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{{Otheruses||その他の名称|眠れる森の美女 (曖昧さ回避)}}
{{Infobox バレエ |名称 = 眠れる森の美女<br />{{unicode|Спящая красавица}}
|画像 = Tamara-Vadin2.jpg
|説明 = オーロラ姫([[タマラ・ロホ|T・ロホ]])とデジレ王子({{仮リンク|ワディム・ムンタギロフ|label=V・ムンタギロフ|en|Vadim Muntagirov}})の[[パ・ド・ドゥ]](2012年)
|pxl =
|版 = プティパ版
|構成 = プロローグ付き3幕{{Sfn|デブラ・クレイン、ジュディス・マックレル|2010|p=361}}
|振付 = [[マリウス・プティパ|M・プティパ]]
|作曲 = [[ピョートル・チャイコフスキー|P・チャイコフスキー]]
|編曲 =
|台本 = M・プティパ
|美術・衣装=
|美術 = M・ボチャーロ
|衣装 = I・フセヴォロシスキー{{Sfn|デブラ・クレイン、ジュディス・マックレル|2010|p=361}}
|設定 =
|初演 = [[1890年]]1月15日<br />([[ユリウス暦|ロシア旧暦]]1月3日)<br />[[マリインスキー劇場]]
| 初演会場 =
| 初演バレエ団=
|主な初演者= <small>【オーロラ姫】</small>[[カルロッタ・ブリアンツァ|C・ブリアンツァ]]<br /><small>【デジレ王子】</small>[[パーヴェル・ゲルト|P・ゲルト]]<br /><small>【リラの精】</small>マリヤ・プティパ<br /><small>【カラボス】</small>[[エンリコ・チェケッティ|E・チェケッティ]]
|分類 =
}}
{{External media
| width = 300px
| topic = '''バレエ『眠れる森の美女』(抜粋)'''<br />[[ロイヤル・バレエ団|英国ロイヤル・バレエ団]]による上演
| audio1 = [https://www.youtube.com/watch?v=ZSDkn77_OOc プロローグより カラボスの入場]
| audio2 = [https://www.youtube.com/watch?v=qqejv_BQ7Zg 第1幕より ローズ・アダージョ]
| audio3 = [https://www.youtube.com/watch?v=Jfi2g_sFkqQ 第2幕より パ・ダクション]
| audio4 = [https://www.youtube.com/watch?v=omIZgkAPsPU 第3幕より 長靴をはいた猫と白い猫]
[[ロイヤル・オペラ・ハウス]]公式YouTubeより
}}
『'''眠れる森の美女'''』(ねむれるもりのびじょ、{{lang-ru-short|''Спящая красавица''}}, {{lang-fr-short|''La Belle au bois dormant''}}, {{lang-en-short|''The Sleeping Beauty''}})は、[[ピョートル・チャイコフスキー]]が作曲した[[バレエ音楽]]([[作品番号|作品]]66)、およびそれを用いた[[バレエ]]作品である{{Sfn|音楽之友社|1993|p=84}}。日本語では『'''眠りの森の美女'''』と呼ばれることもある。1890年、[[サンクトペテルブルク]]の[[マリインスキー劇場]]で初演された{{Sfn|デブラ・クレイン、ジュディス・マックレル|2010|p=361}}。
本作は、[[シャルル・ペロー]]による[[説話|昔話]]『[[眠れる森の美女]]』を原作としている{{Sfn|デブラ・クレイン、ジュディス・マックレル|2010|p=361}}。[[バレエ#クラシック・バレエ|クラシック・バレエ]]を代表する作品の一つであり、同じくチャイコフスキーが作曲した『[[白鳥の湖]]』『[[くるみ割り人形]]』と共に「3大バレエ」とも呼ばれている{{Sfn|ダンスマガジン編集部|1999|p=34}}。
==上演史==
===チャイコフスキー以前の同名バレエ===
シャルル・ペローによる昔話『眠れる森の美女』を題材としたバレエは、19世紀前半に[[パリ・オペラ座バレエ|パリ・オペラ座]]で2回制作されている{{Sfn|渡辺真弓|2014|p=37}}。一度目は[[1825年]]に上演された同名の[[オペラ]]で、作中にバレエ・シーンが挿入されており、{{仮リンク|ピエール・ガルデル|en|Pierre Gardel}}が振付を担当した{{Sfn|小倉重夫|1989|pp=98-99}}。二度目は[[1829年]]に上演されたバレエで、振付は{{仮リンク|ジャン=ルイ・オーメール|en|Jean-Louis Aumer}}、音楽は[[フェルディナン・エロルド]]が手掛け、[[リーズ・ノブレ]]や[[マリー・タリオーニ]]といった当時の人気[[バレリーナ]]が出演したが、[[1840年]]の上演を最後にオペラ座のレパートリーから外れている{{Sfn|渡辺真弓|2014|p=37}}{{Sfn|小倉重夫|1989|pp=98-101}}<ref>{{Cite journal |和書|author=譲原 晶子 |title=バレエ・パントマイムの時代の『眠れる森の美女』 |date=2011-3 |url=https://cuc.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=2345&item_no=1&page_id=13&block_id=37 |journal=千葉商大紀要 |volume=48 |issue=2 |pages=45 }}</ref>。
