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同属の別種も「ココボロ」と呼ばれ得る。
ノートページにおける㭍月例祭さんのアイデアを反映し、D. retusa のみをココボロと述べている文献を列挙。ただ、ウォーカー (2006) の著者の一人が実はギブス氏であったり、河村・西川 (2014) の参考文献として他3つの典拠全てが挙げられていたり、出典同士の独立性は恐ろしく弱いです。
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{{分割提案|ダルベルギア・レトゥサ|date=2018年6月}}
{{生物分類表
[[Image:Cocobolo chess pieces.jpg|thumb|300px|ココボロで製作されたチェス駒]]
| 色 = 植物界
'''ココボロ'''(cocobolo)は、中米原産の[[ツルサイカチ属]]の植物[[ダルベルギア・レトゥサ]]({{Snamei||Dalbergia retusa}})や {{Snamei|D. granadillo}}<ref>[http://www.trafficj.org/cop14/Cop14-press5.pdf 第14回ワシントン条約締約国会議 in ハーグ 木材種 編]({{仮リンク|トラフィック (非営利団体)|label=トラフィック|en|Traffic (conservation programme)}})。{{Accessdate|2018-06-14}}</ref> の[[心材]]として得られる[[木材]]である。ここでは、植物についても説明する。
| 名称 = {{PAGENAME}}
| 画像 =
| 画像キャプション =
| status = VU2.3
| status_ref = <ref name="IUCN">Americas Regional Workshop (1998).</ref>
| 分類体系 = [[APG IV]]
| 界 = [[植物界]] {{Sname||Plantae}}
| 門階級なし = [[被子植物]] {{Sname||angiosperms}}
| 綱階級なし = [[真正双子葉類]] {{Sname||eudicots}}
| 亜綱階級なし = [[コア真正双子葉類]] {{Sname||core eudicots}}
| 下綱階級なし = [[バラ上類]] {{Sname||superrosids}}
| 団階級なし = [[バラ類]] {{Sname||rosids}}
| 上目階級なし = [[マメ類]] {{Sname||fabids}}
| 目 = [[マメ目]] {{Sname||Fabales}}
| 科 = [[マメ科]] {{Sname||Fabaceae}}
| 属 = [[ツルサイカチ属]] {{Snamei|Dalbergia}}
| 種 = '''{{PAGENAME}}''' {{Snamei|D. retusa}}
| 学名 = {{Snamei|Dalbergia retusa}} {{AU|Hemsl.}}<ref name="IUCN" />
| シノニム =
* {{Snamei|Amerimnon lineatum}} ({{AU|Pittier}}) {{AU|Standl.}}<ref name="PL">''The Plant List'' (2013).</ref><ref name="ILDIS">Roskov ''et al.'' (2018).</ref>
* {{Snamei|Dalbergia hypoleuca}} Pittier<ref name="PL" /><ref name="ILDIS" />
* {{Snamei|D. lineata}} Pittier<ref name="PL" /><ref name="ILDIS" />
}}
'''ココボロ'''(cocobolo)は、中米原産の[[ツルサイカチ属]]の植物[[ダルベルギア・レトゥサ]]({{Snamei||Dalbergia retusa}} {{AU|Hemsl.}})および {{Snamei|D. granadillo}} {{AU|Pittier}}<ref>{{Harvcoltxt|Rich|1970|p=86}}.</ref><ref>[http://www.trafficj.org/cop14/Cop14-press5.pdf 第14回ワシントン条約締約国会議 in ハーグ 木材種 編]({{仮リンク|トラフィック (非営利団体)|label=トラフィック|en|Traffic (conservation programme)}})。{{Accessdate|2018-06-14}}</ref> の[[心材]]として得られる[[木材]]である。ここでは、植物についても説明する。[[ダルベルギア・ニグラ]](''D. nigra''、通称: [[ブラジリアン・ローズウッド|ブラジリアンローズウッド]]、附属書Iに記載)を除くツルサイカチ属の種全体が2017年10月4日から有効となっている[[ワシントン条約]]附属書IIに記載されている<ref>[https://www.cites.org/eng/app/appendices.php Appendices]. (CITES). {{Accessdate|2018-06-16}}</ref>ため、ココボロにも附属書IIが適用される。ダルベルギア・レトゥサは'''ニカラグアローズウッド'''({{Lang-en|Nicaragua rosewood}})や granadillo とも呼ばれる<ref name="ng">ギブス (2005).</ref>。ギブス (2005)、ウォーカー (2006)、村山 (2013)、河村・西川 (2014) ではココボロ材を得られる樹木として示されているのはダルベルギア・レトゥサのみであり、本項目では主にダルベルギア・レトゥサについて記述する。
 
