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'''携帯電話'''(けいたいでんわ、{{lang-en-short|mobile phone}})は、有線電話系通信事業者による[[電話機]]を携帯する形の[[移動体通信]]システム、[[電気通信役務]]。[[端末]]を'''携帯'''あるいは'''ケータイ'''と略称することがある。
 
[[有線通信]]の[[通信線路]]([[電話線]]など)に接続する[[基地局]]・端末の間で[[電波]]による[[無線通信]]を利用する。[[無線電話]](無線機、[[トランシーバー (無線機) |トランシーバー]])とは異なる。[[マルチチャネルアクセス無線]]技術の一種でもある。
 
{{see also|日本における携帯電話|#国・地域における携帯電話}}
 
== 定義 ==
携帯電話は、移動しながらの通話が可能な電話サービスである。[[無線通信]]機器の一種であり、[[電波]]によって情報のやり取りを行っている。携帯電話が発する電波の波長は20cm20センチ程度である。
 
世界的に狭義の「携帯電話」の範疇に入るものとしては、[[:en:Integrated_Digital_Enhanced_Network|iDEN]]などの[[第二世代携帯電話]]以降の規格を使っている[[第三者無線#デジタル方式|デジタルMCA無線]]などの[[移動体通信]]携帯端末や、[[無線局免許状|無線免許]]を要しないUnlicensed Personal Communications Services (UServices(U[[Personal Communications Service|PCS]]) や[[PHS]][[DECT]]などのいわゆる[[小電力無線局]]の携帯端末などがある。
 
日本の法令上は、{{いつから範囲|先行して登場した|date=2019年4月}}移動体通信システムである[[自動車電話]]からの流れで「携帯・自動車電話」という表現がなされていたが、{{いつから範囲|現在は|date=2019年4月}}「携帯電話」になっている<ref>郵政[[省令]](現 [[総務省]]令)[[無線設備規則]]、[[無線局免許手続規則]]、[[特定無線設備の技術基準適合証明等に関する規則]]の平成12年3月1日[[郵政省]]令による改正</ref>。
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=== 構想時代 ===
携帯電話の構想は、電話機が考案されてもないころからあった。電波を使用して無線で通信でき、かつ人間同士が音声にて会話することが夢として描かれていた。[[モールス符号]]を用いる無線電信機は携帯電話の元になる技術だが、実用化されても爆発的に普及するようになるものだとはこの時点では考えられていなかった。
 
また、携帯できる電話を開発する具体的な研究は古くから行われてきたが、電波の[[ノイズ]]の問題や[[二次電池|バッテリー]]の問題、また通信速度などの多くの問題により電話機が非常に大型になってしまうため、実現は難しかった。
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[[第二次世界大戦]]中に[[アメリカ軍]]が使用した[[モトローラ]]製の「[[Walkie Talkie]]」([[SCR-536]])が携帯電話の前身といわれる。しかし、これは回線を使用していない[[トランシーバー (無線機)|トランシーバー]]である。
 
戦後1946年には、アメリカの[[ベル・システム]]([[AT&T]]の子会社)は無線の電話回線サービスである[[:en:Mobile Telephone Service|MTS]]を開始した。これは、トランシーバーなどの[[無線電話]]が専用の無線回線を用いるのに対し、公衆の電話回線を用いることで、無線通信を一般向けのサービスにまで広げた。こうして、民間でも固定通信に加えて移動体通信サービスが利用可能となった。ただし、当時は人が日常的に携帯できるサイズの電話は技術的に実用化されておらず、車載電話機として設置できるものが小型化の限界であった。アメリカに続いて、ヨーロッパ各国でも同様のサービスが次々と始まった。この無線電話回線サービスは後に、より新しい携帯電話回線サービス(1G~ - 5G)と対比して、[[:en:Mobile radio telephone|0G]]と呼ばれるようになった([[レトロニム]])
 
接続が完全自動化された無線電話回線サービスは、スウェーデンの[[:en:MTD (mobile network)|MTD]]と呼ばれるもので、1956年にサービスが開始された。これらのサービスは実用性の面で一般に広く普及することは難しかったが、1971年にフィンランドで開始された[[:en:Autoradiopuhelin|ARP]]という0Gサービスは、[[移動体通信ネットワーク]]をはりめぐらせ、電波のカバレッジに途切れなく国中で使用でき、ユーザーに広く利用された最初の成功例となった。
 
