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一部記号を差し替え。→‎歴史: 「研究史」の節名を付与。言語教育について重点的に加筆。どちらにも属さない要素は導入部へと移動。→‎母音: darkened vowel について追加。
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}}
 
'''シュスワプ語'''(シュスワプご)または'''シュスワップ語'''(シュスワップご、{{Lang-en-short|Shuswap}}; 原語名: Secwepemctsín<ref name="mplf">Lewis ''et al.'' (2015f).</ref> {{Ipa|sxʷəpmxˈt͡sin}}<ref name="mo1989a">大島(1989a)。 (1989a).</ref>)とは、カナダ西部の[[ブリティッシュコロンビア州]]で話されている[[ファースト・ネーション]]の[[言語]]の一つである。原語名の ''Secwepemctsín'' は民族名 ''Secwepemc'' 〈[[シュスワップ族]]〉と ''-tsín'' 〈口〉の合成語である<ref name="mo1989a" />。[[セイリッシュ語族]]内陸語派に属する。
 
近年は話者の高齢化が進む一方で若い世代の[[第一言語]]が[[英語]]に[[言語交替|切り替わる]]傾向にあり、教育によるシュスワプ語再興への取り組みが行われている(参照: [[#言語教育]])。
 
言語自体の特徴としては、[[音韻論|音韻]]的には子音の数が多く(参照: [[#子音]])、[[形態論|形態]]的には[[重複]]({{Lang-en-short|reduplication}})と[[接辞]]による語の変化が見られ(参照: [[#形態論]])、[[統語論|統語]]的には動詞が他の要素より先頭に来る語順の傾向(参照: [[#語順]])や2種類の格(参照: [[#格]])が見られ、また形態統語的には[[主要部#主要部標示と従属部標示|主要部標示]]({{Lang-en-short|head marking}})型言語である(参照: [[#統語論における代名詞]])といった点が挙げられる。
 
2000年から公開されているウェブサイト {{仮リンク|FirstVoices|en|FirstVoices}}では他の様々なファースト・ネーションの言語と共にシュスワプ語の語彙や成句が音声つきで紹介されている。
 
== 分布 ==
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== 歴史 ==
シュスワップ族への[[民族学]]的調査は20世紀初頭に{{仮リンク|ジェサップ探検隊|en|Jesup North Pacific Expedition}}({{Lang-en-short|Jesup North Pacific Expedition}})の{{仮リンク|ジェームズ・テイト|label=ジェームズ・アレクサンダー・テイト|en|James Teit}}(James Alexander Teit)によって行われたものの、その言語についての研究の発展は[[ライデン大学]]のクイパーズ(Aert Hendrik Kuipers{{enlink|Aert H. Kuipers|a=on}}){{Refnest|group="注"|なお、クイパーズはシュスワプ語の本調査(1968年&ndash;70年)に取りかかる以前の段階で、同じセイリッシュ語族の{{仮リンク|スクォミッシ語|en|Squamish language}}(Squamish)についての記述も行い<ref name="mo1989a" />、1967年に刊行させている。}}による1953年以降の3度にわたる調査を待たねばならなかった。クイパーズによる1974年の[[モノグラフ]]は個別言語全体の記述が不足していたセイリッシュ語族に関して貴重な文献であった<ref name="mo1989a" /><ref group="注">なお他のセイリッシュ諸語に関しては、内陸語派ではトンプソン語についてローレンス・C・トンプソン(Laurence C. Thompson)とM・テリー・トンプソン(M. Terry Thompson)が1992年に ''The Thompson Language''、リルエット語についてヤン・ファン・アイク(Jan van Eijk)が1997年に ''The Lillooet Language: Phonology, Morphology, Syntax'' を、海岸語派({{Lang-en-short|Coast}})では、{{仮リンク|カリスペル語|en|Salish-Spokane-Kalispel language}}(Kalispel)について Hans Vogt が1940年に ''The Kalispel Language''、ブレンダ・J・スペック(Brenda J. Speck)が1980年に ''An editon of Father Post's Kalispel grammar'' を、{{仮リンク|コモックス語|label=コモックス語(Comox)またはコモックス・スライアモン語(Comox-Sliammon)|en|Comox language}}についてクロード・アジェージュ(Claude Hagège)が1981年に {{Lang|fr|''Le Comox Lhaamen de Colombie Britannique: présentation d’une langue amerindienne''}}、H・ハリス(H. Harris)が同年に ''A grammar of Comox''、[[渡邊己|渡辺己]]が2003年に ''A Morphological Description of Sliammon, Mainland Comox Salish with a Sketch of Syntax'' を、[[ハルコメレム語]](Halkomelem{{enlink|Halkomelem|a=on}})については {{Harvcoltxt|Galloway|1993}}、孤立したセイリッシュ語では{{仮リンク|ベラクーラ語|en|Nuxalk language}}(Bella Coola)についてフィリップ・W・デイヴィス(Philip W. Davis)と Ross Saunders が 1978年に "Bella Coola Syntax"(E. Cook and J. Kaye (eds.), ''Linguistic Studies of Native Canada'' 所収)、1997年に ''A Grammar of Bella Coola''、また H. F. Nater が1984年に ''The Bella Coola Language'' と、それぞれ個別言語の文法に関する著作を発表している。</ref>。その後学界においては、Gardiner (1998) がシュスワプ語の[[話題]]({{Lang-en-short|topic}})や[[焦点 (言語学)|焦点]]({{Lang-en-short|focus}})について研究し、また Lai (1998a, b) や Déchaine & Wiltschko (2003) がシュスワプ語の独立代名詞をDP仮説などを通して分析しているが、後者は他の複数の言語も跨いだものとなっている(参照: [[#統語論]])。
 
