削除された内容 追加された内容
編集の要約なし
タグ: モバイル編集 モバイルウェブ編集
「など」を使いすぎ。句点を使わなすぎ。いいかげんにしろ。
タグ: サイズの大幅な増減
14行目:
Dieter Janz, Epilepsia, 27(4):316-322,1986,Raven Press,New York
</ref><ref group="注">[http://www.asanogawa-gh.or.jp/1730tenkangaido201207.pdf てんかんガイド] 湯の川総合病院脳神経センター てんかん・機能外科部門 部長 川村哲朗、2ページ目、表紙説明 「ラファエロ・サンツィォの筆による「キリストの変容」には、てんかん発作を起こしている少年が描かれている。この作品は、イエス・キリストがてんかんを患う少年を治したというマタイ、マルコ、あるいはルカによる福音書に記されている逸話を題材とした。」</ref><ref>[http://www.kksmile.com/neuro/shikkan/epilepsy_qa/column_02.html vol.2 「キリストの変容」とてんかんの少年] コラム てんかんアラカルト、松浦雅人(東京医科歯科大学名誉教授/田崎病院副院長)</ref><ref>精神神経疾患と脳波2.ラファエロとてんかんの少年、篠崎和弘 et.al.、「臨床脳波」44 号、pp.457-462、2002年07月01日</ref>。この絵画は、[[聖書]]におけるてんかんの記述に基づいている<ref group="注">このてんかんの記述は、同一の少年についてのものであり、マタイ、マルコ、ルカの3つの福音書に記述されている。マタイ17章15節[https://ja.wikisource.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E7%A6%8F%E9%9F%B3%E6%9B%B8(%E5%8F%A3%E8%AA%9E%E8%A8%B3)#17:15] マルコ9章18節[https://ja.wikisource.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E7%A6%8F%E9%9F%B3%E6%9B%B8(%E5%8F%A3%E8%AA%9E%E8%A8%B3)#9:18]、9章20節[https://ja.wikisource.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E7%A6%8F%E9%9F%B3%E6%9B%B8(%E5%8F%A3%E8%AA%9E%E8%A8%B3)#9:20]、ルカ9章39節[https://ja.wikisource.org/wiki/%E3%83%AB%E3%82%AB%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E7%A6%8F%E9%9F%B3%E6%9B%B8(%E5%8F%A3%E8%AA%9E%E8%A8%B3)#9:39]、9章42節[https://ja.wikisource.org/wiki/%E3%83%AB%E3%82%AB%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E7%A6%8F%E9%9F%B3%E6%9B%B8(%E5%8F%A3%E8%AA%9E%E8%A8%B3)#9:42]
</ref>。</SUB>]]
</ref>。</SUB>]]'''てんかん'''('''癲癇'''、英: epilepsy)は、[[脳]]細胞に起きる異常な神経活動(てんかん放電)のため'''てんかん発作'''をきたす[[神経疾患]]あるいは症状<ref name=whofact />。[[神経疾患]]としては最も一般的なものである<ref name=whofact />。
 
'''てんかん'''('''癲癇'''、{{lang-en|'''Epilepsy'''}})とは、脳内の細胞に発生する異常な神経活動(「てんかん放電」)によって'''てんかん発作'''をきたす[[神経疾患]]、あるいは症状<ref name=whofact />。[[神経疾患]]としては最も一般的なものである<ref name=whofact />。
古くから存在が知られている疾患のひとつで、[[ソクラテス]]や[[ガイウス・ユリウス・カエサル|ユリウス・カエサル]]が発病した記録が残っている。特に全般発作時の激しい全身の痙攣から、医学的な知識がない時代には、狐憑きなどに代表される憑き物が憑依したと誤認され、「放っておくと舌を噛んで死ぬ」と思われていたり、周囲に混乱を起すことがあり、偏見や[[差別]]の対象となることがあった。
 
古くから存在が知られている疾患のひとつで、[[ソクラテス]]や[[ガイウス・ユリウス・カエサル|ユリウス・カエサル]]が発病した記録が残っている。全般発作時の激しい全身の痙攣から、医学的な知識がない時代には、狐憑きに代表される「憑き物」が憑依したと誤認され、「放っておくと舌を噛んで死ぬ」と思われていたり、周囲に混乱を起こすことがあり、偏見や[[差別]]の対象となることもあった。
全世界の有病者数は5000万人ほどで、患者のおよそ80%は発展途上国の国民である<ref name="whofact">{{Cite report|publisher=WHO|title=Factsheet - Epilepsy|date=2016-02|url=http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs999/en/}}</ref>。各国の疫学データでは発症率が人口の1%前後となっている。昔は「子供の病気」とされていたが、近年の調査研究で、老若男女関係なく発症する可能性があるとの見解も示され、80歳を過ぎてから発病する報告例もあるが、[[エミール・クレペリン]]などは老年性てんかんは別個のものとして扱っている。
 
全世界で5000万人がこれを患っているとされ<ref name=deBoer2008>de Boer HM, Mula M, Sander JW. The global burden and stigma of epilepsy. Epilepsy Behav. 2008 May;12(4):540–6. {{doi|10.1016/j.yebeh.2007.12.019}}. {{PMID|18280210}}</ref>、患者のおよそ80%は発展途上国の国民である<ref name="whofact">{{Cite report|publisher=WHO|title=Factsheet - Epilepsy|date=2016-02|url=http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs999/en/}}</ref>。各国の疫学データでは発症率が人口の1%前後となっている。昔は「子供の病気」とされていたが、近年の調査研究で、老若男女関係なく発症する可能性があるとの見解も示され、80歳を過ぎてから発病する報告例もあるが、[[エミール・クレペリン]]は、老年性てんかんにお対しては別個のものとして扱っている。
てんかんは予防・[[治癒|完治]]は不可能だが、大部分は管理可能であり、[[抗てんかん薬]]が用いられる<ref name=whofact />{{Sfn|世界保健機関|2010|loc=EPI}}。年間の医薬品コストはわずか5ドルにすぎない<ref name=whofact />が、通院、入院、検査には費用がかかり、日本では医療費自己負担額軽減のための制度もある<ref>[https://www.tenkan.info/support/socialsystem/vol01.html お金のこと(1)] - てんかんinfo(大塚製薬)</ref>。真面目に薬を飲み続ければ、症状が発症しない治癒の可能性は十分あり得る。
 
予防や[[治癒|完治]]は不可能であるが、大部分は管理可能であり、[[抗てんかん薬]]が用いられる<ref name=whofact />{{Sfn|世界保健機関|2010|loc=EPI}}。年間の医薬品コストはわずか5ドルにすぎない<ref name=whofact />が、通院、入院、検査には費用がかかり、日本では医療費自己負担額軽減のための制度もある<ref>[https://www.tenkan.info/support/socialsystem/vol01.html お金のこと(1)] - てんかんinfo(大塚製薬)</ref>。また、食事療法によっても発作の軽減や抑制が可能な病気である。
 
== 定義 ==
[[WHO世界保健機関]]によが発表していこの病気の定義によるとてんかんと『種種の病因によってもたらされる慢性の脳疾患であり、大脳[[ニューロン]]の過剰な放電から由来する反復性の発作(てんかん発作、seizure)を主徴とし、それに変異に富んだ臨床ならびに検査所見の表出が伴う』とされている。この定義は「大脳皮質の過剰な発射ではない」「反復性でない」「脳疾患ではない」「臨床症状が合わない」「検査所見が合わない」ものは「てんかん」から鑑別するべきだという意味が込められている。日本神経学会のてんかん治療ガイドライン2010では『てんかんとは慢性の脳の病気で、大脳の神経細胞が過剰に興奮するために、脳の症状(発作)が反復性(2回以上)に起こるものである。発作は突然起こり、普通とは異なる身体症状や意識、運動および感覚の変化が生じる。明らかな痙攣があればてんかんの可能性は高い』と記載されている。
 
大脳[[ニューロンを由来]]( '''Newrons''', 脳内に無数にある神経細胞 )が興奮するこしないによる[[不随意運動]]はてんかんではない。例えば脊髄性ミオクローヌスや下位ニューロン障害の線維束攣縮などはも、てんかんまた経過が慢性反復性でなければならないことから、薬物中毒の離脱期におこる痙攣はてんかんではない。これらの痙攣に関しては急性症候性発作で述べる。
 
== てんかん発作およびてんかん症候群の分類 ==
てんかんが上記定義された病名である。てんかんの一回ごとの発作をてんかん発作( ''seizure'Seizure'または''epileptic seizure, '''Epileptic Seizure''' )という。てんかん発作は[[痙攣]]( ''convulsion'Convulsion''' )であることが多い。痙攣とこれは全身または一部の筋肉の不随意かつ発作的収縮を示す症候名である。不随意運動の[[ミオクローヌス]]、他の[[症候]]では[[失神]]との鑑別が必要な症候である。ただ、「痙攣は必ずしも」=「てんかん」というわけではない。例えば何らかの誘因がある発作、1回だけで反復のない孤立発作、急性の全身疾患や頭部外傷直後などに関連して起こった[[急性症候性発作]]では、「てんかんとは診断されない。誘因のある発作の代表例がラム発作といわれるもので、[[アルコール依存症|アルコール中毒]]患者が風邪をひき、いて飲酒をやめたためおると起る発作である。これらの発作は皮質機能が一過性に障害されたときに起こる正常脳の自然な反応として考えられている。何らかの誘因する原因機会がないにもかかわらず反復して2回以上かそれ以上起こったてんかん発作があってはじめててんかんと診断することができる。
 
てんかん症候群」( '''Epileptic Syndromes''' )という言葉は毎回随伴して起こる[[徴候]]、症状の組み合わせや病因、誘因因子、発症年齢、重症度および慢性化傾向などに特徴づけられる症候群である。脳波・臨床症候群(''electroclinical syndrome'')とも言われ、若年ミオクロニーてんかん、「[[点頭てんかん|West症候群]]Lennox-Gastaut「[[レノックス・ガストー症候群など]]」( '''Lennox–Gastaut Syndrome''' )有名である。
 
国際抗てんかん連盟(ILAE)からより、1981年度てんかん発作型分類と1989年度てんかん、の「てんかん症候群国際分類よく普及し発表されている。てんかん発作型分類は2006年度に改訂され、てんかんおよびてんかん症候群国際分類は2010年度に改訂されたが新分類普及は遅れている。分類に実際に関しては[http://www.neurology-jp.org/guidelinem/epgl/sinkei_epgl_2010_cq1-3.pdf てんかん治療ガイドライン2010]の外部リンクを参照とするされたし
<!--実際に記事に分類内容を含めるならば以下の記載はたたき台として使用出来ます。
=== てんかんの種類 ===
てんかんには多くの種類があり、種類によっては[[知的障害]]などの[[後遺症]]を残す場合もある。てんかんの危険性がある人は倒れた場合の頭部の保護のため、[[ヘッドギア]]を付けている場合も多い。とくに施設入所者ではその傾向が顕著である。点頭てんかんでは「ヒプスアリスミア」と呼ばれる乱雑な[[脳波]]がある。
 
以下、てんかんおよびてんかん症候群の国際分類を示す。
82 ⟶ 84行目:
-->
===1981年度ILAEてんかん発作型分類===
この発作型分類は発作症状と脳波所見の忠実な対比から成り立つ。この分類では発作型および[[脳波]]変化が一側半球の部分に局在する部分発作 ''partial'Partial seizuresSeizures'''、近年は焦点性発作、''focal'Focal seizureSeizure''ともいう' )と臨床症状が最初から両側半球が巻き込まれたと考えられる全般発作 ''generalized'Generalized sezuresSezures''' )に分類される。部分発作(焦点性発作)はさらに意識が障害されない単純部分発作と意識障害がある複雑部分発作、さらに部分発作から全般性強直間代発作に進展する二次性全般化の3種類に分類される。全般発作は最初から両側半球巻き込まれた症状のみられる発作であり、欠神発作、ミオクロニー発作、間代性発作、強直性発作、強直間代性発作、脱力発作に分けられる。
 
===1989年度ILAEてんかん、てんかん症候群分類===
1989年度のILAEのてんかん、てんかん症候群および関連発作性疾患の国際分類は1985年度の分類を改定したものである。発作分類が「現象の記載」であるのに対しててんかん、てんかん症候群分類は「概念の規定」であるという考え方で作成された。四分法分類を特徴としている。てんかん発作が部分発作である局在関連(部分、焦点)てんかん、最初から全般性発作をもつ「全般てんかん」に二分される。もうひとつの二分法は脳腫瘍など病因の明確なてんかんを[[症候性てんかん]]、遺伝素因が想定され年齢依存性がみられる以外に病因がみあたらないてんかんを[[特発性てんかん]]と区分している。特発性てんかんはおそらくチャネル病ではないかと考えられている。症候性と推定されるものの現時点では病因が特定できないてんかんを潜因性と区別されることもあるが曖昧な概念であり用いられない傾向がある。
 
四分法分類であるため特発性てんかんは全般性てんかんだけではなく部分てんかんもあり、症候性てんかんも部分てんかんと全般性てんかんがある。この4分類では症候性部分てんかん以外は原則的に年齢依存性に発病する。局在関連てんかん(部分てんかん)を示唆する徴候には病因となるような既往歴、前兆、発作起始時、発作中の局所性運動ないし感覚徴候、自動症などがある。ただし欠神発作でも自動症が認められることがある。特発性全般てんかんでは25歳以上での発症は稀であり、他の神経症状は認められない。これを示唆する徴候は小児期(思春期前まで)の発症、断眠やアルコールでの誘発、起床直後強直間代発作あるいはミオクロニー発作、他に神経症候がない発作型である失神発作、脳波で光突発反応、全般性の3Hz棘徐波複合あるいは多棘徐波複合などがある。症候性全般性てんかんを示唆する徴候は非常に早い発症、頻回の発作、発症前からの精神遅滞や神経症候、神経症状の進行や退行、広汎性の脳波異常、器質的脳形態異常などがある。
 
局在関連てんかんと全般てんかんという分類は[[ペンフィールド]]の1954年の著作にさかのぼることができる。ペンフィールドはてんかん発作分類を焦点性大脳発作、中心脳発作、大脳性発作に分類し、これらの発作が症状としておこる疾患をてんかんと定義した。中心脳系とはペンフィールドにより提唱された両側脳半球を対称性に結合し脳機能を統合する構築をいい、高位脳幹で[[視床]]、[[中脳]]をふくむ構築とされ、現在の解釈では脳幹賦活網様体から視床に至るヒトの覚醒に関与する部位と考えられている。中心脳発作という用語自体はてんかん発作国際分類には残されていない。てんかん、てんかん症候群分類は[[抗てんかん薬]]の第一選択の目安をつけるのに重要である。
93 ⟶ 95行目:
== てんかん発作の症状 ==
=== 部分発作 ===
部分発作では大脳ニューロンの過剰放電が起こる部位(発作焦点)に応じて大脳皮質機能局在に基づいた症状がおこる。運動発作、感覚発作、自律神経発作や精神発作が知られている。意識障害を伴わない部分発作を単純部分発作、側頭葉などに発作焦点をもち意識障害を伴う部分発作を複雑部分発作という。発作焦点が前頭葉皮質の運動領野にあると部分発作として痙攣が生じうる。
 
==== 単純部分発作 ====
単純部分発作は焦点局在部位によって、'''運動徴候をともなうもの'''、'''自律神経症状をともなうもの'''、'''体性感覚症状あるいは特殊感覚症状を伴うもの'''、'''精神症状を伴うもの'''に分類される。一次運動野(中心前回)に発作焦点がある場合は対応する片側顔面、上枝、下肢に痙攣が生じる。間代性痙攣は筋の過剰な収縮と弛緩ある程度規則的に反復されるガクガクとした痙攣である。過剰筋収縮が持続し、肢を伸展、すなわち突っ張るような、あるいは屈曲位を持続するのが強直性痙攣である。強直性痙攣から間代性痙攣に移行するのが強直間代性痙攣である。発作焦点から始まった局所的な大脳ニューロンの過剰放電が一次運動野にそって波及すると、例えば顔の片側に始まった痙攣が同側の手指から前腕、上腕と波及していくことがある(「ジャクソンマーチという」)。痙攣した後に痙攣した肢が一過性に麻痺することがあり、これを「トッドの麻痺という。前頭葉眼球運動野に発作焦点がある場合は眼球頭部が病巣の対側に回旋するような向回発作が生じる。また補足運動野に発作焦点があると焦点と対側の上枝を伸展挙上しこれを見上げるように眼球と頭部をむける姿勢発作が起こることがある。
 
{| class="wikitable" style="float:left; font-size:90%; margin:1em"
128 ⟶ 130行目:
|}
{{-}}
そのほか、側頭葉内側を発作焦点とする自律神経発作、側頭葉を焦点とする精神発作が知られもある。自律神経発作は上腹部不快感、嘔気、嘔吐、発汗、立毛、頻脈、徐脈などのといった自律神経症状をきたす発作であり多くは大脳辺縁系のてんかん焦点に起因する。精神発作は既視感、未視感、恐怖感、離人感などのといった多彩な症状がある。側頭葉のてんかん活動に起因すると考えられている。精神発作は単純部分発作単独で出現することはむしろ稀であり大部分は複雑部分発作の最初の症状として出現する。
 
単純部分発作の発作時脳波は対応する皮質機能局在領野に始発する局在性反対側性発射であるが頭皮上から常に記録できるとは限らない。発作発射(seizure discharge)は棘波の律動的発射の場合もあり、それより遅い種々の周波数の突発性律動波であることもありうる。臨床上単純部分発作であっても発作時あるいは発作間欠時に脳波上に焦点性突発波がみられない場合は少なくない。単純部分発作の間欠期の脳波は簡単にいうと局在性反対側発射である。
134 ⟶ 136行目:
正常な脳が何故、てんかんを起こさないのかという問いかけに対して、2007年現在、[[薬理学]]では次のような解答が出されている。正常な中枢神経にはニューロンのシグナル活動を微調整する機構が備わっている。それは[[イオンチャネル]]の[[不応期]]と[[γ-アミノ酪酸|GABA]]作用性の介在ニューロンによる周辺抑制という機構である。
 
部分発作が発生するには'''電気活動の亢進による細胞レベルでの発作開始'''、'''周辺ニューロンとの同期'''、'''脳の隣接領域への伝播'''という3つのプロセスがある。発作開始時はある一群のニューロン内部で発作性脱分極性変位(PDS)がおこる。この脱分極は200msに及び、これが発生するとニューロンは活動電位を非常に早く連続的に発生するようになる。局所的な放電の場合、周辺抑制のため焦点に閉じ込められた放電が無症状に終わる。周辺抑制を乗り越えるにはGABA抑制作用の低下、ニューロン発火の増加による細胞外カリウム濃度の上昇、NMDAチャネルの開口などが考えられている。周辺抑制を乗り越えると同期放電が出現し症状が現する。この時の同期放電が十分に強いと隣接領域へ同期発火が伝播する。この伝播が前兆として知覚される。そして、皮質領域を結び付ける「''U fiber''」、[[脳梁]]、視床皮質投射線維を介して全般化す体に広がることがある。
 
周辺抑制が認められる場合、「発作は起こらないと考えられている。これらの機構が破綻(はたん)することにてんかんの原因の1つに「癲癇発作があると考えられており、実際一部のてんかんにおいてナトリウムチャネルの異常が指摘されている。
 
