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'''シュスワプ語'''(シュスワプご)または'''シュスワップ語'''(シュスワップご、{{Lang-en-short|Shuswap}}; 原語名: Secwepemctsín<ref name="mplf">Lewis ''et al.'' (2015f).</ref> {{Ipa|sxʷəpmxˈt͡sin}}<ref name="mo1989a">大島 (1989a).</ref>)とは、カナダ西部[[ブリティッシュコロンビア州]]で話されている[[ファースト・ネーション]]である[[シュスワップ族]]の固有[[言語]]の一つである。北米の[[太平洋岸北西部]]に分布する[[セイリッシュ語族]]の内陸語派に属する。原語名の ''Secwepemctsín'' は民族名 ''Secwepemc'' 〈[[シュスワップ族]]〉と ''-tsín'' 〈口〉の合成語である<ref name="mo1989a" />。[[セイリッシュ語族]]内陸語派に属する
 
シュスワプ語が学術的に研究されるようになったのは20世紀以降のことである(参照: [[#研究史]])。しかし、同じ20世紀にシュスワップ族に対して行われた強制的かつ抑圧的な[[インディアン寄宿学校|寄宿学校]]制度により親世代から子世代への言語の継承が阻害されてきた歴史もある上、近年話者の高齢化が進む一方で若い世代の[[第一言語]]が[[英語]]に[[言語交替|切り替わる]]傾向にあり、教育によるシュスワプ語再興への取り組みが行われている(参照: [[#言語教育]])。
 
言語自体の特徴としては、[[音韻論|音韻]]的には子音の数が多く(参照: [[#子音]])、[[形態論|形態]]的には[[{{仮リンク|重複]]|en|Reduplication}}({{Lang-en-short|reduplication}})と[[接辞]]による語の変化が見られ(参照: [[#形態論]])、[[統語論|統語]]的には動詞が他の要素より先頭に来る語順の傾向(参照: [[#語順]])や2種類の格(参照: [[#格]])が見られ、また形態統語的には[[主要部#主要部標示と従属部標示|主要部標示]]({{Lang-en-short|head marking}})型言語である(参照: [[#統語論における代名詞]])といった点が挙げられる。
 
2000年から公開されているウェブサイト {{仮リンク|FirstVoices|en|FirstVoices}}では他の様々なファースト・ネーションの言語と共にシュスワプ語の語彙や成句が音声つきで紹介されている。
 
都市[[カムループス]](Kamloops)の名は、シュスワプ語の ''T'kemlups''〈川の合流点〉に由来するものである<ref>Turner ''et al.'' (2008:3).</ref>。また、淡水に生息する魚である〈[[ヒメマス]]〉を表す英語の [[:en:Kokanee|''kokanee'']] は、同じ意味のシュスワプ語 {{Unicode|''kəknǽxʷ / [[wikt:keknécw|keknécw]]''}} を語源とする説が存在する<ref>小学館ランダムハウス英和大辞典第2版編集委員会 (1994).</ref>。なお、このように表記揺れが激しい場合も見られるが、これに関しては[[#正書法について]]を参照されたい。
 
== 分布 ==
シュスワプ語が話されているのは[[ブリティッシュコロンビア州]]の東寄りの中央部<ref name="mplf" />の[[フレーザー川]]沿い<ref name="vg2007">Golla (2007).</ref>の地域であるが、その周囲では他の先住民語が話されている。南側では同じ[[セイリッシュ語族]]内陸語派の{{仮リンク|リルエット語|en|Lillooet language}}(Lillooet; 原語名: St'at'imcets<ref>Czaykowska-Higgins & Kinkade (1998:3).</ref><ref>Lewis ''et al.'' (2015d).</ref>)や{{仮リンク|トンプソン語|en|Thompson language}}(Thompson; 原語名: {{Unicode|nɬeʔkepmxcín}} または Nlaka'pamux<ref>Czaykowska-Higgins & Kinkade (1998:3, 68).</ref>)、{{仮リンク|オカナガン語|en|Okanagan language}}(Okanagan; 原語名: Nsilxcín または {{Unicode|nsíylxcən}}<ref>Czaykowska-Higgins & Kinkade (1998:67, 68).</ref>)が話されているが、他の方位の諸言語は語族の分類すら異なり、それぞれ西は[[アサバスカ語族]]の{{仮リンク|チルコティン語|en|Chilcotin language}}(Chilcotin; 原語名: Tsilhqot'in<ref>Lewis ''et al.'' (2015c).</ref>)や{{仮リンク|キャリア語|en|Carrier language}}(Carrier; 原語名: Dakelh<ref>Lewis ''et al.'' (2015a, b).</ref>)、北もアサバスカ語族の{{仮リンク|セカニ語|en|Sekani language}}(Sekani; 別名: Tse'khene<ref>Lewis ''et al.'' (2015e).</ref>)、東は[[アルゴンキン語族]]の[[ブラックフット語]]({{Lang-en-short|Blackfoot}})となっている<ref>{{Harvcoltxt|Kuipers|1974|p=7}}.</ref>。
 