2000年から公開されているウェブサイト {{仮リンク|FirstVoices|en|FirstVoices}}では他の様々なファースト・ネーションの言語と共にシュスワプ語の語彙や成句が音声つきで紹介されている。
 
=== 言語教育 ===
19世紀中頃から後期にかけて流行した[[天然痘]]によりシュスワップ族の文化は弱体化したが、その時期にはカナダ政府による先住民「文明化」の目論見が進められていた<ref>{{Harvcoltxt|Michel|2005|p=1&ndash;2}}.</ref>。1876年の[[インディアン法 (カナダ)|インディアン法]]({{Lang-en-short|Indian Act}})により先住民問題は法制化され、先住民人口をイギリス系カナダ人社会へ同化させる植民地的な動機から、イギリス系カナダ人の行政官らはそれまで地方にあった産業学校{{Refnest|group="注"|{{Lang-en-short|industrial school(s)}}。主に農業技術の向上が重視され、生徒たちは1学年のほぼ大半の時間を学校で過ごすこととなっていた<ref name="km2005_6">{{Harvcoltxt|Michel|2005|p=6}}.</ref>。}}を[[インディアン寄宿学校|アメリカ式の寄宿学校]]{{Refnest|group="注"|{{Lang-en-short|residential school(s)}}。教育と宗教が重視され、生徒たちは1学年につき10ヶ月を学校で過ごすこととなっていた<ref name="km2005_6" />。宗教に関しては、寄宿学校制の施行を促した1879年のデイヴィン・リポート({{Lang-en-short|Davin Report}})において、先住民集団との深いつながりを持つ[[キリスト教]]の宗派による学校運営はどうか、との提案が見える<ref name="km2005_3">{{Harvcoltxt|Michel|2005|p=3}}.</ref>。}}に置き換えることを考えた<ref>{{Harvcoltxt|Michel|2005|p=2&ndash;3}}.</ref>。寄宿学校を始め、産業学校、昼間学校{{Refnest|group="注"|{{Lang-en-short|day school(s)}}。ファースト・ネーションの子どもたちが最初に入る学校で、日中に出席するだけでよいこととなっていた<ref name="km2005_6" />。}}など様々な形態の学校の取り組みが行われたものの、学校を卒業した先住民たちはイギリス系カナダ人の社会に適応できておらず、政府から見ても成果が思わしくないことは明らかであった (Titley 1986: 81)<ref name="km2005_3" />。1920年になるとインディアン法に7歳から15歳の先住民にルーツを持つ子どもたちを学校に通わせることを義務とする規定が、また1930年には同法に従わなかった親に罰金刑や懲役刑を課す節が新たに設けられるなど、むしろ学校の先住民共同体への接近が悪影響をもたらしたと考えられる側面も存在する<ref name="km2005_3" />。こうした過程によりシュスワップ族の言語も文化も共に衰退の一途を辿ることとなる。学校でシュスワプ語を話そうとすると罰せられるため、親たちは子どもを守るためにシュスワプ語は教えず、英語だけで育てるようになった (Haig-Brown 1989: 109&ndash;110)<ref>{{Harvcoltxt|Michel|2005|p=3&ndash;4}}.</ref>。こうして寄宿学校生活を耐え抜いた者たちの孫世代にとって、シュスワプ語とは消滅の瀬戸際にある言語であった<ref name="km2005_3" />。
Marianne Boelscher Ignace によると、2007年以前の段階で話者の大半は50歳以上であり、1983年に設立されたSecwepemc文化教育協会(Secwepemc Cultural Education Society{{enlink|Secwepemc Cultural Education Society|a=on}})は[[イマージョン・プログラム]]の実施を含め、シュスワプ語再興のための努力を払ってきている<ref name="vg2007" />。しかし、民族の[[第一言語]]は[[英語]]に取って代わられつつある<ref name="mplf" />。
 