==== 複雑部分発作 ====
複雑部分発作は意識障害を伴い、あと健忘を残す発作である。単純部分発作ではじまり、途中から意識障害を起こす場合と最初から意識障害を伴う場合がある。[[精神運動発作]]とほぼ同義であるが一部重ならない点もある。複雑部分発作はふつうは側頭部あるいは前頭、側頭部の皮質、皮質下領域(嗅脳、辺縁系を含む)の一側性または両側性の損傷によっておこ発生する。[[側頭葉てんかん]]と関連が重要である。
 
患者は発作中に話しかけても、患者は応答することはできない。発作の持続時間は2〜32~3分程度である。多少なりともまとまっているものの、適切な目的性を欠く一連の動作、表情、行動などが不随意的、無意識に生じることがあり、「自動症ばれる。代表的なものは、舌なめずりや舌打ち、もぐもぐと口を動かす、ごくんと飲み込むなど、といった口部自動症である。そのほか、顔や身体をなでたり、こすったり、衣服をまさぐったり、手をもんだりなどの身ぶり自動症もある。自動症は複雑部分発作中あるいは発作後もうろう状態に認められ、患者本人はその記憶がないか、あっても断片的、部分的である。てんかん活動が基底核に伝播することで発作起始側と対側上肢にジストニア肢位をきたす。約80%は発作起始焦点が側頭葉にあるが、隣接部位から側頭葉へのてんかん活動の伝播でも生じる。前頭葉に起始焦点のある複雑部分発作について、側頭葉起始発作と比較すると発作持続時間が短い、激しい自動症をきたす、発作頻度が多いなどの特徴がある。
 
側頭葉てんかんでは発作発射が側頭葉皮質、島などの皮質から辺縁系(海馬、扁桃体)にいたる投射路を限局性に侵襲すると単純部分発作、すなわち精神発作(錯覚、幻覚)などが出現する。これを外側側頭葉発作という。発射が辺縁系に広がると複雑部分発作とくに自動症を伴うことになる。これを扁桃体・海馬発作という。複雑部分発作の発作間欠期の脳波は一側性あるいは両側性ふつう大抵は非同期性の焦点があり、焦点はふつうは側頭部あるいは前頭部に出現する。発作時脳波は一側性の、あるいは両側性の発射で広汎性あるいは側頭部、側頭・前頭部に焦点性に出現する。
 
==== 二次性全般化 ====
二次性全般化発作は部分発作から二次的に全般化した発作であり、主に現れる発作は強直間代発作」がある。二次性全般化発作は単純部分発作から強直間代発作が起こる場合、複雑部分発作から強直間代発作が起こる場合、単純部分発作から複雑部分発作を経て強直間代発作となる場合の3パターンが考えられる。単純部分発作か複雑部分発作か明確に区別できない場合もある。
 
=== 全般発作 ===
全般発作は最初の臨床的徴候が、発作開始時に両側の半球が侵襲されていることを示す発作である。意識障害されが起こことが場合もあり、この意識障害が発作開始時の症状であること場合もある。運動現象は両側性である。発作時脳波像は発作開始時両側性であり、これはおそらく両側半球に広汎に広がっているニューロン発射を反映している。全般性てんかんはてんかんの国際分類では特発性で発症が年齢依存性のもの、潜在性あるいは症候性のもの、症候性のものの3つに分かれる。特発性で発症が年齢依存性のものには欠神てんかん、若年欠神てんかん、ミオクロニーてんかん、大発作てんかんなどが含まれる。症候性のものには[[ウエスト症候群]]、[[レノックス・ガストー症候群]]、ミオクロニー・失立てんかん、ミオクロニー欠神てんかんが含まれる。てんかん発作の国際分類では全般発作は欠神発作(定型、非定型)、ミオクロニー発作、間代発作、強直発作、強直間代発作、失立発作に分類できる。本稿ではてんかん発作の分類に従い解説する。
 
==== 欠神発作 ====
欠神発作の純粋な型は突然始まり数秒から30秒ほど持続し、突然終了する。それまで行なっていた諸活動の中断、空虚な凝視、場合によっては短時間の眼球上転が認められる。患者がをしていれば中の場合、会は中断され、歩行中ならばその場に立ちすくみ、食事中ならば食物が口に運ばれる途中で止まる。発作中に話しかけると場合によってはぶつぶつとつぶやくことはあるが普通は応答できない。欠神発作には6つの亜型があり、意識障害だけを示すもの、意識障害に自動症をしめすもの、ミオクロニー要素を伴うもの、脱力要素をもつもの、強直要素をもつもの、自律神経要素をもつものが知られている。各亜型は単独も複合もある。いずれの発作型でも普通は発作中は規則正しい左右対称性の3Hz棘徐波複合が出現する。2〜4Hz2~4Hz棘徐波のことや多棘徐波複合のこともある。異常悩波は両側性である。発作間欠期ふつう基礎律動は正常であるが、棘波、棘徐波のような突発波が出現することもある。脳波異常は賦活されやすく過呼吸で容易に誘発される。また睡眠やPentetrazolbemegrideでも誘発できる。非定型欠神発作は定型欠神発作よりも顕著な筋緊張変化を伴うことが多く、発作の起始終了が突然ではないという特徴がある。脳波も定型失神発作よりも多彩である。小学生ではの場合、「授業中集中力低下した」と間違われることもある。
 
==== ミオクロニー発作 ====
ミオクロニー発作はミオクロニーけいれんと間代発作に分けられる。
; ミオクロニーけいれん
ミオクロニーけいれんは、突然起こる短時間の衝撃様の筋収縮で全般性のこともあり、顔面、体幹、1つあるいはそれ以上の肢、個々の筋あるいは筋群に限局することもある。この発作は急速に反復することもしたり、比較的孤立して出現することもある。ふつうは意識を失わないがり、ときに1〜21~2秒の意識消失を伴うことがある。ミオクロニーけいれんは単独で起こることもあるが、同時に全般強直間代発作を伴う場合つものも多いある。ミオクロニーけいれんの発作時脳波としてふつうは多棘徐波あるいは時に棘徐波や鋭徐波が出現する。発作間欠時にも発作時と同様に突発波が認められるため、脳波上突発波が認められても発作が起こっているとは限らない。ミオクロニーけいれんは外的刺激によって誘発されやすい。突然の音響、睡眠で誘発されるが光刺激に対してはとくに敏感である。ミオクロニー発作をおこすてんかんには乳児良性ミオクロニーてんかん、若年ミオクロニーてんかん、ミオクロニー欠神てんかん、ミオクロニー失立てんかん、乳児重症ミオクロニーてんかんが知られている。乳児良性ミオクロニーてんかんは1〜21~2歳に起こり睡眠初期に全般性棘徐波の短い群発が認められる。若年ミオクロニーてんかん(衝撃小発作)は思春期に起こり発作間欠期、発作時は周波数の速い全般性棘徐波あるいは多棘徐波である。光過敏性であることが多い。ミオクロニー欠神てんかんでは小児欠神てんかんと同様な両側同期性、対称性の3Hz棘徐波が出現する。ミオクロニー失立てんかんでは最初は4〜7Hz4~7Hzの律動のほかは正常であるが不規則性棘徐波あるいは多棘徐波を示す。乳児重症ミオクロニーてんかんでは全般性あるいは一側性の間代発作、ミオクロニーけいれんをもち起こし、脳波は全般性棘徐波、多棘徐波、焦点性異常、光過敏性を示し極めて難治性である。
; 間代発作
間代発作はミオクロニーけいれんが律動的に反復するものである。発作時脳波は10Hz以上の速波と徐波、場合によっては棘徐波であり発作間欠期には棘徐波あるいは多棘徐波が出現する。
; ミオクローヌスてんかん
ミオクロニー発作と区別が必要な用語である。初期はミオクロニー発作と区別がつきにくいがミオクローヌスてんかんは症候群であり、[[歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症]]の若年型がこの症候群を呈する。ミオクロニーけいれん、全身性けいれん、認知症などを示す。
 
==== 強直発作 ====
数秒程度の比較的短時間の強直状態が起こる発作であり、意識はふつう障害されも起こるが回復ははやい。ふつうは眼球や頭部が一側に偏位し、胸部の強直けいれんで呼吸が停止することがある。乳幼児期てんかんに多く、代表疾患はウエスト症候群とレノックスガストー症候群である。ウエスト症候群は発作時は低振幅速波ないし脳波の脱同期、間欠期はヒプスアリスミアが認められる。レノックスガストー症候群の場合、発作時は20Hz前後の速波性同期波や漸増律動が認められ間欠期は鋭徐波が多少とも律動的な発射で出現する。
 
==== 強直間代発作 ====
強直間代発作にて特発性全般性てんかんによるものと症候性全般性てんかんによるものとがある。部分発作が発展して二次的に全般化し強直間代発作を示すこともある。従来は部分発作の二次性全般化による発作も強直間代発作とし、部分発作の症状を前兆として扱っていたが、国際分類では二次性全般化はあくまで部分発作として扱い、最初から全般性にはじまる強直間代発作と区別している。一部の患者の一部は発作に先立って形容しがたい予告を体験するが、大部分の患者ではなんら予告症状しに意識を失う。突然急激な強直性筋収縮が起こり、地上に倒れ、舌を噛んだり、失禁したりする。チアノーゼが起こることもある。その後間代けいれん段階に移行する。間代けいれん後、筋弛緩を経て意識障害となるを起こす。発作時は10Hzあるいはそれ以上の律動波が強直期の間は次第に周波数を減じ振幅を増やし、間代期になると徐波によって中断されるというパターンをとる。発作間欠期には多棘徐波あるいは棘徐波、鋭徐波発射が認められる。全般強直間代発作だけを持つ患者では他の発作型に比べて突発波の出現率が最も低く、[[1952年]]のギブスの検討では安静時22%、睡眠時46%にしか突発波は認められなかった。
 
==== 脱力発作 ====
脱力発作とは筋緊張の突然の減弱が起こるものである。部分的で頭部が前にたれ下顎がゆるんだり、四肢の一つがだらりとしたりする場合もある。すべての筋緊張が[[カタレプシー]]のように消失して地上に倒れてしまったりする。これらの発作が極めて短い時は場合、'''転倒発作'''という。意識は消失するとしても短時間である。持続が長い脱力発作では律動的、連続的に弛緩が進行するという形で進行する。欠神発作の症状として起こることもある。発作時脳波は多棘徐波、平坦化あるいは低振幅速波が出現する。発作間欠期は多棘徐波が出現する。
 
 
== てんかん重積 ==
国際抗てんかん連盟( '''ILAE''' )によるとてんかん重積と「発作がある程度の長さ以上に続くか、または短い発作でも反復しその間の意識の回復がないもの」と定義されている。実際には5〜105~10分程度発作が持続するか、2回以上の発作が起こりその間に意識が完全に回復しない場合は「てんかん重積と診断している。動物実験では、「発作が5分続けば脳損傷が起こるとされているためおり、早期治療が重要である。治療抵抗性のものが3〜43~4割あり、1ヶ月以内の死亡率は7〜387~38%である。てんかん重積には痙攣性発作が持続する全身性痙攣性てんかん重積 '''generalizedGeneralized convulsiveConvulsive statusStatus epilepticusEpilepticus''、GCSE)', '''GCSE''' )、「非痙攣性てんかん重積 ''non'Non convulsiveConvulsive statusStatus epilepticusEpilepticus''、NCSE)', '''NCSE''' )が知られている。
 
てんかん重積の治療ではまずは発作(痙攣、意識障害、行動異常)をとめる。発作が治まればったあとに維持療法をおこな発作が治まらなければ次の治療に移行するという流れになる。てんかん治療ガイドライン2010」にはフローチャートでまとめられていがある。
 
=== 全身痙攣性てんかん重積 ===
てんかん治療ガイドライン2010{{Sfn|日本神経学会|2010|loc=Chapt.8.2}}にて、フローチャートにまとまっている。
 
; 気道確保、酸素吸入
てんかん重積放置すると[[低酸素脳症]]をこすため、まずは気道確保と酸素投与が必要である。
; 初期薬物投与
末梢静脈確保ができない場合、[[ジアゼパム]]10mgの筋注やジアゼパム10mg注腸、[[ミダゾラム]]10mgの口腔粘膜投与や点鼻などが行われる。血管確保ができているのならば場合、ビタミンB1(アリナミンFなど)100mgF)100mgを投与し、その後に50%ブドウ糖50ml投与を行うする。そのうえ成人ならであればジアゼパム10mgを呼吸抑制に注意しながら2分くらいかけて静注する。小児ではなら、0.3〜03~0.5mg/Kg程度の投与である。ジアゼパムは生理食塩水やブドウ糖に混ぜると混濁するため希釈せずそのまま静注する。5〜105~10分で発作が治まらないようならジアゼパム10mgの追加投与またはフェノバルビタールかミダゾラムの静注を行う。ジアゼパム単独の発作抑制時間は20分程度とされているため、フェニトイン(アレビアチンなど)やホスフェニトイン(ホストイン)を22.5mg/Kgの投与を行う。
; 全身麻酔療法
初期薬物投与を行なっても治まらなければる気配が無い場合、脳波をモニタリングしながら全身麻酔療法を行う実施する。[[バルビツール酸系]]薬では[[チオペンタール]]や[[チアミラール]]が好ま使われる。ベンゾジアセピン系であるミダゾラムのほか、プロポフォールも用いられる。てんかん重積の3〜43~4は、全身麻酔療法が必要とされる。
 
=== 非痙攣性てんかん重積 ===
非痙攣性てんかん重積も、全身痙攣性てんかん重積と同じく意識障害や異常行動が一定期間以上続くか2回以上の発作の間に意識が完全に回復しない場合にそのように診断するがその際に脳波上で発作波が持続していることかどうかを確認することが重要である。発作の出方は欠神発作重積、単純あるいは複雑部分発作重積、潜在性てんかん重積である。基礎疾患はてんかん以外に脳炎、血管障害、脳腫瘍、代謝性脳症でも発症する。脳波異常が持続している場合全身痙攣性てんかん重積の場合と同様治療を行う。
 
== てんかん発作の誘因 ==
てんかん発作の誘因となるものが以下のように知られている。痙攣などについんかん発作条件が重なればてんかん患者でなくとも起こりる。またてんかん発作後はこのような誘因をできるだけ除去するのが重要と考えられる。
; 光刺激
[[1946年]] W. Grey Walter によって科学雑誌『Nature』で発表され、1秒間に 20-50 20~50回程度の光の明滅で発生する。[[1997年]]にテレビの子供向けアニメーション番組『[[ポケットモンスター (1997-2002年のアニメ)|ポケットモンスター]]』の放送中に激しい光の明滅効果により、多くの学童が[[光過敏性発作]]を起こし社会問題に発展した。詳細はことがある(→[[ポケモンショック]]を参照
 
;飲酒
飲酒をせずとも、酔いから覚める際にてんかん発作は起こりやすくなる。アルコールを常飲していた者が断酒しても、てんかん発作は起こりやすい。当事者が単独で飲酒を発作の原因とするならば、「発作になるかも知れない」とする不安感からくるものが代表的である。抗てんかん薬には[http://www.page.sannet.ne.jp/onai/Healthinfo/Pracebo.html プラシーボ効果]は無いが、発作予兆の不安感を拭い去ることは可能な場合もある。
 
; 身体的ストレス
大量飲酒でなくとも酔いから覚める際にてんかん発作は起こりやすくなる。またアルコール常飲者が断酒するとてんかん発作が起こりやすい。理由はさまざまな見方がある。当事者が単独で飲酒を発作の原因とするならば、「発作になるかも知れない」と思う不安感からくるものが代表的である。因みに抗てんかん薬には[http://www.page.sannet.ne.jp/onai/Healthinfo/Pracebo.html プラシーボ効果]がないが発作予兆の不安感は回避が可能な場合がある。
過度の疲労、睡眠不足、感染症のような急性疾患でもてんかん発作は起こりやすくなる。スポーツのあとに起こることもある。首を上に傾けている動作が長く、それの継続が発作に繋がる要素の一つである、という報告もある。[[高血圧]]の患者の対処方法の中には「首の後ろを温めることで貧血を防ぐ」、これの応用で、[[血流]]を回復させる方法が提案されている。応急対処には「冷たい物の飲食で[[心拍数]]を下げる」、これの応用で'''焦り'''からくる精神的不安感に近い傾向を身体的に回復させるという提案がなされている。
;身体的ストレス
 
; 心理的ストレス
過度の疲労、睡眠不足、感染症など急性疾患でもてんかん発作は起こりやすくなる。仕事以外にも、スポーツを行った事により起こすこともある。首を上に傾けている動作が長く継続している事が発作に繋がる要素の一つと言われた報告も受けている。[[高血圧]]を持った患者の対処方法の中には「首の後ろを温める事で貧血を防ぐ」事の応用から[[血流]]を回復する方法の提案が出されている。他に、応急な対処の中には「冷たい物の飲食をする事で[[心拍数]]を下げる」時の応用で'''焦り'''からくる精神的不安感に近い傾向を身体的に回復させる方法の提案が出されている。
「発作が起こるのではないか」という精神的不安感や、転校やクラス替えによる環境変化、勤務先での異動や仕事の内容の変化、旅行や電車・車移動における環境変化、他人からすれば些細な要素であっても発作を起こすきっかけになりうる。一人の患者に絞る場合、精神的不安感による発作の火種は、一部の状況や状態に特定される場合があり、当事者が回避する必要のある場面に気付くことと、それを生活上の習慣に取り組むことで、発作の頻度は減る場合がある。しかしながら、同時に猶予時間や娯楽範囲も削減するため、それを察知した当事者はリスクを回避するか追及するか、優先順位を決断する。
 
; 睡眠不足
;心理的ストレス
睡眠不足に伴う疲労回復が不十分であったり、服薬効果のバランスが乱れることも発作の原因となる場合がある。
[[発作]]が起るのでは等の精神的不安感、転校やクラス替えによる環境変化、勤務先での異動や仕事の内容など変化、旅行や電車・車移動における環境変化など他人の目からみれば些細なことでさえ発作を起こす場合がある。心の動きに個人差が生じるが一人の患者に絞る場合、精神的不安感による発作の火種は一部の状況や状態などに特定される場合があり、当事者が回避をする必要のある場面に気付く事と、それを生活上の習慣に取り組む事で発作の頻度は減ることがある。しかしながら同時に猶予時間や娯楽範囲も削減するので察知した当事者はリスクの回避か追及か、僅かながら優先順位を決断する事となる。
 
;睡眠不足
; 薬剤投与
生活からの影響で睡眠が十分に取れていない事が疲労の回復や服薬効果のバランスが乱れる事で発作の原因になる事がある。
アルコール、バルビツール酸系薬、ベンゾジアセピン系薬物の離脱時、抗うつ薬(イミプラミン、アミトリプチン、軽微ながらSSRI)、抗精神病薬(クロルプロマジン)、気管支拡張薬(アミノフィリン、テオフィリン)、抗菌薬(カルバペネム系抗菌薬、抗菌薬とNSAIDSの併用)、局所麻酔薬(リドカイン)、鎮痛薬(フェンタニル、コカイン)、抗腫瘍薬(ビンクリスチン、メソトレキセート)、筋弛緩薬(バクロフェン)、抗ヒスタミン薬、ステロイド・・・これらの薬剤が、「てんかん発作の閾値を下げる」とされる。
;月経周期に関連したホルモンの変動
;薬剤
てんかん発作閾値を下げる薬剤がいくつか知られている。アルコール、バルビツール酸系薬、ベンゾジアセピン系薬物の離脱時、抗うつ薬(イミプラミン、アミトリプチン、軽微ながらSSRI)、抗精神病薬(クロルプロマジン)、気管支拡張薬(アミノフィリン、テオフィリン)、抗菌薬(カルバペネム系抗菌薬、抗菌薬とNSAIDSの併用)、局所麻酔薬(リドカイン)、鎮痛薬(フェンタニル、コカイン)、抗腫瘍薬(ビンクリスチン、メソトレキセート)、筋弛緩薬(バクロフェンなど)、抗ヒスタミン薬、ステロイドなどがてんかん発作閾値を下げるとされている。
 
