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|色 = lightgreen
|名称 = イチョウ
|画像 = [[File:Ginkgo Biloba Leaves - Black Background.jpg|250px280px]]
|画像キャプション = イチョウの葉
|status_ref = <ref name="IUCN">Sun, W. (1998). ''[https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.1998.RLTS.T32353A9700472.en Ginkgo biloba]''. The IUCN Red List of Threatened Species 1998: e.T32353A9700472. {{doi|10.2305/IUCN.UK.1998.RLTS.T32353A9700472.en}}. Downloaded on '''29 July 2018'''.</ref>
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|status_system = iucn2.3
|界 = [[植物界]] {{Sname||Plantae}}
|界階級なし = {{生物分類表/階級なし複数
|門 = [[裸子植物門]] {{Sname||Pinophyta}}
|[[維管束植物]] {{sname||Tracheophyta}}
|[[真葉植物|大葉植物]] {{sname||Euphyllophyta}}
|[[種子植物]] {{sname||Spermatophyta}}}}
|門 = [[裸子植物門]] {{Sname||Gymnospermae}}<br />([[イチョウ植物門]] {{sname||Ginkgophyta}})
|綱 = [[イチョウ類|イチョウ綱]] {{Sname||Ginkgoopsida}}
|目 = [[イチョウ目]] {{Sname||Ginkgoales}}
|科 = [[イチョウ科]] {{Sname||Ginkgoaceae}}
|属 = '''[[イチョウ属]]''' {{Snamei||Ginkgo}}
|種 = '''イチョウ''' {{Snamei|G. biloba}}
|学名 = {{Snamei||Ginkgo biloba}} {{AU|L.}} ([[1771年|1771]])<ref name="IUCN"/><ref name="Ylist">[http://bean.bio.chiba-u.jp/bgplants/ylist_detail_disp.php?pass=496 [[米倉浩司]]・[[梶田忠]] (2003 - ) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)] - イチョウ([[2011(2011]]9月20日閲覧)</ref><ref>[http://www.tropicos.org/Name/14100001 Ginkgo biloba L.] Tropicos([[2013Tropicos(2013]]11月1日閲覧)</ref>
|和名 = イチョウ
|英名 = {{lang|en|[[:w:Ginkgo|Ginkgo]], Maidenhair Tree<ref name="IUCN"/>}}
|下位分類名 = [[変種]]、[[栽培品種]]
|下位分類 = <center>[[#分類学|本文参照]]</center>
* var. {{Snamei|laciniata}} {{Taxonomist||Hort.}} キレハイチョウ<ref>[http://bean.bio.chiba-u.jp/bgplants/ylist_detail_disp.php?pass=2061 米倉浩司・梶田忠 (2003-) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)] - キレハイチョウ(2011年9月20日閲覧)</ref>
* 'Aureovariegata' フイリイチョウ<ref>[http://bean.bio.chiba-u.jp/bgplants/ylist_detail_disp.php?pass=5523 米倉浩司・梶田忠 (2003-) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)] - フイリイチョウ(2011年9月20日閲覧)</ref>
* 'Epiphylla' オハツキイチョウ<ref>[http://bean.bio.chiba-u.jp/bgplants/ylist_detail_disp.php?pass=1585 米倉浩司・梶田忠 (2003-) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)] - オハツキイチョウ(2011年9月20日閲覧)</ref>
* 'Pendula' シダレイチョウ<ref>[http://bean.bio.chiba-u.jp/bgplants/ylist_detail_disp.php?pass=3021 米倉浩司・梶田忠 (2003-) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)] - シダレイチョウ(2011年9月20日閲覧)</ref>
}}
[[画像:Ginkgo Tree 08-11-04a.jpg|thumb|right|黄葉した秋のイチョウ]]
[[画像:Fukaura town kitakanegasawa ichou.jpg|thumb|200px|[[北金ヶ沢のイチョウ]] - 樹齢1000年以上とされる。]]
'''イチョウ'''('''銀杏'''<ref name="Kojien">[[#Kojien|新村 2008]], p.170</ref><ref name="Shincho">[[#Shincho|新潮社 2007]], p.2298</ref>、'''公孫樹'''<ref name="Kojien"/><ref name="Shincho"/>、'''鴨脚樹'''<ref name="Kojien"/><ref name="Shincho"/>、[[学名]]:{{Snamei||Ginkgo biloba}})は、[[裸子植物門]][[イチョウ類|イチョウ綱]][[イチョウ目]][[イチョウ科]][[イチョウ属]]に属する、中国原産の[[裸子植物]]で、食用(伝統中国食品、漢方<ref name=NCCIH />、観賞用、材用として栽培される。樹木の名としてはほかに'''ギンキョウ(銀杏)'''<ref name="kanjigen">[[#Kanjigen|藤堂ほか 2007]], p.1636</ref>、'''ギンナン(銀杏)'''<ref name="Shincho"/>と呼ばれる。ふつう「ギンナン」は後述する種子を指すことが多い
 
[[街路樹]]など、全国で普通に見かける樹木だが、分類上他の樹木と大きく異な位置る分類群あり属する。広葉を持つが例えば[[広葉樹]]でも[[針葉樹]]の区分は如何に広葉樹に該当しそうだが、むしろ特殊針葉樹に当たいとされ<ref>[[#glossary|清水 2001]], p.23</ref>
 
世界で最現生の一つであ<ref name=NCCIH>{{Cite report|publisher=[[アメリカ国立補完統合衛生センター]] |title=Herbs at a glance - Ginkgo |url=https://nccih.nih.gov/health/ginkgo/ataglance.htm |date=2016-09}}</ref>イチョウ科の植物類は地史的には[[中生代ペルム紀]]から[[生代]]にかけてまで全世界的に繁<ref name="conifer"/><ref name="iwanami">[[#iwanami|巌佐ほか 2013]], p.74</ref>、世界各地で葉の[[化石]]が発見され、日本では[[漸新世]]<ref name="iwanami"/>に山口県の[[大嶺炭田]]から[[北海道バイエラ属]]など)で {{snamei||Baiera}}<ref name="">{{cite web |url=http://db.yamahaku.pref.yamaguchi.lg.jp/db/tigaku/t_1-2_01.html|publisher=[[化石山口県立山口博物館]]|title=山口県の化石|accessdate=2020-04-19}}</ref>、北海道からイチョウ属 {{snamei||Ginkgo adiantoides}} {{AU|Heer.}}などが発見<ref>{{cite web|url=http://jpaleodb.org/hierarchy/index.php?Kingdom=Plantae&Phylum=Ginkgophyta&Class=Ginkgoopsida&Order=Ginkgoales&Family=Ginkgoaceae&Genus=Ginkgo|title=Ginkgo 属|publisher=日本古生物標本横断データベース|accessdate=2020-04-19}}</ref>されているが、[[氷期]]にほぼ絶滅し、イチョウは唯一現存する種である<ref name="iwanami"/>。現在イチョウは、[[生きている化石]]<ref name="sogame"/>として[[レッドリスト]]の[[絶滅危惧種|絶滅危惧IB類]]に指定されている。
 
種子'''銀杏'''(ぎんなん、ぎんきょうと言うがしばしばこれは「イチョウの“実”」と呼ばれ食用として流通するなどしているが、<ref name="Kojien"/><ref name="kanji-etym2007"/>。これは中毒を起こし得るもので死亡例も報告されており、摂取にあたっては一定の配慮を要する(詳しくは[[#食用|後述]])。
{{TOC limit|3}}
 
== 名称・呼称 ==
=== 「イチョウ」 ===
[[中国語]]で、葉の形を[[アヒル]]の足に見立てて {{lang-zh|'''鴨脚'''}}({{ピン音|yājiǎo|イアチァオ}})と呼ぶので、そこから[[転訛|転じた]]とする説があるが、定かではない<ref>ただし中国語の j 音(の一部)は18世紀以前には g 音であった(すなわち「脚」は「キァオ」であった)ことが知られており、名の借用がそれ以降であったとするなら、イチョウの移入時期([[イチョウ#生息と伝播]]参照)との間には齟齬がある。また、現在の[[中国語]]では「{{lang|zh|鴨脚樹}}」の名はかなり稀。[[中国語版ウィキペディア]]の記事[[:zh:银杏|{{lang|zh|银杏}}]]({{ピン音|yìnxìng}})では、中国語における古称は「{{lang|zh|银果}}」、現在の名称は「{{lang|zh|白果}}」([[ベトナム語]]「{{lang|vi|bạch quả}}」の語源)、「{{lang|zh|银杏}}」([[朝鮮語]]「{{lang|ko|은행}}」および[[日本語]]「ぎんなん」の語源)、別名「{{lang|zh|公孫樹}}」、イチョウの実は「{{lang|zh|银杏果}}」となっているが、「鴨脚」という表記には全く触れていない。</ref>。
[[中国語]]で、葉の形を[[アヒル]]の足に見立てて {{lang|zh|'''鴨脚'''}}({{ピン音|yājiǎo|イアチァオ}})と呼ぶので、そこから[[転訛|転じた]]とする説がある<ref name="Kojien"/><ref group="註">ただし中国語の j 音(の一部)は18世紀以前には g 音であった(すなわち「脚」は「キァオ」であった)ことが知られており、名の借用がそれ以降であったとするなら、イチョウの移入時期([[イチョウ#生息と伝播]]参照)との間には齟齬がある。また、現在の[[中国語]]では「{{lang|zh|鴨脚樹}}」の名はかなり稀。[[中国語版ウィキペディア]]の記事[[:zh:银杏|{{lang|zh|银杏}}]]({{ピン音|yìnxìng}})では、中国語における古称は「{{lang|zh|银果}}」、現在の名称は「{{lang|zh|白果}}」([[ベトナム語]]「{{lang|vi|bạch quả}}」の語源)、「{{lang|zh|银杏}}」([[朝鮮語]]「{{lang|ko|은행}}」および[[日本語]]「ぎんなん」の語源)、別名「{{lang|zh|公孫樹}}」、イチョウの実は「{{lang|zh|银杏果}}」となっているが、「鴨脚」という表記には全く触れていない</ref>。加納 (2008)では、「{{lang|zh|鴨脚}}」の[[中古音|中世漢語]] {{IPA2|ia-kiau}}の訛りであるとされる<ref name="kanji-etym2008">[[#kanji-etym2008|加納 2008]], pp.18-19</ref><ref name="kanji-etym2007">[[#kanji-etym2007|加納 2007]], pp.119-120</ref>。「イチョウ」の語は「銀杏」の[[明]]代の[[近古音]]([[唐音]])が転じたものとする説もある<ref name="kanjigen"/><ref name="Kojien"/>。「いちょう」の[[歴史的仮名遣]]は「いちやう」であるが、もとは「いてふ」とする例が多かった<ref name="Shincho"/>。この「いてふ」という仮名は「一葉」に当てたからだとされる<ref name="Kojien"/>。
 
