「サマーウォーズ」の版間の差分

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RJANKA (会話 | 投稿記録)
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[[2010年]][[7月30日]]の午前0時25分、健二の携帯電話に数字の羅列が書かれた謎のメールが送られてくる。数学が得意な健二は、それを何かの問題だと思って回答してしまう。しかし、それはOZの管理権限を奪取できる暗号であった。翌日、OZは謎の[[人工知能]]・'''ラブマシーン'''に乗っ取られてしまう。その影響はOZと密接に連携していた現実世界の各種[[インフラストラクチャー|インフラ]]にまで及び、社会全体に大きな混乱を引き起こしてしまう。人々が対応に苦しむ中、栄は人脈を駆使して被害の軽減を図り、事態は収束に向かう。しかし、栄は翌朝、心臓発作([[狭心症]])にて死去してしまう。
 
陣内家の女性陣が葬儀の準備を進める中、健二を含む陣内家の男性陣有志は敵討ちや被害拡大の防止のためにラブマシーンを倒す準備を進めていた。作戦の結果、一時はラブマシーンを封じ込めることに成功するが、作戦に使用していたスーパーコンピューターの冷却のために使っていた氷を翔太が栄の遺体の保存のために持ち出したために[[熱暴走]]を起こすというアクシデントで逃げ出されてしまい、あげくにはキングカズマのアカウントまでもが奪われてしまう。ラブマシーンは、奪った4億を超えるアカウントの権限を利用して、[[宇宙探査機|小惑星探査機]]・「あらわし」の再突入体を世界に500か所以上ある[[核施設]]のどこかに落とそうとする。落ち込む一同だったが、健二の言葉と栄の遺言により気力を取戻し、夏希は栄に仕込まれた[[花札]]([[こいこい]])勝負でラブマシーンへ最後の戦いを挑む。
 
一度はラブマシーンのチート行為で掛け金が二桁にまで減らされるという窮地に陥るものの、全世界の人々の好意によって得たアカウントを使ってラブマシーンに奪われたアカウントのほぼ全てを解放することに成功。その後、ラブマシーンは「あらわし」を陣内邸に落下させることを画策。だが健二の機転と計算能力、侘助のラブマシーンへのクラッキングと佳主馬が奪い返したキングカズマのラブマシーンへの一撃によって[[GPS]]制御の「あらわし」の落下地点を陣内邸からずらすことに成功。陣内家の家屋は半壊するも、陣内家の面々は生き残ることができ、怪我の功名で[[源泉]]まで手に入れた。
 