== 難治性てんかん ==
てんかん発作を持つ人でもそ患者の7割以上は発作が完全に抑制されておりとくに問題普通ない健全な生活を営むことができめる可能性はある。適切な[[抗てんかん薬]]2〜3を2~3種類以上の単剤あるいはか、併用しての療法で、かつ十分量で2年以上治療しても発作が1年以上抑制されず日常生活に支障があるをきたす場合、「難治性てんかん」( '''Refractory''' )考えみなされる。Kwanらの報告では、「最初に使用した[[抗てんかん薬]]で発作が抑制される患者が47%、2剤目または3剤目になると13%、2剤併用では3%とされている。このことから2〜3剤で投与効果がないときは難治性てんかんと考える。
 
== 検査 ==
216 ⟶ 219行目:
=== 脳波 ===
{{main|脳波}}
硬膜外電極記録なども用いられることがある。脳波検査のみでてんかんの診断を行ってはならない{{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2016|loc=Chapt.1.6}}。通常の脳波検査のみで診断が難しい時は場合、通常検査を繰り返すよりも、睡眠時脳波検査を行うべきである{{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2016|loc=Chapt.1.6}}。
 
=== 脳磁図 ===
222 ⟶ 225行目:
 
=== 画像検査 ===
[[CT]]、[[MRI]]、[[拡散テンソル画像]]、[[ポジトロン断層法|PET]]、[[シンチグラフィ]]、[[NIRS脳計測装置]]、[[SPECT]]、[[脳磁図|MEG]]などがおこわなわれる。
 
=== 血液・尿検査 ===
血液・尿検査もてんかんの診断に欠かせない検査である
 
== 診断 ==
てんかんの診断は「てんかんか否かの診断」、「てんかん発作型の診断」、「てんかん症候群の診断」3ステップからなる。
 
=== てんかんか否かの診断 ===
てんかんの症状は痙攣を含めた一過性の神経症状である。「てんかんか否かの診断」では[[意識障害]]をきたす多くの疾患、転倒、[[外傷]]、一過性の運動、感覚症状、低血糖、多くの[[痙攣]]をきたす疾患の鑑別が必要である。意識消失、痙攣発作として受診する患者の3大疾患がてんかん発作、失神、非てんかん性心因発作でありfits、faint、funnu turnsの頭文字から3Fといわれる。
 
;失神
{{main|失神}}
失神では意識消失が短く、通常は1分以上続くことはない。低血圧が原因の場合は目の前がだんだんと暗くなるといった特徴的な前兆が認められる。意識の回復速やかであり、発作後のもうろう朦朧状態、頭痛、筋痛がない。舌咬、尿失禁がなは無い。不整脈による[[アダムス・ストークス発作|アダムス・ストークス症候群]]を疑った場合心電図や心臓超音波検査が必要であとなる。
 
;非てんかん性心因性発作
; 非てんかん性心因性発作
ヒステリー発作、偽痙攣(pseudoseizure)、心因性発作などということもある。心因性発作はてんかん患者の5〜35%に認められるとされている。薬剤無効の発作の35%程度が心因性発作ともいわれている。痙攣と心因性発作の鑑別点を以下にまとめる。ある発作が心因性と診断できたとしても同一個人のすべての発作が心因性と診断することはできないため注意が必要である。首の規則的な反復的な左右への横ふり、発作の最中に閉眼している場合、発作中に泣き出す場合、発作出現に先行して1分以上の閉眼や動作停止を伴う擬似睡眠状態が出現する場合は心因性発作の可能性が高い。また発作後血中のプロラクチン濃度が上昇している場合は痙攣であった可能性がある。偽痙攣では発作時に脳波が正常である。
ヒステリー発作、偽痙攣( '''Pseudoseizure''' )、心因性の発作という場合もある。心因性発作は、てんかん患者の5~35%に認められるとされる。薬剤無効の発作の35%程度が、心因性発作ともいわれている。痙攣と心因性発作の鑑別点を以下にまとめる。
 
ある発作が心因性と診断できたとしても、同一個人のすべての発作が心因性と診断することはできないため、注意が必要である。首の規則的な反復的な左右への横ふり、発作の最中に閉眼している、発作中に泣き出す、発作出現に先行して1分以上の閉眼や動作停止を伴う擬似睡眠状態が出現する、・・・これらの場合、心因性発作の可能性が高い。発作後、血中のプロラクチン濃度が上昇している場合は痙攣であった可能性がある。偽痙攣の場合、発作時の脳波は正常である。
 
{| class="wikitable" style="font-size:90%; margin:1em auto"
272 ⟶ 279行目:
|}
;急性症候性発作
急性症候性発作(acute symptomatic'''Acute Symptomatic Sezure''' sezure)はてんかん発作ではあるが慢性疾患であるてんかんとは異なる。[[国際抗てんかん連盟]]( '''ILAE''' )では「急性症候性発作とは急性全身性疾患、急性代謝性疾患、急性中毒性疾患、急性中枢神経疾患(感染症、脳卒中、頭部外傷、急性アルコール中毒、急性アルコール離脱など)と時間的に密接して関連して起こる発作である」と定義されている。急性疾患と同時に痙攣が一回だけ起こることが多いが、急性疾患が再発した場合は痙攣が再発したり重積となったりする。抗てんかん薬の内服が長期に及ぶことは少ない。すなわち、原因となる状態が改善すれば発作は起こらなくなるため抗てんかん薬の治療は不要となる。脳炎、脳外傷、脳出血のよう急性症候性発作および後遺症としてのてんかん両者を引き起こす可能性がある疾患ではいつまで治療するべきがの判定が断は難しい。
 
{| class="wikitable" style="font-size:90%; margin:1em auto"
283 ⟶ 290行目:
|頭部外傷||頭部外傷から7日以内に起こる発作
|-
|代謝性||電解質異常、低血糖、非ケトン性高血糖、[[尿毒症]]、[[低酸素脳症]]、[[子癇]]など、全身性疾患に関連して起こる発作
|-
|中毒||麻薬や処方薬、アルコールなど
|-
|離脱||アルコールや薬物の離脱時
296 ⟶ 303行目:
|}
 
; 一過性脳虚血発作(TIA)
{{main|一過性脳虚血発作}}
一過性脳虚血性発作では局所性の神経脱落症状を伴うのが通常なので鑑別は容易である。しかし、TIAの運動症状として不随意運動をきたす場合鑑別が難しいことも場合がある。トッドの麻痺と脳梗塞の麻痺の鑑別は脳波MRIで鑑別する。
; 一過性全健忘
; 過呼吸発作
; 熱性けいれん
熱性けいれんは通常は生後3ヶ月から5歳までの間に発熱に伴って生じるものであり、中枢神経の感染に基づくものではない。短期間の単発性の熱性けいれんがほとんどであり、医療機関受診時には治っていること場合がほとんどである。発熱と痙攣が持続する場合髄膜炎の可能性もあり髄液検査が必要となる。
{{main|痙攣}}
 
=== てんかん発作型の診断 ===
発作型の診断は1981年度ILAEてんかん発作型分類で行われる。てんかん発作を医師が診察室で観察できることは極めて稀である。そのため病歴と[[脳波]]を中心に発作型の診断をすることになる。
; 本人からの病歴
単純部分発作や全般発作であってミオクロニー発作の場合は意識が保たれているのでおり、患者が発症症状を通常会話きちんと述べることが可能る。感覚発作、自律神経発作などの多くは二次性全般化するため、部分発作の症状を前兆(アウラ)として感じる。前兆に関しては腹部にこみ上げてくるような感じや、以前見たことのある風景が勝手に頭にかぶといった症状を改めて問いただすと明らかになる場合も多い。すなわち、前兆を当たり前と思い述べない患者が一定数存在する。既往歴としては外傷、脳炎、脳血管障害など既往、熱性けいれんの有無がとくに重要であとなる。すでにてんかんと診断されている場合発症年齢、持続時間、回数、症状、局所徴候(半身痙攣、トッド麻痺など)、治療経過などを聴取する。てんかんの家族歴は特に強調されているが遺伝歴のあるてんかんは約1割程度である。
 
; 目撃者からの病歴
どのような発作であったのか目撃者から述べてもらうに尋ねる。強直間代発作は通常60〜90は60~90秒であることがビデオ脳波モニター検査で明らかになっている。はじめててんかん発作を目撃した人は1〜2、1~2分間の発作に対して5分位に感じていることも珍しくない。可能ならば、患者が発作を起こしている時の状態を録画して医療機関に提出する。

強直間代性痙攣の経過を示すについて。まは意識消失に伴う突然の痙攣がおこる。これは開口、開眼と眼球上転、上枝は外転挙上し肘は屈曲位で前腕は回内する。次に強直相であり、通常持続は10〜2010~20秒ほどであ持続する。四肢は伸展し、呼吸筋の強直により、肺からの空気が閉鎖した声帯を通って強く呼出される際に叫び声をあげることがある。呼吸停止とチアノーゼ認められることがある。間代相の持続は30秒前後が多い。間代性痙攣の感覚は次第に長くなり終焉する。咬舌はこの時期にこる。自律神経症状として頻脈、血圧上昇、瞳孔散大、流涎、発汗過多がられる。間代相は深い気をもって間代相は終わる。間代相がおわるとり、その後、回復期になる。このとき呼吸は再開し、対光反射も回復するが、痙攣後の意識障害持続する。
 
=== てんかん症候群の診断 ===
年齢、てんかん発作型、検査所見をもとに[[てんかん症候群]]の診断はされを受ける。ウェスト症候群、[[ノックス・ガストー症候群]]、小児良性部分てんかん、小児欠神てんかん、若年性ミオクロニーてんかん、内側側頭葉てんかんなど有名であ知られている。
 
== 管理 ==
てんかんの治療のガイドラインとしては、日本神経学会のてんかん治療ガイドライン2010{{Sfn|日本神経学会|2010}}のほか、日本神経治療学会の高齢発症てんかんのガイドライン、日本てんかん学会のガイドラインが知られている。てんかん治療ガイドラインはてんかんを専門としない一般医を対象としているのに対し日本てんかん学会のガイドラインはてんかん専門医レベルを対象としている。主にのてんかん治療ガイドライン2010を念頭に記載する。
 
=== 救急診療 ===
まず、救急患者の前に来たとき、痙攣が持続しているしていないのかを確認する。痙攣発作はたいていは数分で消失するが、なかには数十分続くけいれん重積というものもある。痙攣中は呼吸が満足にできないので、持続すると[[低酸素脳症]]を起こす恐れがある。そのため痙攣を止める必要がある。痙攣発作中の患者にはまず[[一次救命処置|BLS]]、[[二次心肺蘇生法|ACLS]]のアルゴリズムに従い救命を行う。このとき、[[低血糖]]、[[心室細動]]の診断もこの時に行う。低血糖ならであれ50%ブドウ糖20mlを2A(40ml)静注し、心室細動ならであれば電気的除細動を行う。次に考えるのはヒステリーによるもの(偽痙攣という)であるかどうかであるが、これは経験的に診断することが多、疑わしければアームドロップテストなどを行うこと場合もある。偽痙攣が否定されれば真性痙攣の治療となる。患者の意識が既に回復している場合、身元やかかりつけの病院や健康管理などが明確になった時はている場合、体温、血圧、心拍数の検査を行ったのち隊員の判断により患者署名してもらい、自宅へみで帰宅をする事を優先する場合がこともある。
 
* 酸素投与、あるいはバックバルブ換気を行う
* [[ホリゾン]](10mg/2ml/A、[[ジアゼパム]])を1A筋注あるいは0.5A静注する。まらなければい場合3〜53~5分ごとに5mgずつ、最大20mg(2A)まで投与する
* 痙攣が止まったら痙攣再発予防のため[[アレビアチン]](250mg)(抗痙攣薬[[フェニトイン]])を2A(500mg)、[[生理食塩水]]100mlに溶解し点滴する
 
ごくまれに、[[ホリゾン]]を20mg投与しても痙攣が治まらない場合がある。この場合はアレビアチンの点滴を開始する。これでも止まらなければ[[テグレトール]]を50〜100mg(1A50~100mg(1Aに500mg含まれているので注意)静注したり、[[フェノバール]](100mg/A)を1A筋注したりすることもある。れでもダメなら、[[気管挿管]]し、を行って低酸素を防ぎ専門医に相談するべきである。アレビアチン(フェニトイン)は2A以上でないとければ効果がなは無いと言われている。この薬はナトリウムチャネルが不活化状態から回復する頻度を減らす作用がある。よくしばしば用いられる抗てんかん薬であるデパケン([[バルプロ酸]])もこの作用を有しているがこちらは[[カルシウムチャネル]]にも作用する。
 
発作が止まったら原因検索と外傷検索を行う。採血を行い血算(血球算定)、生化学検査を行い、アルコール濃度や抗てんかん薬血中濃度を測定する。また、動脈血液ガスにて代謝性アシドーシス(筋肉の収縮で嫌気性呼吸がこるため)の有無確認する。頭部CTや尿中薬物検査も行う。これらの検査で異常があれば症候性てんかんと診断され、異常がければ真性てんかんである。
 
診断ができればそれに基づいて治療を行うことができる。原則として初発の痙攣では入院による精査が望ましい。てんかんで最も怖いのは痙攣後外傷である。危険を感じだと判断したらためらわず入院させる。しかしが、患者の希望によっては後日に[[脳波]]検査となる。てんかんは発作型によって治療薬が異なるのだが、この場合は[[抗てんかん薬]]の予防投与となる。それ以外の真性てんかんで受診となるケース事例としては、コントロール癲癇発作が制御良の場合があり、能になること。これは非常に危険なのあり、入院精査が必要であになる。怠薬の場合はアレビアチン投与後、服薬を再開する。今までコントロール良好であったのに痙攣した場合は、抗てんかん薬増量を行い、かかりつけ医に受診させるという方法もある。症候性てんかんの場合は原因疾患を治療すれば完治できる可能性がある。可能ならば原疾患を治療し、抗てんかん薬投与診断に合わせて後日専門医を受診させればよい
 
=== 薬物療法= ==
急性の脳損傷、代謝性要因、炎症、中毒、薬剤性などによる原因、誘因が明らかな急性症候性発作の再発率は3〜103~10%程度と低く、原因、誘因を避けることにより経過観察が可能なケース事例も多い。誘因がはっきりしないてんかん発作再発率が30〜50は30~50%と高く、各々の症例に応じて治療開始を検討する。初回発作から5年以内の再発率は35%であるが2回目の発作から1年以内の再発率は73%となるため高い。一般にてんかんは2回以上の発作後に治療を開始する。個発発作でも神経学的異常(例えばtoddトッド麻痺)、脳波異常ないしてんかんの家族歴陽性の場合は再発率が高くなるため治療開始を考慮する。また高齢者の場合、初回発作後の再発率が66〜9066~90%と高く、初回発作後に治療を開始することが多い。初回発作、再発1回目、再発5回目で治療開始し、その後2年までは発作抑制率に若干の差があるが長期的にみるとは有意差はい。
 
抗てんかん薬の選択を左右する因子となるの発作型、てんかん症候群、年齢、性別、併存疾患、抗てんかん薬の効果と副作用、ガイドラインでの位置づけ、費用、保険適応などによって決定する。
 
WHOが発表しているガイドラインでは単剤の抗てんかん薬で治療を開始するとされており{{Sfn|世界保健機関|2010|loc=EPI}}、NICEガイドラインでは可能な限り単剤処方でなければならない(should)と勧告されている{{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2016|loc=Chapt.1.9.1.5}}。NICEはある薬剤での初期治療が失敗したならば場合、別の薬剤を単剤処方で試すよう勧告している{{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2016|loc=Chapt.1.9.1.5}}。
{{main|抗てんかん薬}}
 
大麻由来抗てんかん薬である「エピディオレックス」が[[アメリカ合衆にて]]で承認を受けされたことにより、沖縄赤十字病院など治療の選択肢として要望が高まった。しかしながら、大麻取締法では4条2項2号において大麻から製造された医薬品を施用等を禁止し、同法同項第3号では、大麻から製造された医薬品の施用を受けることを禁止している。大麻取締法では「医薬品」の定義はされていないものの、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律2条1項において医薬品の定義がなされており、同法同項第3号において「人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であつて、機械器具等でないもの(医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品を除く。)」とされていることから、規制薬物である大麻の施用は違法行為となる。
 
大きな転機となったのは、[[2019年]][[3月19日]]の参議院沖縄及び北方問題に関する特別委員会にて衆議院議員の[[秋野公造]]参議院議員が、大麻由来てんかん治療薬「エピディオレックス」が米国にてアメリカで承認されたことを受けて、「医薬品として用いることがダメなら、治験として用いることは可能か」と質して、厚生労働省は「現行の大麻取締法では患者への施用は禁止されているが,本剤については大麻研究者である医師のもと,厚生労働大臣の許可を受け,治験の対象とされる薬物として国内の患者に用いることは可能であると考える。ただし,施用は適切な治験実施計画に基づいた対象の患者に限る」と限定的ではあるが初めて前向きな答弁を行ったりしている<ref>{{cite news
| url = http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/198/0020/19803190020003.pdf
| title = 第198回国会 参議院沖縄及び北方問題に関する特別委員会会議録
355 ⟶ 364行目:
}}</ref>。
 
この国会質疑を受けて聖マリアンナ医大においては治験を主体的に行うことを決めた[[4月10日]]、同大学の理事長、明石勝也理事長自ら大口厚生労働大臣に要望を行い、大口厚労副大臣は「検討する」と応じており、今後は、聖マリアンナ医大を中心に治験がおこなわれることになると思わ見らている<ref>{{cite news
| url = https://www.komei.or.jp/komeinews/p26598/
| title = てんかん新薬の治験実施求める
362 ⟶ 371行目:
| accessdate = 2019-4-10}}</ref>。
 
さらに、[[2019年]][[5月15日]]に開かれた参議院沖縄及び北方問題に関する特別委員会にて[[秋野公造]]参議院議員大麻由来薬物についての国内治験について国の見解を質し、厚生労働省は大要「安全性が確認できれば海外で承認前の薬でも医療機関が治験で使うことを認める」とさらに前向きな答弁を行ったしている<ref>{{cite news
| url = https://www.asahi.com/articles/ASM5G45Z3M5GULBJ00T.html
| title = 大麻成分含むてんかん治療薬、承認前の薬も治験で使用可
370 ⟶ 379行目:
}}</ref>。
 