=== 「ギンナン」 ===
[[種子]]は銀杏(ギンナン)と呼ばれるが、これは中国の[[本草学]]図書である紹興本草([[1159年]])や、日用本草<ref>[[1329年]]、呉瑞。原版は現存せず、1525年の重刊八巻本が[[大谷大学]]に所蔵</ref>、[[本草綱目]]に記載されている<ref>[http://mayanagi.hum.ibaraki.ac.jp/paper04/shiryoukan/me112.html 「目で見る漢方史料館(112) 現存唯一の元『[家伝]日用本草』八巻本 龍谷大学所蔵の貴重本より」] - [[真柳誠]]『漢方の臨床』44巻9号1058 - 1060頁、[[1997年]]9月</ref>銀杏([[唐音]]の『ギン・アン』)に由来すると見られる。
[[種子]]は銀杏(ギンナン)と呼ばれるが、これは中国の[[本草学]]図書である紹興本草([[1159年]])や、日用本草<ref group="註">[[1329年]]、呉瑞。原版は現存せず、1525年の重刊八巻本が[[大谷大学]]に所蔵</ref>、[[本草綱目]]に記載されている<ref>[http://mayanagi.hum.ibaraki.ac.jp/paper04/shiryoukan/me112.html 「目で見る漢方史料館(112) 現存唯一の元『[家伝]日用本草』八巻本 龍谷大学所蔵の貴重本より」] - [[真柳誠]]『漢方の臨床』44巻9号1058 - 1060頁、[[1997年]]9月</ref>銀杏に由来すると見られる。漢名の銀杏は種子が白いためである<ref name="kanji-etym2007"/>。[[漢方医学|漢方]]([[中国医学]])では「{{lang|zh|白果}}」と呼ばれる<ref name="kanji-etym2007"/>。「銀杏」の[[中古音|中世漢語]]は{{IPA2|iƏn-hiƏng}}であり<ref name="kanji-etym2008"/>、銀杏の唐音である『ギンアン』が転訛し([[連声]])、ギンナンと呼ばれるようになった<ref name="kanjigen"/><ref name="kanji-etym2007"/>。
 
=== Ginkgo ===
一方、イチョウ綱が既に絶滅していた[[ヨーロッパ]]では、[[日本誌]]の著者[[エンゲルベルト・ケンペル]]の『[[廻国奇観]] (Amoenitatum exoticarum)』([[1712年]])で初めて[[植物学]]的な記述で紹介されたが、ケンペルが銀杏(ギンコウ)の音訳として、''Gingko''と書くべきところを、kとgを入れ替えてしまい ''Ginkgo''と記した<ref>{{Citation |title=On Engelbert Kaempfer’s “Ginkgo”|author=Wolfgang Michel|year=2011|origyear=2005|url=http://catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/handle/2324/2898/Ginkgo_biloba2_revised_2011.pdf}}</ref>。この綴りが引き継がれて、[[カール・フォン・リンネ]]は著書『Mantissa plantarum II』([[1771年]])でイチョウの[[属名]]を'''{{Snamei|Ginkgo}}''' とした。このほか、[[ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ|ゲーテ]]も『[[西東詩集]]』([[1819年]])で Ginkgo の名を用いている。
{{Wtp|:en:ginkgo|ginkgo}}
[[File:Kinmo-zui Ginkyo.jpg|thumb|250px|[[中村てき斎|中村惕斎]]の『[[訓蒙図彙]]』に描かれる銀杏。]]
[[File:Goethe Ginkgo Biloba.jpg|thumb|250px|ゲーテの''{{lang|de|Gingo biloba}}'' (1815)の新版。]]
属名 {{snamei|Ginkgo}}は日本語「銀杏」に由来し<ref name="Webster">[[#Webster|Webster 1958]], p.772</ref><ref name="NewCollege">[[#NewCollege|竹林ほか 2010]], p.759</ref><ref name="iwanami"/>、[[英語]] {{lang|en|ginkgo}} {{ipa|ˈgɪŋkoʊ}}<ref group="註">一部では{{ipa|ˈgɪŋg''k''oʊ}}、{{ipa|ˈʤɪŋkoʊ}}とも([[#Genius|小西・南出 2006)]])</ref><ref name="Webster"/><ref name="NewCollege"/><ref name="Genius">[[#Genius|小西・南出 2006]], p.834</ref>に取り入れられている。ほかにも男性名詞として、[[ドイツ語]] {{lang|de|Ginkgo, Ginko}} {{ipa|ˈgɪŋko}}<ref>{{cite book|和書|author=[[濱川祥枝]]・[[信岡資生]]監修、[[新田春夫]]編集主幹|title=クラウン独和辞典 第5版|publisher=[[三省堂]]|date=2014-01-01|origdate=1991-03-01|isbn=978-4-385-12011-9|page=585}}</ref>や[[フランス語]] {{lang|fr|ginkgo}} {{ipa|ʒɛ̃ŋko}}<ref>{{cite book|和書|author=[[山田爵|山田𣝣]]・[[宮原信]] 監修、[[中條屋進]]・[[丸山義博]]・[[ガブリエル・メランベルジェ]]・[[吉川一義]] 編|title=ディコ仏和辞典|publisher=[[白水社]]|page=736|date=2003-03-10|isbn=978-4-560-00038-0}}</ref>、[[イタリア語]] {{lang|it|ginkgo}}<ref>{{cite book|和書|author=[[藤村昌昭]]監修、[[杉本裕之]]・[[谷口真生子]]編|title=デイリーコンサイズ伊和・和伊辞典|publisher=[[三省堂]]|page=432|isbn=978-4-385-12265-6|date=2013-04-01}}</ref>など諸言語に取り入れられている。
 
イチョウ綱が既に絶滅していた[[ヨーロッパ]]では、本種イチョウは、[[日本誌]]の著者であるドイツ人の[[エンゲルベルト・ケンペル]]による『[[廻国奇観]] (諸国奇談、''{{lang|la|Amoenitatum exoticarum}}'')』([[1712年]])の「日本の植物相 ({{lang|la|Flora Japonica}})」<ref>{{cite|first=Engelbert|last=Kaempfer|author-link=エンゲルベルト・ケンペル|chapter=Flora Japonica|title=Amoenitates Exoticae|volume=Fasc. V|date=1712}})</ref>で初めて紹介されたが、そこで初めて“{{lang|ja-Latn|Ginkgo}}”という綴りが用いられた<ref name="iwanami"/><ref name="Michel">[[#Michel|Michel 2011]], pp.1-5</ref>。
Ginkgo は発音や筆記に戸惑う綴りで、しばしば gingko と記されている。[[国際藻類・菌類・植物命名規約|植物命名規則]]に依れば、これは訂正されていない。
 
ケンペルは[[1689年]]から[[1691年]]の間、[[長崎市|長崎]]の[[出島]]にいたが、その間に[[中村てき斎|中村惕斎]] (1666)の『[[訓蒙図彙]]』の写本を2冊入手した<ref group="註">現在はどちらも[[大英図書館]]の東洋収蔵品 ({{lang|en|the Oriental Collections}})に所管されている</ref><ref name="Michel"/>。ケンペルが得たイチョウに関する情報は『訓蒙図彙』2版 (1686)の「巻十八 果蓏」で書かれている<ref name="Michel"/>。ケンペルは[[日本語]]が読めなかったので、参照番号をそれぞれの枠に振った<ref name="Michel"/>。ケンペルのもつ写本の植物の項目の殆どには見出しの隣に2つ目の番号が振られていた<ref name="Michel"/>。ケンペルの所有していた写本では、イチョウの枝の図の横に269、漢字の見出しには34と番号が振られている。多くの日本の文献は、助手の[[今村英生|今村源右衛門]]から教わったと考えられるが、交易所の通訳であった[[馬田市郎兵衛]]、[[名村権八]]と[[楢林鎮山|楢林新右衛門]]もケンペルの[[植物学]]の研究に重要な影響を与えたことが、イギリスの医師でありこの時代随一の蒐集家であった[[ハンス・スローン]]が保管していたケンペルの備忘録により分かっている<ref name="Michel"/>。これらの参照番号はケンペルが日本に滞在していた時の備忘録でも見られる<ref name="Michel"/>。''{{lang|la|Collectanea Japonica}}'' と題された手稿<ref>British Library, Sloane Collection 3062</ref>には、『訓蒙図彙』の漢字の見出しがリスト化されているページがあり、34番目の見出しで“{{lang|ja-Latn|Ginkjo}}”もしくは“{{lang|ja-Latn|Ginkio}}”と書くべきところを“{{lang|ja-Latn|Ginkgo}}”と誤って書かれている<ref name="Michel"/>。つまり、ケンペルの「日本の植物相」以降現在まで引き継がれている誤った“{{lang|ja-Latn|Ginkgo}}”という綴りは、[[レムゴー]]での[[誤植]]や誤解釈などの出版の際のミスではなく、ケンペル自身の日本での小さな誤記によるものであった<ref name="Michel"/>。
[[種小名]] '''{{Snamei|biloba}}''' は[[ラテン語]]による造語で、「2つの[[裂片]] (two lobes)」の意味。葉が大きく2裂する点を指したもの。
 