== 植物 ==
[[メキシコ]]から[[パナマ]]までの[[中央アメリカ]]に原産する樹で、成長すると20メートル以上の高さになる。通常、幹は直立して円柱状の樹形になるが、根本近くで分枝することもある。ココボロとなる心材はオレンジ色から赤褐色だが、辺材はクリームがかった黄色と色味がくっきりと分かれる。辺材が利用される事は稀である。
 
=== 分類 ===
[[樹皮]]は褐色で縦に裂け目ができることがある。葉は奇数羽状複葉で、小葉は9ないし13枚あり、明るい黄緑色で裏側は白っぽい。白い蝶形花を1月から3月にかけて開く。
命名者の異なる ''D. retusa'' {{AU|Baill.}} は ''D. pervillei'' {{AU|Vatke}} という種の[[シノニム]]扱いであり、これは本種とは[[分類学]]的に別種である<ref name="PL" /><ref name="ILDIS" />。
 
=== 分布 ===
[[中央アメリカ]](具体的には[[エルサルバドル]]、[[グアテマラ]]、[[コスタリカ]]、[[ニカラグア]]、[[パナマ]]、[[ベリーズ]]、[[ホンジュラス]]、[[メキシコ]]<ref name="IUCN" />)や[[コロンビア]]<ref name="m2013">村山 (2013).</ref>に自生する。この高木は中規模で乾燥地に生育し<ref name="P&CR">{{Harvcoltxt|Condit|Pérez|Daguerre|2011}}.</ref>、[[樹高]]20-30メートル、[[胸高直径]]1メートルに生長する<ref name="aw">ウォーカー (2006).</ref>。
 
=== 特徴 ===
[[幹]]は直立して高くなることもあるが、不規則で根本近くで分枝することの方が多い<ref name="P&CR" />。円柱状の樹形とある{{要出典|date=2018年6月}}。
 
[[樹皮]]は褐色で{{要出典|date=2018年6月}}、縦に裂け目ができることがある<ref name="P&CR" />。
 
[[葉]]は奇数羽状複葉で、通常は[[対生]]かほぼ対生の[[小葉]]11-13枚を伴い、下面が明るい黄緑色か白っぽく、円形で先端には小さな刻み目が見られる<ref name="P&CR" />。
 
[[花]]は白く<ref name="P&CR" />、蝶形花を1月から3月にかけて開く{{要出典|date=2018年6月}}。
 
[[果実]]は平たく、翼状の[[莢]]には輪郭のはっきりした1-3個の[[種子]]が含まれる<ref name="P&CR" />。
 
=== 紛らわしい植物との見分け方 ===
同じマメ科{{仮リンク|アコスミウム属|en|Acosmium}}(''Acosmium'')の植物も小葉それぞれに小さな刻み目が見られることもあり大変紛らわしいが、アコスミウム属の植物の小葉はそれほど下面が白くなく、通常は[[葉軸]]に沿って[[互生]]となる<ref name="P&CR" />。また{{仮リンク|アンディラ属|en|Andira}}(''Andira'')の植物もダルベルギア・レトゥサと類似しているものの、刻み目がない対生の小葉が見られる<ref name="P&CR" />。ほかに''Diphysa''属{{enlink|Diphysa|a=on}}、''Diplotropis''属{{enlink|Diplotropis|a=on}}、''Platypodium''属{{enlink|Platypodium|a=on}}、{{仮リンク|ヴァタイレア属|en|Vatairea}}(''Vatairea'')といったマメ科植物もいささか似通った葉を持つ<ref name="P&CR" />。
 
