された抗菌性物質も、一般的に「抗生物質」と呼ばれることが多いが、厳密には「合成抗菌薬」と呼ぶのが正しい。抗菌性の抗生物質、合成抗菌薬をあわせて、広義の[[抗菌薬]]と呼ぶ。
 
さらに、[[生命活動]]に深く関与する[[酵素]]の活動を選択的に阻む物質、[[高等動物]]の[[免疫系]]で活躍する物質なども含めた再定義が求められている<ref name="SeikagakuDic471-3" />。
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: βラクタム系、[[ホスホマイシン]]、[[バンコマイシン]]
; 蛋白合成阻害薬
: テトラサイクリン系、マクロライド系、アミノグリコシド系、[[クロラムフェニコール]]、[[リンコマイシン]]系([[クリンダマイシン]])
* キノロン系[[ナジフロキサシン]]など)やサルファ剤]][[核酸]]合成阻害を機序とした'''合成抗菌薬'''であり、抗生物質ではない。
 
* キノロン系([[ナジフロキサシン]]など)やサルファ剤は[[核酸]]合成阻害を機序とした'''合成抗菌薬'''であり、抗生物質ではない。
 
== 薬理 ==
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また、抗生物質は病原性を示していない細菌にも作用するため、多量に使用すると体内の[[常在菌]]のバランスを崩してしまう場合がある。それにより常在菌が極端に減少すると、他の細菌や真菌(カビ)などが爆発的に繁殖し、病原性を示す場合もある。さらに、生き残った菌が耐性化する[[耐性菌]]の出現も問題となっている。
 
[[石鹸|抗菌石鹸]]などに含有している合成抗菌剤の[[トリクロサン]]は、高濃度では複数の[[細胞質]]と[[細胞膜]]を標的に[[殺生物剤]]{{enlink|Biocide}}として作用する。低濃度では[[エノイル]]{{enlink|Enoyl-acyl carrier protein reductase|ENR}}酵素に結合し、[[脂肪酸合成]]{{enlink|Fatty acid synthesis|FAS}}を阻害することにより、[[静菌]]的に作用する。ヒトはENR酵素を持っていないため影響を受けないとされるが、免疫系への有害性が懸念されている。
 
テトラサイクリン系(特にミノサイクリン)なども[[自己免疫疾患]]を誘発することで知られている。
 
米国で流通しているトリクロサン含有の抗菌石鹸の多くは濃度が1%であり、日本で[[処方箋医薬品]]として承認されている、ナジフロキサシンやクリンダマイシン含有の外用剤も濃度が1%である。抗菌石鹸に含有してる合成抗菌剤によって、一般的な抗生物質への[[薬剤耐性]]を強化してしまう懸念がある。
 
== 臨床応用 ==
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[[米国家庭医学会]](AAFP)ガイドラインでは、「児童・[[成人]]の風邪に対して抗生物質を処方してはならない(should not be used, エビデンスレベルA)と勧告している<ref name="AAFP">{{cite journal |author=Fashner J, Ericson K, Werner S |title=Treatment of the common cold in children and adults |journal=Am Fam Physician |volume=86 |issue=2 |pages=153–9 |year=2012 |pmid=22962927 |doi= |url=http://www.aafp.org/afp/2012/0715/p153.html }}</ref>。
 
抗菌石鹸に含有してる合成抗菌剤によって、一般的な抗生物質への薬剤耐性を強化してしまう懸念がある。
 
== 脚注 ==
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== 参考文献 ==
* 抗菌薬の考え方、使い方  中外医学社  ISBN 4498017587
* {{Cite book|和書|author = |title = 生化学辞典第2版|edition = 第2版第6刷|year = 1995|publisher = [[東京化学同人]]|isbn = 4-8079-0340-3|page = |ref = 生化学辞典(2版)}}
 
== 関連項目 ==
*[[抗菌薬]]
*[[抗ウイルス薬]]
*[[抗真菌薬]]
*[[抗寄生虫薬]]
*[[感染症]]
*[[プロバイオティクス]]
*[[殺菌]] - [[殺菌剤]]
*[[消毒]] - [[消毒薬]]
*[[バクテリオシン]]
 
== 外部リンク ==
{{commonscat|Antibiotics}}
* [[抗菌薬]]
* [[抗ウイルス薬]]
* [[抗真菌薬]]
* [[抗寄生虫薬]]
* [[感染症]]
* [[プロバイオティクス]]
* [[殺菌]] - [[殺菌剤]]
* [[消毒]] - [[消毒薬]]
* [[バクテリオシン]]
 
 
 
{{Major drug groups}}
{{抗菌薬}}
{{DEFAULTSORT:こうせいふつしつ}}
[[Category:薬理学]]