=== 1960年 -70 1970年代:端末小型化への努力 ===
それ以前は車やバイク、その他の乗り物へ設置できるが、人が持ち運ぶには非実用的なサイズであった。[[1960年代]]になると、両手で持ちながら会話できる程度まで小さくすることが可能となったが、短時間の通話でも疲れてしまうほどに重かった。[[1970年代]]になると頑張れば片手で持てる程度の大きさまで小型化した。
 
[[1970年]]に[[大阪府]]で開催された[[日本万国博覧会]]では、'''ワイヤレスホン'''として後年で言うところのコードレスフォンが出展された<ref>[http://www.hct.ecl.ntt.co.jp/digitalarchives/03.html NTT技術史料館 ワイヤレスフォン]</ref>。これは数メートル程度しか電波が飛ばず、会場内で端末同士が通話できる機器であり、厳密には公衆の電話回線を利用する電話とは異なるものであった<ref>[http://tech.nikkeibp.co.jp/it/article/COLUMN/20101021/353297/ カケホーダイだった、40年前の携帯電話機]</ref>。
 
[[1973年]]4月3日、モトローラのエンジニアである[[:en:Martin Cooper (inventor)|Martin Cooper]]は実際の無線電話回線につなげて電話をかけることのできる世界で初めての手持ち可能な携帯電話を試作し、デモンストレーションを行った。このとき、彼は携帯電話開発のライバルであったベル・システム社の[[:en:Joel S. Engel]]へと電話をかけた<ref>[http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/2963619.stm A chat with the man behind mobiles]</ref>。この電話はコードレスで、重さ1.1kg1キロ、大きさ23×13×4.5cm5センチであり、一度の充電で30分間会話ができたが、再充電には10時間が必要であった<ref name="recharge">{{cite web|title=Martin Cooper-The Inventor of the Cell Phone|url=http://www.cellular.co.za/cellphone_inventor.htm|accessdate=23 March 2012}}</ref>。
 
=== 1970年代後半 -80 1980年代前半:実用化時代(車載電話) ===
[[1979年]]には、[[日本]]において[[第1世代移動通信システム]] (1G) (1G)を採用したサービスが世界で初めて実用化された。これは上述の0G よりも、速度やカバレッジにおいて新しい技術であった。ただし、これは車載電話機を使った[[自動車電話]]サービスで、現在の携帯電話とは異なるものである。[[1981年]]には[[バーレーン]]と[[スカンディナヴィア]]地域でもサービスを開始した。
 
なお、[[アメリカ合衆国]]では[[1978年]]に[[AT&T]]と[[モトローラ]]に対して実用化実験の許可が出ていたが、実現には至らなかった。遅れをった同国はモトローラによる当時の[[ロナルド・レーガン]][[アメリカ合衆国大統領|大統領]]への直訴も功を奏し、1981年に実用化がなされた。
 
1980年前後から事業として成立するようになり、一部の[[先進国]]で車載電話機(自動車電話)として携帯電話機の販売やサービスが開始された。当時は[[固定電話]]機と比較すると導入価格や通信費用はともに数十倍であるうえ、通信エリアも都市部に限定されていたため、ごく一部の限られたユーザーが導入するのみであった。
 
=== 1980年代半ばごろ:実用化時代(ポータブルタイプ) ===
車載型ではない[[ポータブル]]タイプとして、1983年にモトローラより発売された[[Motorola DynaTAC]]が世界初の市販の手持ちできる携帯電話である。
 
日本では、[[1985年]]にNTTが「[[ショルダーホン]]」を発売している。肩にかけて持ち運ぶもので、重量は3Kg3キロ<ref>http://history-s.nttdocomo.co.jp/list_shoulder.html</ref>だった。携帯電話と称したものは1987年にNTTから発売されており、体積は500cc、重量は900g900グラム<ref>http://history-s.nttdocomo.co.jp/list_mobile.html</ref><ref>『昭和55年 写真生活』(2017年、ダイアプレス)p108</ref>だった。
 
=== 1990年代:デジタル化・多機能化 ===
[[1990年代]]になると端末の普及が進み、本体に[[液晶ディスプレイ]]が搭載され始めた。また、1991年にフィンランドを皮切りに、日本でも1990年代半ばより[[第2世代移動通信システム]] (2G) (2G)サービスが始まり、通信方式が[[アナログ]]から[[デジタル]]へと移行した。通信規格として、ヨーロッパの[[GSM]]とアメリカの[[CDMA]]があった。これによって、[[着信音]]に好みの音楽が設定できる[[着信メロディ]]や、[[無線呼び出し|ポケットベル]]と連帯した[[メッセージサービス]]を利用できるようになった。
 
