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改稿ほぼ完成
DMCAのノートご指摘を受け、クリントンとP2Pの箇所を加筆
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|amendments=なし (著作権法等を改正するための法律であり、本法自体は改正の対象とならない)
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'''デジタルミレニアム著作権法''' (デジタルミレニアムちょさくけんほう、{{Lang-en-short|The Digital Millennium Copyright Act}}、略称: '''DMCA''') は、[[アメリカ合衆国]] (米国) で1998年10月に制定・施行された[[連邦法]]であり{{Efn2|[[WIPO著作権条約]]および[[WIPO実演・レコード条約]]の発効まで、DMCAの一部条文も施行保留の条件付きとなっているものの、DMCAの大半は[[ビル・クリントン|クリントン大統領]]が承認署名した1998年10月28日に即時施行となっている{{R|USCO-EffectiveDate}}。なお、これら2条約はDMCA施行の2年前に署名されたものの、各国の[[批准]]手続を待つ必要があり、実際に条約が発効されたのはDMCA成立から4年後の2002年である{{R|WCT-WIPO-Summary|WPPT-WIPO-Summary}}。}}、[[合衆国法典]] 第17編に収録された[[著作権法 (アメリカ合衆国)|著作権法]] (17 U.S.C.) などを改正する立法である{{R|Cornell-Summary}}。[[デジタル著作権管理]] (DRM) の強化を目的とし、DMCA成立によって17 U.S.C. 第12章が新設されて、[[コピーガード]]を始めとする{{仮リンク|技術的保護手段の回避禁止|label=技術的保護手段の回避が禁止|en|Anti-circumvention}}されたほか{{R|Cornell-Summary|OLRC-T17}}。また、17 U.S.C. 第512条によって{{仮リンク|ノーティスアンドテイクダウン手続|en|Notice and take down}} ({{Lang|en|notice and takedown}}){{Efn2|name=NTD|DMCAのnotice and takedown (take down、またはnotice-takedown-putbackと綴ることも) は「ノーティスアンドテイクダウン手続」(日本の[[総務省]]){{Sfn|総務省WG|2011|p=1}}、「DMCA通知」([[Amazon Web Services]]){{R|AWA}}、「DMCA通告」(オンラインメディア [[TechCrunch]]){{R|TC-DMCA-2008}}などがあり、呼称は統一されていない。}}が規定され、著作権侵害コンテンツがウェブサイトなどに投稿された際の通報 ({{Lang|en|notice}}) と削除 ({{Lang|en|takedown}}) 手順および免責条件が明文化された{{R|Cornell-Summary}}。
 
制定当時、著作物の無断デジタル複製やインターネットを介した海賊版流通などが増加傾向にあり{{Sfn|山本|1999|pp=1–4}}、このような技術的・社会的な変化を受けて、国際的には[[WIPO著作権条約]] (WCT) と[[WIPO実演・レコード条約]] (WPPT) の2条約が1996年に署名された{{R|WCT-WIPO-Summary|WPPT-WIPO-Summary}}。これら国際条約で謳われた義務を国内履行すべく米国はDMCAを成立させ{{R|USCO-ExecSummary}}、世界に先駆けて法対応を強化した{{Sfn|山本|1999|pp=1–4}}。その背景には、[[アメリカ合衆国の映画|ハリウッド映画業界]]を始めとするコンテンツビジネス事業者からの政治的圧力があったとされる{{Sfn|Berkman Center|2013|pp=10–11}}。
 
しかしDMCAによって著作権者により強力な支配権を与えたことから、著作物の利用者側に元来認められている表現の自由 ([[権利章典 (アメリカ)#修正第1条|憲法修正第1条]]) や利用の自由 ([[フェアユース]]) とのバランスが損なわれたとの批判も強い{{R|FSC}}{{Sfn|Thurtle|2005|p=1059}}。その結果、DMCA以降も米国内ではデジタル社会に対応した改正法案が複数提出されるも、廃案となる事態が繰り返された{{Efn2|[[Stop Online Piracy Act]] (オンライン海賊行為防止法案 (略称: SOPA)、2011年廃案)、[[PROTECT IP Act]] (知的財産保護法案 (略称: PIPA)、2012年廃案) なども参照のこと。}}。
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DMCA 第1章 (WIPO著作権並びに実演・レコード条約実施法) により、17 U.S.C. に第12章が新設され、技術的保護手段の回避が禁止された{{R|ImplAct-Cornell}}。ここでの「技術的保護手段」({{Lang|en|technological measures}} あるいは {{Lang|en|technological protection measures}}、略称: TPM) であるが、具体的には[[暗号化]]などを指しており、無断で著作物を複製・頒布・利用されないよう、著作者や著作権者の利益を保護するために開発された技術である{{R|TPM-Kluwer}}。TPMに関する規定はWCTおよびWPPTの2条約にも盛り込まれている{{R|TPM-Kluwer}}。
 