明けて栄の葬儀の日、合わせて栄の誕生日。OZの混乱を終息させた立役者であり、陣内家を救った功労者である健二と、彼への好意を認めた夏希の仲を、一族みんなが見守るのだった。
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: 声: [[横川貴大]]
: 17歳。健二の同級生。健二と同じく物理部に所属している。健二と共にOZの保守点検のバイトをしており、ラブマシーンとの対決では主に情報収集で健二らをサポートした。
:使用アバターは頭部だけ[[ドット]]の粗い擬人化猿。陣内家とコンタクトをとる際は、頭部だけが移動していた。
; 池沢 佳主馬(いけざわ かずま)
: 声: [[谷村美月]]
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: 声: [[富司純子]]
: [[大正9年]][[8月1日]]生まれ。89歳。夏希の曽祖母。[[戦国時代 (日本)|戦国時代]]から続く陣内家の16代目当主。元[[教師]]で、教え子には政治家、官僚、地方の実力者なども多く、政財界に幅広い人脈を持つ。カリスマ性においては作中に比類なく、一族はもとより、国を動かせるだけの影響力をもち、古い友人たち(中には現職[[警視総監]]もいる)を励ますなどして、OZの不具合による混乱の鎮静化に大きく貢献することとなる。人と人とのつながりの大切さを家族に説き、作品における陣内家団結の重要なキーパーソン。人を見る目に長けており、嘘が発覚した後でも健二に夏希を託す。ラブマシーンの一件でその場の一族郎党の罵声を浴びながらも悪びれない侘助に対し宴席で[[薙刀]]を振り回し、侘助が家を出て行った後に「身内の不始末は身内で片付けるぞ」と一族郎党を叱咤する姿を見せる。その後、健二と一緒に[[花札]]をして、健二に[[勝利]]した。
:そして、翌日の[[早朝]]、[[持病]]の[[狭心症]]により[[誕生日]]直前の[[7月31日]]、死亡時刻は、午前5時21分と確認された。満89歳没([[享年]]91)。実はOZの混乱による影響を受けており、体調が万作に送られていなかった。彼女が万が一の時のために残していた「一番悲しいことは、お腹を空かせる事と一人でいる事。」という[[手紙]]が、侘助と陣内家との和解と再結束に繋がった。OZのアバターは陣内家の家紋。
: 夏希が「自分の彼」と偽って連れてきた健二を一目で夏希を任せられるだけの器がある男と認める。後に夏希による嘘であったことがバレた後も健二に夏希のことを頼んでいる。
:栄が一族全員に[[花札]]を教えているという設定は、富司が主演した[[加藤泰]]監督の『[[緋牡丹博徒 花札勝負]]』へのオマージュである<ref>『[[映画芸術]]』428号より。</ref>。薙刀の一件の直後、健二に自らの介抱を頼み、彼に花札([[こいこい]])勝負をするよう誘って、「私が勝ったら夏希を頼む」と頼んだのが生前最後の姿となった。彼女の葬儀は彼女の誕生日に行われたため、一族の一部が「[[ハッピーバースデートゥーユー]]」を彼女の遺影の前で歌っていた。
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: 声: [[斎藤歩]]
: 41歳。入り婿だった陣内徳衛の隠し子。幼少時に陣内家に引き取られ、栄の養子となった。夏希・佳主馬の祖父達と年の離れた弟で四男ではあるが、栄の孫と同世代。
: 一族の資産を持ち逃げしたまま10年間行方知れずだったが、栄の誕生日を祝うために親族が集まる中、突然帰ってきた。風来坊だが、天才的な頭脳の持ち主。[[東京大学|東大]]卒で、留学経験もある。アメリカで[[カーネギーメロン大学]]の[[教授]]として[[セキュア]]プログラミングのブロックと[[クラッキング (コンピューター用語)|クラック]]、さらに[[人工知能]]の研究をしており、自動クラックAIプログラム「ラブマシーン」を開発した。口と態度、過去の行状から一族からは嫌われているが、育ての親である栄を内心慕っており、同様に慕ってくる夏希には優しく接する。頼彦から一連の責任を問い詰められた際は「俺は(ラブマシーンの)製作者なだけであって、あいつに命令はしていない」と一族郎党に言い、栄に[[アメリカ国防総省]]からの正式オファーの文章を見せながら「これでこの家に多額の金が入る。ばあさんに恩返しが出来る」「ばあさんの金のおかげで(ラブマシーンの)独自開発が出来た」と言ったことで栄を怒らせてしまい、栄から突きつけられた[[薙刀]]の刃を手で退けて「帰ってくるんじゃなかった」と言い翔太の車を奪って家を出て行く。その後、パソコンのパスワード(栄の誕生日の英語表記である0108)を使って海外回線で連絡を入れてきた夏希から栄の死を知ると大急ぎで引き返し、健二や陣内家と共にラブマシーンを止めるために奔走する。
:夏希の初恋相手であり、健二を家族に紹介したときの偽の経歴は彼のものである。[[ガラケー]]を使う陣内家の中で唯一、公開当時に発売されたばかりの[[iPhone]]を使用している<ref>{{Cite web|url=https://twitter.com/kinro_ntv/status/898529302869811202|title=侘助さんのiPhone|publisher=スタンリー@金曜ロードSHOW!|format=twitter|date=21:57 - 2017年8月18日|accessdate=2017/8/19}}</ref>
: 最後はアメリカ当局に出頭して一連の事件の原因を告発したとされ、その事を報じた[[CNN]]のキャスターは「彼は単なる開発者であり非はない。非があるのは実験を一般の場で行った国防総省だ」という論陣を張った。
:「[[伊丹十三]]を完璧にキャラクター化してほしい」という細田の意向に沿って、貞本が若い頃の伊丹をモデルに描きあげたキャラクターである<ref>『PLUS MADHOUSE 3 細田守』より。</ref>。
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; 陣内 理香(じんのうち りか)
: 声: [[玉川砂記子|玉川紗己子]]
: 42歳。万理子の長女。上田市役所に勤務している。独身。自分のもつOZアカウント権限を利用して健二の[[住民基本台帳]]を調べ、夏希の嘘をあばいた。使用アバターはギョウザ頭のデフォルメ人間。
; 陣内 理一(じんのうち りいち)
: 声: [[桐本琢也]]
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; 陣内 太助(じんのうち たすけ)
: 声: [[小林隆]]