1999年には[[iモード]]が日本でスタートし、[[インターネット]]網への接続が可能となり、通信速度が向上し、画像や[[Java言語|Java]]を使用した[[携帯電話ゲーム|ゲーム]]などの利用が可能となった。
 
=== 2001年以降:3G時代(インターネットとの融合) ===
[[2000年代]]に入ると[[第3世代携帯電話]](3G) (3G)が登場する。[[2001年]]に世界に先駆け日本で3G (W3G(W-CDMA) CDMA)の商用サービスが始まった。[[テレビ電話]]が可能となったほか、[[パーソナルコンピュータ|パソコン]]と接続して高速なデータ通信が行えるようになった。また[[ラストワンマイル]]の問題が解決しやすいことから[[開発途上国|発展途上国]]でも爆発的に普及し始め、英調査会社 “Informa Telecoms & Media” の2007年11月29日(英国時間)の発表によれば、世界全体での普及率が5割に達した<ref>[http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0803/22/news006.html アジア太平洋地域の携帯電話市場、2008年には4億台超えへ――IDC調べ](「[[日経BP社]]」[http://itpro.nikkeibp.co.jp/index.html ITpro] 2007年11月29日閲覧)</ref>。こと[[アフリカ]]においては、固定インフラの整備が停滞している一方で携帯電話の普及率や[[潜在市場]]は膨大なものが予測されており、市場の急成長が注目を集めている<ref>[https://wirelesswire.jp/2011/01/34342/ アフリカ編(1)急成長するアフリカ携帯電話市場]([http://wirelesswire.jp WirelessWire News]2017年10月7日閲覧)</ref>が、その一方で[[電力]]インフラの整備が追いついていない地域では、携帯電話の利用に必須な[[電源]]として[[自動車]]の[[鉛蓄電池|バッテリー]]からや[[人力発電]]による「充電屋」のような商売も勃興している。
 
=== 2007年以降:スマートフォン時代 ===
{{main|スマートフォン}}
2007年からは[[携帯情報端末]](PDA)がさらに進化し、パソコンとの差異が処理能力などの差だけとなった、[[スマートフォン]]が普及している。先んじて1999年以降には一定の処理機能を備えたPDAに移動体端末の機能を複合させた延長的な製品は散発的に発売されいくつか存在していた<ref>[http://wired.jp/2010/11/02/「スマートフォンの進化」ギャラリー/ 「スマートフォンの進化」ギャラリー]WIRED2010.11.2</ref>が、2007年に発売された[[iPhone]]をきっかけにスマートフォンに注目が集まった(日本では[[2008年]]発売の[[iPhone 3G]]が初)が、当初はマニアや一部ビジネスマンを中心とする需要にとどまった。iPhoneに先んじて独自OSを搭載し一部の先進的機器に関心の高いユーザーを獲得していたいくつかのメーカーと、[[Google]]および[[Open Handset Alliance]]が開発した[[Android]]をOSとした様々さまざまなメーカー、[[マイクロソフト]]が開発する[[Windows Mobile]]やこれに続くWindowsを冠したOSを搭載した[[Windows Phone]](製造はいくつかの携帯電話メーカー)などが入り乱れる市場を形成し、[[2010年]]からは各キャリアからAndroidを搭載したスマートフォンの発売が相次ぐと、一般ユーザーからのスマートフォンに対する関心を集め爆発的な普及が始まり現在に至る。
 
ただユーザーの中には通信費用がより多くかかり操作がわかりにくくバッテリーの持ちが悪いなどスマートフォンに対する拒否感を抱いている層も存在し、日本の2015年現在においても従来型となる[[フィーチャーフォン]]への需要が存在する。ただフィーチャーフォンは端末が専用設計となるなどメーカーにとっては負担が大きいため、外見的にはフィーチャーフォンを踏襲しながら内部はスマートフォンのそれを流用する折衷型ともいえる機種([[ガラホ]])も登場している<ref>[http://www.rbbtoday.com/article/2015/05/16/131330.html 【木暮祐一のモバイルウォッチ】第75回 キーワードは「地方」!? ドコモとauが新発表した“ガラホ”の行方]RBB TODAY2015年5月16日</ref>。
 
2010年代には、3Gの発展形でさらに高速となった[[第4世代携帯電話]](4G) (4G)サービスが始まった。[[WiMAX]]方式はアメリカで、[[LTE]]方式はスカンジナビアで最初に利用可能となった。
 
