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{{Sakujo/本体|2018年5月7日|アトランティック・エアウェイズ670便オーバーラン事故}}
{{TVWATCH|date=2017年2月}}
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{{Infobox Airliner incident
|name= アトランティック・エアウェイズ 670便オーバーラン事故
|画像= Atlantic Airways Flight 670 wreckage.png
|Image caption= オーバーラン後炎上した機体の残骸
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|Destination={{Flagicon|NOR}} [[ノルウェー]][[ムーレ・オ・ロムスダール県|ロームスダール県]][[モルデ|モルデ空港]]
|Site= {{NOR}} [[ホルダラン県]]<br />ストード空港
| coordinates = {{coord|59|47|34|N|5|20|23|E|source:kolossus-plwiki|display=title,inline}}
|passengers = 12
|crew = 4
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}}
'''アトランティック・エアウェイズ670便オーバーラン事故'''(アトランティック・エアウェイズ670びんオーバーランじこ)とは、[[2006年]][[10月10日]]7時32分に[[アトランティック・エアウェイズ]]670便が、[[ノルウェー]][[:en:Stord Airport, Sørstokken|ストード空港]]でオーバーランした事故である。着陸時にスポイラーの故障など、複数の原因が合わさった。
 
670便は[[アケル・ソリューションズ]]がチャーターした機で[[スタヴァンゲル|スタヴァンゲル空港]]から{{仮リンク|ストード空港|en|Stord Airport}}を経由し[[モルデ]]まで飛行する予定だった。そのため、乗客はアケル・ソリューションズの従業員のみだった。調査は、ノルウェー事故調査委員会(AIBN)によって行われた。スポイラーの誤動作の原因を特定することはできなかったが、機長が非常用ブレーキを作動させたとき、アンチロックブレーキシステムが無効になっていたことが判明した。これにより、ブレーキが完全にロックされ、ハイドロ・プレーニング現象が発生してしまった。ストード空港の滑走路はそのような状況でBAe 146が着陸するのには短すぎた<ref>Air Crash Investigation 2017.</ref>。
 
== 当日の670便 ==
670便は[[アケル・ソリューションズ]]の従業員の通勤ためにチャーターされた定期便だった。事故機は前日の23時30分にソラに到着し、夜間に48時間毎の定期検査が実施され、5時00分に終了した。7時15分にソラから離陸するときには、12人の乗客と4人の乗員が搭乗していた。機長は34歳男性、副操縦士は38歳男性であった<ref name=a5>AIBN: 5</ref>。パイロットは、前夜のアトランティック・エアウェイズのスタバンゲルへのフライトを行っていた。機長は以前にストード空港へ21回の着陸を行っていた<ref name=a13>AIBN: 13</ref>。天気は晴れで視界は{{convert|10|km|sp=us|0}} 以上、風は110度の方向から6ノットだった<ref name=a5>AIBN: 5</ref>。
* 乗務員:2名
** [[機長]]:34歳 男性
** [[副操縦士]]:38歳 男性
* 乗客:12名
 
== 事故の経過 ==
[[File:Atlantic airways CRG.jpg|thumb|2006年1月に [[フランクフルト空港]] で撮影された事故機]]
 
事故機の、[[ブリティッシュ・エアロスペース]][[BAe 146|BAe 146-200]]はシリアル番号E2075で、1987年に初飛行し、初めはアメリカの[[パシフィック・サウスウエスト航空]]が所有していた。6ヶ月後、アトランティック・エアウェイズが購入した1機目のBAe 146で、OY-CRGとして登録した。最後の大きな点検は事故の2週間前の2006年9月25日に行われていた。事故機は30,000時間以上、約22,000サイクル以上を経験していた<ref>AIBN: 16</ref>。
[[アトランティック・エアウェイズ]]670便は石油会社の[[チャーター便|チャーター機]]として労働者を運んでいた。ソラ空港を出発しストード空港に立ち寄り、モルデまで飛ぶ予定だった。ストード空港に[[着陸]]するときの天候は晴れで視界は10㎞以上、風は110度の方向から6ノットだった。弱い追い風のみだったため、クルーは反対方向から進入する滑走路15への着陸ではなく、そのまま真っ直ぐ着陸できる滑走路33への着陸を選択した。通常の着陸速度112ノットで午前7時32分に滑走路33に着陸した。
 