このような状況の中、1987年になるとシュスワプ語を消滅の危機から救う取り組みが始められるが、それは[[ニュージーランド]]の[[マオリ族]]による{{仮リンク|言語の巣|en|Language nest}}([[マオリ語]]: {{仮リンク|テ・コーハンガ・レオ|label=Te Kōhanga Reo|en|Māori language revival}}; 英語: language nest)を模範とする、生後まもなくから5歳にかけての子どもを対象とした取り組みであった<ref name="km2005_4">{{Harvcoltxt|Michel|2005|p=4}}.</ref>。後には初等教育を[[イマージョン・プログラム|イマージョン]]方式で行ったり<ref group="注">先住民向けのイマージョン・スクールとしては{{仮リンク|チェイス (ブリティッシュコロンビア州)|label=チェイス|en|Chase, British Columbia}}の Chief Atahm School{{enlink|Chief Atahm School|a=on}}(1991/92年設立)が存在する。[[#外部リンク]]も参照。</ref>、4年生から7年生を対象としたバイリンガル教育、成人を対象とした授業、ファースト・ネーション共同体のための教員養成課程も州内外で行われたりするようになった<ref name="km2005_4" />。
 
Marianne Boelscher Ignace によると、2007年以前の段階で話者の大半は50歳以上であり、1983年に設立されたSecwepemc文化教育協会(Secwepemc Cultural Education Society{{enlink|Secwepemc Cultural Education Society|a=on}})は[[イマージョン・プログラム]]の実施を含め、シュスワプ語再興のための努力を払ってきている<ref name="vg2007" />。しかし、民族の[[第一言語]]は[[英語]]に取って代わられつつある<ref name="mplf" />。
 
=== 研究史 ===
シュスワップ族への[[民族学]]的調査は20世紀初頭に{{仮リンク|ジェサップ探検隊|en|Jesup North Pacific Expedition}}({{Lang-en-short|Jesup North Pacific Expedition}})の{{仮リンク|ジェームズ・テイト|label=ジェームズ・アレクサンダー・テイト|en|James Teit}}(James Alexander Teit)によって行われたものの、その言語についての研究の発展は[[ライデン大学]]のクイパーズ(Aert Hendrik Kuipers{{enlink|Aert H. Kuipers|a=on}}){{Refnest|group="注"|なお、クイパーズはシュスワプ語の本調査(1968年&ndash;70年)に取りかかる以前の段階で、同じセイリッシュ語族の{{仮リンク|スクォミッシ語|en|Squamish language}}(Squamish)についての記述も行い<ref name="mo1989a" />、1967年に刊行させている。}}による1953年以降の3度にわたる調査を待たねばならなかった。クイパーズによる1974年の[[モノグラフ]]は個別言語全体の記述が不足していたセイリッシュ語族に関して貴重な文献であった<ref name="mo1989a" /><ref group="注">なお他のセイリッシュ諸語に関しては、内陸語派ではトンプソン語についてローレンス・C・トンプソン(Laurence C. Thompson)とM・テリー・トンプソン(M. Terry Thompson)が1992年に ''The Thompson Language''、リルエット語についてヤン・ファン・アイク(Jan van Eijk)が1997年に ''The Lillooet Language: Phonology, Morphology, Syntax'' を、海岸語派({{Lang-en-short|Coast}})では、{{仮リンク|カリスペル語|en|Salish-Spokane-Kalispel language}}(Kalispel)について Hans Vogt が1940年に ''The Kalispel Language''、ブレンダ・J・スペック(Brenda J. Speck)が1980年に ''An editon of Father Post's Kalispel grammar'' を、{{仮リンク|コモックス語|label=コモックス語(Comox)またはコモックス・スライアモン語(Comox-Sliammon)|en|Comox language}}についてクロード・アジェージュ(Claude Hagège)が1981年に {{Lang|fr|''Le Comox Lhaamen de Colombie Britannique: présentation d’une langue amerindienne''}}、H・ハリス(H. Harris)が同年に ''A grammar of Comox''、[[渡邊己|渡辺己]]が2003年に ''A Morphological Description of Sliammon, Mainland Comox Salish with a Sketch of Syntax'' を、[[ハルコメレム語]](Halkomelem{{enlink|Halkomelem|a=on}})については {{Harvcoltxt|Galloway|1993}}、孤立したセイリッシュ語では{{仮リンク|ベラクーラ語|en|Nuxalk language}}(Bella Coola)についてフィリップ・W・デイヴィス(Philip W. Davis)と Ross Saunders が 1978年に "Bella Coola Syntax"(E. Cook and J. Kaye (eds.), ''Linguistic Studies of Native Canada'' 所収)、1997年に ''A Grammar of Bella Coola''、また H. F. Nater が1984年に ''The Bella Coola Language'' と、それぞれ個別言語の文法に関する著作を発表している。</ref>。その後学界においては、Gardiner (1998) がシュスワプ語の[[話題]]({{Lang-en-short|topic}})や[[焦点 (言語学)|焦点]]({{Lang-en-short|focus}})について研究し、また Lai (1998a, b) や Déchaine & Wiltschko (2003) がシュスワプ語の独立代名詞をDP仮説などを通して分析しているが、後者は他の複数の言語も跨いだものとなっている(参照: [[#統語論]])。
 