== 木材 ==
[[File:Cocobolo Maserung.jpg|thumb|200px|ココボロ材]]
ココボロ材は、密度(比重)が1以上ある「沈木」で、乾燥品はくすんだ色をしているが、[[ニス]]で仕上げると鮮やかなオレンジ色・朱色または赤褐色になり、木目が美しい。
[[Image:Cocobolo chess pieces.jpg|thumb|300px200px|ココボロで製作されたチェス駒]]
ココボロ材の外観に関しては、同属の[[ローズウッド]]{{Refnest|group="注"|ココボロにもニカラグアローズウッドという異名があるが、ほかにローズウッドというと[[ダルベルギア・ニグラ]](通称: ブラジリアンローズウッド)や ''D. stevensonii''{{enlink|dalbergia stevensonii||sv|a=on}}(通称: [[ホンジュラスローズウッド]])、{{仮リンク|マルバシタン|en|Dalbergia latifolia}}(学名: ''D. latifolia''; 通称: [[インディアンローズウッド]])が挙げられる。}}とは全く色調が異なり<ref name="m2013">村山 (2013).</ref>、切断直後の[[心材]]は黄橙色から深みのある赤色の地でこれに黄色や橙色、赤レンガ色の斑上の筋や斑紋が見られるが<ref name="aw">ウォーカー (2006).</ref>、空気に触れればすぐ橙色に変わり<ref name="k&n">河村・西川 (2014).</ref>、時間が経過するにつれて深みのある赤橙色の地に濃色の筋と斑紋が入った状態<ref name="aw" />、要は赤黒く落ち着いた色合いとなる<ref name="k&n" />。[[辺材]]は心材とは明らかに異なりほとんど白色に近い<ref name="aw" />か真っ白で、[[ウッドターニング]]愛好者はこの白さを生かすことが多い<ref name="k&n" />。木理は通直のものもあれば不規則なものもあるなど多様で、時には波状である場合もある<ref name="aw" />。なお匂いに関しては木工家の河村寿昌によれば「あまり心地よくない、強い酸っぱさ」が感じられる<ref name="k&n" />。
 
性質に関しては、[[気乾比重]]が0.98-1.20(平均1.09)<ref name="aw" />の「沈木」で{{要出典|date=2018年6月}}重くて硬いが、[[轆轤|ろくろ]]、[[切削]]、[[鉋]]のどれでも加工はしやすい<ref name="k&n" />。このように手道具であっても機械であっても加工性は悪くはないが、少し刃先を鈍磨させる性質を持つので刃先は常に鋭く研摩しておく必要がある<ref name="aw" />。乾燥はゆっくりと進み、その間に干割れや表面割れが起こりやすいが、乾燥後の寸度安定性は非常に高い<ref name="aw" />。機械工具を当てると、[[精油]]が柔らかな芳香を放つ<ref name="aw" />。細かい木屑で皮膚が橙色に染まったり、かゆみを伴う炎症を起こしたりする場合がある<ref name="aw" />ので作業の際は注意を要する<ref name="k&n" /><ref name="m2013" />。剛性(木材の弾力性を表す尺度)は高い<ref name="aw" />。油性も高いので接着性は良くないものの<ref name="aw" />、油分が多いがためにろくろ加工の際はむしろサクサク削れていき<ref name="k&n" />、丁寧に作業を行えば素晴らしく滑らかな表面仕上がりとなり、[[大理石]]のような冷たい触感も生まれる<ref name="aw" />。ろくろ細工に理想的な木材である<ref name="aw" />。心材は耐久性があり、保存薬剤による処理は難しい<ref name="aw" />。乾燥品はくすんだ色をしているが、[[ニス]]で仕上げると鮮やかなオレンジ色・朱色または赤褐色になり、木目が美しい{{要出典|date=2018年6月}}。
[[ナイフ]]の柄、[[銃器]]の把、[[チェスの駒]]などの小さな木工品に好んで使われるが、ギターやベースなど楽器の胴にも使われる。幅1メートル以上の大きな材もとれるため、建具や家具、建築材にも使われている。
 
用途は、油分の多さや耐久性の高さ、防水性を生かして[[ナイフ]]などの[[食器]]類の柄<ref name="k&n" />、道具の柄、[[ブラシ]]の柄、[[職杖]]、[[ボーリング]]の球などに加工される<ref name="aw" />。また[[彫刻]]や[[木彫り]]にも高い適性が認められ、[[チェスの駒]]、[[宝石箱]]、[[象嵌細工]]の小箱などの小さな木工品に使われる<ref name="aw" />が、ギターなどの[[楽器]]材としても使われる<ref name="m2013" />。ほかに[[旋盤]]やろくろ加工品全般<ref name="k&n" />、美観に優れていることからスライスカットされて[[象嵌]]用の上質な[[化粧単板]]として装飾性の高い[[家具]]や[[羽目板]]にも用いられる<ref name="aw" />。[[銃器]]の把や幅1メートル以上の大きな材もとれるため、建具や家具、建築材にも使われている{{要出典|date=2018年6月}}。
 