ケンペルの''{{lang|la|Collectanea Japonica}}'' における“{{lang|la|g}}”は実際は“{{lang|la|y}}”を意図しているとよく論じられる<ref name="Michel"/>。例えば、[[#NewCollege|竹林ほか (2010)]]などでは“{{lang|en|Ginkgo}}”は''{{lang|ja-Latn|Ginkyo}}''の“{{lang|la|y}}”を“{{lang|la|g}}”と誤記したことに基づくとされている<ref name="NewCollege"/><ref name="etymonline"/>。しかしケンペルの筆記体の両文字ははっきり異なっており、ラテン語や諸外国語を書くとき、この時代の習慣通りに“{{lang|la|y}}”には“{{lang|la|ÿ}}”のように2点上に付けて用いるため、“{{lang|la|g}}”とはっきり区別される<ref name="Michel"/>。ケンペルの日本語の他の語彙の綴りには他にも「きょう」を含むものもあり、これによっても示される<ref name="Michel"/>。ケンペルの日本語の語彙の表現は、ある音素では表記揺れが激しく、短母音と長母音の大きな違いを明らかに見落としていた。例えば、ケンペルがドイツ語の発音になかった 「じ」や「じゃ」という日本語の発音を区別するのは難しく、出島にいたほかの西洋人と同じようにある音素を無視するか、不正確だが母国語と似ていると思った音を当てる傾向があった<ref name="Michel"/>。しかしこれは「きょ」や「ぎょ」の場合は異なり、一貫して“{{lang|ja-Latn|kio/gio}}”または“{{lang|ja-Latn|kjo/gjo}}”を用いている<ref name="Michel"/>。ときにケンペルは西洋人の高度な外国語学習者でも難しかった「きょ」と「きよ」という発音の区別ができていた<ref name="Michel"/>。『廻国奇観』に書かれた日本の植物名の調査からも同様に“Ginkgo”の綴りだけが奇異な例外であると結論づけられる<ref name="Michel"/>。
英語ではmaidenhair treeともいう。これは「娘 (maiden) の毛の木」の意味で、葉の形が女性の陰毛が生えた部分を前から見た形(葉柄は太ももの合わせ目)に似ているための名であるが、「木の全体が女性の髪形に似ているため」と美化した説明もなされる<ref>「Color Anchor 英語大辞典」学研</ref>。
 
また、[[ノア・ウェブスター|Webster]] (1958)では {{lang|en|ginkgo}} は日本語の {{lang|ja-Latn|ginko, gingko}}に由来するとしている<ref name="Webster"/>が、日本語の「銀杏」が「ギンコウ」と読む事実はない<ref group="註">[[#Kanjigen|藤堂ほか (2007)]]では「銀杏」の読みとして「ギンキョウ」「イチョウ」「ギンナン」が挙げられているが、その他の読みはない。</ref><ref group="註">[[#Shincho|新潮社 (2008)]]では「いちょう」「ぎんなん」のほかに[[姓氏]]として「ぎんな」の読みを挙げているが、その他の読みはない</ref><ref group="註">「[[:wikt:杏|杏]]」には[[慣用音]]として「キョウ」、[[漢音]]として「コウ」、[[呉音]]として「ギョウ」、[[唐音]]として「アン」の読みがある(藤堂ほか 2007)</ref>。[[#Genius|小西・南出 (2006)]]では中国語の銀杏(ぎんきょう)からとしている<ref name="Genius"/>が、この読みは日本語であり正しくない。
== 植物学的特徴 ==
樹高20 - 30mの[[落葉]]高木<ref name="IUCN"/>。葉は扇形で[[葉脈]]は原始的な平行脈を持ち、二又[[分枝]]して付け根から先端まで伸びる。基本的に葉の中央部は浅く割れるが、栽培品種では差異が大きい。[[雌雄異株]]であり、葉の輪郭で雌雄を判別できるという俗説があるが、実際には[[生殖器官]]の観察が必要である<ref>{{Cite journal|和書 |title=核型解析によるイチョウ雌雄間の染色体の違いとfluorescence in situ hybridization (FISH)による染色体上のrDNAマッピング |publisher=園芸学会 |journal=園芸学会雑誌 |volume=74 |issue=4 |pages=275-280 |date=2005-07-15 |author=中尾義則 |author2=平 知明 |author3=堀内昭作 |author4=河瀬憲次 |author5=向井康比己 |naid=110001815992}}</ref>。
 
この綴りが引き継がれて、[[カール・フォン・リンネ]]は[[1771年]]、著書『''{{lang|la|[[:en:Mantissa Plantarum Altera|Mantissa plantarum. Generum editionis VI. Et specierum editionis II]]}}''』でイチョウの[[属 (分類学)|属名]]を'''{{Snamei|Ginkgo}}''' として記載した<ref name="iwanami"/><ref>{{cite book|last=Linné|first=Carl von|date=1767-1771|title=Mantissa plantarum. Generum editionis VI. Et specierum editionis II|url=https://bibdigital.rjb.csic.es/records/item/10315-mantissa-plantarum|publisher=Holmiae : Impensis Direct. Laurentii Salvii|location=[[ストックホルム|Holmia]]|page=313|accessdate=2020-04-19}}</ref>。{{lang|en|ginkgo}} は発音や筆記に戸惑う綴りで、{{lang|en|k}} と {{lang|en|g}} を入れ替えてしばしば '''{{lang|en|gingko}}''' と記される<ref name="Webster"/><ref name="Genius"/>。このほか、[[ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ|ゲーテ]]は『[[西東詩集]] ''({{lang|de|West-östlicher Diwan}}'')』(1819年)で、初版では発音しづらい{{lang|de|Ginkgo}}を避けて {{lang|de|[[:en:Gingo biloba|"Gingo biloba"]]}} ([[1815年|1815]])という詩を綴っている。[[国際藻類・菌類・植物命名規約|植物命名規則]]によれば、誤った綴りに基づく{{snamei|Ginkgo}}は訂正されていない。
[[日本]]の[[関東地方]]など、[[北半球]]の[[温帯]]では 4 - 5月に新芽が伸び開花する。風媒花で、1km程度離れていても[[受粉]]可能とされる{{要出典|date=2010年3月}}。裸子植物なので、受粉様式は被子植物と異なる。まず受粉した花粉は、雌花の[[胚珠]]端部の花粉室に数ヶ月保持され、その間に胚珠は直径約2cm程度に肥大し、花粉内では数個の[[精子]]が作られる。9 - 10月頃、精子は放出され、花粉室から造卵器に泳いで入り、ここで[[受精]]が完了する<ref>イチョウ精子の発見は、[[1896年]]、[[東京大学]]の[[平瀬作五郎]]による。東京大学の附属施設である[[東京大学大学院理学系研究科附属植物園|小石川植物園]]にはその株が現存し、同園のシンボルになっている</ref>。受精によって胚珠は成熟を開始し、11月頃に種子に熟成する。被(果肉)は軟化し[[カルボン酸]]類特有の臭気を発する。
 
=== 英名 ===
樹木としては長寿で、各地に幹周が10mを超えるような[[巨木]]が点在<ref>[[環境省]]によると、[[青森県]][[深浦町]]にある[[北金ヶ沢のイチョウ]](地上約1.3mの位置での幹周が22m超)が日本有数</ref>している。また、[[落葉]]前の葉は鮮やかな[[黄色]]に[[紅葉|黄葉]]し、並木道などは秋の風物詩である。ラッパ状の葉を付けたり(ラッパイチョウ)、葉に実がつく(お葉付きイチョウ)品種などの差異も見られる。 根の張り具合によっては枝から円錐形の突起([[気根]]、乳と呼ばれる)が垂れ下がる。これは乳イチョウと呼ばれ、安産・子育ての信仰対象([[法明寺 (豊島区)|鬼子母神]]など)とされる。
英語では{{lang|en|[[:wikt:en:maidenhair tree|maidenhair tree]]}}ともいう<ref name=NCCIH /><ref name="Webster-maiden">[[#Webster|Webster 1958]], p.1086</ref><ref name="NewCollege-maiden">[[#NewCollege|竹林ほか 2010]], p.1094</ref><ref name="Genius-maiden">[[#Genius|小西・南出 2006]], p.1182</ref>。{{lang|en|[[:wikt:en:maidenhair|maidenhair]]}}は普通[[ホウライシダ属]] {{snamei||Adiantum}}のシダ(= {{lang|en|maidenhair fern}})を指し、{{lang|en|maiden}}は「[[処女]]([[名詞]])」または「処女の([[形容詞]])」を表す<ref name="Webster-maiden"/><ref name="NewCollege-maiden"/><ref name="Genius-maiden"/>。{{lang|en|maidenhair tree}}という語は {{lang|en|maidenhair fern}}によく似ているためであるとされる<ref name="etymonline">{{cite web|url=https://www.etymonline.com/word/ginkgo|title=ginkgo (n.)|author=Douglas Harper|website=[[オンライン・エティモロジー・ディクショナリー|Online Etymology Dictionary]]|accessdate=2020-04-19}}</ref>。語源はよく議論されてこなかったが、葉がよく似たホウライシダを表す {{lang|en|maidenhair}}とともに、[[陰毛]]が形作る[[三角形]]から名付けられたと考えられている<ref>{{cite web|url=https://www.theguardian.com/science/blog/2015/dec/14/climate-change-plants-key-to-ancient-modern-fossil|author=Susannah Lydon|title=Living fossils: the plants holding the key to ancient and modern climate change|date=2015-12-14|publisher=[[ガーディアン|The Guardian]]|accessdate=2020-04-19}}。</ref>。「木の全体が女性の髪形に似ているため」と美化した説明もなされる<ref>「Color Anchor 英語大辞典」学研</ref>。
 
ほかにも {{lang|en|fossil tree}}<ref name=NCCIH />(化石の木)、{{lang|en|Japanese silver apricot}}<ref name=NCCIH />(日本の銀色の[[杏]])、{{lang|en|baiguo}}<ref name=NCCIH />(白果)、{{lang|en|yinhsing}}<ref name=NCCIH />(銀杏)などと呼ばれる。
[[国際自然保護連合|IUCN]][[レッドリスト]][[1997年]]版で希少種 (Rare) に、[[1998年]]版で[[絶滅危惧]](絶滅危惧II類)に評価された<ref name="IUCN"/>。
 
=== その他 ===
漢名(異名)の「公孫樹」は長寿の木であり、[[祖父母|祖父]](公)が植えると孫が実を食べることができるという謂れに基づく<ref name="kanji-etym2007"/><ref name="trees"/>。
 
[[学名|種小名]] '''{{Snamei|biloba}}''' は[[ラテン語]]による造語で、「2つの[[裂片]] (two lobes)」の意味。葉が大きく2浅裂することを指したもの<ref name="conifer">[[#conifer|矢頭 1964]], pp.7-11</ref>。
 