2018-19年から2019年には、[[第5世代移動通信システム|第5世代携帯電話]](5G) (5G)サービスの運用が局所的に始まった。
 
== 携帯電話端末 ==
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=== 構成部位 ===
携帯電話の端末には、[[アンテナ]]、[[スピーカー]]、[[マイクロフォン|マイク]]と、これらを制御する[[電子回路]]と、入力のための暗い場所でも見やすいよう大体光るようになっているボタンと、電源があるが、機能の増加からパーツは増える傾向にある。最近の端末では[[ディスプレイ (コンピュータ)|ディスプレイ]]を搭載しており、[[液晶]]や[[無機EL]]、[[有機EL]]、[[発光ダイオード]]などさまざまな素材が利用されている。初期型の製品にはアンテナがほとんど露出していたが、2000年代中ごろに内蔵の機種が増え、現在のアンテナはほとんどが内蔵型である([[ワンセグ]]対応機種はテレビアンテナがいている)
 
=== 電源 ===
また電源も初期には[[一次電池]]が使われていたが、[[二次電池]]の発達により1990年代には[[ニカド電池]]および[[ニッケル・水素蓄電池]]が、2000年代は[[リチウムイオン電池]]が主流である。携帯電話端末本体が[[充電器]]の役割も兼ねており、二次電池の充電回路を搭載している。そのため外部電源を接続することで本体から電池を取り出さなくとも充電が可能である。機種によっては専用の充電用簡易スタンドが付属する場合があり、外部電源との接続が容易である。
 
外部電源としては[[ACアダプタ]]による[[直流電源]]が用いられる。家庭用電源を電源とし、3.7 - 5 [[ボルト (単位)|V]]程度に電圧を落として供給される。
 
=== 演算・記憶装置 ===
端末のデジタル化により、通信処理を司るベースバンドLSIを利用してコンピュータ化が進み、電話帳機能や発着信履歴の保存のために[[フラッシュメモリ]]による不揮発記憶装置による補助記憶領域も備えるようになった。このことで着信音にバリエーションを持たせることが可能となった。
 
さらに携帯電話で[[モバイルブラウザ]]を動かしたり、画像や音楽といった[[マルチメディア]]データを扱うようになると、ベースバンドLSIとは独立した[[CPU]]が搭載されるようになった。補助記憶装置の必要性はさらに増し、内蔵の補助記憶装置のみでは容量不足となった。そのため2000年代に入ると外部に[[メモリーカード]]の[[拡張スロット|スロット]]を設け、外部メモリへの記録も可能とした。初期では[[SDメモリーカード|SDカード]]や[[メモリースティック]]が用いられていたが、端末に占める容積が大きかったため[[miniSDカード]]や[[microSDカード]]、[[メモリースティックDuo]]などの携帯電話に特化したメモリーカードが開発された。
 
このような外部メモリのスロットはおもに端末の下部や側面部などに設けられていたが、近年発売されているmicroSD対応端末においては頻繁な交換を想定せず、バッテリスペースの内部に設けられている機種もある。
 
=== 機能 ===
通常の通話機能と[[ショートメッセージサービス|SMS]]程度の単機能のみの機種から、[[携帯情報端末]] (PDA) (PDA)を凌ぐ多機能な機種まで、さまざまな製品が存在する。高機能機種の中には、内蔵する[[オペレーティングシステム]]の機能を利用者に開放し、利用者自身で[[プログラム (コンピュータ)|プログラム]]を追加したり開発したりできるものもあり、[[スマートフォン]]と呼ばれる。
 
日本では、高機能(高価)な機種でも[[インセンティブ (携帯電話)|インセンティブ]](販売報奨金)により安価に流通させるビジネスモデルがとられたため、高機能機種が広く普及している。また[[大韓民国|韓国]]の携帯電話も高機能機種が多いことで知られる。その他の国では、回線契約と端末の分離により端末の価格が機能に比例することや、[[コンテンツ]]サービスが発展途上であり必ずしも高機能な端末が必要とされないことなどから、安価で基本的な機能の端末にも根強い人気がある。
 
[[カメラ付き携帯電話]]が登場し、[[カメラ]]機能を利用した画像解析機能により[[QRコード]]や[[JANコード]]が読み取れるようになった。特にQRコードは大容量の文字データを格納することができるため普及した(参考:[[携帯機器]])
 
=== デザイン ===
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携帯電話は、その発展の歴史において、初期には小型化・軽量化に主眼が置かれていた。しかし、ある程度手軽な形状が実現して、[[カメラ]]やインターネット閲覧、[[おサイフケータイ]]、防水、太陽充電、ワンセグといった付加機能が製品差別化の要素となった。日本では[[パステルカラー]]の携帯電話が多く見られるが、海外ではシルバーや黒といった地味な色の物が多い。詳細については[[日本における携帯電話#端末]]も参照されたい。
 
