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{{Portal クラシック音楽}}
『'''弦楽のためのレクイエム'''』（げんがくのためのレクイエム、{{lang-en|''Requiem for Strings''}} 、{{lang-fr|''Requiem pour orchestre à cordes''}}{{Refnest|group="注"|小野光子による作品表では武満が生前につけた欧文タイトルとして英語による表記が使われており<ref name="バート303">ピーター・バート 小野光子訳『武満徹の音楽』、音楽之友社、2006年2月10日、ISBN 4-276-13274-6、303頁</ref>、サラベール社の出版譜ではフランス語による表記が使われている<ref name="スコア1">サラベール社のスコア、1頁</ref>。}}）は、[[武満徹]]が[[1955年]]から[[1957年]]にかけて作曲した[[弦楽合奏]]曲であり、武満の初期の代表作とされる<ref name="立花14">立花隆、14頁</ref>{{Refnest|group="注"|初演時、武満は27歳であった<ref>宇佐美圭司「イシ、石の上」『音楽の手帖 武満徹』、青土社、1981年10月10日、137頁</ref>。}}。当時[[結核]]を患っていた武満が、親交のあった作曲家[[早坂文雄]]の死を悼むとともに自らの死を意識しながら書き進めた作品であり<ref name="バート69">バート（2006）、69頁</ref><ref name="立花274">立花隆『武満徹・音楽創造への旅』、文藝春秋、2016年2月20日、ISBN 978-4-16-390409-2、274頁</ref>、早坂文雄に献呈されている<ref name="解説全集459" />。初演の2年後に[[イーゴリ・ストラヴィンスキー|ストラヴィンスキー]]がこの作品にコメントしたことは作品の評価のみならず内外における武満の名声を高めることにつながった。
単一の楽章からなり、演奏時間は約9分<ref name="解説全集459" />。
== 作曲の経緯 ==
=== 武満と結核 ===
[[File: Toru Takemitsu Shinchosha 1961-7.jpg |right|thumb|180px|武満徹（1961年）]]
[[1950年]]にピアノ曲『[[2つのレント]]』で作曲家デビューを果たした武満であったが、[[1953年]]に喀血し結核と診断される<ref name="浅香22">武満浅香『作曲家・武満徹との日々を語る』、小学館、2006年3月20日、ISBN 4-09-387613-4、22頁</ref>。肺に鶏卵大の穴が開くほど病状が進行していたため[[慶應義塾大学病院|慶應病院]]で入院治療を受けるが<ref name="小野60">小野光子『武満徹 - ある作曲家の肖像』、音楽之友社、2016年9月10日、ISBN 978-4-276-22690-6、60頁</ref>完治しないままに1954年3月に退院<ref name="小野63">小野（2016）、63頁</ref>。6月には同じく結核を患っていた[[劇団四季]]の女優、若山浅香と所帯を持つこととなった<ref name="小野63" />。
武満は療養生活を続けながら、以前から親交があった作曲家'''早坂文雄'''の自宅に再び出入りするようになり<ref name="小野32">小野（2016）、32頁</ref>、そこで『[[七人の侍]]』のオーケストレーションなどを手伝った<ref name="小野63">小野（2016）、63頁</ref>。早坂もまた重度の結核を患っており、喀血を繰り返しながら作曲を続けていた<ref name="小野63" />{{Refnest|group="注"|武満が早坂と知り合ったのは1948年に遡る<ref name="小野32" />。小野（2016）は、早坂との交流を通じて武満が結核に感染したとしている<ref name="小野32" />。}}。武満も病状は思わしくなく、微熱と倦怠感が続き<ref name="小野86">小野（2016）、86頁</ref>、ひどいときには箸の上げ下ろしができないほどであったが<ref name="立花175">立花（2016）、175頁</ref>、その一方で[[ミュージックコンクレート]]の仕事のために徹夜でスタジオに籠もるなど無理を重ねていた<ref name="立花268">立花（2016）、268頁</ref>。
『弦楽のためのレクイエム』は、このような状況の中で作曲されることになる。なお、武満の病状が快方に向かうのは、新しい薬を使った治療{{Refnest|group="注"|新しく開発されたサイアジンという薬とヒドラジッドとを併用する治療法<ref name="立花174">立花（2016）、174頁</ref>。}}を受けるようになった1958年以降のことである<ref name="立花174" />。
=== 劇団四季の劇伴 ===
『弦楽のためのレクイエム』は、武満が劇団四季の公演のために書いた音楽の一部を発展させて作られている{{Refnest|group="注"|当時の劇団四季は[[ジャン・アヌイ]]などによる演劇の公演を行っており、現在のような[[ミュージカル]]作品を取り上げるようになるのは後年のことである<ref>{{Cite web |url= https://www.shiki.jp/group/company/history.html |title=劇団四季 会社概要 - 沿革|publisher=劇団四季 |accessdate=2020-06-20 }}</ref>。}}<ref name="立花269">立花（2016）、269頁</ref>。その、元となった作品については1956年の『せむしの聖女』であるとする説があるが<ref>楢崎洋子 『作曲家◎人と作品 - 武満徹』、音楽之友社、2005年9月10日、ISBN 4-276-22194-3、作品表9頁</ref>、武満は[[立花隆]]のインタビューに対し、[[1955年]]5月に劇団四季の第4回公演で上演された『'''野性の女'''』であると答えている<ref name="立花269" /><ref>楢崎洋子「武満徹の室内オーケストラのための作品」（CD『21世紀へのメッセージ Vol.4 』ライナーノート）、ポリドール、1997年9月26日、POCG-10053</ref>。