[[File:P2P-network.svg|thumb|[[P2P]]の概念図。集中サーバーを介さず、個人のパソコン間で通信できる分散型システムであるが海賊版流通を加速させた。]]
音楽業界を例に挙げると、もともと家庭用録音機を使って容易に楽曲をダビングできる状態であったところに、デジタル社会が到来して[[Peer to Peer]] (P2P) ネットワークを介して個人間でファイルシェアし、[[リッピング]]によって個人のパソコンなどに楽曲を取り込んで無料で鑑賞できるようになった{{Sfn|Thurtle|2005|pp=1058–1059}}。このような分散型ネットワーク技術が進展した結果、集権的なネットワーク管理が困難なことから、取り締まりの法制度も刷新する必要があった。またP2Pのようなシステムは、一般個人が低コストで不正コンテンツを世界中に大量拡散する土壌となっていた{{R|Okamura1999}}。これによって打撃を受けた音楽業界が米国政府に働きかけ、DMCA 第1章 (17 U.S.C. 第12章) が成立したと言われている{{Sfn|Thurtle|2005|pp=1058–1059}}。
 
楽曲の[[コピーコントロールCD]]を始めとする、複製・頒布保護をかけたコピーコントロールTPMは著作権法上、合法とされている{{R|Smartcopying}}。そして17 U.S.C. 第12章の新設によって、このようなTPMを回避する行為 (海賊版の輸入を含む) は著作権侵害であると明文化された{{Sfn|Thurtle|2005|p=1059}}。ここでの「技術的手段の回避」とは、「著作権者の許諾なく、スクランブルがかかっている著作物のスクランブルを解除し、暗号化された著作物の暗号を解除し、またはその他技術的手段を回避し、迂回し、除去し、無効にしもしくは損壊すること」と定義づけられている (17 U.S.C. 第1201条(a)(3)(A)){{Sfn|米国著作権法 日本語訳 (2016年時点)|2018|loc=第1201条 (a)(3)(A)}}。第1201条によると、直接TPM回避を行った本人だけでなく、回避ツールを第三者に提供した者も違反とされる。さらに、TPMで暗号化された楽曲がたとえ[[パブリックドメイン]] (著作権の保護期間が切れて公有の状態) に帰していても、暗号化を解除したとの理由でやはり第1201条違反とみなされる可能性がある{{R|Duke-DMCA}}。違反者は刑事罰の対象となり、初犯の場合は最大で懲役5年および50万ドル以下の罰金が科される場合がある{{R|Gurdian-EFF}}。
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=== 米国内 ===
[[File:BillClinton1999.jpg|thumb|DMCA成立翌年 (1999年) [[アメリカ合衆国映画|ハリウッド映画業界]]と親密な関係にあったとされるクリントン大統領 (DMCA成立翌年の1999年に撮影)]]
DMCA成立の前史は、民主党[[ビル・クリントン|クリントン]]第1期政権下の1995年に始まっており、この年にデジタル著作物の権利保護に関する白書が作成されると、1998年までにはDMCAのほか、[[情報窃盗]]の刑事罰を規定した1997年の{{仮リンク|電子窃盗禁止法|en|No Electronic Theft Act}} ({{Lang|en|No Electronic Theft Act}}、通称: NET法) や著作権保護期間を延伸させた1998年の[[著作権延長法|ソニー・ボノ著作権延長法]]が成立し、17 U.S.C. が改正されている。これらの改正立法の背景には、著作権ビジネス (コンテンツビジネス) 業界からの[[ロビイング]]があったとされる。データキャッシュ、ウェブホスティング、検索エンジンやオンラインデータベース事業者に対し、ウェブサイトに投稿された著作権侵害コンテンツの削除と保護強化を訴えたのである{{Sfn|Berkman Center|2013|pp=10–11}}。なお、二大政党制の米国においては特に[[民主党 (アメリカ)|民主党]]に対し、コンテンツビジネスの一翼を担うハリウッド映画業界からの政治的圧力が強いことが知られている{{Sfn|Berkman Center|2013|pp=10–11}}。その中でも特にクリントンは個人的なポップカルチャーファンであり、大統領選第1期目の選挙戦期間中には既にハリウッド業界擁護の姿勢を打ち出し、ハリウッドから民主党に多額の寄付金が流れた{{R|Clinton-Reuters}}{{Efn2|大統領選は1992年に投票日を迎えているが、その前年の1991年には既に寄付金集めが始まっており、累計で民主党が1800億ドル、共和党には260億ドルがハリウッドから流れている。ただしクリントン候補個人への寄付には法的制約があることから、名目的には党が寄付先として指定されている{{R|NYT1996}}。}}。
 