=== 外科治療= ==
{{節スタブ}}
てんかんの治療はかつては内科的治療が主体であったが近年は難治性てんかんに対して外科的治療も積極的に行われるようになった。画像上明らかになるのは部分切除によって改善が見込める症候性部分発作をおこすてんかんである。難治性であっても特発性全般発作をおこすてんかんは外科的治療の適応とならない場合が多い。てんかんのおよそ1/3が薬物療法によってコントロールされない難治性てんかんである。とくに治療が見込める疾患としては[[海馬硬化症]]、[[脳腫瘍]]、大脳皮質形成障害、脳血管奇形などが原因である場合である。一般的に、てんかん外科には数日間連続して脳波記録を行ったり、頭蓋内脳波を設置して記録できる脳波モニタリングユニットが必要であり、特定の施設で行われている。おり、それらは[[日本てんかん学会]]がホームページに施行施設を公表している<ref>[http://square.umin.ac.jp/jes/jes-facilities.html てんかん外科施行施設一覧] 日本てんかん学会</ref>。
; 手術方法の分類
:; 皮質切除術
:: てんかん発作を起こしうる大脳皮質を部分的に取り除く事によりことで、てんかん発作の発生を抑制できる。発作を起こす大脳皮質は、頭蓋内脳波モニタリング、MRI画像、[[脳磁図]]、[[ポジトロン断層法|PET]]、[[SPECT]]検査により同定する。同定した部位を切除することで発作の抑制または軽減が期待でき、かつ大脳皮質を切除したことによる合併症が、患者にとって容認できうるものと判断された場合に行われる。
:; 脳梁離断術
:: 大脳の左右の連絡する[[脳梁]]を分断することにより、発作を消失または軽減させる。発作を起こす大脳皮質が広範だった場合や複数あった場合適応になりうる。一般的には皮質切除よりも発作が消失する可能性は下がるものの、皮質切除が不適応だった場合にも適応しうる。後述する迷走神経刺激療法との選択されることが多い。
::: {{main|脳梁離断術}}
; 手術療法の対象になりやすいてんかんの原因
:; 海馬硬化症(内側側頭硬化症)
::海馬硬化症は 側頭葉てんかんの原因となることが多い疾患である。内側側頭葉の神経細胞の脱落とグリオーシスが起る疾患である。CA1を中心にCA3,CA4が硬化するのが特徴であるが海馬に限らず扁桃体など隣接する領域も硬化するため、海馬硬化よりは内側側頭葉硬化の方が名称としてふさわしい。MRIでは海馬の萎縮、内部構造の破壊、T2延長や側脳室下角の拡大が認められる。進行した場合は病側乳頭体、脳弓、側頭葉の非対称性委縮が認められる。内側側頭葉硬化症の場合、腫瘍限局性皮質異形成などほかの症候性てんかんを起こす異常が認められる場合が多く注意が必要である。正常変異である海馬溝遺残や脈絡裂嚢胞が内側側頭葉硬化と紛らわしい場合がある。側頭葉てんかんでは典型的には胃部の不快感などの前兆の後に自動症を伴う複雑部分発作が生じるのが特徴である。
:; 腫瘍
:: 難治性てんかんのおよそ4%が腫瘍性病変原因とる。てんかんを合併する腫瘍は側頭葉あるいは皮質、皮髄境界に存在することが多い。[[胚芽異形成性神経上皮腫]](DNT)や神経節膠腫では、とくにてんかんの合併が多く、その他の腫瘍ではそれよりは少ない。
::; 神経節膠腫
::
::; 毛様細胞性星細胞腫
::
:<!--分断防止行-->
:;大脳皮質形成障害
::神経細胞、グリア細胞の増殖、神経細胞の移動、皮質の層構造形成の異常によって生じる大脳皮質の形成障害のことであるを指す。[[神経芽細胞移動障害]]は病理形態の差から[[無脳回]]、[[厚脳回症]]、[[異所性灰白質]]、[[多小脳回症]]、[[裂脳症]]などと分類されている。
::; 限局性皮質異形成
::: 多小脳回など限局した大脳皮質形成障害と異なり独立した病理学的概念である。軽度の皮質の層構造の乱れから異型細胞が認められるものまで程度は様々である。MRI画像では脳溝、脳回の形成の異常、皮質/白質境界の不明瞭化、皮質の肥厚、皮質および皮質下のT2延長などが特徴とされている。乳児期発症の場合は髄鞘化の進行とともに明らかになる場合があり、繰り返し撮影することが必要ある。
::; 片側巨脳症
::: 乳児期に始まる難治性てんかんである。[[大田原症候群]]などが有名であり、早期に機能的半球離断術が施行される。片側大脳半球の腫大、皮質の肥厚、脳回の異常が認められる。その他に病側の嗅索、脳幹、小脳の腫大、血管の拡張や患側あるいは両側の小脳foliaの異常などが知られている。拡散テンソルトラクトグラフィでは両側側脳室前角間の異常な白質の線維束が認められる。
::; 皮質結節
::: その本態は[[過誤腫]]である。大脳皮質の脳回から皮質直下に位置する。髄鞘化が未発達な新生児や乳児ではいずれの画像でも高信号に認められる。髄鞘化完成後はT1WIではやや低信号から等信号、T2WIではやや高信号の限局性病変として認められる。
::; 異所性灰白質
::
::; 多小脳回
::: 小さい脳回多数認められる病態である。顆粒状脳回であるためり、脳表は平滑にみえ、皮質は厚く、皮髄境界面はでこぼこまたは鋸歯状である。
:<!--分断防止行-->
 
===迷走神経刺激療法(VNS)===
難治性てんかんの治療法として選択できる。保険適応となっされた<ref>[http://www.med.kindai.ac.jp/nouge/disease/exposition/5/1.html 難治性てんかんの治療 近畿大学医学部]</ref><ref>[http://plaza.umin.ac.jp/~kenkawai/vns.html 難治性てんかんの治療 東京大学]</ref>。パルスジェネレータから、首の左側にある迷走神経に電極を巻き付け、一定の間隔で繰り返し電気刺激を送り、てんかん発作の回数を減らしたり、発作の程度を軽くする<ref>{{cite web|url=http://www.nihonkohden.co.jp/ippan/vns/vns_05.html|title=てんかんの迷走神経刺激療法(VNS)|accessdate=2015-08-25}}</ref>。
 
<!--
=== 薬物療法= ==
現在日本で使われている[[抗てんかん薬]]には、以下のものがある。
* [[カルバマゼピン]](CBZ)(テグレトール?)
* [[フェニトイン]](PHT)(アレビアチン?)
426 ⟶ 434行目:
* [[ラモトリギン]](LTG)(ラミクタール?)【日本での発売:2008年12月12日より】
* [[レベチラセタム]](LEV)(イーケプラ?)【日本での最新薬:2010年秋季発売】
これらの薬を用いた治療は、てんかんの根本にある原因を治癒するものではなく、痙攣を抑えたり発作が出にくくする対症療法であり、長期間服用を続けなければならない。ただし、長期に渡って発作がない場合は、症状に合わせて徐々に減量し休薬することもある。
 
これらの薬を用いた治療は、てんかんの根本にある原因を治癒するものではなく、痙攣を抑制したり、発作が出にくくする対症療法であり、服用は長期間に亘る。ただし、長期に渡って発作がない場合は、症状に合わせて徐々に減量し、休薬することもある。
2007年現在行われている、薬物治療は発作の臨床型によって薬を使い分けている。用いる薬物は基本的にナトリウムチャネルを抑制するもの、T型カルシウムチャネルを抑制するもの、GABAの抑制作用を増強させるものの3種類がある。ナトリウムチャネルを抑制するものとしては[[カルバマゼピン]](CBZ)(テグレトール?)や[[フェニトイン]](PHT)(アレビアチン?)がよく知られており、T型カルシウムチャネルを抑制するものとしては[[バルプロ酸ナトリウム]](valproic acid; VPA)(デパケン?, デパケン?R(デパケンの徐放剤), バレリン?)、[[エトスクシミド]](ザロンチン?)がよく知られている。GABAの抑制作用を増強させるものとしては[[ジアゼパム]](DZP, DAP)(ホリゾン?、セルシン?)や[[フェノバルビタール]](PB)(フェノバール?)がよく知られている。基本的にはナトリウムチャネルを抑制するものは部分発作と二次性全般発作に効果的で欠神発作にはほとんど効かず、T型カルシウムチャネルを抑制するものは欠神発作に効果的である。
 
2007年現在、薬物治療においては、発作の臨床型によって薬を使い分けている。用いる薬物は、ナトリウムチャネルを抑制するもの、T型カルシウムチャネルを抑制するもの、GABAの抑制作用を増強させるもの、の3種類がある。ナトリウムチャネルを抑制するものとしては、[[カルバマゼピン]](CBZ)(テグレトール?)や[[フェニトイン]](PHT)(アレビアチン?)がよく知られており、T型カルシウムチャネルを抑制するものとしては[[バルプロ酸ナトリウム]](valproic acid; VPA)(デパケン?、デパケン?R(デパケンの徐放剤)、バレリン?)、[[エトスクシミド]](ザロンチン?)がよく知られている。GABAの抑制作用を増強させるものとしては[[ジアゼパム]](DZP, DAP)(ホリゾン?、セルシン?)や[[フェノバルビタール]](PB)(フェノバール?)がよく知られている。基本的に、ナトリウムチャネルを抑制するものは部分発作と二次性全般発作に効果的であるが、欠神発作にはほとんど効かず、T型カルシウムチャネルを抑制するものは欠神発作に効果を発揮する。
一応はこのように分類はされているが、抗てんかん薬は薬理作用が多彩であるため、他の抗てんかん薬で代用可能なことが多く、副作用コントロールのために第一選択ではない薬が投与されることが非常に多い。例えばバルプロ酸はT型カルシウムチャネルを抑制するものとして分類されているが、ナトリウムチャネルも抑制するため、部分発作の治療にも用いられる。
 
このように分類されてはいるが、抗てんかん薬は薬理作用が多彩であるため、ほかの抗てんかん薬で代用可能なことが多く、副作用を制御するために第一選択ではない薬が投与されることが非常に多い。[[バルプロ酸]]は「T型カルシウムチャネルを抑制するもの」として分類されているが、ナトリウムチャネルも抑制する作用があり、部分発作の治療にも用いられる。
てんかんの治療目的はけいれん重積発作などの緊急性のてんかんからの回復、慢性てんかんの発作再発の防止である。
 
てんかんの治療目的は、けいれん重積発作の緊急性のてんかんからの回復、慢性てんかんの発作再発の防止である。
* 緊急時の薬物療法
緊急時は呼吸抑制に注意しながらジアゼパムを、血圧の低下に注意しながらフェニトインをゆっくり静注する。ジアゼパムは[[めまい]]や[[運動失調]]などのを初めとする副作用が著しいため強く、急性期の治療以外では基本的には使わない。
* 慢性期の薬物治療
原則として単剤投与でコントロールする。使用薬剤はてんかんの型によって異なる。傾向としては、バルプロ酸が全般発作向きであり、カルバマゼピンが部分発作向きである。
443 ⟶ 452行目:
* WEST症候群:ACTH、バルプロ酸、ニトラゼパム
 
かつては右半球切除、脳梁切断といった[[ロボトミー]]などような外科的な手法による治療も試みられたが、現在では大半が投薬により症状えることが可能な事例も増えており、薬物療法による発作コントロール制御が困難な場合などを除き、外科的な処置が行われることはない。また、[[脳ペースメーカー]]による深度てんかんの治療も行われつつある。-->
 
<!--
== ビタミン剤の投与 ==
===栄養療法===
{{正確性|section=1|date=2011年1月}}
症例少ないようであるが、[[血液検査]]の結果、GOTがGPTより高値を示している等わことが分ったり、[[ビタミンB]]の不足が発見され、覚してビタミンB剤が投与されることがある([http://orthomolecule.jugem.jp/?eid=317 その症例])。GPTが20前後より低くなり、GOTよりGPTが低く開きがあるほど、ビタミンB6が不足していること可能性考えられる。また、MCVは100未満が正常値であり、これより多い場合、B12や葉酸の不足が伺える。MCHが低くMCVが高い場合、ビタミンB欠乏がかなり深刻である。ビタミンB群は神経伝達などに深く関わり、不足すると、神経質になる、過敏になる、気難しくなる、しびれ、脳のトラブル、認知症、自閉症など症状にもつ原因とる。てんかん発作を抑えるためのビタミンB投与は、医師の処方による投薬でものほかにはサプリメントを使の服してよく、許される。効能にあまり差がないため、患者の都合に応じて選んで良いぶことも許される。ビタミンB6が、脳内の神経伝達物質GABAを合成する時の補酵素として働くため、GABAの量が増加し、てんかん発作が抑えられるとみられている。West症候群の場合、ビタミンB6の大量投与による発作消失率は13-2913~29%である<ref>[http://square.umin.ac.jp/jes/pdf/uest-guide.pdf ウエスト症候群の診断・治療ガイドライン. 伊藤正利 日本てんかん学会ガイドライン作成委員会]</ref>抗てんかん薬より治療効果が低く、副作用が多いと考えられる。<ref>[http://ci.nii.ac.jp/els/110002671614.pdf?id=ART0002941624&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1342347600&cp= West症候群におけるビタミンB6大量療法の有効性と副作用の検討]</ref>
-->
== 断食・絶食療法 ==
[[File:Conklin Fasting - NewYorkTimes.png|thumb|alt=Scan of newspaper column. See image description page for full text.|ヒュー・コンクリン( '''Hugh Conklin''' )が奨める「水断食」( '''Water Diet''' )を取り上げている([[1922年]][[7月6日]]付けの[[ニューヨーク・タイムズ]]に掲載された記事]]
古代ギリシアの時代、医師たちが実践していた病気の治療法は、「食事を変えること」であった。『ヒポクラーテス全集』( 『'''''The Hippocratic Corpus'''''』 )に収録されている学術論文『'''''On the Sacred Disease'''''』(『神聖不可侵な病』)では、紀元前5世紀における癲癇治療を取り上げている。ヒポクラーテスは癲癇に対して「食事療法こそが、治療の確たる基礎となる」という姿勢を取っており、「癲癇が発症するのは人知の及ばぬものであり、手に負えない病気である」とする当時の一般的な見解に異を唱えていた<ref>Hippocrates, ''[[s:On the Sacred Disease|On the Sacred Disease]]'', ch. 18; vol. 6.</ref>。同書に収録されている『'''''Epidemics'''''』(『'''伝染病'''』) では、飲食を断つことにより、癲癇発作が発症したときと同じぐらいの早さで治った男性の事例を紹介している<ref>Hippocrates, Epidemics, VII, 46; vol. 5.</ref>。王室専属の医師で解剖学者のエラシストラートゥス( '''Ἐρασίστρατος''' )は、「癲癇の症状が現れた場合は何があろうと[[断食]]を行い、食事制限をしなさい」と明言した<ref>Galen, ''De venae sect. adv. Erasistrateos Romae degentes'', c. 8; vol. 11.</ref>。臨床医の[[ガレノス]]( '''Γαληνός''' )は、「絶食<ref>Galen, De victu attenuante, c. 1.</ref>は、軽度の癲癇患者を治癒し、それ以外の病気に対しても有益であるかもしれない」と考えた<ref name=Temkin1971>Temkin O. The falling sickness: a history of epilepsy from the Greeks to the beginnings of modern neurology. 2nd ed. Baltimore: Johns Hopkins University Press; 1971. p. 33, 57, 66, 67, 71, 78. {{ISBN|0-8018-4849-0}}.</ref>。
 
癲癇の治療手段としての絶食・断食についての研究は、[[1911年]]に[[フランス]]で行われている<ref name=Guelpa1911>Guelpa G, Marie A. La lutte contre l'epilepsie par la desintoxication et par la reeducation alimentaire. Rev Ther med-Chirurg. 1911; 78: 8–13. As cited by Bailey (2005).</ref>。あらゆる年齢層の癲癇患者20人に対し、摂取エネルギーを低くした菜食、断食、そして、(下剤による)腸内の異物除去を組み合わせることで、「解毒」できたという。被験者のうちの2人には有益な効果が見られたが、課された制限を順守できた者はほとんどいなかった。[[臭化カリウム]]は被験者を悄然とさせたのに対し、食事療法は被験者の意思能力を改善させた<ref name=Bailey2005>Bailey EE, Pfeifer HH, Thiele EA. The use of diet in the treatment of epilepsy. Epilepsy Behav. 2005 Feb;6(1):4–8. {{doi|10.1016/j.yebeh.2004.10.006}}. {{PMID|15652725}}</ref>。
 
このころ、[[アメリカ合衆国]]における身体鍛錬の象徴的存在であった[[ベルナール・マクファデン]]( '''Bernarr Macfadden''' )は、身体の健康のために断食を普及させた。マクファデンの教え子で、[[ミシガン州]][[バトルクリーク (ミシガン州)|バトルクリーク]]在住のヒュー・ウィリアム・コンクリン( '''Hugh William Conklin''' )は、癲癇患者の治療に断食を取り入れ始めた。腸内の[[パイエル板]]( '''Peyer's Patches''' )から毒素が分泌され、それが血中に放出されたときに癲癇の発作が起こるのではないか、とコンクリンは推測した。この毒素を消滅させる目的で、コンクリンは患者に18~25日間の断食の継続を奨めた。コンクリンはかなりの数の癲癇患者を『水断食』( '''WAter Diet''' )で治療した。子供の癲癇患者の90%はこれで治癒できたが、成人の患者では50%に下がった。その後、コンクリンによる患者の症例記録の分析では、患者の20%は発作から解放され、50%はいくらかの改善が見られた<ref name=Wheless2004/>。コンクリンが行っていた絶食療法は、開業した神経内科医に採用された。
 
[[1916年]]、T・E・マクマリー( '''T. E. McMurray''' )は、『ニューヨーク・メディカル・ジャーナル』( '''The New York Medical Journal''' )に、「[[1912年]]以降、断食療法で癲癇治療に成功し、その後は[[デンプン]]や[[砂糖]]を加えない食事を処方している」と記述している。[[1921年]]、内分泌学者のヘンリー・ロウル・ガイエレン( '''Henry Rawle Geyelin''',1883~1942 )は、アメリカ医師会( '''American Medical Association''' )が開催した定期学術集会に出席し、自身の経験を報告した。ガイエレンは、コンクリンによる癲癇治療の成功を目の当たりにしたことで、自身の患者36人で試した。短期間ではあったが、同様の結果になったという。1920年代に行われた更なる研究では、癲癇の発作は断食後に再発することがあるという。
 
コンクリンによる絶食療法で癲癇治療に成功した患者の1人で、ニューヨークの顧問弁護士、チャールズ・プレンティス・ハウランド( '''[[:en:Charles P. Howland|Charles Prentice Howland]]''', 1869~1932 )は、自身の弟、ジョン・エライアス・ハウランド( '''John Elias Howland'''. 1873~1926 )に、『'''The Ketosis of Starvation'''』(『絶食状態におけるケトーシス』)を研究する資金として5000ドルを贈った。[[ジョンズ・ホプキンス病院]]( '''Johns Hopkins Hospital''' )の小児科の教授でもあったジョンは、兄から贈られた資金を、神経内科医のスタンリー・カブ( '''[[:en:Stanley Cobb]]''', 1887~1968 )とその助手、ウィリアム・ゴードン・レノックス( '''[[:en:William Gordon Lennox]]''', 1884~1960 )が行っていた研究のために提供した<ref name=Wheless2004/>。
 