この頃の武満は自らの死も意識しており、「ちゃんとした作品を一曲も書かないで終わっては、死んでも死にきれない<ref name="立花273">立花（2016）、273頁</ref>」という悲痛な思いを持っていた。その矢先、「野性の女」の開幕の曲として書いた[[トランペット]]のモチーフを武満自身が気に入り、これを別の「ちゃんとした作品」に発展させようと考えたのである<ref name="立花269">立花（2016）、269頁</ref>。その作品の形態として武満は弦楽合奏を選ぶことになるが、それは、「野性の女」の公演から2か月後にあたる7月に「[[実験工房]]」の演奏会において『13管楽器のための室内協奏曲』を発表した際<ref name="小野74">小野（2016）、74頁</ref>、自分が想像していた音と実際に出てくる音が違っており、管楽器を使ったオーケストレーションの難しさを痛感したためである<ref name="立花270">立花（2016）、270頁</ref>{{Refnest|group="注"|武満は、[[サミュエル・バーバー]]の『[[弦楽のためのアダージョ]]』のような作品を書きたいというイメージを持っていた<Ref name="立花295">立花（2016）、295頁</ref>。}}。
=== 早坂の死 ===
書き始めた作品のタイトルについて、武満は「レクイエム」とするか「メディテーション（冥想）」とするかを決めかねていたが<ref name="立花273">立花（2016）、273頁</ref>、同年10月15日に早坂文雄が結核のため41歳の若さでこの世を去った<ref name="小野79">小野（2016）、79頁</ref>ことに衝撃を受け<ref name="立花80">立花（2016）、80頁</ref>{{Refnest|group="注"|武満は早坂の葬儀では先頭で棺を担いだ<ref name="立花80">立花（2016）、80頁</ref>。}}、これをきっかけに作品を「レクイエム」として書くことを決めた<ref name="立花274" />。なお、初演当時、武満は初演のプログラムノートに「特定の人の死を悼んでこの曲を書いたのではありません。しかし、僕はこの曲を書きながら、しばしば早坂文雄氏を憶い、その死を悼みました。<ref name="解説全集459">秋山邦晴（項目執筆）『最新名曲解説全集 第7巻-管弦楽曲IV』、音楽之友社、1970年9月1日、ISBN 978-4276010079、459頁</ref>」と記しているが、後には「早坂さんへのレクイエムであると同時に、自分自身のレクイエムであるとはっきりとらえて書き出したわけです。<ref name="立花274" />」と語っている。
ただし、「レクイエム」を書くことに決めたとは言え、この頃の武満は[[モーツァルト]]や[[フォーレ]]などのレクイエムを聴いたことがなく<ref name="立花273" />、「レクイエム」という言葉には西洋の宗教音楽から切り離された「死者の追悼のための鎮魂の音楽」というイメージしか持っていなかった<ref name="立花273" />。なお、後年になって武満は、当時偶然耳にしたジャズピアニストの[[レニー・トリスターノ]]の曲「レクイエム」（1955年に録音）に感動したことが作曲の動機の一つとなったとも述べている{{Refnest|group="注"|中央公論社の雑誌『マリ・クレール（日本版）』1987年5月号に掲載された[[加古隆]]との対談<ref name="小野398">小野（2016）、398頁</ref>。}}<ref name="小野89">小野（2016）、89頁</ref>。
=== 東京交響楽団の委嘱 ===
1957年1月、武満は[[東京交響楽団]]から作曲の委嘱を受けた<ref name="解説全集458">秋山（1970）、458頁</ref>。当時、[[上田仁]]（うえだ まさし）が常任指揮者を務める東京交響楽団は定期演奏会で日本人作曲者の作品を積極的に取り上げており<ref name="戦後上235">日本戦後音楽史研究会 編著『日本戦後音楽史 上 戦後から前衛の時代へ』、平凡社、2007年2月20日、ISBN 978-4-582-21968-5、235頁</ref>{{Refnest|group="注"|東京交響楽団は1956年までに、[[間宮芳生]]『ピアノ協奏曲』、[[柴田南雄]]『記号説』、[[鈴木博義]]『モノクロームとポリクローム』（以上1954年に初演）、早坂文雄『[[ユーカラ]]』、間宮芳生『交響曲』（以上1955年に初演）、[[戸田邦雄]]『ピアノ協奏曲第2番』（1956年に初演）を委嘱していた<ref name="戦後上236-237">日本戦後音楽史研究会（2007）、236-237頁</ref>。}}、武満にも白羽の矢が立ったのである。
その背景には、「実験工房」の活動などで武満と親交があった[[秋山邦晴]]が東京交響楽団の機関誌『シンフォニー』の編集長を務めており、その秋山が上田に、期待の若手作曲家として武満と[[佐藤慶次郎]]の名前を紹介していたことがあるとされる<ref name="立花275" /><ref name="小野397">小野（2016）、397頁</ref><ref name="浅香44">武満浅香（2006）、44頁</ref>。一方、武満自身は、鎌倉から東京に向かう[[横須賀線]]の車中で『弦楽のためのレクイエム』の楽譜の手直しをしている時に偶然、上田に声を掛けられ{{Refnest|group="注"|上田は武満と同じく鎌倉に住んでいた<ref name="立花275">立花（2016）、275頁</ref>。}}楽譜を見せたことがきっかけであると述べており<ref name="立花275" />、関係者の証言には食い違いがある<ref name="立花275" />。
武満は1955年以来少しずつ書き進めていた『弦楽のためのレクイエム』をもってこの委嘱に応えることとし、委嘱を受けてから4か月後の1957年5月に完成させた<ref name="解説全集458" />。スコアの浄書と複数の筆写譜の作成については、病床にあった武満がかなり衰弱していたため妻の武満浅香が代わりに行った<ref name="小野87">小野（2016）、87頁</ref>。
== 初演 ==
1957年6月20日に[[日比谷公会堂]]で行われた東京交響楽団第87回定期演奏会（指揮：[[上田仁]]）において『弦楽のためのレクイエム』は初演された<ref name="解説全集459" /><ref name="戦後上236-237" />{{Refnest|group="注"|初演では、演奏が始まってすぐにコントラバスの弦が切れて大きな音がするというアクシデントがあった<ref name="立花281">立花（2016）、281頁</ref>。}}。この時の演目は以下のとおりであった<ref name="立花281" />。