BAe 146は、滑走路の短い空港に着陸するために作られたジェット機で、4基の[[ハネウェル ALF 502|ハネウェル ALF 502R-5]][[ギヤードターボファンエンジン]]を装備したこの機体は、メインギアとノーズギアが滑走路にほぼ同時に接地するように設計されている。パワフルなホイールブレーキとエアブレーキを備え、スポイラーが着陸時にすぐ展開できるが、[[逆噴射装置|スラストリバーサー]]は搭載していなかった<ref>AIBN: 15</ref>。
着陸後、すぐ副操縦士が[[スポイラー]]を作動させたが故障のため使えなかった。そのため、機長は[[フットブレーキ]]と非常用ブレーキを使ったが[[速度]]は落ちなかった。機長は最後の手段として機体を勢いよくターンさせ摩擦を増やし停止させようとしたがこれも上手くいかず、[[機体]]は滑走路から[[オーバーラン]]し、崖に転落した。オーバーランした時、まだ20ノットほど速度が出ていた。
 
==空港と航空会社について==
===ストード空港===
[[File:Atlantic Airways Flight 670 cliffs.png|thumb|[[崖に囲まれたストード空港]] 、右下に見える滑走路と事故機の残骸]]
 
{{仮リンク|ストード空港|en|Stord Airport}}は、ストード島にある地方空港で、標高49メートル(161フィート)に位置する。滑走路は15と33(およそ北北西向きと南南東向き)があり、長さ1,460メートル(4,790フィート)、幅30メートル(98フィート)である<ref>AIBN: 35</ref>。滑走路は急な崖に囲まれており、空港建設時に要求された長さの滑走路安全区域が設けられていたが、事故時には基準を満たしていなかった<ref>AIBN: 36</ref> 。事故当日、滑走路の路面が湿っていたが、パイロット達には伝わらなかった<ref name=a34>AIBN: 34</ref>。
 
===アトランティック・エアウェイズ===
アトランティック・エアウェイズは[[フェロー諸島]]の航空会社であり、当時はフェロー諸島政府が運行を管理していた。事故当時、アトランティック・エアウェイズは事故機を含めた5機のBAe 146を保有していた<ref name="AIBN: 63">AIBN: 63</ref>。アトランティック・エアウェイズはモルデ近くのガス油田を開発する[[アケル・ソリューションズ]]と長期の契約を結んでいた。この契約には、ストード空港を経由する、スタヴァンゲル空港からモルデ空港までの便が、週に5便設定するようアケル・ソリューションズから要求されていた。
 
==事故の原因 経緯==
670便は7時23分にベルゲン管制と連絡を取り、滑走路15に視認進入を行うと報告した。管制官は7時24分に1,200メートル(4,000フィート)への降下を許可し7時27分にベルゲン管制の空域を抜けて、ストード空港の管制官に引き継がれた。パイロットは滑走路33に着陸することを管制官に報告した。7時31分12秒までにフラップは33度まで作動させた<ref name=a6>AIBN: 6</ref>。パイロットは{{convert|112|kn}}で着陸するようにした。しかし実際には、機体は{{convert|120|kn}}というやや高速で着陸した。7時32分14秒、670便は理想的な着陸地点から数メートル先に着陸した<ref name=a8>AIBN: 8</ref>。
 
[[File:Atlantic Airways Flight 670 fire 21 s.png|thumb|left|滑走路からオーバーランした21秒後に炎上する機体]]
 
副操縦士は着陸のおよそ1秒後に[[スポイラー (航空機)|スポイラー]]の展開をコールし、機長がスポイラーを展開させた。2秒後、スポイラー・インジケータライトが付かなかったため、副操縦士は「スポイラーが起動しない」と言った。副操縦士は油圧を確認し、スイッチが正しく設定されていることを確認し、機長はスラストレバーをフライトアイドルからアイドルアースに切り替え、着陸から6秒後にブレーキを作動させた。着陸から12.8秒後に、タイヤのスリップ音が聞こえ始めた<ref name=a8 />。機長はブレーキレバーを緑から黄色に変え、その後非常用ブレーキをかけたが、非常用ブレーキを起動したため、[[アンチロック・ブレーキ・システム|アンチロック]]装置が解除された<ref name=a9>AIBN: 9</ref>。目撃者は、着陸装置付近から煙などが出ていることを証言した<ref name=a10>AIBN: 10</ref>。
衝撃で、機体右側が炎上しだし、機長が[[エンジン]]停止をし副操縦士は乗客の誘導をしようとした。しかし、操縦席のドアは開かず、第2エンジンも停止できなかった。ドアが開かないためクルーは窓からの脱出を余儀なくされた。一方、乗客達は脱出を試みるが転落して機体が斜めになっており、さらに前方ドアが衝撃により壊れてしまったため、後方へ坂を上がるようにして後方ドアを目指した。
 