== 分類学 ==
本種は現生では[[門 (分類学)|門]]または [[綱 (分類学)|綱]]レベル以下全てで[[単型 (分類学)|単型]]の種であるとされ、[[イチョウ類|イチョウ植物門]] {{sname||Ginkgophyta}}([[維管束植物|維管束植物門]] {{sname||Tracheophyta}}<ref name="iwanami"/>または[[裸子植物|裸子植物門]] {{sname||Gymnospermae}}<ref name="Taxa-I"/>とされることも多い)・イチョウ綱 {{Sname||Ginkgoopsida}}・イチョウ目 {{Sname||Ginkgoales}}・イチョウ科 {{Sname||Ginkgoaceae}}・イチョウ属 {{Snamei||Ginkgo}}に属する'''唯一の現生種'''である<ref name="conifer"/><ref name="iwanami"/>。
 
=== 上位分類 ===
{{multiple image
| total_width = 500
| caption1 = イギリスで産出した[[ジュラ紀]]のイチョウ属、{{snamei||Ginkgo huttonii}}の葉の化石
| image1 = Fossil Plant Ginkgo.jpg
| caption2 = アメリカの[[始新世]][[ヤプレシアン]]の地層で産出した本種 {{snamei|Ginkgo biloba}}の葉の化石。
| image2 = Ginkgo biloba leaf 01.jpg
}}
{{see also|イチョウ類}}
現在、化石を含めた裸子植物は[[種子植物]]から[[被子植物]]を除いた[[側系統群]]であるとされ、この場合側系統群を認めない立場からは裸子植物門は解体されて[[ソテツ類|ソテツ植物門]] {{sname||Cycadophyta}}、イチョウ植物門 {{sname||Ginkgophyta}}、[[グネツム綱|グネツム植物門]] {{sname||Gnetophyta}}、[[球果植物門]] {{sname||Pinophyta}}の4植物門に分類される<ref name="Phylogeny">[[#Phylogeny|伊藤 2012]], pp.129-134</ref>。本種イチョウは現生で唯一この'''イチョウ植物門 {{sname|Ginkgophyta}}'''に属している<ref name="Phylogeny"/>。イチョウは[[雄性配偶子]]として自由運動可能な精子を作るが、これは[[ソテツ]]と共通である<ref name="Phylogeny"/>。そのためソテツ類とイチョウ類を合わせてソテツ類(ソテツ綱)とすることもあった<ref>[[#conifer|矢頭 1964]], p.1</ref><ref name="yamakei-gymnosperm">[[#yamakei|林 1985]], p.5</ref>。
 
これら4分類群は形態的には大きくかけ離れているが、Hasebe ''et al.'' (1992)による分子系統解析の結果、現生裸子植物は単系統群であることが分かり<ref>{{cite journal|last1=Hasebe|first1=M|last2=Kofuji|author1-link=長谷部光泰|first2=R|last3=Ito|first3=M|last4=Kato|first4=M|last5=Iwatsuki|first5=K|last6=Ueda|first6=K|date=1992|title=Phylogeny of gymnosperms inferred from ''rbc''L gene sequences|url=https://doi.org/10.1007/BF02489441|journal=Bot. Mag. Tokyo|volume=105|pages=673-679|doi=10.1007/BF02489441}}。</ref>、現在これはChaw ''et al.'' (2000)などほとんどの研究<ref>{{cite journal|first1=Shu-Miaw|last1=Chaw|first2=Christopher L.|last2=Parkinson|first3=Yuchang|last3=Cheng|first4=Thomas M.|last4=Vincent|first5=Jeffrey D.|last5=Palmer|title=Seed plant phylogeny inferred from all three plant genomes: Monophyly of extant gymnosperms and origin of Gnetales from conifers|journal=Proc. Natl. Acad. Sci.|date=2000-04-11|volume=97|issue=8|pages=4086-4091|doi=10.1073/pnas.97.8.4086}}。</ref>で支持されている<ref>[[#Phylogeny|伊藤 2012]], pp.144-145</ref><ref>[[#Taxa|邑田・米倉 2010]], p.18</ref>。裸子植物は従来門の[[階級 (生物学)|階級]]に置かれ裸子植物門 {{sname||Gymnospermae}}とされてきた<ref name="Taxa-I">[[#Taxa|邑田・米倉 2010]], p.104</ref>が、近年では門により上位の[[タクソン|分類群]]である維管束植物門 {{sname||Tracheophyta}}を立てることがある<ref name="iwanami-taxa">[[#iwanami|巌佐ほか 2013]], p.1644</ref>。イチョウ類はその下に[[葉|小葉類]] {{sname||Microphyllophytina}}([[ヒカゲノカズラ植物門|ヒカゲノカズラ類]] {{sname||Lycophytina}})を除いた維管束植物である[[真葉植物|大葉植物亜門]](真葉植物亜門){{sname||Euphyllophyta}}を置き、その下の分類群である'''イチョウ綱 {{sname||Ginkgopsida}}'''とされる<ref name="iwanami-taxa" />。
 
この綱には'''イチョウ目 {{Sname||Ginkgoales}}''' 1[[目 (分類学)|目]]、'''イチョウ科 {{Sname||Ginkgoaceae}}''' 1[[科 (分類学)|科]]のみが属しているが、これは[[中生代]]に繁栄した植物群である<ref name="conifer"/><ref name="garden"/><ref name="trees">[[#trees|鈴木 2005]], p.114</ref>。いずれも現生では本種のみが属する<ref name="conifer"/>。
 
=== 下位分類 ===
[[File:Seeds of Ohatsuki Icho of Ryotokuji.jpg|thumb|250px|お葉付きイチョウの実]]
現生は{{snamei|Ginkgo biloba}} 1種のみしか知られていないが、変異が見られ、下位分類群として94[[品種]]が知られている<ref name="garden"/>。代表的な[[変種]]または品種は以下のものである。
 
* {{Sname|var. {{Snamei|laciniata}}}} {{AU|Hort.}} キレハイチョウ<ref>[http://bean.bio.chiba-u.jp/bgplants/ylist_detail_disp.php?pass=2061 米倉浩司・梶田忠 (2003-) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)] - キレハイチョウ(2011年9月20日閲覧)</ref>
* {{Sname|'Aureovariegata'}} フイリイチョウ<ref>[http://bean.bio.chiba-u.jp/bgplants/ylist_detail_disp.php?pass=5523 米倉浩司・梶田忠 (2003-) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)] - フイリイチョウ(2011年9月20日閲覧)</ref>
* {{Sname|'Epiphylla'}}(または{{Sname|var. ''epiphylla''}} {{AU|Makino}}) オハツキイチョウ<ref>[http://bean.bio.chiba-u.jp/bgplants/ylist_detail_disp.php?pass=1585 米倉浩司・梶田忠 (2003-) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)] - オハツキイチョウ(2011年9月20日閲覧)</ref><ref name="conifer"/>
* {{Sname|'Pendula'}} シダレイチョウ<ref>[http://bean.bio.chiba-u.jp/bgplants/ylist_detail_disp.php?pass=3021 米倉浩司・梶田忠 (2003-) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)] - シダレイチョウ(2011年9月20日閲覧)</ref>
 
== 形態 ==
本格的な[[木|木本]]性の植物であり<ref name="Phylogeny"/>、樹高20-30 m、幹直径2 mの[[落葉性|落葉]]高木となる<ref name="conifer"/>。大きいものは樹高40-45 m、直径4-5 mに達する<ref name="conifer"/><ref name="leaf">[[#leaf|馬場 1999]], p.96</ref>。茎は真正[[中心柱]]をもち、[[維管束形成層|形成層]]の活動は活発で、発達した[[二次木部]]を形成する<ref name="Phylogeny"/>。多数の太い枝を箒状に出し、長大な卵形の[[樹冠]]を形成する<ref name="conifer"/>。樹皮は[[コルク質]]がやや発達して柔らかく、淡黄褐色で粗面<ref name="conifer"/>。若い樹皮は褐色から灰褐色で、縦に長い網目状であるが、成長とともに縦方向に裂けてコルク層が厚く発達する<ref name="bark"/>。枝には長枝と短枝があり、どちらも無毛である<ref name="conifer"/>。樹形は単幹だけでなく株立ちのこともある<ref name="bark"/>。[[冬芽]]は円錐形で、多数の芽鱗に覆われる<ref name="conifer"/>。
 
[[葉|葉身]]は扇形で長い[[葉柄]]を持つ([[葉柄#長柄|長柄]])<ref name="conifer"/>。葉柄は3-8 cm、葉身長4-8 cm、葉幅は5-7 cm<ref name="scan">[[#scan|林 2020]], p.45</ref><ref name="yamakei">[[#yamakei|林 1985]], p.7</ref>。[[葉脈]]は原始的な[[葉脈#葉脈の型|平行脈]]を持ち、二叉[[分枝 (生物学)|分枝]](二又分枝)して付け根から先端まで伸びる<ref name="Phylogeny"/><ref name="leaf"/>。中央脈はなく、多数の脈が基部から開出し葉縁に達する<ref name="conifer"/>。このように葉脈が二又に分かれ、網目を作らない脈系を'''二又脈系''' ({{lang|en|dichotomous system}})と呼ぶ<ref>[[#glossary|清水 2001]], p.138</ref>。葉の上端は不規則の波状縁となり、基本的に葉の中央部は[[浅裂]]となるが、[[深裂]]となるものもあり<ref name="conifer"/><ref name="leaf"/><ref name="scan"/>、栽培品種では差異が大きい。若いものや徒長枝ほど切れ込みがよく入り、複数の切れ込みがあるものもある<ref name="scan"/>。切れ込みの殆どないものもあり<ref name="yamakei"/>、剪定されていない老木では切れ込みのない葉が多い<ref name="scan"/>。[[葉脚]]は[[楔形]]<ref name="leaf"/>。[[雌雄異株]]であり、葉の輪郭で雌雄を判別できるという俗説があるが、実際には[[生殖器]]の観察が必要である<ref>{{Cite journal|和書 |title=核型解析によるイチョウ雌雄間の染色体の違いとfluorescence in situ hybridization (FISH)による染色体上のrDNAマッピング |publisher=園芸学会 |journal=園芸学会雑誌 |volume=74 |issue=4 |pages=275-280 |date=2005-07-15 |author=中尾義則 |author2=平 知明 |author3=堀内昭作 |author4=河瀬憲次 |author5=向井康比己 |naid=110001815992}}</ref>。葉は表裏ともに無毛<ref name="leaf"/>。葉の付き方は[[長枝]]上では螺旋状に[[葉#葉序|互生]]し、[[短枝]]上では束生である<ref name="conifer"/><ref name="leaf"/><ref name="scan"/>。。また、落葉前の葉は鮮やかな[[黄色]]に[[紅葉|黄葉]]し<ref name="conifer"/>、並木道などは秋の風物詩である。黄葉したイチョウは'''いちょうもみじ(銀杏黄葉)'''と呼ばれる<ref name="Kojien"/>。ラッパのような筒状の葉を付ける'''ラッパイチョウ'''などの変異も見られる<ref name="scan"/>。また、葉の縁に不完全に発達した葯または胚珠、種子が生じる[[変種]]を'''オハツキイチョウ''' {{sname|''G. biloba'' var. ''epiphylla''}} {{AU|Makino}} と呼び、本種の系統を示す重要な形質だと考えられている<ref name="conifer"/>。天然記念物に指定されているものもあるが、あまり珍しくない<ref name="conifer"/>。[[#conifer|矢頭 (1964)]]では変種として区別する必要がないとしている<ref name="conifer"/>。
 