*武満徹 『弦楽のためのレクイエム』
*[[アルベール・ルーセル]] 『[[小管弦楽のためのコンセール]]』
*[[フランツ・シューベルト]] 『[[交響曲第5番 (シューベルト)|交響曲第5番]]』
*[[セルゲイ・ラフマニノフ]] 『[[ピアノ協奏曲第3番 (ラフマニノフ)|ピアノ協奏曲第3番]]』
== 初演後の評価 ==
初演に対する聴衆の反応は芳しくなく<ref name="解説全集458" /><ref name="立花282">立花（2016）、282頁</ref>、批評も一部を除き冷ややかなものであった<ref name="解説全集458" /><ref name="立花282" />{{Refnest|group="注"|ただし、『2つのレント』を「音楽以前」と切り捨てた評論家[[山根銀二]]が[[東京新聞]]に載せた批評は比較的好意的で丁寧であった<ref name="立花282" />。}}。前衛的な要素が理解されなかったというわけではなく、評論家の[[園部三郎]]は6月24日付けの[[読売新聞]]において「日ごろ、実験主義的主張をしている武満氏の作品としては、意外に素直な作風で驚かされた。<ref name="浅香47">武満浅香（2006）、47頁</ref>」と記している。
武満自身は後に『弦楽のためのレクイエム』を「私が作曲家として書いた最初の作品<ref name="立花268" />」と位置づけているが、初演直後には作品に満足しておらず、当時の心境を振り返って次のように述べている。
{{Quotation|いろんな意味で『レクイエム』は満足できる作品ではありませんでした。第一にあまりに情緒的でした。あまりに個人的な思い入れに押し流されて書いていました。自分のパーソナルな感情を単純に表現するだけのロマンチシズムに終わっていました。<ref name="立花301">立花（2016）、301頁</ref>}}
このような不満を背景として作曲された作品が<ref name="立花333">立花（2016）、333頁</ref>翌1958年の『[[ソン・カリグラフィ]]』であり{{Refnest|group="注"|『ソン・カリグラフィ』は[[芥川也寸志]]に献呈された<ref name="小野94">小野（2016）、94頁</ref>。}}、『弦楽のためのレクイエム』とは対照的に<ref name="立花301" />厳格な書法により書かれている<ref name="立花296" >立花（2016）、296頁</ref>。なお、『ソン・カリグラフィ』は[[1958年]]8月に行われた[[二十世紀音楽研究所]]の第2回軽井沢現代音楽祭の作曲コンクールにおいて[[松下眞一]]の『8人の奏者のための室内コンポジション』とともに順位なしの入賞を果たしている<ref name="楢崎49">楢崎（2005）、49頁</ref><ref name="戦後上313">日本戦後音楽史研究会（2007）、313頁</ref>{{Refnest|group="注"|立花（2016）では「第1位を獲得」となっている<ref name="立花305">立花（2016）、305頁</ref>。}}。
== ストラヴィンスキーのコメント ==
[[File:Igor Stravinsky 1965.jpg |right|thumb|180px|ストラヴィンスキー（1965年）]]
『[[ペトルーシュカ]]』や『[[春の祭典]]』などの作品で知られるロシア出身（来日当時はアメリカ国籍）の作曲家イーゴリ・ストラヴィンスキーが[[1959年]]に来日した際{{Refnest|group="注"|ストラヴィンスキーは[[大阪国際フェスティバル]]協会の招きにより[[1959年]]の4月～5月にかけて来日した<ref name="小野98">小野（2016）、98頁</ref><ref name="戦後上348">日本戦後音楽史研究会（2007）、348頁</ref>。詳しくは[[イーゴリ・ストラヴィンスキー#日本訪問]]を参照。}}、『弦楽のためのレクイエム』の録音を聴いて{{Refnest|group="注"|この録音について、『武満徹全集』の編集長であった大原哲夫は、[[森正]]が指揮する[[NHK交響楽団]]による1958年の録音であろうと推測している<ref name="浅香48&51">浅香（2006）、48頁、51頁</ref>。}}次のようにコメントした{{Refnest|group="注"|このコメントは、ストラヴィンスキーに同行していた[[ドナルド・リチー]]が執筆した「東京のストラヴィンスキー」（『音楽芸術』1959年7月号に収録）の中で紹介された<ref name="立花711">立花（2016）、711頁</ref>。}}。
{{Quotation|この音楽は実にきびしい{{Refnest|group="注"|「きびしい」は「インテンス（ intense ）」の訳語である<ref name="立花14" />。}}。全くきびしい。このような、きびしい音楽が、あんな、ひどく小柄な男から{{Refnest|group="注"|ストラヴィンスキーは来日後、作品を聴くよりも前に武満をランチに招き顔を合わせていた<ref name="小野99" />。ただし、このときの会談の内容はおろか、日時もはっきりしていない<ref name="小野101">小野（2016）、101頁</ref>。}}、生まれるとは。<ref name="小野100">小野（2016）、100頁</ref> }}
ストラヴィンスキーが日本の作曲家の作品を知るため、日本の音楽界に詳しかったヒューエル・タークイ{{Refnest|group="注"|『アサヒ・イヴニング・ニューズ』の音楽評論家で打楽器奏者<ref name="小野99">小野（2016）、99頁</ref>。}}やハロルド・クルサーズ{{Refnest|group="注"|英文『ヨミウリ』の音楽評論家でチェロ奏者<ref name="小野99" />。}}と共に様々な作品のテープやスコアにあたっていたときの発言である<ref name="戦後上348"/>。