: 45歳。万助の長男。やや肥満体、陣内電気店の店主。店舗規模は不明ながら大学などと取引をしている。父の万助ほどのパワフルさはないが、血の熱さは受け継いでおり、ラブマシーンとの2度目の対決において[[スーパーコンピュータ]](大学に納入予定だった代物)などの一般人では調達困難な機材を取り揃えるなど、ハードウェア面における貢献者。使用アバターはマントにつば広三角帽、赤いマフラーをした風来坊風の[[ウナギ]]。
; 陣内 翔太(じんのうち しょうた)
: 声: [[清水優]]
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===その他の人物等===
;ジョン、ヨーコ
:OZの守り主で、OZの世界の底近くをゆっくりと周回する青と赤の2頭の巨大なクジラ。ラブマシーンとの花札勝負の時、ナツキに吉祥のレアアイテムを授けた。名前の由来は[[ジョン・レノン]]と[[オノ・ヨーコ]]<ref>{{Cite web|url=https://twitter.com/kinro_ntv/status/898516166003392514|title=お得情報メモ)クジラ|publisher=スタンリー@金曜ロードSHOW!|format=twitter|date=21:05 - 2017年8月18日|accessdate=2017/8/19}}</ref>
;ハヤテ
:陣内家で飼われている犬。かなりの老犬。ラブマシーンとの最終決戦後に、陣内邸へ落下する「あらわし」を最初に発見した。
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; OZ(オズ)
: 世界中の人々が利用している登録者10億人以上のインターネット上の[[仮想世界]]([[メタバース]])。アクセスはパソコン、携帯電話、テレビなどから行える。OZ内では自身の分身として[[アバター]]を製作する。あらゆる物品や旅行プランなどが体験でき、現実世界の高級店や企業・行政機関・地方自治体がOZに支店や窓口を構えており、納税などの手続きもOZ内で行うことが可能。あらゆる言語が一瞬で翻訳されるため、世界中の人々とのコミュニケーションも可能である。
: OZのアカウントと現実の人間の権限はほぼ等しく、佐久間いわく水道局員やJR職員のアカウントを盗めば水道局のシステムやJRのダイヤを改変する事ができ、大統領のアカウントを盗めば[[核ミサイル]]を発射する事もできるかもしれないとのこと。セキュリティは2056桁の暗号で守られており世界一高度と言われているが、劇中では世界中の55人によって暗号が解読されてしまっていた。ちなみにセキュリティ暗号の回答は"the magic words are squeamish ossifrage To know is to know that you know nothing That is the true meaning of knowledge"で、冒頭の一行は[[RSA暗号#RSA#RSA-129|RSA-129]]の回答である<ref>{{Cite web|url=https://twitter.com/kinro_ntv/status/898528754615463936|title=暗号の答え|publisher=スタンリー@金曜ロードSHOW!|format=twitter|date=21:55 - 2017年8月18日|accessdate=2017/8/19}}</ref>
: 名称の由来は、監督の細田が東映アニメーション時代によく行っていた[[スーパーマーケット]]「[[プラッツ大泉|LIVINオズ]]」<ref>{{Cite web |url=http://www.cinra.net/interview/2010/01/26/000000?page=2|title=『サマーウォーズ』細田守監督インタビュー|date=2010-01-26|accessdate=2016-08-13}}</ref>。
; 陣内家(じんのうちけ)
: 陣内栄が当主の一族。[[戦国時代 (日本)|戦国時代]]から続く武家の家柄(先祖の墓が[[室町時代]]からある)。先祖は元[[武田氏]]家臣で、武田氏滅亡後は[[上田市|上田]]に身を寄せ、小国ながら郷土を守ってきたらしい。[[明治]]になって始めた[[生糸|生糸商]]が成功して屋敷が大きくなり、周辺の山まで所有するようになるが、栄の亡夫の陣内徳衛が浪費の末に問屋や工場、果ては所有していた山までも売ってしまい現在はほとんど残っていない。コミックス版では、栄が残った土地を密かに所有していたが、10年前に侘助が売ってしまっている。先祖の活躍の紹介として[[上田合戦]]が登場する。
; ラブマシーン
: 侘助が開発した人工知能プログラム。強い知識欲を持ち、学習に特化しているが、テストを行った米軍([[国防総省]])がプログラムを展開したところ歯止めが利かなくなり、OZのセキュリティ暗号を[[スパムメール]]でばら撒く事を発端とした世界規模のパニックを引き起こした。黒幕として扱われているが、ラブマシーン自体に意図的な悪意はない。感情はないが、ゲーム好き。
: 健二のアカウントを乗っ取ってからは健二のアバターの姿、キングカズマとの戦いの中で周囲のアバターを取り込んでからは仏教の神のような姿となる。監督の細田によれば、モデルは[[大日如来]]<ref>{{Cite web |url=http://gigazine.net/news/20090723_summer_wars_interview/|title=最高レベルのCGを駆使し、他には考えられないキャストを揃えた映画「サマーウォーズ」の細田守監督へインタビュー|date=2009-07-23|accessdate=2016-08-13}}</ref>。
: ナツキとの戦いに敗れ、アカウントに残された権限が「あらわし」の制御のみとなると、これを使って「あらわし」再突入体を陣内邸に落下させようとする。その最中、復活したキングカズマの一撃によって破壊された。
; あらわし
: [[サンプルリターン]]方式の[[小惑星探査機]]。作品冒頭の7月26日月曜日お昼のニュースで、今日午前 [[太陽周回軌道]]から 地球の[[衛星軌道]]に乗ったという旨と、トラブル続きだったが、今後タイミングを図りながら 小惑星“マトガワ”で採取した サンプル入りのカプセルを持ち出す予定だと報じられた。元ネタは「[[はやぶさ (探査機)|はやぶさ]]」<ref>{{Cite web|url=https://twitter.com/kinro_ntv/status/898535669609381888|title=お得情報メモ)あらわし|publisher=スタンリー@金曜ロードSHOW!|format=twitter|date=22:22 - 2017年8月18日|accessdate=2017/8/19}}</ref>。
 
