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加筆および画像の追加。参考文献欄の整理。
いきなり「ペヨーテ」と言われても何の事か分からないというご意見を頂いた為、理解がより容易となる様配慮。/ 表記揺れ
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|関連=[[コラ族]]、[[タラフマラ族]]
}}
'''ウイチョル族'''(ウイチョルぞく、{{Lang-en-short|Huichol}}; 自称: Wixárika<ref name="ssptf96_531">Schaefer & Furst (1996:531).</ref>、Wizarika<ref>八杉 (1988).</ref>、Vixaritari、Wixaritari)とは、主に[[メキシコ]]の[[ナヤリト州]]や[[ハリスコ州]]に暮らす[[民族]]である。[[ナワトル語]]も属する[[ユト・アステカ語族|ユト=アステカ語族]]の[[言語]]である{{仮リンク|ウイチョル語|en|Huichol language}}を話すが、人口約2万人のうち65パーセントは[[スペイン語]]も用いる<ref name="ko2009">落合 (2009).</ref>。[[サボテン]]の一種である[[ペヨーテ]](peyote; ウイチョル語ではヒクリ (híkuri、híkuli、hiculi<ref>Schaefer & Furst (1996:524).</ref>))にまつわる文化で知られている。
 
== 歴史 ==
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==== ペヨーテ狩り ====
[[File:Lophophorawilliamsii.jpg|thumb|250px|ウィリクタに生育するペヨーテ]]
10月から2月の乾季になると<ref name="ko2009" />、ウイチョル族は年に一度のペヨーテ(ヒクリ)の採取のために[[サン・ルイス・ポトシ州|サン・ルイス・ポトシ]]地域の{{仮リンク|ウィリクタ|en|Wirikuta}}(Wirikúta<ref name="ssptf96_531" />、Wirikuta)という聖地まで旅を行う<ref name="res2007_pey">シュルテスら (2007:148-150).</ref>。ウィリクタはウイチョル族にとってペヨーテが豊かに生育する先祖代々の地であり<ref name="res2007_pey" />、ペヨーテ狩りは楽園ウィリクタへの回帰、原型の始まりと神話の歴史の終わりと見做されている<ref name="res2007_pey" />。ウィリクタへの最初のペヨーテ狩りの旅は[[シャーマン]]の祖にしてウイチョル最古の神である{{仮リンク|タテワリ|en|Tatewari}}{{Refnest|group="注"|Tatewari。シュルテスら (2007:148) によるとその名は「私たちの祖父の火」である。また[[言語学]]的にも<br /> taa+-tewaríi-ma<br /> [[一人称|1]]{{Scaps|[[複数|pl]].[[所有 (言語学)|poss]]-祖父<small>もしくは</small>孫{{Refnest|group="†"|なお、ウイチョル族は祖父と孫世代の間の関係性については同一性、平等性、相互性のあるものと考えており、親族名称は一方の世代からもう一方の世代に向けて全く同一のものが使用され得る<ref name="bgm1974_66">{{Harvcoltxt|Myerhoff|1974|p=66}}.</ref>。ウイチョル語で ''tewaríi''(あるいは ''tewarí'' や {{Unicode|''teʼvali''}} とも)は〈祖父〉と〈孫〉、〈大おじ〉と〈甥または姪の息子〉を男性同士で相互に表す語彙であるが、ほかにも〈祖父母〉と〈孫(娘)〉の両方を表す ''teukári'' が存在し<ref>Schaefer & Furst (1996:529).</ref>、あるウイチョル族は、祖父と孫とは同じ肉体からなる存在であり、互いを ''Neteukari''〈私の ''teukári''〉と呼び合うと述べている<ref name="bgm1974_66" />。