このとき、ストラヴィンスキーは[[福島和夫]]による[[アルト・フルート]]と[[ピアノ]]のための作品『エカーグラ』に対して「これはいい曲だ。実にいい曲だ。<ref name="戦後上349">日本戦後音楽史研究会（2007）、349頁</ref>」と賛辞を送ったのだが<ref name="小野99" /><ref name="戦後上349" />、これが『弦楽のためのレクイエム』へのコメントと混同され<ref name="戦後上350">日本戦後音楽史研究会（2007）、350頁</ref>「ストラヴィンスキーが武満の『弦楽のためのレクイエム』を'''激賞した'''」と誇張されて伝わった<ref name="戦後上350" />。このことは結果的に武満に対する世間の評価を一転させることになり<ref name="立花300">立花（2016）、300頁</ref>{{Refnest|group="注"|ただし、ストラヴィンスキーのコメントの前年（1958年）には、軽井沢音楽祭で『ソン・カリグラフィ』がコンクール入賞を果たす（先述）とともに<ref name="立花306">立花（2016）、306頁</ref>、『[[ソリチュード・ソノール]]』の作曲によって文化庁の第13回芸術祭個人奨励賞を獲得しており<ref>{{Cite web |url= https://www.bunka.go.jp/seisaku/geijutsubunka/jutenshien/geijutsusai/pdf/s31_s40.pdf |title=文化庁芸術祭賞受賞一覧 - 昭和31年度（第11回）～昭和40年度（第20回）|publisher=文化庁 |accessdate=2020-06-20 }}</ref>、武満がそれまで全く評価されていなかったわけではい<ref name="戦後上350" />。}}、翌[[1960年]]に行われた第1回東京現代音楽祭{{Refnest|group="注"|[[NHK]]と[[朝日新聞社]]共催による現代音楽祭。ストラヴィンスキーの[[アゴン (ストラヴィンスキー)|アゴン]]の日本初演のほか、[[林光]]の『[[原爆小景|水ヲ下サイ]]』、[[矢代秋雄]]の『[[弦楽四重奏曲 (矢代秋雄)|弦楽四重奏曲]]』、[[三善晃]]の『ピアノソナタ』などが再演された<ref name="戦後上410-411">日本戦後音楽史研究会（2007）、410-410頁</ref>。}}においては、再演された『弦楽のためのレクイエム』がドイツ大使賞を受賞した<ref name="楢崎9">楢崎（2005）、9頁 </ref>。
また、ストラヴィンスキーのコメントは1971年にヨーロッパで武満が特集された際{{Refnest|group="注"|パリ国際音楽週間（SMIP）「現代音楽の日々」でテーマ作曲家の一人として取り上げられた<ref name="小野433">小野（2016）、433頁</ref>。}}にも引用され、「ストラヴィンスキーに認められた」と作曲家として紹介されることになるのである<ref name="小野100" />。
一方、アメリカでは、ちょうどストラヴィンスキーの来日前後より、タークイと親交があった指揮者{{仮リンク|ソア・ジョンソン | en| Thor Johnson }}が演奏会で『弦楽のためのレクイエム』を頻繁に取り上げており<ref name="立花710">立花（2016）、710頁</ref>、1960年代には[[小澤征爾]]も積極的に取り上げるようになった<ref name="立花710" />。タークイは『音楽芸術』1963年1月号に掲載された「特集／現代日本作曲家論」の中で次のように述べている。
{{Quotation|『弦楽のためのレクイエム』は東京のあらゆるオーケストラによって演奏されており、東京以外でも数多く演奏されている。それはヨーロッパやアメリカでも演奏されているし、日本の作曲家の最初の後世に残る〈古典〉の一つと考えられよう。<ref name="立花711">立花（2016）、711頁</ref>}}
実演ばかりでなく、1960年代には、[[岩城宏之]]指揮によるNHK交響楽団（1961年）、[[若杉弘]]指揮による[[読売日本交響楽団]]（1966年）、小澤征爾指揮による[[トロント交響楽団]]（1969年）などによる録音も行われている{{Refnest|group="注"|ここに挙げた3人の指揮者はいずれも後に『弦楽のためのレクイエム』の再録音を行っている。}}。
== 出版 ==
楽譜は1962年に[[音楽之友社]]から出版され、その後1970年にフランスの{{仮リンク|サラベール社|fr|Éditions Durand-Salabert-Eschig}}が武満と出版契約を結んで音楽之友社から版権を買い取った<ref name="川島19">川島素晴「《弦楽のためのレクイエム》サラベール版を検証する」『季刊エクスムジカ第2号』、ミュージックスケイプ、2000年8月31日、19頁</ref>{{Refnest|group="注"|サラベール社のスコアには出版年が1962年と記載されているが<ref name="スコア1" />、これはサラベール社が音楽之友社の版をほぼそのまま使用したためである<ref name="川島19" />。}}。
出版譜にはいくつかの間違いがあることが指摘されており、その中には浅香夫人が作成した筆写譜段階でのミスも含まれている<ref>小野（2016）、85-86頁</ref>。作曲家の[[川島素晴]]は、現行の出版譜、武満浅香の筆写スコアのコピー{{Refnest|group="注"|武満の没後に、外国（武満浅香の記憶ではおそらくカナダ）から武満浅香あてに送られてきたもの<ref name="川島19" />。川島（2000）は、楽譜が出版されていない時期に外国で演奏するため、何者かが筆者譜のコピーを取り寄せていたのではないかと推測している<ref name="川島19" />。}}、東京交響楽団が初演当時に使用していたパート譜の書き込み、指揮者の[[秋山和慶]]が東京交響楽団で演奏した際に武満本人に確認しながら校訂を加えた楽譜などを比較検討し<ref name="川島21-22">川島（2000）、21-22頁</ref>、『エクスムジカ』（2000年）誌上において詳細な校訂報告を行っている<ref name="川島22-28">川島（2000）、22-28頁</ref><ref>{{Cite web |url= https://archive.is/0IMZu#selection-331.13-331.19 |title=パネルディスカッション4「武満徹と日本の作曲」|publisher=日本音楽学会第57回全国大会|accessdate=2020-06-20 }}</ref>。
== 楽器編成 ==