樹木としては長寿で、各地に幹周が10 mを超えるような[[巨樹|巨木]]が点在<ref group="註">[[環境省]]によると、[[青森県]][[深浦町]]にある[[北金ヶ沢のイチョウ]](地上約1.3 mの位置での幹周が22 m超)が日本有数</ref>している。幹や大枝から円錐形の[[根|気根]]状突起を生じ、'''イチョウの乳'''と呼ばれる<ref name="Osaka"/><ref name="yamakei"/>。これは「乳根」や「乳頭」、「乳柱」ともよばれる<ref name="bark">[[#bark|梅本 2010]], p.90</ref>。このイチョウは'''チチノキ'''<ref name="woods">[[#woods|須藤 1997]], p.37</ref>や乳イチョウと呼ばれ、安産・子育ての信仰対象([[法明寺 (豊島区)|鬼子母神]]など)とされる。
 
[[国際自然保護連合|IUCN]][[レッドリスト]][[1997年]]版で希少種 (Rare) に、[[1998年]]版で[[絶滅危惧種|絶滅危惧]](絶滅危惧II類)に評価された<ref name="IUCN"/>。
<gallery>
Ginkgo biloba textura del tronco.jpg|樹皮
Gingko-Blaetter.jpg|葉の形状
Ginkgo biloba - male flower.JPG|雄株の花
Ginkgo braquiblasto.jpg|芽吹き
Ginkgo Tree Ginkgo biloba Leaves Rock 3008px.jpg|黄葉した葉
Ginkgo biloba1.jpg|黄葉前の葉と実
Ginkgo.jpg|黄葉した葉と実
Gingko biloba4.jpg|落葉した葉と実
Ginkgoseedling02a.jpg|発芽して間もない株
Aerial Roots of a Ginkgo Tree.jpg|気根
File:Ginkgo biloba MHNT.BOT.2010.13.12017-05-16 0366.jpg|Ginkgo biloba - Museum specimen冬芽
Seeds of Ohatsuki Icho of Ryotokuji.jpg|お葉付きイチョウの実
</gallery>
<!-- このギャラリーには植物学的な写真を載せます -->
 
== 生息と伝播 ==
{{multiple image
[[北半球]]では[[メキシコシティ]]から[[アンカレッジ]]、[[南半球]]では[[プレトリア]]から[[ダニーディン]]の範囲に分布し、極地方や[[赤道|赤道地帯]]には栽植されない。年平均気温が0 - 20℃の降水量500 - 2000mmの地域に分布している<ref name="sogame">{{Cite journal|和書 |naid=110000978787 |title=世界におけるイチョウの分布 |author=十亀好雄 |journal=甲子園短期大学紀要 |volume=4 |date=1984-10-10 |pages=1-14}}</ref>。
| total_width = 500
| caption1 = 黄葉前の葉と実
| image1 = Ginkgo biloba1.jpg
| caption2 = 黄葉した葉と実
| image2 = Ginkgo.jpg
}}
[[雌雄異株]]で、[[生殖器]]は[[短枝]]上につく<ref name="Phylogeny"/><ref name="conifer"/>。日本の[[関東地方]]など、[[北半球]]の[[温帯]]では 4-5月に新芽が伸び開花する<ref name="leaf"/>。[[風媒花]]で、1 km程度離れていても[[受粉]]可能とされる{{要出典|date=2010年3月}}。裸子植物なので、受粉様式は被子植物と異なる。まず開花後4月に受粉<ref name="Phylogeny"/>した花粉は、雌花の[[胚珠]]端部の花粉室に数ヶ月保持され、その間に胚珠は直径約2 cm程度に肥大し、花粉内では数個の[[精子]]が作られる。9-10月頃、精子は放出され、花粉室から1個の精子のみが造卵器に泳いで入り、ここで[[受精]]が完了する<ref name="Phylogeny"/>。受精によって胚珠は成熟を開始し、10-11月頃に種子は成熟し落果する<ref name="conifer"/>。種子は球形から広楕円形で長さ1-2 cmの[[核果|石果]]様<ref name="conifer"/><ref name="leaf"/>。外種皮は橙黄色で、軟化し[[カルボン酸]]類特有の臭気を発する<ref name="conifer"/>。内皮は堅く[[紡錘|紡錘形]]で、長さ 1 cmで黄白色<ref name="conifer"/>。普通は2稜あるが、3稜のものも少なくなく、子葉は2または3個<ref name="conifer"/>。1 kg当りの種子数は約900個である<ref name="conifer"/>。
 
=== 雌性生殖器官 ===
[[File:Ginkgo biloba 006.JPG|thumb|150px|雌株の花]]
本種の雌性生殖器官([[花|雌花]]<ref name="conifer"/>)は、[[花柄]]の先端に通常2個の胚珠が付く構造をしている<ref name="Phylogeny"/>。胚珠は柄の先端の「襟」と呼ばれる構造(退化した[[雌蕊|心皮]]<ref name="conifer"/>)に囲まれているが、ほぼむき出しである<ref name="Phylogeny"/>。胚珠は1枚の肉厚の[[珠皮]]が[[珠心]]を包み込んでいて、珠皮は肉質外層、硬い石層、肉質内層の3層構造からなる<ref name="Phylogeny"/>。
 
本種の雌性配偶体や[[造卵器]]の形成過程はソテツに類似する<ref name="Phylogeny"/>。遊離[[核分裂]]による多核性段階を経て、[[細胞壁]]が発達した多細胞段階になる<ref name="Phylogeny"/>。造卵器は通常2個作られるが、1個から5個までの変異がある<ref name="Phylogeny"/>。始原細胞は珠孔側の表皮細胞であり、並層分裂により中央細胞と第一次首細胞ができ、それがすぐに垂直分裂をして2個の首細胞となる<ref name="Phylogeny"/>。
 
=== 雄性生殖器官 ===
[[File:Ginkgo biloba - male flower.JPG|thumb|200px|雄株の花]]
雄性器官も[[短枝]]の[[葉腋]]上に[[大胞子囊]]穂(雄花<ref name="conifer"/>)として形成される<ref name="Phylogeny"/>。雄花は[[尾状花序]]様で<ref name="conifer"/>軸上に多数の付属体([[雄蕊]]<ref name="conifer"/>)が付き、各付属体は通常2個の[[小胞子囊]](葯<ref name="conifer"/>)を先端につける<ref name="Phylogeny"/>。小胞子囊の中の小胞子母細胞が分裂し、4分子の小胞子(核相: n)をつくる<ref name="Phylogeny"/>。
 
雄性配偶体はソテツに似ており、花粉散布時には生殖細胞、花粉管細胞、2個の[[配偶体|前葉体]]細胞の4細胞性の構造をとる<ref name="Phylogeny"/>。花粉が風で胚珠まで運ばれると、珠孔にできた受粉滴に付着して胚珠の内部に運ばれる<ref name="Phylogeny"/>。生殖細胞は不稔細胞と精原細胞に分裂し、精原細胞はもう一度分裂し2個の精子となる<ref name="Phylogeny"/>。花粉は分枝する花粉管を伸ばし、吸器として働く<ref name="Phylogeny"/>。
 
=== 精子 ===
裸子植物の[[雄性配偶子]]は[[花粉]]によって運ばれ、うちグネツム類や球果植物では花粉粒から[[花粉管]]を伸ばして[[胚囊]]まで有性配偶子が運ばれるが、本種及びソテツは花粉管から自由運動可能な精子が放出されて受精が行われる<ref name="Phylogeny"/>。
 
1896年、[[帝国大学]](現、[[東京大学]])理科大学植物学教室の助手[[平瀬作五郎]]が、種子植物として初めて[[鞭毛]]をもって遊泳するイチョウの精子を発見した<ref name="Phylogeny"/><ref name="Morphology">[[#Morphology|加藤 1999]], p.65</ref>。平瀬は当時、ギンナンの内部にあった生物らしきものを[[寄生虫]]と考えたが、当時助教授であった[[池野成一郎]]に見せたところ精子であると直感した<ref name="Phylogeny"/>。その後の観察で、精子が花粉管を出て動き回ることを確認し、[[1896年]][[10月20日]]に発行された[[植物学雑誌]]第10巻第116号に「いてふノ精虫ニ就テ」<ref>{{cite journal|author=平瀬作五郎|title=いてふノ精虫ニ就テ|url=https://doi.org/10.15281/jplantres1887.10.116_325|journal=植物学雑誌|volume=10|issue=116|pages=325-328|date=1896|doi=10.15281/jplantres1887.10.116_325}}。</ref>という論文にて発表した<ref name="Phylogeny"/><ref name="conifer"/>。裸子植物であるイチョウが被子植物と同じように胚珠(種子)を進化させながら、同時に雄性生殖細胞として原始的な精子を持つということは、進化的に見てシダ植物と種子植物の中間的な位置にあるということを示している<ref name="Morphology"/>。この業績は1868年の[[明治維新]]以降、欧米に学んで近代科学を発展させようとした黎明期において、世界に誇る研究として国際的に高く評価された<ref name="Morphology"/>。後年、平瀬はこの功績によって[[恩賜賞 (日本学士院)|学士院恩賜賞]]を授与された<ref name="Morphology"/>。[[#Morphology|加藤 (1999)]]は、当時植物園教室は[[東京大学大学院理学系研究科附属植物園|小石川植物園]]内にあり、身近にイチョウが植えられて研究材料として簡単に利用できる状態であったということがこの研究の一助となったとしている<ref name="Morphology"/>。発見された樹はなお植物園にあり、樹高25 m、直径約1.5 mの雌木である<ref name="conifer"/>。
 