こうして1998年に成立したDMCAであるが、主に2つの側面から批判を浴びることとなる。それは、(1) [[表現の自由]]を保障する[[権利章典 (アメリカ)#修正第1条|憲法修正第1条]]、そして (2) [[フェアユース|フェアユースの法理]]を定めた17 U.S.C. [http://uscode.house.gov/view.xhtml?req=granuleid:USC-prelim-title17-section107&num=0&edition=prelim 第107条] (著作権者に無断で著作物を第三者が利用できる条件規定) を根拠にしたものである{{R|FSC}}{{Sfn|Thurtle|2005|p=1059}}。
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=== 日本 ===
TPM回避禁止に関し、[[著作権法|日本国著作権法]]では第30条 第1項に例外規定が存在する。これは個人や家庭内といったごく限られた範囲で使用される私的複製、および図書館や教育機関など公益性の高い用途での複製に限定しており、これらがTPMを回避しても、著作権者らに経済的損失を与えづらいと考えられているためである{{R|DRM-Bunka}}。また、コンピュータ・プログラムの著作物に関しは、バックアップないしバージョンアップといった目的での複製についてはTPM回避の違法性に抵触しないと一般的には解されているが、やはり著作権者らの経済的損失の有無が合法・違法の線引き基準となっている{{R|DRM-Bunka}}。
 
ノーティスアンドテイクダウン手続に類似する日本の法律としては、[[プロバイダー責任制限法]]がある。プロバイダー責任制限法の専門家ワーキンググループ会合が総務省主催で開催されており、2011年の同会合では日本のプロバイダー責任制限法と米国のノーティスアンドテイクダウン手続を比較している。その上で、ウェブサイトの運営者に対して「『とりあえず削除』のインセンティブを高めてしまうのではないか」との懸念が呈されており、日本に同様の法制度を導入することへの慎重論が展開された{{R|Soumu-WG05-05|Soumu-WG05-Top}}。
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; {{仮リンク|ユニバーサル・シティ・スタジオ他対ライマーズ他裁判|en|Universal City Studios, Inc. v. Reimerdes}} ({{Lang|en|Universal City Studios v. Reimerdes}} (111 F. Supp. 2d 348 (S.D.N.Y. 2000))
: DVDの暗号化を解除してウェブサイト上で動画をシェアしたとして、映画製作会社が著作権侵害の集団訴訟を起こした事件である{{R|DeCSS-CaseText|DeCSS-Wired|FSC|Duke-DMCA}}。動画ウェブサイトに使用されたのは[[DeCSS]]と呼ばれる解除プログラム (CSS ([[Content Scramble System]]) をコードするプログラム) であり、ノルウェー出身の[[ヨン・レック・ヨハンセン]] ({{Lang|nr|Jon Lech Johansen}}、通称: DVD-Jon) が10代半ばにして開発したものである{{R|NYT-DVDJon}}。被告はショーン・C・ライマーズ ({{Lang|en|Shawn C. Reimerdes}}{{Efn2|苗字のReimerdesには複数の発音が存在し、「ライマーズ」{{R|Reimerdes-YouTube}}の他、「リマディーズ」{{R|Reimerdes-HTP}}とするものもある。}}) など複数人である{{R|DeCSS-CaseText|DeCSS-Wired|FSC|Duke-DMCA}}。ライマーズは「dvd-copy.com」のサイト運営者であり、またこれに類似する「ackdown.com」や「ct2600.com」なども同様に、業界団体である[[アメリカ映画協会 (業界団体)|アメリカ映画協会]]から批判を受けていた{{R|DeCSS-Wired}}。被告らは「DeCSSは[[Linux]]を搭載したパソコンなどの端末上でDVDを閲覧するために開発された」として、暗号解読による著作権侵害の意図を否定する抗弁を展開した{{R|Duke-DMCA}}。しかしながら米国連邦裁はこれを認めず、2000年に著作権侵害であると判示した{{R|DeCSS-CaseText|DeCSS-Wired|FSC|Duke-DMCA}}。
 