携帯電話業界の競争激化とともに、ユーザーへの大きな吸引力となる端末のデザイン・機能開発について各メーカーがしのぎを削っている。しかし、手に持つ・[[テンキー]]で電話をかけるといった機能を維持する共通条件のもとで、その差別化は容易ではなく、[[タッチパネル]]や[[ジャイロセンサー]]の採用など現代最先端の技術を用いている。
 
現代の携帯電話は、おおむね「ストレート式」「折りたたみ式」「スライド式」の3種の形状に大別できる。主流ではないが、「フリップ式」「2軸ヒンジ式」「回転式」なども存在した。
 
; ストレート式
: 携帯電話の基本形。操作部と表示画面がひとかたまりの延べ棒状になっている。表示画面がそのまま外に露出しているため傷つきやすい。また、表示画面の大型化に伴って肥大化しつつあり、コンパクト化が難しい。折り畳み式やスライド式が普及したため、ストレート式の機種は急速に減少した。
; 折り畳み式
: 携帯電話が多機能化するに従い表示画面が大型化し、ストレート式では平面形も大きくなりがちであること、また、操作部と表示画面を未使用時に保護する観点から、本体中ほどにヒンジを設け二つ折りにできるようにしたものである。ストレート式より厚くなる傾向だったが、のちの技術革新により、二つ折りでも非常に薄い製品が登場した。
: 折り畳み式は画面や操作部を保護できる反面、ヒンジや折り畳みの支点で双方の情報をやり取りするケーブルがストレスを受けるため断線しやすく、折り畳みの可動範囲を超えて強く曲げると折れる可能性がある。また、閉じた状態だと電話やメールの着信時に発信者をひと目で確認できないことや、開閉動作が必要なため操作を素早く開始できない、短時間で頻繁に使用していると開閉が煩わしいなどの欠点がある。
: これらの欠点を改良するため、背面にサブディスプレイを備えた機種や、両手を使って液晶を開かなくても側面のボタンを押すとバネの力で液晶が開く機構を搭載した機種などが登場した。
; スライド式
: レールによって直線状に水平スライドする開閉方式。本体が上層の液晶部と下層の操作部の二層に分かれており、液晶部をスライドさせることで操作部内側にある操作キーを露出させる。折り畳み式と違い表示部が表面に露出しており、スライドしなくても基本機能が使えるものが多い。
: ストレート式や折り畳み式よりも表示部が大きく設計できる、しかもコンパクトにできる、折り畳み式と異なり片手で容易に開閉できる、等などの利点がある。反面、ストレート式と同様表示部が傷つきやすく、スライド機構のスペース分下層部のボタンが小さくなることが多い。また、スライドさせるときにボタンを押してしまい、意図しない動作をさせてしまうこともある。
: 十字キー/メニューキーなどが液晶部に、テンキーが操作部に別れて搭載されている機種と、下層の操作部にすべてのキーが搭載されている機種がある。
: 前者は、閉じていても基本操作ができる、折り畳み式と同じ大きさのキーにできる利点がある。反面、スライド時に意図しない動作を招きやすい。後者は、より薄型にできる、十字キー/メニューキーとテンキーが同一面に並んでいるため、十字キーとテンキーの間で指の行き来がしやすい利点がある。反面、スライド機構の分だけ操作部の面積が狭いのでためキーが小さく、正確なキー操作が必要になる欠点がある。
: きわめて少数ではあるが、横長で短辺が上下にスライドし、テンキーより文字入力に適している[[QWERTY配列]]のボタンを搭載した機種もあり、インターネット閲覧やメールなどのヘビーユーザをターゲットにしている。
; フリップ式
: ストレート式の派生型として、操作キー部分だけが折りたたみ式カバーで覆われ、使用時にはカバーを開ける「フリップ式」と呼ばれるタイプもあるが、折り畳み式の普及以降、そうした製品は少ない。
; 2軸ヒンジ式
: 折り畳み式の派生型として、回転軸を2軸にして、縦方向に開くだけでなく横方向への回転も可能にしたのが「2軸ヒンジ式」である。画面を横向きに回転できるのは、ワンセグや動画の視聴時の快適性や、カメラ撮影時にデジカメのような操作性の実現を狙ったものである。縦、横、利用シーンに適した開き方を選択できる。
; 回転式
: スライド式同様に水平面内でスライドする。スライド式のような上下方向の直線的なスライドではなく、テンキー部上部の軸を中心に水平回転するのが「回転式」。[[SO505i]](docomo,SONY)(docomo、SONY)や[[A5305K]](au,(au、京セラ)等)などで採用されている。SONYでは、「180°スタイル(ワン・エイティ スタイル)」、京セラでは「リボルバースタイル」と呼称された。
; スライド+回転式
: 回転式よりさらにマイナーな形状として、縦方向の直線的スライドと、水平回転を組み合わせた方式も存在した。docomo [[F-09A]]で採用されている。
 