機体は着陸を中止し、上昇するには速度が落ちすぎていた。機長は、機体がオーバーランする可能性が高いと考えた。最後の手段として、機長は機体をまず右にターンさせ、次に左にターンさせることで速度を落とそうとした<ref name=a9 />。しかし、7時32分37秒、着陸から22.8秒後に機体は滑走路をオーバーランした。同時に、衝突警報がAFISによって起動された<ref name=a8 /> 。機体は、約45度の角度で落下し、停止した<ref name=a10 />。
[[File:Atlantic Airways Flight 670 rescue.png|thumb|救助活動]]
 
==救助活動==
ほとんどの乗客は脱出できたが4名が死亡。クルーを含む12人が怪我をした。炎上した機体の消火活動は2時間に及んだ。
[[File:Atlantic Airways Flight 670 rescue.png|thumb|救助活動を行うヘリコプターなど]]
 
AFISコントローラは7時32分40秒に緊急アラームを起動した。これを4秒後に救助隊員が確認し、5秒後にAFISコントローラが緊急医療センターに連絡した。4分後には警察に通報が入り、南ノルウェー救助調整センターが救急車を派遣した。警察は7時44分に現場に到着した<ref name="AIBN: 55">AIBN: 55</ref>。
==事故の原因 ==
[[File:Atlantic Airways Flight 670 cockpit.png|thumb|機体の残骸]]
 
670便は、滑走路の端から{{convert|46|m|sp=us}} 、海から{{convert|50|m|sp=us}}の場所で停止した<ref name=a47>AIBN: 47</ref>。航空機が停止した後、パイロットは燃料供給を遮断し、エンジン消火装置を作動させた。インターコムが故障したために、機長らは乗客に避難をするように伝えられなかった<ref name=a58>AIBN: 58</ref>。前方右側のドアは衝撃により使えなくなり、コックピットのドアも開かなかった。パイロットは左側のコックピット窓から避難し、残りの乗客はすべて後方の扉を通って避難した<ref name="AIBN: 55"/>。パイロットは、コックピットのドアを開けようと試みたが、無理だった。機長は、脱出後にもう一度コックピットのドアを開けようとしたが、やはり開けることはできず、さらに火災の熱により再び脱出を余儀なくされた。パイロットは2人とも重傷を負い、近くの病院へ搬送された<ref name=a58 />。機体前方部の乗客の何人かは機体後方のドアから脱出した<ref>AIBN: 59</ref>。
[[File:Atlantic Airways Flight 670 CVR.png|thumb|left|発見された670便の[[コックピットボイスレコーダー]]]]
 
[[File:Atlantic Airways Flight 670 seating.png|thumb|left|怪我の度合いを表した座席表。負傷(橙)、無傷(緑)、死亡(紫)を表している]]
消火後、ノルウェー事故調査委員会(AIBN)が事故調査を開始。[[滑走路]]でゴム片を発見し、滑走路が湿っていることに気付いた。2つの[[ブラックボックス]]は発見されたが、[[フライトデータレコーダー]](FDR)はほぼ修復不能だった。しかし、[[コックピットボイスレコーダー]](CVR)は無事だったためすぐに解析が行われた。
 
滑走路をオーバーランした後、出火し、胴体部と右翼が炎上した<ref name=a52>AIBN: 52</ref>。オーバーランした際には出火していなかったが、その後13秒以内に火災が起きた。オーバーランの45秒後、消防車が現場に到着し、5秒後に2台目が到着した。事故後、1分45秒の時点で胴体のほとんどが炎上していた。その3分30秒後に尾部が崩壊し、5分45秒後には左のエンジンが停止した。8分後に消防車が水を補給しに戻り、13分に現場に到着した。市の消防車が着いたのは18分後であった<ref>AIBN: 53</ref>。当初、消防隊は乗員乗客は全員死亡したと思っていたが、その後生存者を発見した<ref name=a61>AIBN: 61</ref>。火は9時30分に消火された<ref>AIBN: 54</ref>。
[[File:Atlantic Airways Flight 670 cliffs.png|thumb|[[ストード空港]] の滑走路と事故機の残骸]]
 
胴体部のほとんどは火災で焼け落ちた<ref name=a47 /> 。ノーズコーン付近とコックピットの下部や翼とエルロンの先端は残っていた。スポイラーを含む翼の内側部分は破壊されていたが、スポイラーアクチュエーターのうちの2つは回収された<ref name=a48>AIBN: 48</ref>。エンジンの圧縮機のブレードは無傷であり、オーバーランの前に損傷は見られなかったようだが、エンジン内のほとんどの軽合金部品は破壊されていた<ref>AISN: 49</ref>。左のランディングギヤ、エンジンカウル、右翼外側のエンジンの3つのコンポーネントが回収された<ref name=a47 />。
当初は、追い風と[[スポイラー]]故障の状況下で着陸したため減速しきれなかったと思われたが、[[シミュレーター]]での検証の結果、それでも止まれたことが分かった。
 