第1[[ヴァイオリン]] 10、第2ヴァイオリン 9、[[ヴィオラ]] 8、[[チェロ]] 7、[[コントラバス]] 7 <ref name="解説全集459" />
== 曲の特徴 ==
=== 概要 ===
武満が初演時のプログラムノートにおいて「はじめもおわりもさだかでない、人間とこの世界とをつらぬいている'''音の河'''の流れの或る部分を、偶然にとり出したもの<ref name="解説全集459" />」と述べているように、作品は沈黙から生まれて沈黙へと帰っていく<ref name="斎藤8">斎藤弘美 曲目解説（CD「武満徹 ヴィジョンズ、ノヴェンバーステッップス他」ライナーノート）、日本コロムビア、1992年1月、COCO-9441、8頁</ref>。
冒頭は[[弱音器]]をつけた第一ヴァイオリンによるピアニシモの[[嬰ヘ]]音で始まり、他の楽器が加わって下の譜例のような重く沈んだ和音の響き<ref name="斎藤8" />をつくる。
<score>
\relative c' {
\new PianoStaff <<
\new Staff \with { \remove "Time_signature_engraver" }
{ \key c \major fis1 }
\new Staff \with { \remove "Time_signature_engraver" }
{ \key c \major \clef bass <f! d! bes ees, g,! >1 } >> }
</score>
そこにチェロのソロとヴィオラが「内的独白<ref name="解説全集460">秋山（1970）、460頁</ref>」のような旋律を奏でる。[[佐野光司]]は、この旋律に含まれる「嬰ヘ - ヘ - ロ」という3つの音の動き（下の譜例、左）と、後に『[[遠い呼び声の彼方へ!]]』『[[海へ (武満徹)|海へ]]』などの作品で使われることになる「海のモチーフ」（「Es(=S) - E - - A」、下の譜例、右）との音程の面での共通点を指摘している<ref name="佐野24">佐野光司「日本語で語る音楽への軌跡 - 日本の作曲界における武満徹」、『武満徹 - 音の河のゆくえ』、24頁</ref>{{Refnest|group="注"|いずれも、[[半音|短2度]]、[[三全音|減5度]]（増4度）、[[完全5度]]を含んでいる。}}。
<score>
\relative c'' {
\new PianoStaff <<
\new Staff \with { \remove "Time_signature_engraver" }
{ \key c \major \time 3/1 fis1 f b, \bar "||" es e a, }
>> }
</score>
この旋律を中心として、葬送を表すような沈痛な面持ち<ref name="小野88">小野（2016）、88頁</ref>で曲は進行していく。一部を除いて極めて遅いテンポがとられており{{Refnest|group="注"|冒頭部分のテンポは四分音符66 と指定されているが、基本的な単位である二分音符では1分間に33拍となる。}}<ref name="バート70">バート（2006）、70頁</ref>、それは加速したり減速したりして絶え間なく変化する<ref name="解説全集459" />。また、三連符が多用されており、遅いテンポと相まって規則正しい拍節がないような印象を与える<ref name="バート70" /><ref name="小野88" />。例として冒頭部分の主要な楽想のリズムを以下に示す。上段が主旋律のリズムである<ref name="スコア1" />。
<score>
<<
\new RhythmicStaff { \new Voice = "myRhythm"
{ \time 5/2 r2 r4 f2.~f4 ees2.~ | ees4 fis4 \tuplet 3/2 { f2 b4 } dis1~dis2~ | \time 3/2 dis1. |}}
\new RhythmicStaff { \new Voice = "myRhythm"
{ \time 5/2 r2 g1 e1 | a1 g2~ \tuplet 3/2 { g4 ees4 d4~ } \tuplet 3/2 { d4 b4 r8 e8~ } | \time 3/2 e1. |}}
>>
</score>
武満は作品独特の時間感覚について「＜拍（ビート）＞に対する概念が西欧のそれとは全く異なっています。言うなれば、One by One のリズムの上に曲は構成されています。<ref name="解説全集459" />」と説明している。「One by One のリズム」という謎のような表現<ref name="バート70"/>について、小野（2016）は[[能]]におけるリズムの揺らぎのようなものと解釈している<ref name="小野89" />。規則正しい拍によらないこの作品を指揮する上でのコツとして、[[小澤征爾]]は「合わなくてもいいからやって下さいってやると、やってるうちに、何となくどこかで合うの。<ref name="小野89" />」と述べている。
=== 構成 ===
全75小節<ref name="小野89" />の構成について、武満は「自由な三部形式で、速度の配置は Lent - Modéré - Lent となっています<ref name="解説全集458" />」と述べており、バート（2006）は、以下のように A-B-A の三部形式をもとに5つの部分に分けている<ref name="バート75">バート（2006）、75頁</ref>。このうち A1の前半、B2、A2 のそれぞれの結尾部には独奏がおかれており、構造の理解を助ける目印の役割を果たしている<ref name="バート76">バート（2006）、76頁</ref>。なお、秋山（1970）は全体を3つに区分しながら、第22小節以降を第2の部分（展開部分）としている<ref name="解説全集460" />。
{| class="wikitable" style="text-align:left"; font-size:small" border="1"
|+ 『弦楽のためのレクイエム』の構造 <ref name="バート75表">バート(2006)、75頁により作成。</ref>
|-
! colspan="2" |区分|| 小節 || 独奏による結尾
|+
|-
| rowspan="2" colspan="2" | '''A1'''（ Lent ） || 第1～第21小節 || ヴィオラ（20～21小節）