第3世代以降は、インターネットブラウザのパソコン風表示やメール、[[ワンセグ]]などを大画面で閲覧できるように16:9の画面比率であるほか、横向きに傾けると横画面表示に切り替わる機能が形を問わず普及している。
 
=== ソフトウェア ===
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==== OS ====
よく使われている[[オペレーティングシステム]](OS)としては、[[Symbian OS]]([[シンビアン]])、[[REX OS]]/[[BREW]]/[[Brew MP]] ([[クアルコム]]) 、[[ITRON]]/[[T-Engine]](TRONプロジェクト)がある。その他には、[[OS-9]]、[[Nucleus RTOS]]、China MobileSoft、MIZI、SavaJeがある。[[Linux]]カーネルをベースとしたOS (OS([[MontaVista Linux]]、[[T-Linux]]) もある。
 
各メーカーがOS-9やNucleus RTOS、iTRONなどの[[RTOS]]から、Symbian OSやLinuxなど[[モバイルオペレーティングシステム|携帯電話向け汎用OS]]の採用に動いているのは、3Gの到来とともに、その開発[[コスト]]が高騰しているからである。端末の高機能化が進み、ソフトウェア規模が巨大化してきているため、限られたハードウェアで動作させる組み込み用途を想定したRTOSでは、開発環境、ミドルウェア調達など、コスト面で不利な点が多くなってきている。「RTOSは通信制御を受け持ち、ユーザインターフェースやアプリケーションの動作は汎用OSが担当する」というハイブリッドOS実装もあるが、2つのOSを協調動作させることには難しい点も多く、リアルタイム性能を高めた汎用OSへ集約される傾向にある。
 
OSと、その上層のミドルウェアを端末メーカ各社で共通化したプラットフォームとして、NTTドコモは、[[MOAP]]や[[オペレータパック]]を開発した。OS部分にはSymbian OSかLinuxを用いる。それまで、端末メーカ各社が自社で携帯電話用のインターフェース、ミドルウェアなどを開発してきたが、共通プラットフォームによって開発コストの抑制、開発速度の向上が図れる。
を開発した。OS部分にはSymbian OSかLinuxを用いる。それまで、端末メーカ各社が自社で携帯電話用のインターフェース、ミドルウェア等を開発してきたが、共通プラットフォームによって開発コストの抑制、開発速度の向上が図れる。
 
同様にKDDIはクアルコムのREX OS、およびBREW、Brew MPをそれぞれ母体に、[[KCP]](2005夏モデル - 2015年春モデルまで)、[[KCP+]](2007年冬モデル - 2011年夏モデルまで)、[[KCP3.x]](2010年夏モデル - 2014年冬モデルまで)という共通プラットフォームを開発した。
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|}
 
2018年第1四半期の世界スマートフォンおよび携帯電話の販売台数は4億55005,500万台であった。そのうち、スマートフォン販売台数は3億84008,400万台弱となり、携帯電話販売台数の84%を占めた(米国調査会社[[ガートナー]]調べ)。
 
国際的に端末を供給しているのは以下の企業である。国名は本社所在地であり、[[2018年]]の端末販売台数順に並べてある(米国調査会社[[ガートナー]]調べ)。上位10社で約87%のシェアを持つ。
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携帯電話での音声伝送方式は、当初はアナログ方式を採用しており途中からデジタル方式へと切り替えられた。当初サービスが開始された時点でのアナログ方式での通信は、[[暗号]]化されずにそのまま送信されていたため、ノイズが乗りやすいだけでなく、傍受が容易に行えるという欠点があった。そのため、強固な暗号化が可能なデジタル化が行われた。
 
国によってはそのころ、[[固定電話]]網もアナログ方式からデジタル方式 ([[ISDN]]) への切り替えが進んでいたが、固定電話網のデジタル方式は[[パルス符号変調]] (PCM) (PCM)であるのに対し、携帯電話網の方はより圧縮度の高い音声[[コーデック]](おも [[Adaptive Multi-Rate|AMR]] 形式)を使用している。両電話網の相互接続通話の際には、アナログ方式同士ならば単純だが、デジタル方式では(アナログ・デジタル併存の時期を含め)コーデック変換が、網関門交換機において必要である。
 