== 正書法について ==
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=== 子音 ===
大島(1989a) (1989a)や Maddieson (2013)<ref group="注">このうち Maddieson (2013) はシュスワプ語を含め全部で563種類の言語の子音数を比較した上で、シュスワプ語5段階中最も多い Large の区分としている。</ref>が評価したように、シュスワプ語の[[子音]]の種類は非常に豊富で、[[放出音]]({{Unicode|p̓、t̓、c̓、k̓、k̓°、q̓、q̓°}})や{{仮リンク|声門化|en|Glottalization}}された[[共鳴音]]({{Unicode|m̓、n̓、l̓、y̓、γ̓、ʕ̓、ʕ̓°、w̓}})が見られる。子音の一覧は以下の通りである。見やすさを考慮し、資料の違いによる表記揺れ等に関する情報は各欄に設けた注にて説明を行っている。
{| class="wikitable"
|+ シュスワプ語の子音一覧<ref name="ahk1974_20">{{Harvcoltxt|Kuipers|1974|p=20}}.</ref>
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| style="text-align:center;" | t
| style="text-align:center;" | c<ref group="注">音声表記は大島(1989a) (1989a)によると {{IPA|ts}} であるが、Lai (1998a:131) によれば[[破擦音]]の一種 {{Ipa|tʃ}} である。</ref>
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| style="text-align:center;" | k
| style="text-align:center;" | k°<ref group="注">大島(1989a) (1989a)や Lai (1998a:131) では {{Unicode|kʷ}} と表記されている。</ref>
| style="text-align:center;" | q
| style="text-align:center;" | q°<ref group="注">大島(1989a) (1989a)や Lai (1998a:131) では {{Unicode|qʷ}} と表記されている。</ref>
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! 声門化
| style="text-align:center;" | {{Unicode|p̓}}<ref group="注">大島(1989a) (1989a)や Lai (1998a:131) では p' と表記されている。</ref>
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| style="text-align:center;" | {{Unicode|t̓}}<ref group="注">大島(1989a) (1989a)では t' と表記されており、実際の音声は {{IPA|tɬˀ, tˀ}} であるとされている。Lai (1998a:131) は t に対応する声門化音の欄を空欄としており、正書法で t' と示される音素は声門化された{{仮リンク|側面破擦音|en|Lateral affricate}}({{Lang-en-short|glottalized lateral affricate}})という音素であるとしている。</ref>
| style="text-align:center;" | {{Unicode|c̓}}<ref group="注">大島(1989a) (1989a)では c' と表記されており、Lai (1998a:131) は [[国際音声記号|IPA]] で[[歯茎破擦音]]({{Lang-en-short|alveolar affricate}}){{Ipa|ts}} であるとしている。</ref>
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| style="text-align:center;" | {{Unicode|k̓}}<ref group="注">大島(1989a) (1989a)や Lai (1998a:131) では k' と表記されている。</ref>
| style="text-align:center;" | {{Unicode|k̓°}}<ref group="注">大島(1989a) (1989a)では {{Unicode|k'ʷ}}、Lai (1998a:131) はIPAで {{Ipa|kʷʼ}} と表している。</ref>
| style="text-align:center;" | {{Unicode|q̓}}<ref group="注">大島(1989a) (1989a)や Lai (1998a:131) では q' と表記されている。</ref>