[[パナマ]]では観光客向けの店でココボロ材から作られた彫刻が見られる<ref name="P&CR">{{Harvcoltxt|Condit|Pérez|Daguerre|2011}}.</ref>。
 
== 保全状況 ==
[[IUCNレッドリスト]] ver 2.3 ではダルベルギア・レトゥサは[[危急種]](Vulnerable)と評価されており、材木としての伐採が盛んに行われ、以前は広く見られていた地域でも完全に枯渇してしまっている状態が特に[[コスタリカ]]で顕著に見られる<ref name="IUCN" />。生育地では400年にわたって伐採が行われ、牧畜や土地を焼き払う活動が原因となって個体数が減少し続けている<ref name="IUCN" />。
 
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
 
=== 注釈 ===
<references group="注" />
 
=== 出典 ===
<references />
 
<!--==参考文献==-->
英語:
* Americas Regional Workshop (Conservation & Sustainable Management of Trees, Costa Rica, November 1996). (1998). ''Dalbergia retusa''. The IUCN Red List of Threatened Species 1998: e.T32957A9737916. http://dx.doi.org/10.2305/IUCN.UK.1998.RLTS.T32957A9737916.en. Downloaded on '''16 June 2018'''.
* {{Cite book|last=Condit|first=Richard|first2=Rolando|last2=Pérez|first3=Nefertaris|last3=Daguerre|year=2011|url=https://books.google.co.jp/books?id=TqlGnkl8rPIC&dq=Dalbergia+retusa+cocobolo&hl=ja&source=gbs_navlinks_s|title=Trees of Panama and costa Rica|page=218|location=Princeton and Oxford|publisher=Princeton University Press|ref=harv}} {{NCID|BB07557360}}
* ''The Plant List'' (2013). Version 1.1. Published on the Internet; http://www.theplantlist.org/ (accessed 16th June).
* {{Cite book|last=Rich|first=Jack C.|year=1970|title=Sculpture in Wood|url=https://books.google.co.jp/books?id=QvQT8vc4oikC&dq=cocobolo+Dalbergia+granadillo&hl=ja&source=gbs_navlinks_s|location=New York|publisher=Dover Publications|ref=harv}} {{NCID|BA19027764}}
* Roskov Y., Zarucchi J., Novoselova M. & Bisby F.(†) (eds.) (2018). ILDIS World Database of Legumes (version 12, May 2014). In: Roskov Y., Abucay L., Orrell T., Nicolson D., Bailly N., Kirk P.M., Bourgoin T., DeWalt R.E., Decock W., De Wever A., Nieukerken E. van, Zarucchi J., Penev L., eds. (2018). Species 2000 & ITIS Catalogue of Life, 31st May 2018. Digital resource at http://www.catalogueoflife.org/col. Species 2000: Naturalis, Leiden, the Netherlands. {{ISSN|2405-8858}}.
日本語:
* エイダン・ウォーカー<!--Walker, Aidan--> 編、乙須敏紀 訳『世界木材図鑑』産調出版、2006年、82頁。{{ISBN|4-88282-470-1}}(原書: ''The Encyclopedia of Wood'', Quarto, [https://ci.nii.ac.jp/ncid/BA07614059 1989] & 2005.)
* 河村寿昌、西川栄明 共著、小泉章夫 監修『【原色】木材加工面がわかる樹種事典』誠文堂新光社、2014年、148頁。{{ISBN|978-4-416-61426-6}}
* ニック・ギブス<!--Nick Gibbs--> 著、乙須敏紀 訳『木材活用ハンドブック』産業出版、2005年、94-95頁。{{ISBN|4-88282-450-7}}(原書: ''The Wood Handbook'', Quarto, 2005.)
* 村山元春 監修、村山忠親 著『増補改訂 原色 木材大事典185種』誠文堂新光社、2013年、157頁。{{ISBN|978-4-416-71379-2}}
 
== 関連項目 ==
{{Commonscat|Dalbergia retusa}}
{{Wikispecies|Dalbergia retusa}}
{{plant-stub}}
{{銘木}}
{{DEFAULTSORT:ここほろ}}
 
[[Category:ツルサイカチ属]]
[[Category:木材]]
[[Category:ワシントン条約附属書II]]