|-
| 第22～第36小節（冒頭の変形された反復 <ref name="バート75" />）||
|-
| rowspan="2" | '''B''' （Modéré ）|| '''B1''' || 第37～第47小節 ||
|-
| '''B2''' ||第48～第60小節（ B1 の厳密な反復＋コデッタ）|| ヴィオラ（59～60小節）
|-
| colspan="2" | '''A2'''（ Lent ） || 第61～第75小節（ 第1～第19小節の短縮された再現＋コーダ）|| ヴァイオリン（73～75小節）
|}
武満自身は「単一の主題<ref name="解説全集458" />」であると表現しているが、バート（2006）は音楽的な素材を以下の6種類に分類している{{Refnest|group="注"|バートは素材の表記も A1、A2、A3 … のように大文字で表記しているが、構造のA1 ''etc'' と見分けるために小文字に改めた。}}。
* '''a''' ：冒頭の旋律主題。〈 a1 〉～〈 a4 〉の形で登場する。
* '''b''' ：上行する三連符で始まる動機。〈 b1 〉～〈 b10 〉の形で登場し、〈 b8 〉〈 b9 〉として中間部でも登場する。
* '''c''' ：フォルテで奏されるコラール風の重く暗い和音<ref name="解説全集460" />。これは1度しか登場しない。
* '''d''' ：主題よりも遅いテンポで奏される短い動機の繰り返し<ref name="バート74">バート（2006）、74頁</ref>。〈 d1 〉として提示され、中間部でも〈 d2 〉として登場する{{Refnest|group="注"|[[船山隆]]は、この動機が『[[ア・ウェイ・ア・ローン]]』（1981年）の中で引用されていると指摘している<ref>船山隆『武満徹・響きの海へ』、音楽之友社、1998年3月10日、ISBN 4-276-13276-2、16頁</ref>。}}。
* '''e''' ：中間部の Modéré で使われるリズミックな音型<ref name="斎藤8" />。
* '''f''' ：中間部の結尾（コデッタ）でヴィオラのソロによって奏でられる動機。これも1度しか登場しない。
これらの音楽素材の配置は以下の表のようになっている。なお、表中において、太字で表示した素材は反復されないものである。
{| class="wikitable" style="text-align:left"; font-size:small"border="1"
|+ 『弦楽のためのレクイエム』における音楽素材の配置 <ref name="バート75表" />
|-
|+
|-
| rowspan="2" |第1～第21小節 || ''Lent'' ♩= 66 ||''Lourd'' ||''Plus Lent'' ♩= 52 ||''1er Mouvt'' ♩= 66 ||
|-
| 〈 a1 〉〈 a2 〉〈 b1 〉〈 '''b2''' 〉 || 〈 '''c''' 〉 || 〈 '''d1''' 〉 || 〈 b3・a3 〉〈 a4 〉 || 〈 '''b4''' 〉
|}
{| class="wikitable" style="text-align:left"; font-size:small"border="1"
|+
|-
| rowspan="2" |第22～第36小節 || style="text-align:left" |''Encore plus Lent'' ♩= 56～60
|-
| 〈 '''a5''' 〉〈 '''b5''' 〉〈 '''b6''' 〉〈 '''a6''' 〉
|}
{| class="wikitable" style="text-align:left"; font-size:small"border="1"
|+
|-
| rowspan="2" |第37～第47小節 || style="text-align:left" |''Modéré'' ♩= 85～90 ||''Encore un peu Lent'' ||''Mouins Lent'' ♩= 56 ||''Modéré'' ♩= 85～90
|-
| 〈 e1 〉〈 e1 〉〈 b7・e2 〉 || 〈 b8 〉 || 〈 d2 〉 || 〈 e2 〉〈 e2 〉〈 b9 〉
|}
{| class="wikitable" style="text-align:left"; font-size:small"border="1"
|+
|-
| rowspan="2" |第48～第60小節 || style="text-align:left" |''Modéré'' ♩= 85～90 ||''Encore un peu Lent'' ||''Mouins Lent'' ♩= 56 ||''Modéré'' ♩= 85 || ''Lent'' '' ♩= 56～60
|-
| 〈 e1 〉〈 e1 〉〈 b7・e2 〉|| 〈 b8 〉 || 〈 d2 〉 || 〈 e2 〉〈 e2 〉〈 b9 〉 || 〈 '''f''' 〉
|}
{| class="wikitable" style="text-align:left"; font-size:small" border="1"
|+
|-
| rowspan="2" |第61～第75小節 || ''Lent'' ♩= 66 ||''1er Mouvt'' ♩= 66 ||
|-
| 〈 a1 〉〈 a2 〉〈 b1 〉 || 〈 b3・a3 〉〈 a4 〉 || 〈 '''b10''' 〉
|}
中間部はテンポが上がるが、すぐに〈 b8 〉や〈 d2 〉が現れ Lent に戻る。このことを武満は次のように説明している。
{{Quotation|速度の境界はきわめて曖昧なもので、主題は波紋のように拡がるゆるやかな振幅の内部（うち）に在り、たちあらわれる痙攣的な形態、あるいは Tempo Modéré は水泡のように突然あらわれて、たえずゆるやかな振幅に合流しようとします。ですから指定された速度は、♩≒66に終始する一種の変奏曲といったほうが正確でありましょう。<ref name="解説全集459" />}}
== 東日本大震災の犠牲者への追悼として ==
{{External media
| width = 310px
| topic = '''東日本大震災の犠牲者を追悼するために演奏された、ニューヨーク・フィルハーモニックによる'''『'''弦楽のためのレクイエム'''』（2011年3月17日）