| style="text-align:center;" | {{Unicode|q̓°}}<ref group="注">大島(1989a) (1989a)では {{Unicode|q'ʷ}}、Lai (1998a:131) はIPAで {{Ipa|qʷʼ}} と表している。</ref>
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| style="text-align:center;" | {{Unicode|ʔ}}<ref group="注">大島(1989a) (1989a)によると実際の音声は {{IPA|ʔ, ʕˀ}} である。</ref>
|-
! colspan="2" | [[摩擦音]](fricatives)
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| style="text-align:center;" | λ<ref group="注">大島(1989a) (1989a)によると音声表記は {{IPA|ɬ}} であるが、Lai (1998a:131) はこの IPA に対応する正書法表記を ll としている。</ref>
| style="text-align:center;" | s
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| style="text-align:center;" | x
| style="text-align:center;" | x°<ref group="注">大島(1989a) (1989a)や Lai (1998a:131) では {{Unicode|xʷ}} と表記されている。</ref>
| style="text-align:center;" | {{Unicode|x̌}}<ref group="注">大島(1989a) (1989a)では {{Unicode|x̣}} と表記されており、実際の音声は {{IPA|χ}} であるとされている。</ref>
| style="text-align:center;" | {{Unicode|x̌°}}<ref group="注">大島(1989a) (1989a)では {{Unicode|x̣ʷ}} と表記されている。</ref>
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189 ⟶ 195行目:
|-
! 声門化
| style="text-align:center;" | {{Unicode|m̓}}<ref group="注">大島(1989a) (1989a)や Lai (1998a:131) では m' と表記されている。</ref>
| style="text-align:center;" | {{Unicode|n̓ l̓}}<ref group="注">大島(1989a) (1989a)や Lai (1998a:131) ではそれぞれ n'、l' と表記されており、後者において l' は側面音扱いとされている。</ref>
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| style="text-align:center;" | {{Unicode|ʕ}}
| style="text-align:center;" | {{Unicode|ʕ°}}<ref group="注">大島(1989a) (1989a)や Lai (1998a:131) では {{Unicode|ʕʷ}} と表記されている。</ref>
| style="text-align:center;" | w
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| style="text-align:center;" | {{Unicode|y̓}}<ref group="注">大島(1989a) (1989a)では y' と表記されている。</ref>
| style="text-align:center;" | {{Unicode|γ̓}}<ref group="注">大島(1989a) (1989a)では γ' と表記されている。</ref>
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233 ⟶ 239行目:
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| style="text-align:center;" | [{{Unicode|ʕ̓}}]
| style="text-align:center;" | {{Unicode|ʕ̓°}}<ref group="注">大島(1989a) (1989a)では {{Unicode|ʕ'ʷ}}、Lai (1998a) は {{Ipa|ʕʷʼ}} であるとしている。</ref>
| style="text-align:center;" | {{Unicode|w̓}}<ref group="注">大島(1989a) (1989a)では w' と表記されている。</ref>
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|}
265 ⟶ 271行目:
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|}
 