== ケトン食療法 ==
{{see also|ケトジェニック・ダイエット}}
通常、炭水化物を摂取すると、体内で[[ブドウ糖]]に合成され、全身の細胞に運ばれて消費される。一方、炭水化物をほとんど含まず、脂肪分が豊富な食事を摂ると、[[肝臓]]は脂肪を[[脂肪酸]]( '''Fatty Acids''' )と[[ケトン体]]( '''keto''' )に分解する。ケトン体は脳に入り、ブドウ糖に代わるエネルギー源として消費される。血中のケトン体濃度の上昇は「'''[[ケトーシス]]'''」( '''Ketosis''' )と呼ばれ、この状態になると、癲癇の発作の頻度を低下させる<ref name=Freeman2007/>。なお、この「'''ケトーシス'''」と「'''糖尿病性ケトアシドーシス'''」( '''Diabetic Ketoacidosis''' )は明確に異なる。この食事法の潜在的副作用としては、[[便秘]]( '''Constipation''' )、成長の遅延、[[高コレステロール血症]]( '''Hypercholesterolemia''' )、[[腎臓結石]]( '''Kidney Stone''' )がある<ref name=Kossoff2013>Kossoff EH, Wang HS. [http://biomedj.cgu.edu.tw/pdfs/2013/36/1/images/BiomedJ_2013_36_1_2_107152.pdf Dietary therapies for epilepsy.] Biomed J. 2013 Jan-Feb;36(1):2-8. {{doi|10.4103/2319-4170.107152}} {{PMID|23515147}}</ref>。
 
[[砂糖]]、甘い[[果物]]全般、[[デンプン]]が豊富なもの全般を避け、各種[[種実類|ナッツ]]、[[生クリーム]]、[[バター]]の摂取を増やす<ref name=Freeman2007/>。食べ物に含まれる脂肪分は、「長鎖中性脂肪」( '''Long-Chain Triglycerides''', '''LCT''' )と呼ばれる分子で構成されるが、このLCTよりも短い[[炭素鎖]]からなる「中鎖中性脂肪」( '''Medium-Chain Triglycerides''', '''MCT''' )は、ケトン体の産生量を増やすため、MCTが豊富な[[ココナッツオイル]]を摂取する場合もある。脂肪の摂取比率を減らし、タンパク質の摂取を増やすケトン食もある<ref name=Liu2008>Liu YM. [http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1528-1167.2008.01830.x/full Medium-chain triglyceride (MCT) ketogenic therapy.] Epilepsia. 2008 Nov;49 Suppl 8:33–6. {{doi|10.1111/j.1528-1167.2008.01830.x}}. {{PMID|19049583}}</ref><ref name=Zupec-Kania2008a>Zupec-Kania BA, Spellman E. An overview of the ketogenic diet for pediatric epilepsy. Nutr Clin Pract. 2008 Dec–2009 Jan;23(6):589–96. {{doi|10.1177/0884533608326138}}. {{PMID|19033218}}</ref>。小児癲癇用のケトン食では、年齢と身長を考慮し、身体の成長と修復に必要な量のタンパク質を摂取する。
 
何らかの形でこの食事療法を実践すると、癲癇持ちの子供や若者の約半数は、発作を起こす頻度が半分に減り、この食事法を止めたあとも効果は持続するようになる<ref name=MartinMcGill2018>Martin-McGill KJ, Jackson CF, Bresnahan R, Levy RG, Cooper PN. [https://www.cochranelibrary.com/cdsr/doi/10.1002/14651858.CD001903.pub4/full Ketogenic diets for drug-resistant epilepsy.] Cochrane Database Syst Rev. 2018 Nov 7;11:CD001903. {{doi|10.1002/14651858.CD001903.pub4}}. {{PMID|30403286}}</ref>。子供や成人を問わず、癲癇患者がこの食事療法を実践することで、その恩恵が得られる可能性を秘めており、これと類似する『修正[[アトキンス・ダイエット]]』( '''Modified Atkins Diet''', 炭水化物の1日の摂取量を10~15g以内に抑えたうえで、タンパク質・脂肪・水・茶・食べる量は一切制限しない。アメリカ合衆国の心臓病専門医、[[ロバート・アトキンス]]〈 '''Robert Atkins''' 〉が開発した食事法 )も同様に身体に有効であることを示す証拠もある<ref name=Freeman2007/>。方式がどうであれ、「[[炭水化物]]および[[砂糖]]の摂取は徹底的に避けたうえで、大量の脂肪分を摂取する」点は共通している。
 
=== 日本での現状 ===
[[2016年]]4月、難治性てんかん患者を対象に、糖質摂取を極端に減らした「てんかん食」に保険が適用された。この食事法は、[[炭水化物]]の1日の摂取量を10~15g以内に抑え、体内で「ケトン体」が生成される状態(これを「[[ケトーシス]]」( '''Ketosis''' )に誘導する。これは「'''ケトン食'''」「'''ケトン食療法'''」「'''ケトジェニック療法'''」「'''ケトジェニック・ダイエット'''」とも呼ばれる。もともとは、1920年代前半、[[アメリカ合衆国]][[ミネソタ州]][[ロチェスター (ミネソタ州)|ロチェスター市]]にある[[メイヨー・クリニック]]( '''Mayo Clinic''' )の医師、[[ラッセル・ワイルダー|ラッセル・モース・ワイルダー]]( '''Russell Morse Wilder''', 1885~1959 )が癲癇を治療するために開発した食事法である<ref>{{Cite web |author = Dana Sparks |date = 16 January 2015|url = https://newsnetwork.mayoclinic.org/discussion/a-line-in-the-sand-mayo-clinics-role-in-early-insulin-research/ |title = A Line in the Sand – Mayo Clinic’s Role in Early Insulin Research |website = |publisher = Mayo Clinic News Network |accessdate = 28 October 2019}}</ref><ref>{{Cite web |author = Beth Schultz |date = 11 April 2019 |url = https://www.apnews.com/b340be102a204cdbb02941772bf9fd56 |title = Feeding our brains to reduce memory loss |website = |publisher = The Associated Press( APNEWS )|accessdate = 28 October 2019}}</ref>。
 
平成28年診療報酬改定において入院時食事療養(I)又は入院時生活療養(I)の届出を行った保健医療機関が行う特別職のメニューにケトン食が追加された。ケトン食は、グルコースではなくケトン体をエネルギーにして供給することを目的に、炭水化物を厳格に制限し、脂肪の摂取を大幅に増やすものである<ref>[http://www.m-review.co.jp/book/detail/978-4-7792-1981-8 てんかんの教科書(大澤真木子・秋野公造 メディカルレビュー社] </ref>。
 
詳しいメカニズムは未解明だが、脳が糖質の代わりにケトン体を栄養源に活動するようになり、それに伴って発作が減ると考えられている。[[砂糖]]を筆頭に、米、麺類、パン、イモ類全般のような[[炭水化物]]の塊はまず口にできない。糖質を取り過ぎると、ケトーシスは解除されてしまい、効果が失われる。炭水化物の摂取を厳格に制限する代わりに、エネルギーの90%を脂肪から摂取する。ラッセル・ワイルダーが開発したケトン食における栄養素の構成比率は、「脂肪(4):タンパク質と炭水化物(1)」である。脂肪分が90%、タンパク質が6%で、炭水化物の摂取は可能な限り避ける<ref>{{Cite web |author = |date = |url = https://charliefoundation.org/classic-keto/ |title = CLASSIC KETO|website = |publisher = Charlie Foundation|accessdate = 28 October 2019}}</ref>。
 
患者1人1人の年齢、身長、体重に合わせて内容を検討し、調理では栄養素を厳格に計算する。ケトン食は静岡てんかん・神経医療センター(静岡市葵区)の管理栄養士、竹浪千景は「脂っこいため食べにくい。調理をする家族の負担は決して軽くはない」と不満を述べた。小麦粉代わりに使える特殊粉ミルク「ケトンフォーミュラ」をレシピに採用しているが、製造しているのは「明治」1社だけである。登録した患者に無償で提供しているものの、国の補助金は限られており、その製造費用はかなり大きい。災害で生産が止まれば、治療はままならなくなる恐れがある。ケトン食は、学校給食にも関わってくる。「ケトン食普及会」の元会長、松戸クリニック(千葉県松戸市)の丸山博院長は「学校や保育所には弁当を持参する患者が大半。食物アレルギーへの対応は進んだが、てんかんへの配慮も検討してほしい」と話す<ref>日本経済新聞朝刊2016年12月11日付</ref>。
 
=== ケトン食による治療 ===
{{see also|ラッセル・ワイルダー}}
[[1921年]]、医師のローリン・ターナー・ウディヤット( '''Rollin Turner Woodyatt''', 1878~1953 )は、食事と糖尿病に関する研究を行った。その研究で明らかになったのは、健康体の人間が、
 
#絶食状態にある
#極度の低糖質かつ高脂肪な食事を摂っている
 
このいずれかの状態にあるとき、[[肝臓]]が、「[[ケトン体]]」と総称される水溶性化合物([[β-ヒドロキシ酪酸]]〈 '''β-Hydroxybutyrate''' 〉、[[アセト酢酸]]〈 '''Acetoacetate''' 〉、[[アセトン]]〈 '''Acetone''' 〉)の産生量を増やすということであった<ref name=Wheless2004/><ref name=Wheless2004>Wheless JW. [https://www.springer.com/cda/content/document/cda_downloaddocument/9781588292599-c2.pdf History and origin of the ketogenic diet] (PDF). In: Stafstrom CE, Rho JM, editors. Epilepsy and the ketogenic diet. Totowa: Humana Press; 2004. {{ISBN|1-58829-295-9}}.</ref>。
 
[[メイヨー・クリニック]]( '''Mayo Clinic''' )の医師、[[ラッセル・ワイルダー]]は、ウディヤットによる研究を参考に、この食事法を「'''ケトン食'''」「'''ケトジェニック・ダイエット'''」( '''The Ketogenic Diet''' )と命名した。ワイルダーは、「炭水化物の摂取を抑え、大量の脂肪分を摂取することで血中のケトン体の濃度を上昇させるケトーシス状態に導く食事法だ」と説明した。ワイルダーは、絶食しているときと同じ効果が得られる食事療法が無いかどうかを模索していた。1921年、ワイルダーは少数の癲癇患者に対し、癲癇の治療手段としてケトン食を初めて処方した<ref name=Wheless2004>Wheless JW. [https://www.springer.com/cda/content/document/cda_downloaddocument/9781588292599-c2.pdf History and origin of the ketogenic diet] (PDF). In: Stafstrom CE, Rho JM, editors. Epilepsy and the ketogenic diet. Totowa: Humana Press; 2004. {{ISBN|1-58829-295-9}}.</ref>。
 
ワイルダーの同僚で小児科医のマイニー・グスタフ・ピーターマン( '''Mynie Gustav Peterman''', 1896~1971 )は、体重1kgにつき、1gのタンパク質、炭水化物の1日の摂取量を10~15gに抑え、残りの栄養素は全て脂肪から摂取する食事を処方した。1920年代のピーターマンによるケトン食の研究は、この食事法の導入とその維持手段を確立させた。この食事法を実践することによる好ましい効果(注意力・普段の振舞い・睡眠が改善された)と副作用(吐き気)の両方を記録した。この食事法は、とくに子供に対して非常に効果的であることが分かった。[[1925年]]、ピーターマンは、「若い患者37人にこの食事を処方したところ、95%の患者は発作の頻度が低下し、60%の患者は発作が見られなくなった」と報告した。
[[File:Liquigen edit.jpg|thumb|中鎖中性脂肪( '''MCT''' )の乳剤]]
 
[[1930年]]までに、10代の青少年や成人に対するこの食事法の効果についての研究が行われた。メイヨー・クリニックの医師、クリフォード・ジョゼフ・バーボルカ( '''Clifford Joseph Barborka''', 1894~1971 )は、「高齢の患者の56%が、この食事法で健康状態が改善し、12%は発作が起こらなくなった」と報告した。バーボルカは、「成人はこの食事法で利益を得られる可能性がもっとも低い」と結論付け、成人患者に対するケトン食の処方の研究は、[[1999年]]まで行われなかった<ref name=Wheless2004>Wheless JW. [https://www.springer.com/cda/content/document/cda_downloaddocument/9781588292599-c2.pdf History and origin of the ketogenic diet] (PDF). In: Stafstrom CE, Rho JM, editors. Epilepsy and the ketogenic diet. Totowa: Humana Press; 2004. {{ISBN|1-58829-295-9}}.</ref><ref name=Kossoff2007>Kossoff EH. [http://www.epilepsy.com/article/2007/3/do-ketogenic-diets-work-adults-epilepsy-yes Do ketogenic diets work for adults with epilepsy? Yes!] epilepsy.com. 2007, March. Cited 24 October 2009.</ref>。
 
=== 抗癲癇薬の開発 ===
1920年代から1930年代にかけて処方され続けてきたケトジェニック療法であるが、徐々に処方されなくなっていく。[[1857年]]に発見された鎮静性臭化物や、[[1912年]]に開発された抗癲癇薬の[[フェノバルビタール]]( '''Phenobarbital''' )の存在があった。[[1938年]]、神経内科医のH・ヒューストン・メリット( '''H. Houston Merritt''', 1902~1979 )と、トレイスィー・パトナム( '''Tracy Putnam''', 1894~1975 )の2人が[[フェニトイン]]を開発すると、癲癇治療の研究の焦点は新薬の開発に移るようになった。1970年代に[[バルプロ酸ナトリウム]]( '''Sodium Valproate''' )が導入されると、神経内科医は、癲癇症候群および複数の癲癇発作に効果のある薬を利用・入手できるようになった。この時までに、ケトン食の処方は「[[レノックス・ガストー症候群]]」( '''Lennox–Gastaut Syndrome''' )のような難病の症例のみに限定されており、さらに処方されなくなった<ref name=Wheless2004/>。
 
=== 中鎖中性脂肪 ===
1960年代には、「中鎖中性脂肪」( '''Medium-Chain Triglyceride''','''MCT''' )には、多くの脂肪分に含まれる「長鎖中性脂肪」( '''Long-Chain Triglycerides''', '''LCT''' )に比べてケトン体の産生量がエネルギー単位で多いことが判明した<ref name=Huttenlocher1971>Huttenlocher PR, Wilbourn AJ, Signore JM. Medium-chain triglycerides as a therapy for intractable childhood epilepsy. ''Neurology''. 1971 Nov;21(11):1097–103. {{doi|10.1212/wnl.21.11.1097}}. {{PMID|5166216}}</ref>。MCTは体内に効率良く吸収され、[[リンパ系]]( '''Lymphatic System''' )ではなく[[肝門脈系]]( '''Hepatic Portal System''' )を経由して肝臓に迅速に輸送されていく<ref name=Neal2008>Neal EG, Chaffe H, Schwartz RH, Lawson MS, Edwards N, Fitzsimmons G, ''et al.'' The ketogenic diet for the treatment of childhood epilepsy: a randomised controlled trial. Lancet Neurol. 2008 Jun;7(6):500–6. {{doi|10.1016/S1474-4422(08)70092-9}}. {{PMID|18456557}}</ref>。[[1971年]]、小児神経内科医のピーター・ホトゥンロハー( '''Peter Huttenlocher''', 1931~2013 )は、エネルギーの60%をMCTから摂取するケトン食を考案した。MCTオイルの2倍の量の[[脱脂粉乳]]と混ぜて冷やし、少しずつ飲んだり、食べ物に加える。子供と青少年12人にこのケトン食を試したところ、発作の抑制と注意力の改善の両方が見られ、本来のケトン食を処方したときに近い結果となった。患者の1人が消化管の不調を訴え、途中で食事を止めたが、それ以外の患者には受け入れられた<ref name=Huttenlocher1971/>。MCTを組み込んだ食事療法は、多くの病院で本来のケトン食に代わって処方されたが、この2つを組み合わせた食事も考案された<ref name=Wheless2004/>。
 
=== 普及 ===
[[ハリウッド]]の映画プロデューサー、[[ジム・エイブラハムズ]]( '''Jim Abrahams''' )は、息子のチャーリーが重度の癲癇を患い、苦しんでいたことに悩んでいた。息子の癲癇は、当時主流とされていた治療法でも代替治療でも治せなかった。癲癇の手引書の中にケトン食療法に関する記述があるのを発見したエイブラハムズは、チャーリーを連れて、ジョンズ・ホプキンス病院のジョン・マーク・フリーマン( '''[[:en:John M. Freeman (neurologist)|John Mark Freeman]]''', 1933~2014 )のもとを訪れた。ケトン食療法により、チャーリーの癲癇発作は急速に抑制され、身体は再び成長し始めた。[[1994年]]、エイブラハムズは、この食事療法の普及と研究資金を集める目的で、『チャーリー基金』( '''The Charlie Foundation''' )を設立した<ref name=Wheless2004>Wheless JW. [https://www.springer.com/cda/content/document/cda_downloaddocument/9781588292599-c2.pdf History and origin of the ketogenic diet] (PDF). In: Stafstrom CE, Rho JM, editors. Epilepsy and the ketogenic diet. Totowa: Humana Press; 2004. {{ISBN|1-58829-295-9}}.</ref>。未来を見据えた形でケトジェニック療法の研究が始まり、その研究結果は[[1996年]]にアメリカ癲癇学会( '''The American Epilepsy Society''' )で発表され、[[1998年]]に公表された<ref name=Vining1998>Vining EP, Freeman JM, Ballaban-Gil K, Camfield CS, Camfield PR, Holmes GL, ''et al.'' [http://archneur.ama-assn.org/cgi/content/full/55/11/1433 A multicenter study of the efficacy of the ketogenic diet.] Arch Neurol. 1998 Nov;55(11):1433–7. {{doi|10.1001/archneur.55.11.1433}}. {{PMID|9823827}}</ref>。
 
1994年10月、[[NBC]]による番組に出演したジム・エイブラハムズが、息子チャーリーの癲癇発作の事例とケトジェニック療法について公表すると、ケトジェニック療法はアメリカ全土に知れ渡るようになり、この食事療法に対して科学的な関心が劇的に高まるようになった。[[1997年]]に制作・放映されたテレビ向け映画『'''''First Do No Harm'''''』(邦題:『[[誤診 (映画)|誤診]]』)では、難治性の癲癇発作のある少年がケトジェニック療法で治っていく過程が描かれている<ref name=Freeman2007/<ref name=Freeman2007>Freeman JM, Kossoff EH, Hartman AL. The ketogenic diet: one decade later. Pediatrics. 2007 Mar;119(3):535–43. {{doi|10.1542/peds.2006-2447}}. {{PMID|17332207}}</ref>>。[[2007年]]までに、ケトジェニック療法は45か国中75の医療施設で処方されるようになり、年長の子供や成人に対しては、ケトン食に類似する食事法である『修正[[アトキンス・ダイエット]]』( '''Modified Atkins Diet''' )も処方されるようになった。ケトジェニック療法は、癲癇以外の様々な病気に対する作用や可能性についても調査が行われるようになった<ref name=Freeman2007/><ref name=Freeman2007>Freeman JM, Kossoff EH, Hartman AL. The ketogenic diet: one decade later. Pediatrics. 2007 Mar;119(3):535–43. {{doi|10.1542/peds.2006-2447}}. {{PMID|17332207}}</ref>。
 