| audio1 = [https://www.youtube.com/watch?v=eX-592kFeF4&feature=emb_title Performance of Takemitsu's Requiem, March 17, 2011] - ニューヨーク・フィルハーモニック公式YouTube
<br />
<br />
* 0:28～ アラン・ギルバートのメッセージ
* 1:41～ エサ・ペッカ・サロネンのメッセージ
* 2:30～ 『弦楽のためのレクイエム』演奏
}}
武満の「パーソナルな感情を単純に表現<ref name="立花301" />」した『弦楽のためのレクイエム』は、[[2011年]]の[[東日本大震災]]の後には、多くの犠牲者に対する普遍的な追悼の音楽として、いくつかの国や地域で演奏された。
震災（[[3月11日]]）の翌週、3月17日に行われた[[ニューヨーク・フィルハーモニック]]の演奏会では、当初、[[エサ・ペッカ・サロネン]]の客演指揮による、ハンガリーをテーマとしたプログラム{{Refnest|group="注"|[[リゲティ・ジェルジュ|リゲティ]]の『[[ルーマニア協奏曲]]』、[[フランツ・ヨーゼフ・ハイドン|ハイドン]]の[[交響曲第7番 (ハイドン)|交響曲第7番『昼』]]、[[バルトーク・ベーラ|バルトーク]]の『[[管弦楽のための協奏曲 (バルトーク)|管弦楽のための協奏曲]]』}}が予定されていたが<ref name="NYP">{{Cite web |url=https://archives.nyphil.org/index.php/artifact/5e0516db-bbe9-4e9e-b5cd-91bf4cbf674f-0.1/fullview#page/2/mode/2up |title=DIGITAL ARCHIVES 2011 Mar 17 / Subscription Season / Salonen (ID: 10672)|publisher=New York Philharmonicl|accessdate=2020-06-21 }}</ref>、急遽、演奏会の冒頭で音楽監督[[アラン・ギルバート]] {{Refnest|group="注"|アラン・ギルバートの母親は日本人である。}}とサロネンによって追悼のメッセージと募金協力の呼びかけが行われ、続けて『弦楽のためのレクイエム』がギルバートの指揮により演奏された{{Refnest|group="注"|演奏会パンフレットの曲目が書かれたページには"TAKEMITSU Requiem (Alan Gilbert, conductor) "と書かれたシールが貼られている<ref name="NYP" />。}}
<ref>{{Cite web |url= http://data.instantencore.com/pdf/1005288/booklet_2track.pdf |title= Takemitsu's Requiem for String
Orchestra |publisher= New York Philharmonic |accessdate=2020-06-21 }}</ref>{{Refnest|group="注"|なお、当日のメッセージと演奏は、Youtubeのニューヨーク・フィルハーモニック公式チャンネルで公開されている<ref>{{Cite web |url= https://www.youtube.com/watch?v=eX-592kFeF4&feature=emb_title|title=Performance of Takemitsu's Requiem, March 17, 2011|publisher= New York Philharmonic |accessdate=2020-06-21 }}</ref>。}}。
アメリカにおいては、この約1週間後、[[ピッツバーグ交響楽団]]が[[アンドリス・ネルソンス]]指揮による3月25日、27日の演奏会の曲目の一部を『弦楽のためのレクイエム』に差し替えている<ref>{{Cite web |url= https://www.post-gazette.com/ae/music/2011/03/22/PSO-program-change-this-weekend-to-commemorate-victims-in-Japan/stories/201103220295 |title= PSO program change this weekend to commemorate victims in Japan |publisher= Pittsburgh Post-Gazette |accessdate=2020-06-21 }}</ref><ref>{{Cite web |url=https://www.cdjournal.com/main/news/-/37447 |title=オクタヴィア・レコードが収益の一部を寄付。エリアフ・インバル他からのメッセージも|publisher=CD Journal|accessdate=2020-06-21 }}</ref><ref>{{Cite web |url= https://archive.pittsburghsymphony.org/discover?scope=%2F&query=takemitsu+requiem+2011&submit=&rpp=10 |title=digital archives|publisher= pittsburghsymphony |accessdate=2020-06-21 }}</ref>。
また、3月27日にはドイツのハンブルクで[[北ドイツ放送交響楽団]]（現在のNDRエルプフィルハーモニー管弦楽団）による日本救援を目的としたチャリティコンサートが行われ、ここでも『弦楽のためのレクイエム』が演奏されている。なお、このコンサートの指揮もアラン・ギルバートが務めた<ref>{{Cite web |url= https://www.ndr.de/der_ndr/presse/mitteilungen/pressemeldungndr7909.html |title= Konzert für Japan - Benefizkonzert des NDR Sinfonieorchesters unter Alan Gilbert |publisher= NDR Presse und Information |accessdate=2020-06-21 }}</ref>。