== 分布と伝播 ==
[[北半球]]では[[メキシコシティ]]から[[アンカレッジ]]、[[南半球]]では[[プレトリア]]から[[ダニーデン]]の範囲に分布し、極地方や[[赤道|赤道地帯]]には栽植されない。年平均気温が0 - 20℃の降水量500 2000 mmの地域に分布している<ref name="sogame">{{Cite journal|和書 |naid=110000978787 |title=世界におけるイチョウの分布 |author=十亀好雄 |journal=甲子園短期大学紀要 |volume=4 |date=1984-10-10 |pages=1-14}}。</ref>。
 
原産地・自生地は確認されていないが中国原産とされる<ref name="Kojien"/>。[[欧陽脩]]が『欧陽文忠公集』に書き記した珍しい果実のエピソードが、確実性の高い最古の記録と見られる。それは現在の中国[[安徽省]][[宣城市]]付近に自生していたものが、[[11世紀]]初めに当時の[[北宋]]王朝の都があった[[開封市|開封]]に植栽され、広まったとする説が有力とされる。中国の安徽省および[[浙江省]]には野生状のものがあり、他の針葉樹・広葉樹と混生して森林を作っている<ref name="conifer"/>
 
その後、[[仏教]][[寺院]]などに盛んに植えられ、日本にも薬種として伝来したと見られるが、年代には諸説ある<ref>[http://mayanagi.hum.ibaraki.ac.jp/paper02/ityo.htm イチョウの出現と日本への伝来] [[真柳誠]]</ref>。果実・種子として銀杏(イチャウ)が記載される確実な記録は、[[室町時代]]([[15世紀]])後期の『新撰類聚往来』<ref>木村晟、[http://ci.nii.ac.jp/naid/110007002512 慶安元年板『新撰類聚往来』の本文] 駒澤國文 21, 97-154, 1984-02, {{naid|110007002512}}</ref>以降で、[[鶴岡八幡宮]]の大銀杏や、新安海底遺物([[1323年]]に当時の[[元 (王朝)|元]]の[[寧波市|寧波]]から日本の[[博多]]に航行中に沈没した難破船)からの発見{{要出典|date=2008年11月}}については疑問もある。
 
[[ヨーロッパ]]には[[1692年]]、ケンペルが長崎から持ち帰った種子から始まり、オランダのユトレヒトやイギリスの[[キューガーデン|キュー植物園]]で栽培され、開花したという<ref>[http://www.koishikawa.gr.jp/NLHP/NL28/NL28_2.html ウィーンにイチョウを探索する 長田 敏行]小石川植物園後援会 ニュースレター 第28号</ref>。その後、[[18世紀]]にはドイツをはじめヨーロッパ各地に植えられるようになり、[[18171815年]]には[[ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ|ゲーテ]]が『銀杏の葉 (''[[:en:Gigo biloba|Gingo biloba]]'')』と名付けた恋愛詩を記している。
 
== 利用 ==
=== 木材 ===
[[File:Ginkgo biloba MHNT.BOT.2010.13.1.jpg|thumb|250px|イチョウの年輪]]
イチョウは油分を含み水はけがよく、材料も均一で加工性に優れ、歪みが出にくい特質を持つ。カウンターの天板・構造材・造作材・建具・家具・水廻りなど広範に利用されており、[[碁盤]]や[[将棋盤]]にも適材とされるほか、特にイチョウ材の[[まな板]]は高級とされている。
木材としての知名度は低い<ref name="woods"/>。組織は[[針葉樹]]のものと似ている<ref name="woods"/>。材は黄白色で、心材と辺材の色の差は殆どない<ref name="conifer"/><ref name="woods"/>。早材と晩材の差が少ないため、年輪ははっきりとせず[[広葉樹]]材のようであり、材は均一で加工性に優れる<ref name="woods"/>。肌目は精で、木理は通直で、歪みが出にくい良材である<ref name="conifer"/><ref name="woods"/>。木材の中に異形細胞をもち、その中に金平糖型の[[シュウ酸カルシウム]]を含む<ref name="woods"/>。気乾比重は0.55で、やや軽軟で、耐久性は低い<ref name="woods"/>。器具・建具・家具・彫刻<ref name="conifer"/><ref name="woods"/>、カウンターの天板・構造材・造作材・水廻りなど広範に利用されており、[[碁盤]]や[[将棋盤]]にも適材とされる<ref name="yamakei"/><ref name="woods"/>が、[[カヤ]]に比べ音が良くないため評価は低い<ref name="woods"/>ほか、古くはイチョウ材の鳥屋の[[まな板]]に好まれた<ref name="woods"/>。
 
=== 防災 ===
に強いあるため強く防火植林に用いられる<ref name="conifer"/>。[[江戸時代]]の[[火除地|火除け地]]に多く植えられた。後の[[関東大震災]]の際には延焼を防いだ例もあったため、防災を兼ねて次項で記載する街路樹にイチョウが多く植えられるようになったという。これを提案したのは[[長岡安平]]であったことが、2019年12月27日放送の『[[チコちゃんに叱られる!]]』で取り上げられた<ref name="detazou191227">{{Cite web|url=https://datazoo.jp/tv/チコちゃんに叱られる!/1325657 |title=チコちゃんに叱られる!「拡大版SP!イチョウ並木・氷の謎・イラスト一挙公開!」 |website=TVでた蔵 |publisher= |date=2019-12-27 |accessdate=2019-12-29}}</ref>。
 
=== 街路樹 ===
病害や虫害がほとんどなく<ref name="conifer"/>、黄葉時の美しさと、剪定や火災に強いという特性から、街路樹として利用される。[[2007年]]の[[国土交通省]]の調査によれば、[[街路樹]]として57万本のイチョウが植えられており、樹種別では最多本数。[[東京都|東京]]の[[明治神宮外苑]]や、[[大阪市|大阪]][[御堂筋]]の[[街路樹]]などが、銀杏並木として知られている。御堂筋のイチョウ並木は大阪市を代表とする街路樹として著名で、[[1966年]]時点で樹齢約50年、867本(うち雌株111本)あった<ref name="Osaka">[[#Osaka|赤松 1966]], p.41</ref>。それに加え、大阪市公園部で街路樹として管理されているイチョウは、1964年5月時点で847本であった<ref name="Osaka"/>。雌株秋期に落下した果実(銀杏)が異臭の原因となる場合があるので<ref name="conifer"/>、街路樹への採用にあたっては、果実のならない雄株のみを選んで植樹される場合もある。
<gallery>
Jingu Gaien Ginkgo Street Tokyo.jpg|東京[[明治神宮外苑]]([[港区 (東京都)|港区]][[北青山]])
98 ⟶ 169行目:
The Koshu Highway in Hachioji.jpg|東京[[八王子市]]追分町付近
</gallery>
 
=== その他植栽 ===
[[File:Ginko (Ginko biloba) (3505588883).jpg|thumb|150px|イチョウの盆栽]]
日本では庭園や公園に植栽されたり<ref name="leaf"/>、寺社の境内に多く植えられる<ref name="conifer"/><ref name="yamakei"/>が、大規模な造林地になっているものはない<ref name="woods"/>。古い社寺の境内には樹齢数百年を経た「大銀杏」が多くみられる<ref name="bark"/>。外国の植物園にも普通に見られる<ref name="conifer"/>。[[盆栽]]にも利用される<ref name="yamakei"/>。
 
=== 食用 ===
健康な一般成人では、イチョウは適切な量であれば食用として安全である<ref name=NCCIH />。しかし生もしくはロースト加熱したイチョウ種子は、有毒であり深刻な副作用を起こしえす可能性がある<ref name=NCCIH />。
 
==== 種子 ====
146 ⟶ 221行目:
ぎんなんの収穫を目的とした栽培品種があり、大粒晩生の[[藤九郎ぎんなん|藤九郎]]、大粒中生の久寿(久治)、大粒早生の喜平、中粒早生の金兵衛、中粒中生の栄神などが主なものとして挙げられる。
 
銀杏は日本全土で生産されているが、特に[[愛知県]][[稲沢市]](旧:[[中島郡 (愛知県)|中島郡]][[祖父江町]])は生産量日本一である。ぎんなん採取を目的としたイチョウの栽培もこの地に始まるとされるが、それは[[1900年]]前後のことと伝えられる<ref>[https://web.pref.hyogo.lg.jp/kk09/ac07_000000168.html  祖父江のぎんなん] 稲沢市[[稲沢市]]</ref>。上記の栽培品種も、多くはこの町の木から[[接ぎ木]]で広まったものである。祖父江町では、街路樹を目的として植えられた雄株の影響で周囲の雌株の銀杏の実が小さくなったとして、街路樹の雄株が撤去されることもあった(雄株は周囲1kmの雌株に影響を与える)。
 
熟すと肉質化した外皮が異臭を放つ。異臭の主成分は[[酪酸]]と[[エナント酸|ヘプタン酸]]である。異臭により[[ニホンザル]]、[[ネズミ]]などの動物は食べようとしないが、[[アライグマ]]のように平気で食べるものもいる。ぎんなんのシーズンに先走って収穫されるものは「走りぎんなん」と呼ばれ、やわらかく匂いも少ないことから通常の時期に収穫されるものより高級とされる。
 
==== 皮膚炎と食中毒 ====
; 皮膚炎
[[アレルギー性皮膚炎]]を誘発する[[ビロボール]]や[[ギンコール酸]]などを含み<ref>佐々木啓子、松岡耕二、[http://id.nii.ac.jp/1222/00000091/ イチョウ葉エキスの薬理活性] 」『千葉科学大学紀要 2012-02-28, 5巻, p.61-67, {{ncid|AA1230240X}}。</ref>、[[漆]]などのようにかぶれなどの[[皮膚炎]]を引き起こす。触れてすぐには発症せず、長期間継続して実に触れ続けた結果発症した例もある{{要出典|date=2010年3月}}。{{要出典範囲|イチョウの乾葉が[[防虫剤]]として用いられるのは、こうした成分が葉にも含まれているからである|date=2018年10月}}<ref>[[日本大百科全書]](ニッポニカ)「[https://kotobank.jp/word/%E3%81%8E%E3%82%93%E3%81%AA%E3%82%93-1526542 ぎんなん]」より([[コトバンク]]、2015年10月22日閲覧)。</ref>{{要高次出典|date=2018年10月}}。
 