== 設定 ==
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==制作==
細田は、内容の構想過程について、「普通の人でも世界を救えないかなと考えてる時に、一番普通っぽいっていうのは田舎の親戚じゃないかっていう、そういうところから考え出した」と語り、「特別な人じゃなくて、普通の人の方が好き、ひとりひとりの魅力が好き」と話している<ref>『[[ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル]]』2009年7月25日</ref>。
 
制作に際してインターネット攻撃について[[防衛省]]・[[防衛研究所]]の研究者の橋本靖明を<ref>{{Cite web|url=https://twitter.com/kinro_ntv/status/898526808584224768|title=お得情報メモ)AIであるラブマシーンが引き起こすいくつもの混乱。|publisher=スタンリー@金曜ロードSHOW!|format=twitter|date=21:47 - 2017年8月18日|accessdate=2017/8/19}}</ref><ref>{{Cite web|url=https://twitter.com/kinro_ntv/status/898527273959145473|title=続き 米軍が実際に行ったサイバー戦演習の実例を記した論文を執筆されている方です!|publisher=スタンリー@金曜ロードSHOW!|format=twitter|date=21:49 - 2017年8月18日|accessdate=2017/8/19}}</ref>、探査機「あらわし」の取材のために[[JAXA]]を取材<ref>{{Cite web|url=https://twitter.com/kinro_ntv/status/898535669609381888|title=お得情報メモ)あらわし|publisher=スタンリー@金曜ロードSHOW!|format=twitter|date=22:22 - 2017年8月18日|accessdate=2017/8/19}}</ref>している。
 
劇中でたびたび登場し、最後は栄の葬儀の[[仏花]]として登場した[[アサガオ]]は、陣内家の象徴であり、栄おばあちゃんその人でもあり、枯れてまた咲く「生命の継承」の象徴である<ref>{{Cite web|url=https://twitter.com/kinro_ntv/status/898518713531482113|title=お得情報メモ) 朝顔は陣内家のシンボル。|publisher=スタンリー@金曜ロードSHOW!|format=twitter|date=21:15 - 2017年8月18日|accessdate=2017/8/19}}</ref>。
 
==批評==
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[[社会学者]]の[[宮台真司]]は、本作品について「オフラインでの絆を前提にしてはじめてオンラインの絆も広められる」というそれ自体は納得できるメッセージを含んでいるとしながらも、それが説得力を持っていたかどうかは疑問であると述べている<ref>東浩紀・[[宮台真司]] 『父として考える』 [[日本放送出版協会]]、2010年、85頁。ISBN 978-4140883242。</ref>。
 
[[Rotten Tomatoes]]では77%の批評で22のレビューに基づいて平均7/10という高い評価を与えた<ref>{{cite web|url=http://www.rottentomatoes.com/m/summer-wars/ |title=Summer Wars |publisher=[[Fandango Media]] |work=[[Rotten Tomatoes]] |accessdate=May 29, 2017}}</ref>。[[Metacritic]]では主だった12のレビューに基づき63/100の「全体的に好ましい」レベルの評価を与えた<ref>{{cite web| title = Summer Wars reviews
|url=http://www.metacritic.com/movie/summer-wars|work=[[Metacritic]]|publisher=[[CBS Interactive]]|accessdate=January 21, 2011}}</ref>。
 
== 書籍 ==