=== 治療の成果 ===
未来を見据える形で行われた治療意図の研究は、[[1998年]]にジョンズ・ホプキンス病院の研究チームが発表し<ref name=Freeman1998>Freeman JM, Vining EP, Pillas DJ, Pyzik PL, Casey JC, Kelly LM. The efficacy of the ketogenic diet—1998: a prospective evaluation of intervention in 150 children. Pediatrics. 1998 Dec;102(6):1358–63. {{doi|10.1542/peds.102.6.1358}}. {{PMID|9832569}}. https://web.archive.org/web/20040629224858/http://www.hopkinsmedicine.org/press/1998/DECEMBER/981207.HTM Lay summary]—JHMI Office of Communications and Public Affairs. Updated 7 December 1998. Cited 6 March 2008.</ref>、[[2001年]]にはその追跡調査の研究結果についてまとめた報告書を公表している<ref name=Hemingway2001>Hemingway C, Freeman JM, Pillas DJ, Pyzik PL. The ketogenic diet: a 3- to 6-year follow-up of 150 children enrolled prospectively. Pediatrics. 2001 Oct;108(4):898–905. {{doi|10.1542/peds.108.4.898}}. {{PMID|11581442}}</ref>。他のケトジェニック療法の研究に見られるように、比較対照群(治療を受けなかった患者)は用いなかった。この研究には、子供の患者150人を被験者として登録した。実験開始から3か月後、患者全体の83%はこの食事法を続け、26%は発作の良好な減少が、31%は非常に優れた形での発作の減少が確認され、3%は発作が無くなった。「発作の良好な減少」は、「発作を起こす頻度が50~90%以上に低下する」、「非常に優れた減少」は、「発作の頻度が90~99%以上に低下する」と定義されている。
 
実験開始から12か月後では、55%がこの食事法を続け、23%は良好な反応を、20%は非常に優れた反応を見せ、7%は発作が無くなった。この段階でこの食事法を中止した患者も出たが、それはこの食事法の効果が出なかったり、病気のためにこの食事法そのものを止めたためである。それ以外の患者の多くは、この食事療法による恩恵を得られた。実験開始から2年、3年、4年と経過した時点でもこの食事法を続けていた患者の割合は、それぞれ39%、20%、12%であった。実験期間中、この食事法の中止に至った理由でもっとも一般的なものは、「発作が治った」「症状が目に見えて改善された」が挙げられる。実験開始から4年目、患者150人のうち、16%は発作の良好な減少が、14%は非常に優れた減少が見られ、13%は発作が無くなった。これらの数字には、この食事療法を続行中の患者も含まれる。この期間を過ぎてもこの食事法を続けている患者の場合、発作が無くなったわけではないが、非常に優れた反応を示した<ref name=Hemingway2001/><ref name=Kossoff2009c>Kossoff EH, Rho JM. [https://link.springer.com/content/pdf/10.1016%2Fj.nurt.2009.01.005.pdf Ketogenic diets: evidence for short- and long-term efficacy.] Neurotherapeutics. 2009 Apr;6(2):406–14. {{doi|10.1016/j.nurt.2009.01.005}} {{PMID|19332337}}.</ref>
 
複数の小規模な研究の結果を組み合わせることで、個別の研究のみで得られる結果に比べて、より説得力のある証拠を生み出せるようになる。これは「[[メタ分析]]」( '''Meta-Analysis''' )と呼ばれる統計的手法である。[[2006年]]に行われた4つのメタ分析のうちの1つでは、患者数の合計が1084人にのぼる19の研究について調べたものがある<ref name=Henderson2006>Henderson CB, Filloux FM, Alder SC, Lyon JL, Caplin DA. Efficacy of the ketogenic diet as a treatment option for epilepsy: meta-analysis. J Child Neurol. 2006 Mar;21(3):193–8. {{doi|10.2310/7010.2006.00044}}. {{PMID|16901419}}</ref>。このうちの3つ目のメタ分析研究では、「患者の発作の頻度は非常に優れた形で減少し、患者の半数は発作の良好な減少が見られた」と結論付けている<ref name=Kossoff2009b>Kossoff EH, Zupec-Kania BA, Rho JM. Ketogenic diets: an update for child neurologists. J Child Neurol. 2009 Aug;24(8):979–88. {{doi|10.1177/0883073809337162}}. {{PMID|19535814}}</ref>。
 
[[2018年]]に[[コクラン共同計画]]( '''Cochrane Collaboration''' )が行った論文研究では、薬剤では発作の抑制には至らなかった癲癇患者に対して処方されたケトジェニック療法の[[ランダム化比較試験]]( '''Randomized Controlled Trial''' )11件について分析している<ref name=MartinMcGill2018/>。このうちの6件の試験では、ケトジェニック療法に割り当てられた群とそうでない群とを比較した。他の試験では、食事法を導入することでどこまで持ちこたえるかを比較した<ref name=MartinMcGill2018/>。対照群を用いないケトン食療法を取り扱った最大規模の試験<ref name=Neal2008 />においては、ケトン食に割り当てられなかった群6%と比べて、ケトン食に割り当てられた群の小児と若者の38%は、発作を起こす確率が半分以下に低下した。ケトン食と比較する目的で行われた修正アトキンス・ダイエットを取り入れた2件の大規模試験でも似たような結果が示され、50%以上の子供が、対照群10%と比べて発作を起こす確率が半分以下に低下した<ref name=MartinMcGill2018/>。
 
2018年に行われた論文研究では、成人に処方したケトン食療法についての16の研究を精査しており、「ケトジェニック療法は、より一般的な治療法になりつつあり、子供にも大人にもほぼ同じ効果を発揮し、その副作用は比較的軽度である」と結論付けている。しかしながら、患者の多くは様々な理由でこの食事法を途中で中止し、その医学的根拠および臨床結果の質は、小児研究に比べて低くなっている傾向にある。健康上の問題については、低密度リポタンパク( '''Low-Density Lipoprotein''' )の上昇、総コレステロール値の上昇、体重減少がある<ref name=Liu2018>Liu H, Yang Y, Wang Y, Tang H, Zhang F, Zhang Y, Zhao Y. [https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/epi4.12098 Ketogenic diet for treatment of intractable epilepsy in adults: A meta-analysis of observational studies]. Epilepsia Open. 2018 Feb 19;3(1):9–17. {{doi|10.1002/epi4.12098}}. {{PMID|29588983}}.</ref>。
 
== 作用機序 ==
=== 発作の病理学 ===
{{
multiple image
| align = right
| direction = vertical
| header = [[ケトン体]]
 
| image1 = beta-Hydroxybutyric acid-2D-skeletal.svg
| width1 = 150
| alt1 = Skeletal formula of 3-hydroxybutyric acid
| caption1 = [[β-ヒドロキシ酪酸]]
 
| image2 = Acetoacetic acid-2D-skeletal.svg
| width2 = 150
| alt2 = Skeletal formula of 3-oxobutanoic acid
| caption2 = [[アセト酢酸]]
 
| image3 = Acetone-2D-skeletal.svg
| width3 = 75
| alt3 = Skeletal formula of acetone
| caption3 = [[アセトン]]
 
}}
 
ヒトの脳は、[[神経インパルス]]( '''Nerve Impulses''', 「''impulse''」は「ほんの短い時間だけ発生する電流」のこと)を伝播する形で脳内に信号を伝達していく[[ニューロン]]( '''Neurons''', 神経組織を構成する1つ1つの細胞 )による網状回線網で構成されている。あるニューロンから別のニューロンへ信号が伝播されていくとき、通常は[[神経伝達物質]]( '''Neurotransmitters''' )がそれを制御する役割を果たすが、一部のニューロン間においては電気経路も存在する。神経伝達物質は、神経インパルスが発火するのを抑制する。[[γ-アミノ酪酸]]( '''Gamma-Aminobutyric Acid''', '''GABA'''と呼ばれる )がその役目を果たすが、逆に、ニューロンを興奮させ、発火させる作用を持つ[[グルタミン酸]]( '''Glutamic Acid''' )もある。末端から抑制性神経伝達物質を分泌するニューロンは「抑制性ニューロン」( '''Inhibitory Neuron''' )と呼ばれ、興奮性神経伝達物質( '''Excitatory Neurotransmitters''' )を分泌するニューロンは「興奮性ニューロン」( '''Excitatory Neuron''' )と呼ばれる。興奮と抑制のバランスが取れているのなら正常な状態であるが、そのバランスが脳内の一部、もしくは脳内全体で激しく崩れるとき、発作が起こる可能性がある。GABA(γ-アミノ酪酸)の産生量の増加とその分解の抑制、あるいはニューロンに直接与える影響がより強化される、といった要素は、発作の抑制につながり、抗癲癇薬はGABAの組織系統に強く作用する<ref name=Stafstrom2004>Stafstrom CE. An introduction to seizures and epilepsy. In: Stafstrom CE, Rho JM, editors. Epilepsy and the ketogenic diet. Totowa: Humana Press; 2004. {{ISBN|1-58829-295-9}}.</ref>。神経インパルスは、ニューロンの表面を覆う[[細胞膜]]( '''Cell Membrane''' )の内部にある神経経路を通り抜けていく[[ナトリウムイオン]]( '''Sodium Ions''' )の大量流入、それに続く形で他の神経経路の内部を通り抜けていく[[カリウムイオン]]( '''Potassium Ions''' )の流出を特徴とする。
 
ニューロンは、活性化が起こらない不応期( '''Refractory Period''' )が訪れている間は発火できず、これは別にあるカリウム・チャネル( '''Potassium Channel''' )が媒介するのが原因である。これらの[[イオンチャネル]]( '''Ion channels''', [[イオン]]を膜の内外に透過させる際に必要なタンパク質の一種 )の流動を制御するのは、電圧の変化や、[[リガンド]]( '''Ligand''', 神経伝達物質の一種 )と呼ばれる化学伝達物質( '''Chemical Messenger''' )によって開放される「関門」である。抗癲癇薬は、これらの神経経路にも作用する<ref name=Stafstrom2004/>。
 
[[病態生理学]]( '''Pathological Physiology''' )における癲癇発作の発生例としては、以下の症例が挙げられる<ref name=Stafstrom2004/>。
 
* 脳内の神経細胞において、興奮状態が異常なまでに長時間持続する
* ニューロンの構造が普通ではなくなる→電流の変化をもたらす
* 抑制性神経伝達物質の産生量が減少する
* 抑制性神経伝達物質の[[受容体]]が無効になる
* 興奮性神経伝達物質の分解作業が不十分な状態のまま過剰に進行する
* [[シナプス]]( '''Synapse''', 神経細胞同士を繋ぎ合わせる部位 )の発達が未熟なまま
* イオンチャネルが機能障害を惹き起こしている
 
=== 発作の抑制 ===
ケトジェニック療法が身体に作用する際の機序について説明している仮説が数多く出ているが、検証されてはおらず、不明な点も多い。全身で起こっているケトアシドーシス、電解質の変化、低血糖症が挙げられるが、これらはいずれも反証されている<ref name=Hartman2007b>Hartman AL, Vining EP. [http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1528-1167.2007.00914.x/full Clinical aspects of the ketogenic diet.] Epilepsia. 2007 Jan;48(1):31–42. {{doi|10.1111/j.1528-1167.2007.00914.x}} {{PMID|17241206}}</ref>。ケトン食を摂取しているヒトの脳内では数多くの生化学的な変化が起こっていることが確認されているが、いずれの作用が癲癇発作を抑制しているのかについてまでは分かっていない。抗癲癇薬が脳に及ぼす機序の解明についても類似している<ref name=Hartman2007/>。
 
ケトジェニック療法では炭水化物の摂取を厳格に制限する代わりに脂肪の摂取は制限しないため、身体は脂肪酸を主要な燃料源として消費するようになる。脂肪酸は、細胞の[[ミトコンドリア]]( '''Mitochondria''' )による酸化作用を通して消費される。これを[[β酸化]]( '''Beta Oxidation''' )と呼ぶ。人体には[[糖新生]]( '''Gluconeogenesis''' )と呼ばれる経路があり、炭水化物や砂糖を食べずともブドウ糖を自ら生産する機能が備わっている。アミノ酸も糖新生の材料として使われるが、脂肪酸は材料にできない<ref name=Kerndt1982>Kerndt PR, Naughton JL, Driscoll CE, Loxterkamp DA. [https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1274154 Fasting: the history, pathophysiology and complications.] West J Med. 1982 Nov;137(5):379–99. {{PMID|6758355}}</ref>。
 
だが、[[アミノ酸]]( '''Amino Acids''' )は体の成長と修復に必要な材料となるタンパク質を作る際に欠かせない材料であり、糖新生のためだけに消費されることは無い。脂肪酸はそのままの形では[[血液脳関門]]( ''' The Blood–Brain Barrier''' )を通過しない。肝臓は長鎖脂肪酸を材料に、[[β-ヒドロキシ酪酸]]( '''β-Hydroxybutyrate''' )、[[アセト酢酸]]( '''Acetoacetate''' )、[[アセトン]]( '''Acetone''' )、これらのケトン体を合成する。肝臓が合成したこれらのケトン体は脳内に入り、エネルギー源として消費される<ref name=Hartman2007>Hartman AL, Gasior M, Vining EP, Rogawski MA. [https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1940242 The neuropharmacology of the ketogenic diet.] Pediatr Neurol. 2007 May;36(5):281–292. {{doi|10.1016/j.pediatrneurol.2007.02.008}}. {{PMID|17509459}}</ref>。ケトン体は抗癲癇薬と同様の作用をもたらす。動物実験においては、アセト酢酸とアセトンが発作を抑制したことが確認されている。ケトジェニック療法は、脳のエネルギー代謝を適応的に変化させ、エネルギーが途切れないよう促進する。ブドウ糖に比べると、ケトン体はエネルギーの浪費が起こりにくい燃料となり、ミトコンドリアの増加を促す。発作が起こっている最中にエネルギーの需要が増加することで、ニューロンが安定した状態を維持するのに役立ち、それに伴ってニューロンの神経保護作用( '''Neuroprotective Effect''' )をもたらす可能性がある<ref name=Hartman2007/>。
 
ケトジェニック療法について、齧歯動物([[ネズミ目]])14匹を用いた動物実験による研究がおこなわれている。それらの動物実験でも、ケトジェニック療法が癲癇から脳を保護する作用が確認され、従来から使われてきた抗癲癇薬とはまた別の形で癲癇発作を抑制する作用があることが分かった。臨床の現場で抗癲癇薬としては用いられてはいない「フェノフィブラート」( '''Fenofibrate''' )と呼ばれる薬剤があるが、成体のラットに対して実験的に投与したところ、ケトン食に匹敵するほどの癲癇発作の抑制効果が見られた<ref name=Porta2009>Porta N, Vallée L, Lecointe C, Bouchaert E, Staels B, Bordet R, Auvin S. Fenofibrate, a peroxisome proliferator-activated receptor-alpha agonist, exerts anticonvulsive properties. ''Epilepsia''. 2009 Apr;50(4):943–8. {{doi|10.1111/j.1528-1167.2008.01901.x}}. {{PMID|19054409}}.</ref>。薬剤を半ダース分投与しても発作の抑制が不可能であった患者に対する有効性を示す研究であるとして、他に類を見ない作用機序を示している<ref name=Hartman2007/>。また、ラットにケトン食を取らせたところ、癲癇発作の抑制が確認された<ref name=Hartman2007/>。
===食事療法===
2016年4月には、難治性てんかん患者を対象に、糖質摂取を極端に減らした「てんかん食」による治療が4月、保険適用された。約100年前に考案され、抗てんかん薬の登場で廃れかけたが、薬が効かない患者への有効性が再評価された。ただ厳しい食事制限を生涯続けなければならず、患者や家族の負担は大きい。このてんかん食は、糖質を1食数グラムから数十グラムに抑え、体内で「ケトン体」が生成される状態にするため、{{ill2|ケトン食療法|en|Ketogenic diet}}(ケトン食)とも呼ばれる。平成28年診療報酬改定において入院時食事療養(I)又は入院時生活療養(I)の届出を行った保健医療機関が行う特別職のメニューにてんかん食が追加された。てんかん食の定義は難治性てんかん(外傷性のものを含む)の患者に対し、グルコースに代わりケトン体を熱量源として供給することを目的に炭水化物量の制限、および脂質量の増加が厳格に行われたものをいう<ref>[http://www.m-review.co.jp/book/detail/978-4-7792-1981-8 てんかんの教科書(大澤真木子・秋野公造 メディカルレビュー社] </ref>。
 
だが、抗癲癇薬は癲癇発作を抑制する代わりに、発作を予防したり治療したりする効果は無い。癲癇症状の発症の機序については、まだはっきりとは分かっていない部分も多い。[[バルプロ酸]]( '''Valproate''' )、[[レベチラセタム]]( '''Levetiracetam''' )、[[ベンゾジアゼピン]]( '''benzodiazepine''' )といった化合物もあり、これらは動物実験にて癲癇発作の抑制が確認された。
詳しいメカニズムは未解明だが、脳が糖質の代わりにケトン体を栄養源に活動するようになり、発作が減ると考えられている。砂糖類をはじめ、米やパンなどの穀類、イモなどの根菜は糖質が多く、ほとんど食べられない。治療中はずっと制限が必要で、誤って糖質を取り過ぎると効果が失われる恐れがある。脂質でカロリーを補うため、1品で大さじ1、2杯の油を使う場合もある。
 
しかし、ヒトに対する臨床試験で癲癇の抑制に成功した抗癲癇薬は、未だに出ていない。
年齢や症状に合わせ内容を検討し、調理では栄養素を厳格に計算。小児なら成長に応じた配慮も必要である。てんかん食は静岡てんかん・神経医療センター(静岡市葵区)の竹浪千景管理栄養士は「脂っこいため食べにくい。調理をする家族の負担は決して軽くはない」と指摘する。対応する食材をどう確保するかも課題である。多くが小麦粉代わりに使える特殊粉ミルク「ケトンフォーミュラ」をレシピに採用しているが、製造するのは国内で明治1社のみ。登録した患者に無償提供しているものの、国の補助金は限られ、製造コストは大きい。災害などで生産が止まれば、治療が続けられなくなる恐れもある。小児患者は学校給食にも気を使う。「ケトン食普及会」の元会長、松戸クリニック(千葉県松戸市)の丸山博院長は「学校や保育所には弁当を持参する患者が大半。食物アレルギーへの対応は進んだが、てんかんへの配慮も検討してほしい」と話す<ref>日本経済新聞朝刊2016年12月11日付</ref>。
 
== 疫学 ==
476 ⟶ 596行目:
</small>{{colend}}
]]
一般人口における有病率は0.4 - 14~1.0%ほどで、全世界の有病者数は5000万人ほどとされる<ref name=whofact />。しかし低中所得国では有病率は0.7 - 17~1.4%に上昇する<ref name=whofact />。
 
英国イギリスでのデータでは、10万人あたりインシデントの発症は年間50ケースとされ{{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2016|loc=Introduction}}、傷病コストにかかる費用年間200万ポンドと推定されている{{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2016|loc=Introduction}}。
 