Golla (2007) で Marianne Boelscher Ignace が伝えるところによると、現代のシュスワプ族は[[カムループス]]における定住地を最大とする17の{{仮リンク|バンド (カナダ)|label=バンド|en|Band government}}に分かれている。
 
== 方言 ==
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| style="text-align:center;" | gw'
|}
 
なお、クイパーズは Kuipers (1974) では〈蚊〉を表す語を {{Unicode|''q'''°ə'''ním'''ə'''q'''λ'''''}} と表記しているが、翌年の {{Harvcoltxt|Kuipers|1975}} ではLai (1998a) や FirstVoices 寄りの ''q'''we'''ním'''e'''q'''ll''''' と記すなど、同一著者においても表記の揺れが見られる。
 
== 音韻論 ==
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==== 重複(法) ====
シュスワプ語には様々な種類の{{仮リンク|[[重複 (言語学)|label=重複|en|Reduplication}}]]({{Lang-en-short|reduplication}})が見られる<ref>{{Harvcoltxt|Kuipers|1974|p=37&ndash;38}}.</ref>。たとえば動詞や名詞の複数性を表すための全体重複({{Lang-en-short|total reduplication}}; 例: '''''kic'''x'' 〈彼/彼女が着く〉 → {{Unicode|'''''kəc'''-'''kíc'''x''}} 〈彼らが着く〉)や[[指小辞|指小]]化を表す子音重複({{Lang-en-short|consonant reduplication}}; 例: {{Unicode|'''''p'''ésəλk°e''}} 〈湖〉 → {{Unicode|'''''p'''é'''p'''səλk°e''}} 〈小さな湖〉)などである。このうち子音重複はもともと一人称単数の謙遜を表すためのものと思われ、デッドマンズクリーク方言ではまれである一方、カニム湖方言やアルカリ湖方言では義務的ではないものの当たり前のように見られる<ref>{{Harvcoltxt|Kuipers|1974|p=39}}.</ref>。
 
==== 名詞 ====
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* {{Glottolog|shus1248|Shuswap}}
* {{Cite book|last=Kuipers|first=Aert H.|year=1974|title=The Shuswap Language: Grammar, Texts, Dictionary|url=https://wine.wul.waseda.ac.jp/search~S12*jpn?/aKuipers/akuipers/1%2C14%2C28%2CB/frameset&FF=akuipers+aert+hendrik&2%2C%2C3|location=The Hague|publisher=Mouton|ref=harv}}
* {{Cite book|last=Kuipers|first=Aert H.|year=1975|title=A Classified English-Shuswap Word-List|url=https://books.google.co.jp/books?id=cvU_AQAAIAAJ&q=kekn%C3%A9cw&dq=kekn%C3%A9cw&hl=ja&sa=X&ved=0ahUKEwjt0NXugYLUAhVCGZQKHYqhD1EQ6AEIIjAA|location=Lisse|publisher=The Peter De Ridder Press|ref=harv}}
* {{Cite book|last=Kuroda|first=S-Y.|authorlink=黒田成幸|year=1965|url=http://hdl.handle.net/1721.1/13006|title=Generative grammatical studies in the Japanese language|location=<!--Cambridge-->|publisher=MIT dissertation|ref=harv}}
* Lai, I-Ju Sandra (1998a). [http://hdl.handle.net/2429/8173 ''The grammar and acquisition of Secwepemctsín independent pronouns'']. MA thesis, University of British Columbia.
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* 大島稔 (1989a).「シュスワプ語」 [[亀井孝 (国語学者)|亀井孝]]、[[河野六郎]]、[[千野栄一]] 編『[[言語学大辞典]]』第2巻、三省堂、225-227頁。ISBN 4-385-15216-0
* 大島稔 (1989b).「セイリッシュ語族」 [[亀井孝 (国語学者)|亀井孝]]、[[河野六郎]]、[[千野栄一]] 編『[[言語学大辞典]]』第2巻、三省堂、434-435頁。ISBN 4-385-15216-0
* 小学館ランダムハウス英和大辞典第2版編集委員会 (1994).『[[小学館ランダムハウス英和大辞典]]第2版』。ISBN 4-09-510101-6
* テート, メアリー (2000).「北アメリカ」 R. E. アシャー、クリストファー・マーズレイ 編、土田滋、[[福井勝義]] 日本語版監修、福井正子 翻訳『世界民族言語地図』東洋書林、3-24頁。ISBN 4-88721-399-9 (原書: ''Atlas of the World's Languages'', 1994, London: Routledge.)
* Turner, R.J.W, R.G. Anderson, R. Franklin, M. Cathro, B. Madu, C. Huscroft, E. Frey, K. Favrholdt (2008). [https://books.google.co.jp/books?id=9iz-nux8JqEC&dq=Tk%27emlups&hl=ja&source=gbs_navlinks_s ''Geological Survey of Canada, Open File 5810: GeoTour guide for Kamloops, British Columbia''].
 
== 関連文献 ==