セイリッシュ祖語の *r に由来する {{Ipa|l}} に後続された母音は[[舌根]]の後退により暗い音色を帯びたものとなる({{Lang-en-short|darkened}})という特徴がある<ref name="mo1989a" />。
 
=== 強勢 ===
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シュスワプ語の主な語構成の方法は、重複によるものと接辞によるものの2つである<ref name="mo1989a" />。Dryer (2013a) は {{Harvcoltxt|Kuipers|1974|p=passim}} から、シュスワプ語の[[語形変化|屈折変化]]において[[接頭辞]]が関わる傾向と[[接尾辞]]が関わる傾向とは同じ程度であると判断している。
 
シュスワプ語に限らずセイリッシュ語族の言語は動詞と名詞の区別がつけにくいとされている<ref>大島(1989b)。 (1989b).</ref><ref name="mt2000_17" />が、その原因はある1つの語根が場合によって名詞を表したり、〈…である〉という状態を動詞を表したりすることにある。このうち後者を指して「叙述名詞」と呼称する例も見られる<ref name="mo1989a" />。
 
以下ではシュスワプ語において見られる重複について説明した後、接辞絡みの現象については明解さを期すために、敢えて一般的な括りの品詞分類という切り口から述べていくこととする。
743 ⟶ 751行目:
 
===== 「冠詞」 =====
{{Harvcoltxt|Kuipers|1974|p=57}} では冠詞とも称される5種類の前接的不変化詞<ref group="注">『[[学術用語集]] 言語学編』による。大島(1989a) (1989a)では「前倚辞化した小詞」と訳されている。</ref>({{Lang-en-short|proclitic particles}})に触れられているが、これは[[絶対格]]({{Lang-en-short|absolutive}})と関係格({{Lang-en-short|relative}})、定<ref group="注" name="mo1989a_tr">大島(1989a) (1989a)における訳に基づく。</ref>({{Lang-en-short|actual-determinate}})と不定<ref group="注" name="mo1989a_tr" />({{Lang-en-short|hypothetical indeterminate}})で形が異なり、更には絶対格の定のうち現存({{Lang-en-short|present}})と不在({{Lang-en-short|absent}})との間にも区別が認められる。
{| class="wikitable"
|+ シュスワプ語の「冠詞」<ref name="ahk1974_57">{{Harvcoltxt|Kuipers|1974|p=57}}.</ref>
994 ⟶ 1,002行目:
* 「限定詞句」 Matthews, P. H. 著、中島平三・瀬田幸人 監訳 (2009b).『オックスフォード言語学辞典』朝倉書店。ISBN 978-4-254-51030-0 (原書: ''The Concise Oxford Dictionary of Linguistics'', 1997.)
* 「項」 Matthews, P. H. 著、中島平三・瀬田幸人 監訳 (2009c).『オックスフォード言語学辞典』朝倉書店。ISBN 978-4-254-51030-0 (原書: ''The Concise Oxford Dictionary of Linguistics'', 1997.)
* {{Cite book|last=Michel, |first=Kathryn (|year=2005). [|url=http://summit.sfu.ca/item/5641 ''|title=You can't kill Coyote: Stories of language healing from Chief Atahm School Secwepemc language immersion program'']. |publisher=MA thesis, Simon Fraser University.|ref=harv}}
* 大島稔 (1989a).「シュスワプ語」 [[亀井孝 (国語学者)|亀井孝]]、[[河野六郎]]、[[千野栄一]] 編『[[言語学大辞典]]』第2巻、三省堂、225-227頁。ISBN 4-385-15216-0
* 大島稔 (1989b).「セイリッシュ語族」 [[亀井孝 (国語学者)|亀井孝]]、[[河野六郎]]、[[千野栄一]] 編『[[言語学大辞典]]』第2巻、三省堂、434-435頁。ISBN 4-385-15216-0
1,003 ⟶ 1,012行目:
* Demirdache, Hamida, Dwight Gardiner, Peter Jacobs, and Lisa Matthewson (1994). "[http://lingserver.arts.ubc.ca/linguistics/icsnl/1994 The Case for D-Quantification in Salish: ‘All’ in St'át'imcets, Squamish and Secwepemctsín]." In ''Papers for the 29th International Conference on Salish and Neighbouring Languages'', 145&ndash;203. Pablo, Montana: Salish Kootenai College.
* {{Cite book|last=Galloway|first=Brent D.|authorlink=:en:Brent Galloway|year=1993|url=http://ci.nii.ac.jp/ncid/BA21159032|title=A Grammar of Upriver Halkomelem|location=Berkeley|publisher=University of California Press|ref=harv}}
* Haig-Brown (1989). ''Resistance and Renewal: Surviving the Indian Residential School''. Vancouver, B.C.: Tillacum Library.
* Michel, Kathryn (2005). [http://summit.sfu.ca/item/5641 ''You can't kill Coyote: Stories of language healing from Chief Atahm School Secwepemc language immersion program'']. MA thesis, Simon Fraser University.
* Noguchi, T. (1997). "Two types of pronouns and variable binding." In ''Language'' 73: 770&ndash;797.
* Titley, E. Brian (1986). ''Duncan Campbell Scott and the Administration of Indian Affairs in Canada''. Vancouver: University of British Columbia Press.
 
== 関連項目 ==