{{-}}
488 ⟶ 608行目:
** [[ヒューゴ・ウィーヴィング]]
** [[ダニー・グローヴァー]]
** [[ブルース・リー]] - 死因の一つともされている
* 音楽家
**アダム・ホロヴィッツ([[ビースティ・ボーイズ]])
495 ⟶ 615行目:
**[[大江光]]{{要出典|date=2018年2月}}
** [[沢田泰司]](元[[X JAPAN]])
**[[イアン・カーティス]]([[ジョイ・ディヴィジョン]]) - ステージ上で発作を起こすこともあった
<!--* [[容祖兒]]([[歌手]]){{要出典}}-->
**[[ジョージ・ガーシュウィン]] - 多型性神経膠芽腫の最初の徴候として、[[めまい]]や短時間の[[記憶喪失|ブラックアウト]]と同時に、焼けた[[ゴム]]のような臭いがしていたという。腫瘍を取り出す手術を受けるも、その6か月後に死亡した。
**[[イアン・カーティス]]([[ジョイ・ディヴィジョン]]) - ステージ上で発作を起こすこともあり、自殺の一因になったとの説もある。
**[[プリンス (ミュージシャン)]] - 幼少期、てんかん発作のためにいじめを受けた経験がある。1992年の楽曲「''The Sacrifice of Victor''」には、自身のてんかんに触れた歌詞がある。
**[[ジョージ・ガーシュウィン]] - 多型性神経膠芽腫の最初の徴候として、[[めまい]]や短時間の[[記憶喪失|ブラックアウト]]と同時に、焼けた[[ゴム]]のような臭いがしていたという。腫瘍を取り出す手術を受けたが6か月後に死亡した。
**[[キース・リチャーズ]] - [[2006年]]、木から落ちて外傷性てんかんを発症して以降、抗てんかん薬を服用している<ref>[http://www.youngepilepsy.org.uk/news-and-events/news/rolling-stone-legend-on-his-anti-epileptic-drugs.html Rolling Stone legend on his anti-epileptic drugs]Young Epilepsy</ref>。
**[[プリンス (ミュージシャン)]] - 幼少期にてんかん発作のためにいじめを受けた経験があり、1992年の楽曲"The Sacrifice of Victor" には自らのてんかんに触れた歌詞がある。
**MCトラブル - [[1991年]]、てんかん発作に伴う心臓発作で死去。20歳没。
**[[キース・リチャーズ]] - 2006年に木から落ちて外傷性てんかんを発症して以降、抗てんかん薬を使用<ref>[http://www.youngepilepsy.org.uk/news-and-events/news/rolling-stone-legend-on-his-anti-epileptic-drugs.html Rolling Stone legend on his anti-epileptic drugs]Young Epilepsy</ref>。
**MCトラブル - 1991年にてんかん発作に伴う心臓発作で死去。20歳没。
* 芸術
** [[エドワード・リア]]([[画家]]) - 子供の時に発症し、姉のジェーンも頻繁な発作に罹を患ていてたあげく早世したことから、遺伝からくるものだったのではないかと推測されている。彼は自身のてんかん症状恥じて生涯周囲には隠していたが、自身の日記で各々の発作の様子を記していた。
<!--** [[パブロ・ピカソ]]([[画家]]・[[彫刻家]]){{要出典}}-->
** [[フィンセント・ファン・ゴッホ]] (画家)
515 ⟶ 634行目:
** [[フィリップ・K・ディック]]
** [[フョードル・ドストエフスキー]]
** [[ビョルンスティエルネ・ビョルンソン]]([[ノルウェーの国歌|ノルウェー国歌]]の作詞者) - 晩年[[脳卒中]]に倒れた後、部分てんかん罹った。
** [[ギュスターヴ・フローベール]]<ref>[http://dokushokai.shimohara.net/meddost/gastaut.htm]</ref>
<!--** [[ジョージ・ゴードン・バイロン]]([[詩人]]){{要出典}} - ギリシャ独立義勇軍の総司令官時に、てんかんの発作を起こし、その数か月後に死亡(死因は雨の中の乗馬による肺炎)。-->
526 ⟶ 645行目:
** [[リジューのテレーズ]]([[カトリック教会]]の[[聖人]])
** [[パウロ]]
** [[アビラのテレサ]]([[スペイン]]の[[カトリック教会|ローマ・カトリック教会]]の神秘主義思想家) - 慢性的な頭痛や一時的ブラックアウトに悩まされ、酷いときには4日間も昏睡状態に陥ることあったという。
** [[ムハンマド・イブン=アブドゥッラーフ|ムハンマド]] - 側頭葉てんかんが、彼に[[インスピレーション|霊感]]を与えていた原因の一つであるという分析がある。
** [[エゼキエル]]([[預言者]])
** [[スウェーデンのビルギッタ]]([[スウェーデン]]の[[聖職者]])
533 ⟶ 652行目:
**[[ソクラテス]]([[哲学者]])
** [[エマヌエル・スヴェーデンボリ]]([[科学者]]・[[政治家]]・[[神秘主義]][[思想家]])
** [[カール・グスタフ・ユング]]([[精神科医]]・[[心理学者]]) - 幼少時、失神を伴う痙攣発作をたびたび起こしていた<ref>コリン・ウィルソン「ユング 地下の大王」(河出文庫)</ref>
**[[南方熊楠]]([[博物学者]]・[[生物学者]]・[[民俗学者]]) - 14歳時、ころに精神的な病を発し、18歳の時、授業中にてんかん発作を起こし、明治22年[[4月27日]]、「夜てんかん発症」と、日記に記している<ref>クマグスの森 南方熊楠の見た宇宙(新潮社)</ref>。
* 君主・王族
** [[カリグラ]]
550 ⟶ 669行目:
** [[エリザベス・モンロー]]([[ジェームズ・モンロー]]第5代[[アメリカ合衆国大統領]][[アメリカ合衆国のファーストレディ|夫人]])
** [[アイダ・マッキンリー]]([[ウィリアム・マッキンリー]]第25代アメリカ合衆国大統領夫人)
** [[ナポレオン・ボナパルト]] - 夜中に短時間しか眠らなかったというエピソードは、睡眠中に発作を起こすためせいで連続した睡眠が得られできなかったことに起因している。なお、彼は一般に「3時間しか眠らなかった」としばしば言われるが、実際は昼寝をしていて、た。それを含めれば6〜86~8時間に達していた(当時彼に仕えていた人の日記などからそう判断される)。
** [[ウラジーミル・レーニン]] - 亡くなる最後の数ヵ月前に発病し、てんかん重積が原因で死亡しに至った。ちなみに、の際の発作は50分間も続いたという
* その他
** [[ダニエル・タメット]]([[円周率]]暗唱の[[ヨーロッパ]]記録保持者)
563 ⟶ 682行目:
[[1995年]]7月の、[[精神保健及び精神障害者福祉に関する法律]](精神保健福祉法)の改正に伴い、[[精神障害者保健福祉手帳]]の取得が可能となった。
 
また、障害年金受給もできるようになり、った。ては精神科医だけがこれ診断書を書けたが、近年、脳外科医も年金申請の診断書書けるようになり、制度、ならおよに、診断書の注意文が変更された。
 
医者の中には、まだ、制度の変更を知らないものもおり、自治体の窓口でもてんかんが精神障害に認定され可能性や、障害年金の申請も可能なケース事例もある(年金の加入状況受給要件による)ということを把握しておらず、申請に関する書類一式を渡さないといったず、それに伴う問題も起きている。
 
年金の受給要件などは、年金ダイヤル、受給に関する相談は、最寄の[[年金事務所]]で問い合わせが可能。
 
年金事務所は基本的に来所前提の相談なので、介助者がいない者は、申請する書類すら揃えられないこともある。
 
===てんかん患者の自動車運転について===
{{Law|section=1}}
てんかん患者の[[自動車]]運転については旧[[道路交通法]](昭和35年6月25日 法律第105号)において「次の各号のいずれかに該当する者に対しては、免許を与えない。<small>(中略)</small>精神病者、精神薄弱者、てんかん病者、目が見えない者、耳がきこえない者又は口がきけない者」と記されていた<ref>道路交通法 昭和35年6月25日 法律第105号 第88条の2(免許の欠格事由)</ref>。しかし、[[2002年]][[5月13日]]の道路交通法<ref>道路交通法 第九十条(免許の拒否等)第一項第一号 ロおよび同法 第百三条(免許の取消し、停止等)第一項第一号 ロ「発作により意識障害又は運動障害をもたらす病気であつて政令で定めるもの」</ref>および同法施行令<ref>道路交通法施行令 第三十三条の二の三</ref>改正により、条件付きでてんかん患者が免許取得できる道が開かれた<ref>なお、法律・政令の条文にはいが[[大型自動車]]免許や[[第二種運転免許]]の取得事実上不可能となっていである</ref>。
 
てんかん患者が運転免許を取得できる条件は以下の3つである<ref>さらに詳細な施行規則については警察庁がガイドラインを発表している。{{Cite web|url=http://www.npa.go.jp/pdc/model/shobun/data/05-17b.pdf|title=モデル処分基準が作成されている不利益処分一覧表(平成24年4月1日現在) 道路交通法 103-1 運転免許の取消し、効力の停止 別紙|accessdate=2013-10-12|format=PDF|publisher=警察庁}}</ref>。
 
*発作が再発するおそれがないもの
*発作が再発しても意識障害及び運動障害がもたらされないもの
*発作が睡眠中に限り再発するもの
 
てんかん患者への運転免許解禁以降、運転者の発作・急病が原因の交通事故も頻発している。[[2011年]]には254件発生しており、このうちてんかんによる事故はその28.7%を占める73件が発生していである。同年のてんかんによる交通事故のうち、5件は死人死亡事故となっている<ref>{{Cite news|title=京都祇園暴走:てんかん発作での重大事故 過去にも相次ぐ|newspaper=毎日新聞|date=2012-4-12|url=http://blogs.yahoo.co.jp/a9611436/63333759.html}}</ref>。
 
また、上記3条件に合致しない、本来なら不適格とされる者の違法免許取得・更新も相次いでおり、[[2012年]]にはてんかん持ちであることを隠して免許を取得・更新したとして逮捕者が出た<ref>{{cite news|title=てんかん隠しの医師を書類送検=免許不正更新容疑-千葉県警|date=2012-10-02|url=http://sdeoc21y.blog.so-net.ne.jp/2012-10-02|accessdate=2013-07-07|publisher=時事通信社}}</ref>。
 
てんかんを原因とした[[てんかん#てんかん発作による事故|下記]]のような重大事故の発生を受け、2012年10月に、[[警察庁]]に設置された一定の病気等に係る運転免許制度の在り方に関する有識者検討会(座長[[藤原静雄]])による提言がなされ<ref>[https://www.npa.go.jp/koutsuu/menkyo4/6/siryo.pdf 「一定の病気等に係る運転免許制度の在り方に関する有識者検討会」]警察庁</ref><ref>[https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG2501S_V21C12A0CC0000/ 「「医師から情報」導入言及 警察庁有識者会議 運転免許の持病虚偽申告」]にほんけい2012/10/25付</ref>、これを受け運転に支障のある者が免許取得・更新時に虚偽申告を行った場合に罰則を設ける改正道路交通法が2013年6月14日に公布された<ref>{{Cite web|url=http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/183/meisai/m18303183042.htm|title=議案情報|accessdate=2013-07-05|publisher=参議院}}</ref>(実際の施行はここから1年以内)。てんかんを含む意識障害をもたらす病気に関係する改正の要点は以下の通り<ref>{{Cite web|url=http://www.shugiin.go.jp/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g18305042.htm|title=第一八三回 閣第四二号 道路交通法の一部を改正する法律案|accessdate=2013-07-05|publisher=衆議院}}{{リンク切れ|date=2016年1月}}</ref>。
 
* 都道府県公安委員会は運転免許を取得・更新する者に対して、運転に支障をきたす恐れのある病気の有無に関する質問票を交付できる。
* この質問票で虚偽申告した場合、1年以下の懲役または30万円以下の罰金を課すことができる。
592 ⟶ 713行目:
* 病気を理由に免許が失効した場合でも、病状が改善すれば条件付きで一部試験を免除して再取得できる。
 
[[2013年]][[11月27日]]、従来の危険運転致死傷罪と自動車運転過失致死傷罪の中間的な処罰を定めた「[[自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律]]」(通称:自動車運転死傷行為処罰法)が成立した(施行は2014年5月20日)。同法第三条2項により、自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気で人を負傷させた場合は最高12年以下の、死亡させた場合は最高15年以下の懲役に処せられる<ref>{{Cite web|url=https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=425AC0000000086|title=自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律|accessdate=2018-09-09|publisher=[[e-Gov法令検索]]}}</ref>。てんかんは、政令によりこの「運転に支障を及ぼすおそれがある病気」に該当するとされた<ref>{{Cite web|url=https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=426CO0000000166|title=自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律施行令(平成二十六年四月二十三日政令第百六十六号)|accessdate=2018-09-09|publisher=[[e-Gov法令検索]]}}</ref>。これまでは、てんかん発作を原因とする事故は自動車運転過失致死傷罪でしか裁けなかったが(持病は[[危険運転致死傷罪]]の要件とならないため)、同法により、より重い刑罰を科することが可能となった。
 
てんかん患者のうち、投薬によって発作がコントロール制御できるのは7-87~8割とされ、全体残り2-32~3の患者は発作がコントロール出来ていの制御はできないという現状が報じられている<ref>{{Cite news|title=【メディカルNOW】「てんかん」薬で発作を抑えられるが、またも死傷事故|newspaper=スポーツ報知|date=2015-08-25|url=http://www.hochi.co.jp/topics/serial/CO019593/20150825-OHT1T50032.html|accessdate=2016-01-13}}</ref><ref>{{Cite news|title=理解を深めて 各地で事故、強まる偏見 県内団体など、患者の孤立危惧 /佐賀|newspaper=毎日新聞|date=2015-08-29|url=http://mainichi.jp/articles/20150829/ddl/k41/040/329000c|accessdate=2016-01-13}}</ref>。{{Main|運転免許に関する欠格条項問題}}
 
==== てんかん発作による事故 ====
てんかん発作による[[暴走]]が引き起こした[[交通事故]]において、[[裁判所]]による判断は有罪、無罪と分かれている。医師の診察により運転を控えるよう指示を受けている場合は、危険運転ほう助容疑に問われ事例もある。なお、てんかん患者の自動車運転免許取得の条件については[[てんかん#てんかん患者の自動車運転について|上記]]を参照。
 