4月以降も、イギリスのロンドン（4月1日）<ref>{{Cite web |url= https://www.uk.emb-japan.go.jp/japanuk150/events/theatre/charity_concert.html|title=Japan Festival - Charity Concert and Workshop|publisher=Embassy of Japan in the UK（在英国日本国大使館）|accessdate=2020-06-21 }}</ref>、フランスのパリ（4月10日）<ref>{{Cite web |url= http://www.asahi.com/special/10005/TKY201104110376.html|title=ユネスコに響く震災レクイエム 音楽家１１０人が結集|publisher=朝日新聞デジタル|accessdate=2020-06-21 }}</ref>、ブラジルのサンパウロ（4月11日）<ref>{{Cite web |url= https://www.nikkeyshimbun.jp/2011/110407-73colonia.html|title=サンパウロ交響楽団＝震災⽀援コンサート＝宗像直美指揮で武満作品も|publisher=JORNAL ニッケイ新聞|accessdate=2020-06-21 }}</ref>、フィンランドのヘルシンキ（4月24日）<ref>{{Cite web |url=http://www.jfcms.org/2012/05/10.html |title=改めて感じた日フィン間の絆～この10年の活動を振り返って～（野津如弘）|publisher=日本・フィンランド 新音楽協会|accessdate=2020-06-21 }}</ref>などにおいて『弦楽のためのレクイエム』が東日本大震災と関連したチャリティーコンサートなどの演目として取り上げられた{{Refnest|group="注"|これらには、パリの[[阿部加奈子]]、サンパウロの[[宗像直美]]のように、海外で活動する日本人が演奏に関わっているケースが見られる。}}。その後もこのような形での演奏は行われ続け<ref>{{Cite web |url=http://mincoco.tasukeaijapan.jp/?cat=477&tag=%E5%91%BD |title=東日本大震災チャリティーコンサート サン・ガウデンツィオ教会|publisher=助けあいジャパン|accessdate=2020-06-21 }}</ref><ref>{{Cite web |url=https://16thwc.suzukimethod.or.jp/fromworld.html |title=世界からのメッセージ|publisher=第16回スズキメソード世界大会in松本|accessdate=2020-06-21 }}</ref><ref>{{Cite web |url=https://www.jpf.go.jp/j/project/culture/archive/information/1210/10-03.html |title=仙台フィル ロシアで感謝の公演 「音楽の力」による復興活動も複合的に紹介|publisher=国際交流基金|accessdate=2020-06-21 }}</ref>、東京交響楽団は2017年3月11日に「被災地復興支援チャリティ・コンサート」を行い、同団が60年前に初演した『弦楽のためのレクイエム』を開幕で演奏している<ref>{{Cite web |url=https://www.kawasaki-sym-hall.jp/blog/?p=9556 |title=「第4回 被災地復興支援チャリティ・コンサート」を開催しました|publisher=ミューザ川崎シンフォニーホール オフィシャルブログ|accessdate=2020-06-21 }}</ref>。
== 脚注 ==
<references group="注" />
== 出典 ==
{{Reflist|3}}
== 参考文献 ==
* 秋山邦晴（項目執筆） 『最新名曲解説全集 第7巻-管弦楽曲IV』、音楽之友社、1970年9月1日、ISBN 978-4276010079
* 宇佐美圭司 「イシ、石の上」『音楽の手帖 武満徹』、青土社、1981年10月10日
* 小野光子 『武満徹 - ある作曲家の肖像』、音楽之友社、2016年9月10日、ISBN 978-4-276-22690-6
* 川島素晴 「《弦楽のためのレクイエム》サラベール版を検証する」『季刊エクスムジカ第2号』、ミュージックスケイプ、2000年8月31日
* 斎藤弘美 曲目解説（CD「武満徹 ヴィジョンズ、ノヴェンバーステッップス他」ライナーノート）、日本コロムビア、1992年1月、COCO-9441
* 佐野光司 「日本語で語る音楽への軌跡 - 日本の作曲界における武満徹」『武満徹 - 音の河のゆくえ』、平凡社、2000年3月20日、ISBN 4-582-29902-4
* 武満浅香 『作曲家・武満徹との日々を語る』、小学館、2006年3月20日、ISBN 4-09-387613-4
* 立花隆 『武満徹・音楽創造への旅』、文藝春秋、2016年2月20日、ISBN 978-4-16-390409-2
* 楢崎洋子 『作曲家◎人と作品 - 武満徹』、音楽之友社、2005年9月10日、ISBN 4-276-22194-3
* 楢崎洋子 「武満徹の室内オーケストラのための作品」（CD『21世紀へのメッセージ Vol.4 』ライナーノート）、ポリドール、1997年9月26日、POCG-10053
* 日本戦後音楽史研究会 編著 『日本戦後音楽史 上 戦後から前衛の時代へ』、平凡社、2007年2月20日、ISBN 978-4-582-21968-5
* バート，ピーター 小野光子訳 『武満徹の音楽』、音楽之友社、2006年2月10日、ISBN 4-276-13274-6
* 船山隆 『武満徹・響きの海へ』、音楽之友社、1998年3月10日、ISBN 4-276-13276-2
== 関連項目 ==
* 映画『[[スパイ・ゾルゲ]]』 武満が音楽を担当する予定であった、[[篠田正浩]]監督による2003年の映画。武満の死去に伴い[[池辺晋一郎]]が音楽を担当したが、[[二・二六事件]]の青年将校が処刑されるシーンでは『弦楽のためのレクイエム』が使われている<!-- 出典：武満浅香（2006）、48頁、51頁 -->。
{{DEFAULTSORT:けんかくのためのれくいえむ}}
[[Category:武満徹の楽曲]]
[[Category:弦楽合奏曲
[[Category:
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