また、音声コーデックの方式は携帯電話事業者やサービス種別によって異なるため、事業者相互・方式相互の音声コーデック変換も必要となる。このため、コーデックの組み合わせによっては変換ロスにより、音声の品質が劣化してしまう。基本的には、同一事業者・同一方式の携帯電話同士の通話では変換によるロスは起こらないため、本来の通話品質を発揮できる。
 
=== 通信 ===
当初の携帯電話には通話機能しかかったが、[[音声通話]]のデジタル化により端末全体がデジタル化し、これにより[[パケット通信]]によるデジタルネットワークへの接続が可能となった。デジタルネットワークの中でも、世界的に普及しているインターネットへの接続が早くから行われ、携帯電話でインターネット網にアクセス出来できるようになった。[[クライアント (コンピュータ)|クライアント]]化である。
 
これにより携帯電話を対象にした[[ウェブページ]]が携帯電話会社から[[公式サイト (携帯電話)|公式サイト]]として設立されたり、また個人でインターネット上に携帯電話を対象にした[[勝手サイト]]と呼ばれるサイトが開設されるようになる。さらに携帯電話の高速通信化により、通信機能を利用して携帯電話で金銭の管理を行う[[モバイルバンキング]]や[[オンライントレード]]も行えるようになっただけでなく、[[動画]]コンテンツの閲覧も可能となった。
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|}
 
[[第一世代携帯電話]] (1G) (1G)はアナログ方式。モトローラの[[TACS]]や[[日本電信電話|NTT]]の[[NTT大容量方式|HiCAP]]などがある。
 
[[第二世代携帯電話]](以下2G)はGSM方式が世界的に主流となっている。日本と韓国および北朝鮮では、GSMは採用されていない。日本では [[PDC]] (Personal(Personal Digital Cellular) Cellular)という独自の方式が主流だったため、独自の端末やサービスが普及する一方、海外端末メーカーの参入や国際[[ローミング]]サービスが進まず[[鎖国]]的状態にあった。韓国では、アメリカの[[クアルコム]] (Qualcomm) (Qualcomm)社の[[cdmaOne]] (IS(IS-95) 95)という方式を全面的に採用し、[[サムスン電子]]や[[LG電子]]などが国際的に飛躍する基となった。北米は[[欧州連合|EU]]とは異なり、政府は携帯電話事業者に技術の選択について強制せず、各社の選択に委ねた。結果として、GSMとcdmaOneがほぼ拮抗しているのが現状である。
 
[[第三世代携帯電話]](以下3G)は、2Gが各国・各地域で独自の方式、異なる周波数を採用し、全世界での同一方式の利用が出来できなかった反省を踏まえ、第三世代携帯電話の規格、[[IMT-2000]]の決定においては、携帯電話を全世界で利用できるようにするための指標が立てられた。しかし、規格策定の過程で、[[W-CDMA]]と[[CDMA2000]]が並行採用という形となり、GSM陣営は[[W-CDMA]]へ、cdmaOne陣営は[[CDMA2000]]へ移行することとなった(南北アメリカ・[[アジア]]地域の一部)。[[中華人民共和国|中国]]政府は、自己技術育成の観点から独自の[[TD-CDMA #TD-SCDMA(MC)|TD-SCDMA]]を導入しようとしている。また3G技術の[[特許]]代に関し、「クアルコム」の[[ライセンス]]価格が高すぎるとして、Qualcommと電話機ベンダー(販売会社)、[[チップセット]]ベンダー数社の間で、現在係争中である。
 
日本では[[NTTドコモ]]、[[ソフトバンクモバイル]]がW-CDMAを採用し、国際ローミングや海外メーカー参入が促進されている。[[KDDI]] ([[Au (携帯電話)|au]]) は2GはcdmaOne方式のためCDMA2000方式を採用している。ただし、日本のcdmaOneおよび[[CDMA2000]]は、[[極超短波|UHF]]テレビ放送波との[[干渉 (物理学)|干渉]]回避のため、上りと下りの[[周波数]]が他国と逆転している。このため[[グローバルパスポート]]CDMA端末以外では国際ローミングができない。
 
先進国やcdmaOne陣営のほとんどは3Gの導入が済んでいるが、GSM陣営では、ユーザーがより安価なGSM端末を好む傾向もあるため、コストがかかるW-CDMAへの移行は進んでいない。安価なGSM端末は、高価なW-CDMA端末より人気がある。スマートフォンなどの高価なGSM端末でも、電池の軽量化を図って消費電力の多いW-CDMAやCDMA2000などの3Gには対応しない端末もある。またGSMでも[[EDGE]]や[[EDGE Evolution]]を用いて3G並みの高速なデータ通信ができる。
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発展途上国では、固定電話網の未整備を補完し、低価格でデータ通信網込みで広域エリア化するために、最初からCDMA2000技術を400MHz帯に使った[[CDMA450]]による3Gネットワークの導入なども行われている。
 