==事故調査と原因==
[[File:Atlantic Airways Flight 670 left main landing gear.png|thumb|発見された[[降着装置|ランディングギア]]]]
[[File:Atlantic Airways Flight 670 cockpit.png|thumb|機体コックピット付近の残骸]]
 
13時08分にノルウェー事故調査委員会(AIBN)がヘリコプターで到着した<ref name="AIBN: 42">AIBN: 42</ref> 。事故後の様子を3人が撮影していた。事故現場から{{convert|1.5|km|sp=us|0}} 付近で撮影していた者は、テープをテレビ2(ノルウェーの放送局)に売った。その後、ビデオはAIBNに渡された<ref name=a52 />。調査官が到着したとき滑走路が湿っていたが、事故当時の状況はわからないとした<ref name=a34 /> 。また、機体が火災によりほとんど焼けてしまったために、調査は不可能に近かった<ref name=a48 />。しかし、かろうじて左の着陸装置は残っていたため、それの調査を開始した<ref name=a52 />。
ところが、事故現場から新たな証拠がみつかる。[[降着装置|ランディングギア]]の一つが無事だったのだ。調べると、滑走路の[[ゴム]]片と同じようにベタついていることが分かった。さらに、タイヤ会社からごく稀におこる[[ハイドロプレーニング現象]]によるものだということを知らされた。これは、湿った滑走路とロックされているタイヤの摩擦が非常に高くなり蒸気が発生し[[ブレーキ]]が効かなくなる現象である。しかし、事故機にはそれを防ぐための[[アンチロック・ブレーキ・システム]]が搭載されていた。
 
調査官は滑走路上に残されたスリップ痕をすべて確認した。それによれば、670便が最初に接地したのは滑走路33の端から{{convert|945|m|sp=us}}地点だと判明した<ref name="AIBN: 41">AIBN: 41</ref>。また、滑走路にはゴム片が残っていた<ref name="a46"/>。機体は{{convert|1140|m|sp=us}}を過ぎた辺りで右に逸れた。{{convert|1274|m|sp=us}}から、機体がスリップしだしており、{{convert|1465|m|sp=us}}地点でオーバーランした<ref name=a46>AIBN: 46</ref>。
調査は再び暗礁に乗り上げたと思われたが、CVRの解析により多くのことが判明する。[[スポイラー]]の故障に気付いたクルーはすぐにフットブレーキをかけたが利きが悪かった。そのため、機長は非常用ブレーキを作動させたが逆にタイヤがロックされてしまい、ハイドロプレーニング現象が発生。機体が滑りだした。それがとどめとなり機体は滑走路からオーバーランした。そのため、非常用ブレーキを使わなければ滑走路のギリギリで止まれたとシミュレーターで明らかにされた。
 
[[File:Atlantic Airways Flight 670 CVR.png|thumb|left|発見回収された670便の[[コックピットボイスレコーダー]]]]
 
フライトデータレコーダーは回収されたが、火災の影響で大きく損傷していた。データのうちの大半は焼けてしまい、一部しか取り出すことができず、取り出せたのはストード空港への進入中の12秒間と最後の3秒間だけだった<ref>AIBN: 40</ref> 。フェアチャイルド社製A100S コックピットボイスレコーダは研究所に送られたが、回路板の損傷により、そこではデータを取り出すことができなかった<ref name="AIBN: 41"/>。しかし、メーカーに送ったところ、データの取り出しに成功した<ref name="AIBN: 42"/>。データは、時系列で見ることができ、事故調査委員会に送られた<ref name=a62>AIBN: 62</ref>。
 
コックピット内の音声を聞くと、機長と副操縦士は模範的な着陸手順をとっているようだった<ref name=a6 />。機長は、滑走路が{{convert|50|to|100|m|sp=us}} 長ければ、機体は停止していたと話した。また、副操縦士は、オーバーラン時の速度を{{convert|5|to|10|km/h|sp=us}}と考え、滑走路が{{convert|10|to|15|m|sp=us}} 長かったら止まっていたと話した<ref name=a9 />。
 