; 食中毒(銀杏中毒)
食用とする種の中身には[[ビタミンB6]]の類縁体[[ギンコトキシン|4-O-メチルピリドキシン]] (4-O-methylpyridoxine, MPN) が含まれている<ref>[http://www.naoru.com/ginnan.htm ぎんなん中毒]</ref>が、これはビタミンB6に拮抗してビタミンB6欠乏となり[[Γ-アミノ酪酸|GABA]]の生合成を阻害し、まれに[[痙攣]]などを引き起こす。大人の場合かなりの数を摂取しなければ問題はないが、1日5 - 6粒程度でも中毒になることがあり、特に報告数の70%程度が5歳未満の小児である<ref>[http://www.hoku-iryo-u.ac.jp/~wadakg/keyword/ginkgofoodp.html 銀杏食中毒とは] 北海道医療大学薬学部</ref>。[[太平洋戦争]]前後に中毒報告が多く、大量に摂取したために死に至った例もある。
 
一方で[[気管支喘息|喘息]]等の症状に対する鎮咳去痰作用など[[薬草]]としての効力もあり、前述の難破船に遺された銀杏も[[]]の原料として送られたものであるといわれている。
 
=== 薬理効果の研究 ===
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==== 葉 ====
[[画像:Ginkgo biloba-Leaves and Seeds-1.jpg|thumb|200px|ドイツではイチョウの成分が医薬品と認められている]]
* ドイツでは、[[フラボノイド]]22 - 27%、[[テルペノイド]]5 - 7%([[ビロバリド|ビロバライド]]2.6 - 3.2%、[[ギンコライド]]A,B,C 2.8 - 3.4%)、[[ギンコール酸]]5 ppm以下の規格を満たすイチョウ葉[[エキス]]が[[医薬品]]として認証されており<ref name="kokusen01">{{PDFlink|[http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20021125.pdf イチョウ葉食品の安全性]}} 2002年11月25日(国民生活センター)</ref>、日本においても(財)[[日本健康・栄養食品協会]]が同様の基準を設けている<ref name="nhlw01">[http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/hokenkinou/4e-1.html イチョウ葉エキスの有効性および安全性]([[独立行政法人]] [[国立健康・栄養研究所]])</ref>。しかし、同協会の認証を受けていない商品についてはそういった基準はない。なお、イチョウ葉は日本から[[ドイツ]]や[[フランス]]へ輸出されている<ref>{{PDFlink|[http://soni.niye.go.jp/kotomono/pdf/17.pdf 曽爾の天然記念物]}}(国立曽爾青少年自然の家)</ref>。
* 日本では、イチョウは医薬品として認可されておらず、[[食品]]であるため効能を謳うことはできない。しかし、消費者に対し過大な期待を抱かせたり、[[医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律|医薬品医療機器等法]]で問題となるような広告も散見される<ref name="kokusen01"/>。
* 生の葉は摂取しない方が良い。また、雑誌などでイチョウ葉茶の作り方が掲載されることがあるが、これに対して[[国立健康・栄養研究所]]は「イチョウ葉を集めてきて、自分でお茶を作るという内容であり、調製したお茶にはかなり多量のギンコール酸が含まれると予想され、そのようなことは勧められません。」としている<ref name="nhlw01"/>。
* 銀杏と葉で薬効成分が異なる。葉の[[薬理学|薬理]]効果の研究は国内大学<ref>[http://www2.odn.ne.jp/~had26900/index.htm イチョウ葉エキスの薬理活性について]([[帝京大学]]薬学部)</ref>をはじめ日本国外でも行われている。
* [[国民生活センター]]のレポートによると、[[アレルギー]]物質であるギンコール酸、有効物質であるテルペノイド、フラボノイドの含有量には製法と原料由来の大きな差がみられる。また、「お茶として長時間煮詰めると、ドイツの医薬品規格以上のギンコール酸を摂取してしまう場合がある」とし、異常などが表れた場合は、すぐに利用を中止し医師へ相談するよう呼び掛けている<ref name="kokusen01"/>。
* 日本と欧米では製造方法が異なり、日本では成分抽出の溶媒に「水」「[[エタノール|エチルアルコール]]」が使用されているが欧米では「水」「[[アセトン]]」であり、抽出後のフラボノイドやテルペノイド以外の成分が同等であるかは判っていない<ref name="nhlw01"/>。
 
==== 有効性 ====
いくつかの[[疫学#臨床試験|臨床試験]]において、イチョウのさまざまな有効性が報告されている<ref name="nhlw01"/>。
* [[認知症]]の改善
* 記憶改善
182 ⟶ 257行目:
 
==== 副作用 ====
イチョウに対するアレルギー反応を引き起こすことがある。医薬品規格を満たさないものの場合、アレルギー物質であるギンコール酸をより多く摂取することとなり、アレルギー反応の可能性も大きくなると思われる。また、出血傾向も認められる<ref name="kokusen01"/><ref name="nhlw01"/><ref name="nlm01">[http://www.nlm.nih.gov/medlineplus/druginfo/natural/patient-ginkgo.html "MedlinePlus Herbs and Supplements: Ginkgo (Ginkgo biloba L.)"] - National Library of Medicine</ref>。まれな副作用としては、胃腸障害、頭痛、[[スティーブンス・ジョンソン症候群]]、[[下痢]]、吐き気、[[筋弛緩]]、[[皮疹|発疹]]、[[口内炎]]などが報告されている。
 
==== 相互作用 ====
イチョウ葉エキスには血液の抗凝固促進作用があり、[[アセチルサリチル酸|アスピリン]]など抗凝固作用を持つ薬との併用には注意を要する。[[インスリン]]分泌にも影響を及ぼすため、[[糖尿病]]患者が摂取する場合は医師と相談した方がよい。また、抗うつ剤や[[肝臓]]で代謝されやすい薬(CYP2C9、CYP1A2、CYP2D6、CYP3A4の基質となる医薬品(例:[[ジアゼパム]]、[[ワルファリン]]、[[トリアゾラム]]、[[ハロペリドール]]))も相互作用が生じる可能性がある<ref>[http://www.dobun.co.jp/nmdb/iyakusample/samplelist.html#ginkgo 健康食品 有効性 安全性 医薬品との相互作用] - 同文書院</ref><ref>{{PDFlink|[http://www.jsac.or.jp/bunseki/pdf/bunseki2007/200709kougi.PDF 講義「食品・サプリメントと医薬品との相互作用」]}} - 機関誌『ぶんせき』 2007年9月号 社団法人日本分析化学会</ref>。原因は明らかでないものの、[[トラゾドン]]とイチョウ葉エキスを摂取した高齢の[[アルツハイマー]]患者が、こん睡状態に陥った例も報告されている。利尿剤との併用により、高血圧を起こしたとの報告も1例ある<ref name="nhlw01"/><ref name="nlm01"/>。
 
== 都道府県・市区町村等の木 ==
=== 都道府県の木 ===
* [[東京都]]<ref name="woods"/> - [[東京都シンボルマーク|都のシンボルマーク]]はその形状から都の木であるイチョウの葉をデザインしたものと説明される<ref name="garden">[[#garden|川原田 2006]], p.35</ref>場合があるが、都では[[アルファベット]]の「T」が由来としておりイチョウの葉を由来とする説を明確に否定している。
* [[神奈川県]]<ref name="woods"/>
* [[大阪府]]<ref name="woods"/>
 
=== 市の木 ===
244 ⟶ 319行目:
=== かつて指定していた自治体(消滅) ===
* 北海道:檜山支庁爾志郡[[熊石町]]
.* 青森県:上北郡[[百石町]]、[[上北町]]
* 宮城県:[[古川市]]、栗原郡[[築館町]]、登米郡[[迫町]]、[[豊里町 (宮城県)|豊里町]]
* 秋田県:仙北郡[[六郷町 (秋田県)|六郷町]]、[[仙北町]]、[[仙南村]]
263 ⟶ 338行目:
 
=== 日本国外の自治体 ===
* [[大韓民国]] {{Flagicon|KOR}} 
** 道: [[京畿道]], [[全羅南道]], [[全羅北道]]
** 区: [[鍾路区]], [[永登浦区]], [[江南区 (ソウル特別市)]], [[江西区 (ソウル特別市)]], [[寿城区]], [[北区 (大邱広域市)]], [[富平区]], [[釜山鎮区]],
** 市: [[ソウル特別市]], [[城南市]], [[全州市]], [[広州市 (京畿道)]], [[軍浦市]], [[九里市]], [[烏山市]], [[安山市]], [[光明市]], [[蔚山広域市]], [[河南市]], [[春川市]], [[坡州市]], [[金泉市]], [[原州市]], [[華城市]], [[東海市 (江原道)]], [[金海市]], [[牙山市]], [[群山市]], [[馬山市]], [[泗川市]], [[栄州市]], [[慶山市]], [[安城市 (京畿道)]], [[永川市]],
** 郡: [[楊平郡]], [[星州郡]], [[昌寧郡]], [[襄陽郡]], [[鎮川郡]], [[曽坪郡]], [[高敞郡]], [[陰城郡]], [[醴泉郡]], [[宜寧郡]], [[咸平郡]], [[扶安郡]], [[高城郡 (江原道)]], [[康津郡]], [[固城郡]], [[河東郡 (慶尚南道)]], [[漆谷郡]], [[達城郡]]
 
272 ⟶ 347行目:
* [[北海道大学|北海道大学札幌キャンパス]]のイチョウ並木
* [[札幌市北3条広場|北海道庁前イチョウ並木]] - [[北海道庁旧本庁舎|旧道庁赤れんが]]前にあるイチョウ並木
* 日本一の[[北金ヶ沢のイチョウ]]([[青森県]][[深浦町]]) - 高さ約31m、幹回り22m、樹齢1000年以上。国の天然記念物。
* [[法量のイチョウ]](青森県十和田市)
* [[長泉寺の大銀杏]](岩手県久慈市)
* 今宮神社の大銀杏(栃木県さくら市氏家) - 推定樹齢700年。
* 茨城県立歴史館(水戸市) - 11月に「いちょうまつり」が開かれる。
* 東京・[[明治神宮外苑]][[聖徳記念絵画館]]前のイチョウ並木 - 11月~12月初旬に「神宮外苑いちょう祭り」が開かれる。
* [[東京大学本郷地区キャンパス|東京大学本郷キャンパス]]のイチョウ並木
* [[震災イチョウ]]([[大手町 (千代田区)|東京都千代田区大手町]])
* 東京都[[八王子市]]の[[甲州街道]]([[国道20号]]) - 約4kmには770本のイチョウが植えられている。11月に「八王子いちょう祭り」がある。
290 ⟶ 365行目:
** 一部は国の[[天然記念物]]に指定されている。葉が黄に色づく秋には[[ライトアップ]]されるイチョウも多い。
 