: しかしなところ2000年の米国判決から3年後、DeCSS開発者のDVDヨンはノルウェーの裁判で無罪判決を受けている。当時のノルウェーは米国DMCAのようにハッキングやデジタル海賊版流通に対する法的規制を行っていたものの、米国ほど合法・違法の線引きが明確でなかったことから、ノルウェーひいては欧州でどのような判決となるか注目を集めた。DVDヨンは自身のLinuxコンピュータ上でDVD視聴する目的でDeCSSを使用したと主張し、オスロ地方裁も「DVDの映画を合法的に購入した者は、それを閲覧する権利を有する」としてDVDヨン無罪と判示した{{R|NYT-DVDJon}}。
 
; {{仮リンク|アメリカ合衆国政府対エルコム裁判|en|United States v. Elcom Ltd.}} ({{Lang|en|United States v. Elcom Ltd.}} (203 F. Supp. 2d 1111 (N.D. Cal. 2002))
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<ref name=NGOsPetition2017>{{Cite web |url=https://www.liberties.eu/en/news/delete-article-thirteen-open-letter/13194 |title=Article 13 Open letter – Monitoring and Filtering of Internet Content is Unacceptable |trans-title=原案第13条 (可決版17条) に関する公開質問状 - インターネット上のコンテンツ検閲とフィルタリングは容認できない |publisher=The Civil Liberties Union for Europe |date=2017-10-16 |accessdate=2019-09-21 |language=en |quote="''The letter was signed by 57 human rights and digital rights organisations.''", "''Article 13... would be impossible to respect without the imposition of excessive restrictions on citizens' fundamental rights.''"}}</ref>
 
<ref name=Clinton-Reuters>{{Cite web |url=https://www.reuters.com/article/us-usa-election-hollywood/in-the-battle-for-hollywood-endorsements-and-cash-clinton-rules-idUSKCN0XN2Q8 |title=In the battle for Hollywood endorsements - and cash - Clinton rules |trans-title=ハリウッドからの支持と支援金を巡る争いをヒラリー・クリントンが制す |first1=Lisa |last1=Richwine |first2=Grant |last2=Smith |publisher=[[ロイター通信]] |date=2016-04-27 |accessdate=2020-07-24 |language=en |quote="''Clinton's support in Hollywood can be traced back to strong ties her husband built during his first presidential campaign in 1992...'',"''Bill Clinton connected deeply with Hollywood, she said, in part because “he showed a real respect for and appreciation of pop culture. He followed it, and he enjoyed it.”''" (仮訳: 「ヒラリー・クリントンとハリウッドの蜜月関係は夫ビル・クリントンの第1期大統領選さなか1992年に構築したとされる」「選挙参謀の一人、Donna Bojarskyはビル・クリントンとハリウッドの親密な関係の要因の一つとして『ビルはポップカルチャーに真の敬意を払っており、流行を追い、鑑賞していた』と証言している」)}}</ref>
 
<ref name=NYT1996>{{Cite web |url=https://www.nytimes.com/1996/09/12/us/a-hollywood-production-political-money.html |title=A Hollywood Production: Political Money |trans-title=ハリウッド製作: 政治資金 |first=Leslie |last=Wayne |date=1996-09-12 |publisher=[[New York Times]] |accessdate=2020-07-25 |language=en}}</ref>
 
<ref name=Okamura1999>{{Cite journal |url=https://www.law.co.jp/okamura/copylaw/bbcc04.pdf |title=インターネット時代の著作権問題 |journal=BBCC (新世代通信網実験協議会) 季刊誌 |issue=16 |date=1999-01 |author=岡村久道 (サイバー法弁護士、近畿大学産業法律情報研究所講師) |publisher=英知法律事務所 (BBCC掲載文を筆者所属事務所が転載) |format=PDF}}</ref><!-- 論文PDFのリンク一覧はこちら https://www.law.co.jp/link/copy_draft.htm -->
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