2006年の世界携帯電話販売台数における比率は、GSMがおおよそ7割弱、CDMA (cdmaOneCDMA(cdmaOne + CDMA2000) CDMA2000)がおおよそ2割強、W-CDMAは1割弱である。
 
[[第3.9世代移動通信システム]]では、日本は4社とも[[Long Term Evolution|LTE]]方式を採用する。
 
=== 料金形態 ===
料金は音声通話の場合は通話時間、データ通信の場合は通信時間またはデータ量で算出されるのは国際的に共通である。[[プリペイド]](前払い)、ネットワークを自前で持たない[[仮想移動体通信事業者]] (MVNO) (MVNO)によるサービスもある。
 
プリペイドの場合、基本料金はないが、最後に入金してからの経過日数によって有効期限が定められているため、使用頻度が低くても定期的に入金する必要はある。EUは、全般にプリペイド比率が高い。
 
アメリカなどでは、音声通話は一定時間まで定額であるのが一般的である。また、夜9時以降および週末の通話は無料になる契約が多い。その反面、一般的に、電話をけた側だけでなく、受けた側も通話料が発生する。
 
== ビジネスモデル ==
2007年現在、世界の携帯電話で使用される通信方式は[[GSM]]が約7割を占めている。GSMでは、音声通話サービスはもとより、データ通信サービスの仕様までもが、ほぼ共通化されている。また、技術的には、[[SIMカード]]を交換することにより、通信事業者を変えることが可能である。このため、端末メーカは最初に世界共通モデルを開発して、必要な場合にだけ、小規模の特定事業者向けのカスタマイズをするのが主流である。
 
海外ではひとつの機種でもメーカーの出す業界標準の機能のみを搭載している「スタンダードバージョン」とキャリア独自のサービスを付加したものの2種類販売されている。前者はSIMロックがかかっていないため通信方式が同じなら世界中どこでも利用できる。後者はインセンティブ制度のもと、SIMロックがついて販売されている。この辺の事情は日本と同じであるが、インセンティブの額は、日本は突出して大きい。
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== 健康への影響 ==
[[WHO]](世界保健機関)の一部である[[国際がん研究機関|IARC]](国際がん研究機関)は2011年5月31日、発がん性リスクをランク分けする表([[IARC発がん性リスク一覧]])の中で、「携帯電話の使用」を、5段階中、上から3番目のGroup2Bのカテゴリーに入れたと発表した(Group2Bは、ヒトに対する発癌性が疑われるグループである)<ref>[http://www.iarc.fr/en/media-centre/pr/2011/pdfs/pr208_E.pdf IARC CLASSIFIES RADIOFREQUENCYELECTROMAGNETIC FIELDS ASPOSSIBLY CARCINOGENIC TO HUMANS] WHO</ref><ref>[http://www.carcinogenesis.com/article.asp?issn=1477-3163;year=2011;volume=10;issue=1;spage=18;epage=18;aulast=Kovvali Cell phones are as carcinogenic as coffee] Journal of Carcinogenesis  Gopala Kovvali</ref>。
 
また、[[心臓ペースメーカー#電磁波・医療機器の影響|心臓ペースメーカー]]使用者への携帯電話、スマートフォンの発する電磁波による誤作動などの影響が警鐘されている。
 
== その他の用途 ==
携帯電話の多機能性を活用して通信以外の用途へ使用する研究がすすみつつある。満足な医療が受けられない地域では可搬式の診断装置としての応用が進められる<ref>Zhu, Hongying, et al. "[https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3263930/ Optofluidic fluorescent imaging cytometry on a cell phone.]" Analytical chemistry 83.17 (2011): 6641-6647.</ref><ref>Mobile phone-based biosensing: An emerging "diagnostic and communication" technology.
</ref><ref>Wei, Qingshan, et al. "[https://pubs.acs.org/doi/full/10.1021/nn505821y Imaging and sizing of single DNA molecules on a mobile phone.]" ACS nano 8.12 (2014): 12725-12733.</ref><ref>Roda, Aldo, et al. "Integrating biochemiluminescence detection on smartphones: mobile chemistry platform for point-of-need analysis." Analytical chemistry 86.15 (2014): 7299-7304.</ref>。