== その他文化 ==
特徴的な本種の葉に準え、様々なものが名付けられている。例えば、野菜を縦十文字に四つ割りにすることを[[銀杏切り]](いちょうぎり)という<ref name="Kojien"/>。また、末広の[[膳]]の足を'''銀杏脚'''(いちょうあし)、末広の[[下駄]]の歯を'''銀杏歯'''(いちょうば)という<ref name="Kojien"/>。
 
=== 髪型 ===
女性の髪の結い方で、[[髻]]<small>(もとどり)</small>を二分し、左右に曲げてそれぞれ輪を作り毛先を元結で根に結んだ髪型を[[銀杏返し]](いちょうがえし)と呼ぶ<ref name="Kojien"/>。この髪型は江戸中期から少女の髪形として行われ、明治以降は中年向きの髪形となった<ref name="Kojien"/>。また、[[島田髷]]の[[髷]]の先を銀杏の葉の形に広げたものを[[銀杏髷]](いちょうまげ、いちょうわげ)と呼び、この髷の中に[[浅葱色]]または紫の無地の[[ちりめん|縮緬]]を巻き込んだものを[[銀杏崩し]](いちょうくずし)と呼ぶ<ref name="Kojien"/>。ただし、銀杏髷は江戸時代の男性の髷である銀杏頭(いちょうがしら)のことを指すこともある<ref name="Kojien"/>。これは二つ折りにした髻の[[刷毛先]]を銀杏の葉のように広げたものである<ref name="Kojien"/>。[[武家]]の結い方で、髷の刷毛先を銀杏葉形に大きく広げた結い方を[[大銀杏]](おおいちょう)と呼び、現在では相撲で十両以上の力士が行う<ref>[[#Kojien|新村 2008]], p.357</ref>。
 
=== その他 ===
* [[三名城|日本三名城]]の一つ[[熊本城]]は、別名「'''銀杏城'''」と呼ばれている。
* [[イチョウハクジラ]]は一対の歯がイチョウの葉に似ている点から命名された。学名にもイチョウを指すginkgoが含まれている。
* かつて鹿児島本線で運行していた急行列車「[[有明 (列車)|ぎんなん]]」
* [[北九州市|北九州]] - 熊本間で運行している高速バス「[[ぎんなん号]]」
* 雄の[[オシドリ]] {{snamei||Aix galericulata}} ({{AUY|Linnaeus|1758}})の両脇の羽はイチョウの葉に似るため「銀杏羽(いちょうば)」と呼ばれる。
 
== イチョウの名を冠した生物 ==
* [[イチョウハクジラ]] {{snamei||Mesoplodon ginkgodens}} {{AUY|Nishiwaki and Kamiya|1958}} は一対の歯がイチョウの葉に似ている点から命名されたハクジラ。学名にもイチョウを指すginkgoが含まれている。
*[[ヤマノイモ|イチョウイモ]] は[[ナガイモ]] {{snamei||Dioscorea polystachya}} {{AU|Turcz.}} の一品種で、塊根がイチョウの葉形で扁平であることから名づけられた<ref name="Kojien"/>。
* [[イチョウウキゴケ]](イチョウゴケ) {{snamei||Ricciocarpos natans}} ({{AU|L.}}) {{AU|Corda}}は、[[ウキゴケ科]]に属する[[苔類]]で、葉状体がイチョウの葉に似る<ref name="Kojien"/>。
 
== 関連する作品 ==
301 ⟶ 387行目:
 
== 脚注 ==
{{Reflist|2}}
{{脚注ヘルプ}}
=== 註釈 ===
<references group="註"/>
=== 出典 ===
{{Reflist|30em}}
 
== 参考文献 ==
* {{cite book |first=Noah|last=Webster|author-link=ノア・ウェブスター|title=[[ウェブスター辞典|Webster's New Twentieth Century Dictionary of the English Language Unabridged Second Edition]]|publisher=[[:en:World Publishing Company|The World Publishing Company]]|date=1958|pages=772, 1086|ref=Webster}}
* {{cite book |和書|author=[[赤松良夫]]|chapter=大阪の街路樹|title=大阪の自然|editor=大阪自然科学研究会|publisher=六月社|page=41|date=1966-04-15|ref=Osaka}}
* {{cite book |和書|author=[[伊藤元己]]|title=植物の系統と進化|series=新・生命科学シリーズ|publisher=[[裳華房]]|date=2012-05-25|pages=129-134|isbn=978-4-7853-5852-5|ref=Phylogeny}}
* {{cite book |和書|author=巌佐庸・倉谷滋・[[斎藤成也]]・[[塚谷裕一]]|title=岩波生物学辞典 第5版|publisher=[[岩波書店]]|date=2013-2-26|pages=74, 1644|isbn=9784000803144|ref=iwanami}}
* {{Cite book |和書|author=梅本浩史|title=樹皮ハンディ図鑑|publisher=[[永岡書店]]|isbn=978-4-522-42665-4|page=90|date=2010-03-10|ref=bark}}
* {{cite book |和書|author=[[加藤雅啓]]|title=植物の進化形態学|publisher=[[東京大学]]出版会|date=1999-05-20|edition=初版|isbn=4-13-060174-1|page=65|ref=Molphology}}
* {{cite book |和書|author=[[加納喜光]]|title=動植物の漢字がわかる本|publisher=[[山海堂 (出版社)|山海堂]]|date=2007-1-10|page=119-120|isbn=9784381022004|ref=kanji-etym2007}}
* {{cite book |和書|author=[[加納喜光]]|title=植物の漢字語現辞典|publisher=[[東京堂出版]]|date=2008-06-20|page=214-215|isbn=978-4-490-10739-5|ref=kanji-etym2008}}
* {{cite book |和書|author=川原田邦彦|title=花色・仲間・落葉・常緑で引ける 庭木・植木図鑑|publisher=[[日本文芸社]]|date=2006-04-28|page=35|isbn=4537204389|ref=garden}}
* {{cite book |和書|author=[[小西友七]]・南出康世|title=[[ジーニアス (辞典)|ジーニアス英和辞典]] 第4版|publisher=[[大修館書店]]|date=2006-12-20|pages=834, 1182|ISBN=9784469041705}}
* {{cite book |和書|author=[[清水建美]]|title=図説 植物用語事典|publisher=八坂書房|date=2001-7-30|ISBN=4-89694-479-8|pages=23, 138}}
* {{cite book |和書|author=[[新潮社]] 編|title=新潮日本語漢字辞典|publisher=[[新潮社]]|edition=|date=2007-9-25|page=2298|isbn=978-4-10-730215-1|ref=Shincho}}
* {{cite book |和書|author=鈴木庸夫|title=葉 実 樹皮で確実にわかる 樹木図鑑|publisher=[[日本文芸社]]|date=2005|pages=114|isbn=4537203544|ref=trees}}
* {{cite book |和書|author=須藤彰司|title=カラーで見る世界の木材200種|publisher=[[産調出版]]|date=1997-01-10|edition=初版|pages=35, 37|isbn=4-88282-153-2|ref=woods}}
* {{cite book |和書|author=[[竹林滋]]・[[東信行]]・諏訪部仁・市川泰男 編|title=新英和中辞典|publisher=[[研究社]]|edition=第7版|date=2010-12|origdate=1967|page=759, 1094|ISBN=9784767410784|ref=NewCollege}}
* {{cite book |和書|author=[[藤堂明保]]・松本昭・[[竹田晃]]・[[加納喜光]]|title=漢字源|date=2007-01-10|origdate=1988-11-10|publisher=[[学研ホールディングス|GAKKEN]]|edition=改訂第5版|page=1636|isbn=9784053031013|ref=Kanjigen}}
* {{cite book |和書|author=[[新村出]]|title=[[広辞苑]] 第六版|publisher=[[岩波書店]]|isbn=9784000801218|date=2008-1-11|page=15|ref=Kojien}}
* {{cite book |和書|author=馬場多久男|title=葉でわかる樹木|publisher=[[信濃毎日新聞社]]|date=1999-12-10|pages=96|isbn=478409850X|ref=leaf}}
* {{cite book |和書|author=林弥栄|date=1985-09-01|title=山溪カラー名鑑 日本の樹木|publisher=[[山と溪谷社]]|page=7|isbn=4-635-09017-5|ref=yamakei}}
* {{Cite book |和書|author=林将之|date=2020-01-05|title=山溪ハンディ図鑑14 増補改訂 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1300種類|publisher=[[山と溪谷社]]|isbn=978-4-635-07044-7|page=45|ref=scan}}
* {{cite book |和書|author=邑田仁・米倉浩司|title=高等植物分類表|publisher=[[北隆館]]|date=2010-04-10|edition=重版|pages=18, 34, 104|isbn=9784832608382|ref=Taxa}}
* {{cite book |和書|author=[[矢頭献一]]|title=図説 樹木学 針葉樹編|publisher=[[朝倉書店]]|date=1964-12-20|pages=7-11|ref=conifer}}
 
== 関連項目 ==
310 ⟶ 423行目:
| species = Ginkgo biloba
}}
*[[銀杏祭]]
* [[イチョウハクジラ]]
* [[銀杏祭]]
 
== 外部リンク ==
* {{Hfnet|116|イチョウ}}
* {{PDFlink|[http://www.jsac.or.jp/bunseki/pdf/bunseki2007/200709kougi.PDF 食品・サプリメントと医薬品の相互作用]}} [[日本分析化学会]]
* {{PDFlink|[httphttps://www.j-poison-ic.or.jp/tebiki20070907.nsfreport/SchHyodai171030/891CB286909B5D74492567DE002B8995/$FILE/M70067.pdf ギンナンについて 2017年11月30日]}} [[日本中毒情報センター]]
 
{{DEFAULTSORT:いちよう}}