[[File:Atlantic Airways Flight 670 spoiler actuator.png|thumb|回収されたスポイラー・アクチュエーター]]
回収された6つのスポイラーアクチュエータは、調査のため、{{仮リンク|ケジェラー空港|en|Kjeller Airport}}にある[[ノルウェー空軍]]の施設に送られた。[[放射線]]検査により、すべて展開していなかったことが判明した<ref name=a61 />。フライト・シミュレータでBAe 146がスポイラーなしでストード空港へ着陸できるかを検証した<ref name=a62 />。乾いた滑走路であれば可能だが、湿っている場合では分からないという結果だった。スポイラー・システムの詳細な調査は、Aviation Engineeringによって行われた<ref name="AIBN: 63"/>。AIBNはスポイラーが展開しなかった原因の仮説として、レバーの機械的故障、2つのスラスト・レバー・マイクロスイッチの故障、スポイラー・システムの回路ブレーカーの故障をあげ、調査を開始した<ref>AIBN: 79</ref>。後者では、4つのうち2つが故障していただろうと述べた<ref name=a99>AIBN: 99</ref>。
[[File:Atlantic Airways Flight 670 left main landing gear.png|thumb|発見された[[降left|左主脚の装置|ランディングギア]]]]
NTSBは、スポイラーレバー機構に機械的な欠陥があったか、4つのスラスト・レバー・マイクロスイッチのうちの2つに故障があったと仮説をたて調査を行ったが、何が原因でスポイラーが起動しなかったかは判明しなかった。機体が接地し、スポイラーが展開せず、充分に減速しないことをパイロットは気付いたが、スポイラーの問題を解決する代わりに、ブレーキを使うことにした。パイロットは、滑走路内で機体を停止させるために、非常用ブレーキを起動させた。非常用ブレーキは[[アンチロック・ブレーキ・システム]]を無効化し、車輪を完全にロックする仕組みになっていた。この事故では、車輪がロックされ、滑走路表面との摩擦が増え、タイヤが急速に加熱された。そのため、加熱されたゴムがタイヤと滑走路との間に蒸気の層を作り、ブレーキの効果を著しく低下させ、停止するのに必要な距離を約60%増加させてしまった<ref name=a99/><ref>Air Crash Investigation 2017</ref>。滑走路は[[グルービング工法|グルービング]]がされておらず、[[ハイドロプレーニング現象]]が発生した。事故機は、オーバーラン時に{{convert|15|to|20|kn}}の速度が出ていた。非常用ブレーキを起動しなければ滑走路内で機体は停止したと考えられた。被害の拡大は、オーバーランによるものではなく、滑走路の急な斜面によるものだった<ref name=a100>AISN: 100</ref>。
 
さらに、NTSBは、燃料漏れにより、火災が発生したことを発見した。これは燃料タンクに火災が広がった時にエンジンが停止できなかったため、十分な酸素が供給されてしまったことが原因とされた。消防隊員は現場に迅速に到着したが、地形によって救助を妨げられ、火災も消火するのが難しくなってしまった<ref name=a100 />。機体と乗員に非がなかったことも明らかにされた。当時、スポイラーの故障時の訓練やチェックリストなどは無かった<ref>AIBN: 101</ref>。空港の地形や、安全性の欠如が事故を悪化させたとした<ref>AIBN: 102</ref>。
 
==事故後==
この事故は、BAe 146で起きた7の番目の死亡事故であり、9番目の機体損失だった<ref>{{cite web |url=http://aviation-safety.net/database/types/British-Aerospace-BAe-146/database |title=British Aerospace BAe-146 |publisher=[[Aviation Safety Network]] |accessdate=25 April 2014}}</ref>。また、アトランティック・エアウェイズの唯一の事故である<ref>{{cite web |url=http://aviation-safety.net/database/operator/airline.php?var=7992 |title=Atlantic Airways |publisher=[[Aviation Safety Network]] |accessdate=25 April 2014}}</ref>。10月11日に開催されたフランス対フェローのサッカー大会で、1分間の黙祷が捧げられた<ref>[http://www.portal.fo/mitt.php?greinar=&les_grein=33248 Silence before the match]{{dead link|date=October 2016 |bot=InternetArchiveBot |fix-attempted=yes }} Portal.fo, October 10, 2006</ref>。ストード島での事故の後、アトランティック・エアウェイズは、2014年8月までにBAe 146を退役させ、また、2007年秋頃にストード島への飛行を取り止めた。
 
==映像化==
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* [[エア・インディア・エクスプレス812便墜落事故]]
* [[ガルーダ・インドネシア航空200便墜落事故]]
==脚注==
 
{{reflist}}
{{2006年の航空事故一覧}}