}}-[[複数|pl]]}}<br /> 「我々の祖父たち」<br />と分析される表現が存在するが、これは同時に特定の神々のサブクラスも指す<ref>{{Harvcoltxt|Grimes|1964|p=31}}.</ref>。タテワリは手や足でペヨーテを持った姿で擬人化されたペヨーテ神ヒクリとしても知られている<ref name="res2007_148">シュルテスら (2007:148)</ref>。}}によって先導された<ref>シュルテスら (2007:62,148).</ref>。現代のシャーマン{{Refnest|group="注"|経験を積んだシャーマンは[[マラアカメ]](ウイチョル語: {{Unicode|maraʼakáme}}<ref>Schaefer & Furst (1996:526).</ref>; マラカメ<ref name="ko2009" />とも)と呼ばれる<ref name="res2007_148" />。}}とタテワリは幻影や[[シカ|鹿]]の姿をした[[文化英雄]][[カウユマリ]](Kauyumári)を介して交信を行う<ref name="res2007_pey" />。巡礼者たちは通例10人から15人でシャーマンに導かれて旅を行う<ref name="res2007_pey" />。巡礼者たちは儀式に必要不可欠なタバコ用の細口瓶や、ウィリクタから採集した水を故郷へと運んでいくための細口瓶を携行する<ref name="res2007_pey" />。かつては徒歩で200[[マイル]]の旅が行われていたが、今日では車を用いる場合が多い<ref name="res2007_pey" />。巡礼者たちはウィリクタへ旅立つ前に自らの性体験の告白を伴う懺悔{{Refnest|group="注"|1つ1つの罪に関してシャーマンが紐に結び目をつくり、儀式の最後に燃やす<ref name="res2007_148" />。}}とお清めの儀式を受けなければならない<ref name="res2007_pey" />。旅の間、[[食事]]や[[性交渉]]、[[睡眠]]は神々に倣って差し控えられ、ウィリクタの神聖な山々が見える場所に着くと、巡礼者たちは儀式に従って清められ、恵みの雨を祈る。そしてシャーマンが詠唱を行っている最中に「頭の中の地図」に従って雲の関門や雲の通路を抜ける2つの感動的な段階を踏むことにより、あの世への旅を始める<ref name="res2007_pey" />。いよいよペヨーテ狩りの場所に到着するとシャーマンは儀式を始め、ペヨーテにまつわる古来の物語を話し、安全の祈願を行う<ref name="res2007_pey" />。巡礼者たちの中でも特に初めての参加者たちは目隠しをされた状態でシャーマンのみに見える「宇宙の入口」にいざなわれる<ref name="res2007_pey" />。シャーマンの詠唱の最中に司祭たちが立ち止まって[[蝋燭]]を灯し、祈りの言葉を呟く<ref name="res2007_pey" />。ようやくペヨーテを見つけるとシャーマンは鹿の足跡を暫く眺め、[[矢]]でペヨーテを射る<ref name="res2007_pey" />。巡礼者たちはその年初めてのペヨーテを射られた鹿になぞらえて詠歌や[[トウモロコシ]]の種子といった捧げ物を行い、かご一杯になるほどペヨーテを採取する<ref name="res2007_pey" />。次の日になると更に多くのペヨーテが集められるが、その一部は故郷で待っている人々と分け合い、更にその残りはやはりペヨーテを使用するコラ族やタラフマラ族のために売り出されることとなる<ref name="res2007_pey" />。その後にはタバコ配りの儀式が行われるが、ウイチョル族はタバコを火と結びつけて考えている<ref name="res2007_pey" />。この儀式ではまず[[磁石]]の4方位に向けて矢が置かれ、真夜中に火が焚かれる<ref name="res2007_pey" />。するとシャーマンは火の前にタバコを置き、それに羽飾りで触れつつ祈り、巡礼者一人一人にタバコを配る<ref name="res2007_pey" />。各人はタバコの誕生の象徴である細口瓶に配られた物を入れる<ref name="res2007_pey" />。
 
なお、ウイチョル族はペヨーテ狩りに[[人類学者]]やメキシコの著述家が同行することを何度か許可している<ref name="res2007_148" />。