* [[1999年]][[10月26日]] - [[兵庫県]][[三木市]]で、てんかん患者の運転手が乗用車を運転中にてんかん発作を起こし、小学校から下校中の児童3人の列に車が突っこんだ。この事故で1人が全身打撲で死亡、2人が重傷を負った。[[神戸地方裁判所|神戸地裁]]は、心神喪失状態だったという運転手側の主張を受け入れ、無罪を言い渡している<ref>[http://response.jp/article/2003/04/17/50411.html 心神喪失状態で起きた事故の責任は追及不能---3人を死傷させたが無罪] Response.(2003年4月17日). 2011年4月20日閲覧。</ref>。
* [[2001年]][[10月10日]] - [[山形市]][[城南町]]1丁目付近の県道で、運転手が運転する乗用車が原付バイクに追突、バイクの運転手を25メートル引きずり、そのまま逃走した。バイクの運転手は収容先の病院で死亡。加害者はてんかんの持病を持ち、発作を抑える薬を服用していたが、事故直前に軽いめまいといった発作の前兆を感じていた。[[2005年]][[9月26日]]、[[山形地方裁判所]]は「事故発生当時、被告は発作によって心神喪失状態であった」として漫然運転やひき逃げの責任を問わない一方、「被告は発作の前兆を自覚することはできた。薬を服用している点からもこれは確認できる。運転を自粛する注意義務は果たせた」として業務上過失致死罪を適用し、被告に禁固1年6月(執行猶予3年)の判決を言い渡した<ref>{{cite news|title=てんかん発作が出ても運転…有罪判決|newspaper=Response|date=2005-09-30|url=http://response.jp/article/2005/09/30/74860.html|accessdate=2013-02-20}}</ref>。
* [[2002年]][[9月27日]] - [[滋賀県]][[栗東市]]で、てんかん患者の運転手が乗用車を運転中にてんかん発作を起こし、対向車線側に逸脱、軽トラックと正面衝突し軽トラックを運転していた運転手が全身を強く打って死亡した。[[大津地方裁判所|大津地裁]]は、運転中止義務違反の過失がないと指摘し、被告に無罪を言い渡している<ref>[http://response.jp/article/2005/02/24/68348.html 事故を起こした責任はあるが、事故の回避義務はない…てんかん発作] Response.(2005年2月24日). 2011年4月20日閲覧。</ref>。
* [[2004年]][[3月7日]]午後3時40分 - [[長野県]][[長野市]]川合新田付近の[[国道18号]]で、てんかん患者の運転手が乗用車を運転中にてんかん発作を起こし、信号待ちのために停車していた乗用車5台に追突、車数台が関係する多重衝突事故に発展した。この事故で1人が全身を強く打って死亡。 6人が重軽傷を負った。[[長野地方裁判所]]は、事故を起こした被告に対して懲役4年の実刑判決を言い渡している<ref>[http://response.jp/article/2005/02/28/68460.html てんかん発作を起因とした事故で実刑判決] Response.(2005年2月28日). 2011年4月20日閲覧。</ref>。
* [[2008年]][[3月9日]]午前 - [[神奈川県]][[横浜市]][[鶴見区 (横浜市)|鶴見区]]下末吉3丁目付近の県道で、てんかん患者の運転手がトラックを運転中にてんかん発作を起こし、対向車線に逸脱、そのまま道路右側の歩道に乗り上げ、信号待ちをしていた歩行者2人を次々にはねた。このうち1人が死亡、もう1人も重傷を負った。横浜地裁は、事故を起こした被告に対して禁固2年8か月の実刑を言い渡している<ref>[http://response.jp/article/2009/03/24/122107.html てんかん発作で意識消失が原因の死亡事故、禁固の実刑] Response.(2009年3月24日). 2011年4月20日閲覧。</ref>。
* [[2010年]]12月30日午後1時半ごろ - [[三重県]][[四日市市]]羽津町の[[近鉄名古屋線]]踏切で、てんかん患者の歯科医師が乗用車を運転中に意識を失い自転車3台に追突、踏切内に押し出された3人のうち2人が踏切に入ってきた急行列車にはねられて死亡した。[[2011年]][[11月30日]]、津地裁は「発作が起こる持病のため、被告には運転を差し控える義務があったが、これを怠り運転した過失がある」として、被告に禁錮2年10月の実刑判決を言い渡した<ref>{{cite news|title=てんかん発作で追突 実刑判決 津地裁四日市支部|newspaper=中日新聞|date=2011-11-30|url=http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20111130164314952|accessdate=2012-02-01}}</ref>。2012年5月10日、名古屋高等裁判所は地裁判決を支持し、被告の控訴を棄却した<ref>{{cite web|title=四日市踏切事故、二審も実刑 名高裁判決|publisher=[[中日新聞社]]|date=2012-05-10|url=http://www.chunichi.co.jp/s/article/2012051090190725.html|archiveurl=https://web.archive.org/web/20120512213908/http://www.chunichi.co.jp/s/article/2012051090190725.html|accessdate=2012-05-11|archivedate=2012-05-12|deadlinkdate=2016年1月}}</ref>。2012年9月3日、最高裁判所は被告の上告を棄却、被告の実刑判決が確定した<ref>{{cite news|title=四日市の踏切死傷事故、実刑確定へ 最高裁、歯科医師の上告を棄却|newspaper=中日新聞|date=2012-09-06|url=http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20120906120343482|accessdate=2013-02-12}}</ref>。
* [[2011年]][[4月18日]]午前7時45分ごろ - [[栃木県]][[鹿沼市]]内の[[国道293号]]で、てんかん患者の運転手が自走式クレーン車を運転中にてんかん発作を起こし、速度を保ったまま斜行するようにして対向車線側へ逸脱、そのまま道路右側の歩道に乗り上げて集団登校を行っていた小学生15人程度の列に突っ込んだ。このうち児童6人が全身強打で死亡した。運転手は以前にも同様の逸脱・衝突事故を起こして小学生に重傷を負わせており、有罪判決を受けて執行猶予中だった(過去10年に12回の事故。てんかん隠し免許取得)<ref>[http://response.jp/article/2011/04/22/155313.html 自走式クレーンが歩道に乗り上げ、小学生6人死亡] Response. (2011年4月22日). 2011年4月23日閲覧</ref>。宇都宮地裁は、被告が服薬を怠り、事故当日に発作の予兆を感じていたと認定し、2012年1月5日に懲役7年の実刑判決を言い渡した<ref>{{cite news|title=被告、懲役7年の実刑確定 鹿沼6児童死亡事故|newspaper=下野新聞|date=2012-01-06|url=http://www.shimotsuke.co.jp/news/tochigi/top/news/20120105/693813|accessdate=2012-01-31}}{{リンク切れ|date=2016年1月}}</ref>。
{{see|鹿沼市クレーン車暴走事故}}
* [[2011年]][[4月21日]] - [[島根県]][[松江市]]米子町の国道で、てんかんの持病を申告せず運転免許を更新し、意識障害を起こした運転手が、軽自動車で歩道に乗り上げ2人を死傷させた<ref>{{Cite web|url=http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=42456|title=「持病申告せず運転免許」初公判で検察側|accessdate=2012-04-26|date=2011-06-18|publisher=読売新聞}}{{リンク切れ|date=2016年1月}}</ref>。捜査関係者によると、運転手は2007年3月に免許を取得し、持病を認識していたが、2010年2月に免許を更新した際に必要な申告をしていなかった。また、事故の数日前から薬の服用を怠っていた。2011年11月10日、松江地裁は持病に関して「無自覚で安易な姿勢」として禁錮2年の有罪判決を言い渡した<ref>{{cite web|title=「運転控える注意義務」 てんかん発作事故で有罪判決 松江地裁|website=[[MSN産経ニュース]]|date=2011-11-10|url=http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/111110/trl11111012510001-n1.htm|archiveurl=https://web.archive.org/web/20111222043259/http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/111110/trl11111012510001-n1.htm|accessdate=2012-02-01|archivedate=2011-12-22|deadlinkdate=2016年1月}}</ref>。2012年4月27日、広島高等裁判所松江支部も「事故を起こした被告の落ち度が大きいことは明らか。一審判決の量刑が重すぎるとは認められない」として一審判決を支持し、被告側の控訴を棄却した<ref>{{cite web|title=発作で事故、二審も実刑 高裁松江「運転控える義務」|publisher=[[中国新聞社]]|date=2012-04-27|url=http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp201204270115.html|archiveurl=https://web.archive.org/web/20120428040211/http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp201204270115.html|accessdate=2012-04-28|archivedate=2012-04-28|deadlinkdate=2016年1月}}</ref>。
* [[2011年]][[5月10日]] - [[広島県]][[福山市]]で、軽乗用車が小学生の列に突っ込み4人に重軽傷を負わせた<ref>{{cite news|title=てんかん申告せず運転免許を更新 小学生負傷事故の容疑者|newspaper=共同通信|date=2011-05-16|url=http://www.47news.jp/CN/201105/CN2011051601000695.html|accessdate=2013-02-15}}{{リンク切れ|date=2016年1月}}</ref>。事故を起こした運転手はてんかんの治療中だったが、免許更新時に申告していなかった。2011年8月8日、広島地方裁判所福山支部は、「てんかん発作で事故を起こす可能性を認識しながら運転を継続した」、「事故は偶発的ではなく、無自覚で安易な姿勢は厳しい非難に値する」として、被告に禁錮1年の実刑判決を言い渡した<ref>{{cite news|title=てんかんによる事故で禁錮1年 児童4人重軽傷の運転手|newspaper=共同通信|date=2011-08-08|url=http://www.47news.jp/CN/201108/CN2011080801000378.html|accessdate=2013-02-15}}{{リンク切れ|date=2016年1月}}</ref>。
* [[2011年]][[7月10日]] - [[愛知県]][[岩倉市]]大地新町の県道で、当時78歳の男性が運転する乗用車が追突事故を起こした後70メートル走行し、さらに赤信号待ちの車列に突っ込み計8台が絡む事故が発生した。この事故により親子2人が死亡、6人が負傷した<ref>{{cite news|title=78歳男性運転の乗用車が軽自動車に追突…8台絡む事故になり1人死亡1人重体、他6人負傷|newspaper=読売新聞|date=2011-07-10}}</ref>。男性は自動車運転過失致死傷容疑で検察庁に送検されたが、捜査過程でてんかんを罹患していることが判明した。2012年[[2月27日]]、名古屋地方検察庁一宮支部は「症状を認識しておらず、事故の予見可能性があったとはいえない」として、男性を不起訴とした<ref>{{Cite web|url=http://www.47news.jp/CN/201202/CN2012022801001592.html|title=てんかんの認識なく不起訴 愛知の母子死亡事故|accessdate=2012-04-13|date=2012-02-28|publisher=共同通信}}{{リンク切れ|date=2016年1月}}</ref>。
* 2011年[[10月19日]] - [[鹿児島県]][[姶良市]]内の国道10号で、運転手の男性が運転するトラックが暴走、1人が死亡、4人が重軽傷を負った。捜査過程で、男性がてんかんの発作を起こし意識喪失していたことが判明した。検察は男性を自動車運転過失致死傷罪で起訴した。2012年1月6日、鹿児島地方裁判所は「運転中に発作が起きたとしても、上手く対処できると安易に考えていた。薬の服用もしておらず、その過失は相当に大きく、また悪質である」として、禁錮2年4月の実刑判決を言い渡した<ref>{{Cite web|url=http://response.jp/article/2012/01/11/168128.html|title=てんかん発作が原因で5人を死傷させた男に禁錮刑|accessdate=2013-02-12|date=2012-01-11|publisher=Response}}</ref>。
* 2011年[[12月27日]] - 栃木県[[宇都宮市]]内で、運転手が運転する車が衝突事故を起こし、5人が重軽傷を負った。運転手はてんかんの持病をもち、医師に運転を控えるよう指導されていた。2012年10月29日、宇都宮地方裁判所は「前兆があったのに、発作が起きないと軽信した身勝手で軽率な判断」として、被告に禁錮2年4月、執行猶予5年の判決を言い渡した<ref>{{cite news|title=宇都宮のてんかん発作事故で有罪 前兆見過ごし判断軽率|newspaper=共同通信|date=2012-10-29|url=http://www.47news.jp/CN/201210/CN2012102901002042.html|accessdate=2013-02-15}}{{リンク切れ|date=2016年1月}}</ref>。
* 2012年[[4月12日]] - [[京都市]][[東山区]]の[[祇園]]で、運転手が運転する軽ワゴン車がタクシーに追突。その後車と道路の隙間を縫うようにして走り、歩行者を次々とはね電柱に激突した。この結果運転手を含む8人が死亡、11人が重軽傷を負った<ref>{{cite news|title=白昼の祇園に暴走車 歩行者18人死傷|newspaper=[[デイリースポーツ]]|date=2012-04-13|url=http://www.daily.co.jp/gossip/article/2012/04/13/0004969115.shtml|archiveurl=https://web.archive.org/web/20120415132510/http://www.daily.co.jp/gossip/article/2012/04/13/0004969115.shtml|accessdate=2013-02-13|archivedate=2012-4-15|datelinkdate=2016年1月}}</ref>。運転手はてんかんの持病があったが、運転免許更新時に申告せず運転を続けていた<ref>{{cite news|title=持病のてんかん、申告義務守られず 祇園暴走事故|newspaper=京都新聞|date=2012-04-20|url=http://www.47news.jp/CI/201204/CI-20120420-00219.html|accessdate=2013-02-13}}{{リンク切れ|date=2016年1月}}</ref>。2012年11月13日、京都府警は事故原因をてんかん発作による意識障害として、運転手を自動車運転過失致死傷の疑いで容疑者死亡のまま書類送検する方針を明らかにした<ref>{{cite news|title=祇園暴走事故、原因はてんかん 京都府警が見方固める|newspaper=共同通信|date=2012-11-13|url=http://www.47news.jp/CN/201211/CN2012111301002146.html|accessdate=2013-02-13}}{{リンク切れ|date=2016年1月}}</ref>。[[2013年]][[7月28日]]、京都地方検察庁は運転手を容疑者死亡により不起訴とした<ref>{{Cite news|title=京都地検、祇園暴走で社長不起訴 嫌疑不十分|newspaper=共同通信|date=2013-07-29|url=http://www.47news.jp/CN/201308/CN2013082801001729.html|accessdate=2013-09-05}}{{リンク切れ|date=2016年1月}}</ref>。{{see|京都祇園軽ワゴン車暴走事故}}
* [[2014年]][[6月7日]] - [[札幌市]][[東区 (札幌市)|東区]]で、運転手が運転するワゴン車が斜行して対向車線を走行中の乗用車と正面衝突し、対向車の運転手に重傷を負わせた。ワゴン車を運転していた運転手は無免許であり、てんかんの発作を起こしていた。2014年[[9月2日]]、[[札幌地方裁判所]]はワゴン車を運転していた運転手に対して[[自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律|自動車運転死傷行為処罰法]]違反(無免許危険運転致傷)で懲役1年10月の実刑判決を言い渡した<ref>{{Cite news|title=てんかん発作が原因で事故を起こした被告、危険運転罪で実刑判決|newspaper=Response|date=2014-09-05|url=http://response.jp/article/2014/09/05/231683.html|accessdate=2014-11-14}}</ref>。判決では「意識を失う持病を有する状態での運転は危険性が高い。また一度も免許を取得しておらず、運転についての技能や知識が不足していることも認識しながら運転していたことは強く非難される」と指摘された。
* [[2015年]][[3月5日]] - [[大阪府]][[東大阪市]]本庄中の[[市町村道|市道]]交差点で、運転手が運転する[[ワンボックスカー]]が乗用車と衝突し、その弾みで歩道上の歩行者2人をはねた。はねられた2人は死亡し、衝突された乗用車を運転していた運転手も意識不明の重体となった。[[大阪府警察]]は、ワンボックスカーを運転していた運転手について、「持病であるてんかんの発作の可能性を認識しながら運転していた」などとして、[[自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律|自動車運転処罰法]]違反([[自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律#危険運転致死傷罪|危険運転致死傷]])容疑に切り替え捜査。[[大阪地方検察庁]]は2015年5月21日に同法違反で[[大阪地方裁判所]]に起訴した<ref>[http://mainichi.jp/shimen/news/20150522dde041040039000c.html 東大阪の2人死亡事故:危険運転致死罪で起訴 持病の発作認識]{{リンク切れ|date=2019年4月}} [[毎日新聞]] 2015年5月22日</ref>。
* 2015年[[3月12日]] - [[宮崎市]]高洲町で、てんかん患者の男性が運転する乗用車が、他の車両と衝突しながら108キロメートルで暴走し、交差点で右折待ちの車両など4台を巻き込む事故となり、1人が死亡、4人が負傷した。てんかんが原因とされ、自動車運転処罰法違反で起訴された<ref>{{Cite news|title=てんかん発作の男起訴 地検 /宮崎|newspaper=毎日新聞|date=2015-12-26|url=http://mainichi.jp/articles/20151226/ddl/k45/040/321000c|accessdate=2016-01-13}}</ref>。
* 2015年[[8月16日]] - [[東京都]][[豊島区]]東池袋で、てんかん患者の運転手が運転する普通乗用車が歩道に乗り上げた後に衣料品店に突っ込み、1人が死亡、4人が骨盤骨折などのするという重軽傷を負った。{{see|池袋駅東口乗用車暴走事故}}
* 2015年[[8月19日]]、[[北海道]][[共和町]]の国道276号線で、てんかん患者の運転手が運転する乗用車が事故を起こし、自転車に乗った9人をはねて重軽傷を負わせた。運転手はかねてより自動車運転をしないよう医師から指導を受けていた。事件では事故を起こした本人が自動車運転処罰法違反(危険運転致傷)で起訴された。また、てんかんの発作の事実を知りながら運転手に車を貸した父親は、[[危険運転]]ほう助容疑で書類送検された<ref>{{Cite web
| url = http://mainichi.jp/articles/20151009/ddr/041/040/003000c
| archiveurl = https://web.archive.org/web/20160301204234/http://mainichi.jp/articles/20151009/ddr/041/040/003000c
627 ⟶ 748行目:
| archivedate = 2016-3-1
| deadlinkdate = 2019年4月8日 }}</ref>。
* 2015年[[10月28日]] - [[宮崎県]][[宮崎駅]]前で、てんかん患者の運転手が運転する軽乗用車が歩道を700メートル暴走して6人の歩行者をはねた後に横転した。2人が死亡、5人が負傷(1人は運転手)。運転手は認知症で、事故を起こす2日前まで入院していたが、その原因は「てんかんが原因と判断された<ref>{{Cite news|title=○○を逮捕、てんかんの発作が原因-宮崎7人死傷暴走事故|newspaper=日刊時事ニュース|date=2015-11-17|url=http://daily-news.jp/2015/11/17/accident-of-miyazaki-cause-epileptic-seizure/|accessdate=2016-01-13}}記事名に逮捕者の実名が使われているため、この箇所を伏字とした。</ref>。2018年1月19日、[[宮崎地方裁判所]]は運転していた男性被告に対し、てんかんによる危険運転を認めず過失運転致死傷罪を適用し、懲役6年の実刑判決を言い渡した<ref>{{cite web
| url = https://www.jiji.com/jc/article?k=2018011900159&g=soc
| archiveurl = https://web.archive.org/web/20180119062739/https://www.jiji.com/jc/article?k=2018011900159&g=soc
637 ⟶ 758行目:
| deadlinkdate = 2019年4月6日
}}</ref>。
* [[2018年]][[5月10日]] - [[山梨県]][[笛吹市]]の県道で、普通乗用車が対向車線の軽四乗用車3台と順次衝突し、1人が死亡、2人が負傷(1人は運転手)。<ref>{{Cite web|title=事件・事故情報ファイル(平成30年5月掲載分)|url=https://www.pref.yamanashi.jp/police/jiken/jiken_h30_05.html|website=山梨県警察|accessdate=2019-06-06|language=ja|last=山梨県警察}}</ref>警察は持病を申告せず乗用車を運転また持病のてんかんによる発作から事故を起こしたとして危険運転致死傷などの疑いで事故を起こしたとして、[[2019年]][[6月5日]]までに書類送検した<ref>{{Cite web|title=山梨県笛吹市 3人死傷事故 持病申告せず 71歳男性を書類送検|url=http://www.uty.co.jp/news/20190605/5889/|website=UTYテレビ山梨|accessdate=2019-06-06|language=ja}}</ref>。
 
=== 患者へのスティグマ ===
他方、てんかん患者に対しては、2000年代以降も差別と受け取られる事例が報告されている。
 
例として、[[福岡労働局]]が[[2012年]]7月に[[福岡県]]内の各[[高等学校|高校]]に対し、翌[[2013]]に卒業予定の就職希望者について、てんかん患者は主治医の意見書を[[公共職業安定所]]に提出するよう求めていたことが[[2014年]]に判明した。また、自立の為、に向けて生活支援センターから事業所に福祉サービスの手続きを行う際にも意見書提示するよう求める理由を伏せていることに不信感を持つ抱く当事者も多い。前述の京都市祇園での事故以降、雇用側が警戒していることを受けてのものと見られているが、雇用での差別的取扱を禁じた[[職業安定法]]に抵触する可能性があるとして、[[厚生労働省]]が同労働局に是正指導したうえ、全国の各労働局にも再発防止を指示している<ref>{{cite web
| url = http://mainichi.jp/select/news/20140429k0000e040148000c.html
| archiveurl = https://web.archive.org/web/20140429025940/http://mainichi.jp/select/news/20140429k0000e040148000c.html
655 ⟶ 776行目:
=== てんかんを取り扱った作品 ===
* [[大江健三郎]]『[[静かな生活]]』 - 作者が、自分の息子([[大江光]])をモデルとして書いた。[[伊丹十三]]により映画化もされている。
* [[筒井康隆]]『無人警察』 - 短編集『にぎやかな未来』([[角川文庫]])に収録されている「文明批判」がテーマの短編SF小説。自動車を運転しているてんかん患者の[[脳波]]を検知する『[[ロボット]]警官』が作中に登場する。[[1993年]]、この作品が[[角川書店]]発行の高校国語の教科書に収録されると、[[日本てんかん協会]]から同作品の削除もしくは他の作品に差し替えるよう抗議され、した。作者の筒井康隆は日本てんかん協会と数度交渉したがするも、双方の主張は平行線を辿り、結局筒井は「断筆宣言」を発表し、全ての執筆活動を停止した<ref>筒井康隆『笑犬樓よりの眺望([[新潮文庫]])』より『断筆宣言』(初出:『[[噂の眞相]]』1993年10月号)</ref>。その後1997年に「自主規制撤廃に関する覚書」をいくつかの出版社と取り交わして断筆を解除した。
* [[ドストエフスキー]]『[[白痴 (ドストエフスキー)|白痴]]』 - 主人公のムイシュキン公爵が重度のてんかん持ちである。
 
=== てんかん啓発キャンペーン ===
3月26日、パープルデー(Purple Day)。てんかんへの関心を高め、理解を訴える日として2008年に[[カナダ]]・[[ノバスコシア]]のてんかん協会の協力を得て制定された<ref>[http://purpledayeveryday.org/events/purple-day/ Purple Day® – March 26]- Anita Kaufmann Foundation</ref>。創始者は当時9歳のキャシディー・メーガン(Cassidy Megan)で、7歳でてんかんと診断され、周囲の偏見や誤解に悩んでいたが、「世界中の人にてんかんについてもっとよく知ってほしい。てんかんであるがために差別や孤独を感じている人に、あなたは一人ではないと伝えたい」という願いから創設されたてんかん啓発イベント<ref>[http://purpledayosaka.org/concept/ パープルデーを大阪で!] パープルデイ大阪</ref> 。ラベンダーの紫が啓発話動の国際的イメージカラーだったことに由来する。アメリカの支援団体もこれに理解を示し、今では120ヵ国以上で活動が行われている。
 
== 注 ==
<references group="注"/>
 
== 参考 ==
{{Reflist}}
 
== 脚注文献 ==
=== 注釈 ===
<references group="注" />
=== 出典 ===
== 参考文献 ==
*{{Cite report|publisher=世界保健機関 |title=mhGAP Intervention Guide for mental, neurological and substance use disorders in non-specialized health settings |date=2010 |isbn=9789241548069 |url=http://www.who.int/mental_health/publications/mhGAP_intervention_guide/en/ |ref={{SfnRef|世界保健機関|2010}} }}
*{{Cite report|publisher=[[英国国立医療技術評価機構]] |title=CG137: Epilepsies: diagnosis and management |date=2016-02 |url=https://www.nice.org.uk/guidance/cg137 |ref={{SfnRef|英国国立医療技術評価機構|2016}} }}