===創作の経緯===
[[File:Ivan A. Vsevolozhsky.jpeg|right|thumb|120px|{{仮リンク|イワン・フセヴォロシスキー|en|Ivan Vsevolozhsky}}]]
[[File:Sleeping beauty cast.jpg|thumb|250px|『眠れる森の美女』初演キャスト(1890年)]]
[[1888年]]5月、[[サンクトペテルブルク]]の[[マリインスキー劇場]]支配人であった{{仮リンク|イワン・フセヴォロシスキー|en|Ivan Vsevolozhsky}}は、チャイコフスキーに手紙を書き、ペローの昔話『眠れる森の美女』に基づくバレエ音楽の作曲を依頼した{{Sfn|渡辺真弓|2014|p=37}}。[[外交官]]として[[パリ]]に駐在していたこともあるフセヴォロシスキーは、文化的見識が深く、[[フランス]]文化を愛好する人物であった{{Sfn|音楽之友社|1993|p=84}}{{Sfn|渡辺真弓|2014|p=37}}。『眠れる森の美女』は、当時フランスで上演されていた{{仮リンク|夢幻劇|en|Féerie}}と呼ばれる大衆向け[[演劇]]において、最も人気の高い演目であった{{Sfn|鈴木晶ほか|2012|p=66}}。
また、[[ロシアの歴史#ピョートル1世以降のロシア帝国|当時のロシア]]では、[[1881年]]に起きた[[アレクサンドル2世暗殺事件 (1881年)|皇帝アレクサンドル2世の暗殺事件]]以降、[[ロシア皇帝|皇帝]]による[[ツァーリズム|専制政治]]が強化されていた{{Sfn|村山久美子|2001|p=6}}。そのような中でフセヴォロジスキーは、ペローが生きた[[ルイ14世]]時代のフランスと当代のロシアを重ね合わせ、皇帝を賛美する豪華絢爛なバレエを上演しようとしたのである{{Sfn|鈴木晶ほか|2012|p=66}}{{Sfn|村山久美子|2001|p=6}}{{Sfn|村山久美子|2018|p=45}}。
フセヴォロシスキーはチャイコフスキーに宛てた依頼の手紙で、「私はペローの童話『眠れる森の美女』のバレエ台本を書きました。この作品の時代背景をルイ14世のスタイルにし、装置はミュージカル・ファンタジー風に、音楽的な色彩は[[リュリ]]や[[ラモー]]の[[バレ・ド・クール|宮廷バレエ]]様式風なものを採用して下さい。私は終幕にペローの童話集から(中略)[[長靴をはいた猫]]、[[赤頭巾]]、[[シンデレラ]]、[[ドーノワ夫人|オーノワ夫人]]の作品から{{仮リンク|青い鳥 (ドーノワ夫人)|label=青い鳥|en|The Blue Bird (fairy tale)}}なども登場させたいのです」と書いている{{Sfn|音楽之友社|1993|p=85}}。チャイコフスキーはしばらく返信をしなかったが、フセヴォロジスキーから同年8月に再度手紙が送られてくると、まだ台本を受け取っていないが内容には興味を持っている、という趣旨の返事を書いた{{Sfn|森田稔|1999|p=158}}。その数日後、チャイコフスキーはフセヴォロジスキー宛に、「やっと『眠れる森の美女』の原稿が届きました。(略)私は言いようもなく、感嘆し、魅了されました。(略)私が作曲するのにこれ以上良いものは望めません」と熱狂的な手紙を書き、作曲を承諾した{{Sfn|森田稔|1999|p=158}}。
バレエの振付は、マリインスキー劇場の首席バレエマスターであり、フセヴォロシスキーと協力して本作の台本も手掛けていた[[マリウス・プティパ]]が担当することになった{{Sfn|渡辺真弓|2014|p=37}}{{Sfn|小倉重夫|1997|p=246}}。作曲は1888年の秋から開始され、途中に何度か中断を挟みながらも、翌1889年の夏には全曲が完成した{{Sfn|森田稔|1999|pp=158,163-164}}。作曲に当たり、プティパはチャイコフスキーに対して指示書きを手渡し、各場面の楽曲の雰囲気や[[テンポ]]、[[小節]]数などを細かく指定したが、チャイコフスキーはそのすべてを厳密に守ったわけではなく、指定された小節数を超えて作曲した部分もある{{Sfn|小倉重夫|1997|p=246}}{{Sfn|渡辺真弓|2014|pp=37-38}}{{Sfn|森田稔|1999|pp=195-197}}。また、作曲が完了した後も、プティパが振付を進めていく過程で、楽曲には随時修正が加えられた{{Sfn|森田稔|1999|pp=197-198}}。
===初演===
[[File:Krasavitsa.jpg|thumb|250px|『眠れる森の美女』初演。第3幕のオーロラ姫([[カルロッタ・ブリアンツァ|C・ブリアンツァ]])とデジレ王子([[パーヴェル・ゲルト|P・ゲルト]])]]
[[1890年]]1月15日([[ユリウス暦|ロシア旧暦]]1月3日)、マリインスキー劇場において、バレエ『眠れる森の美女』が初演された{{Sfn|渡辺真弓|2014|p=38}}。主要キャストは、オーロラ姫が[[カルロッタ・ブリアンツァ]]、デジレ王子が[[パーヴェル・ゲルト]]、リラの精がマリヤ・プティパ(振付家プティパの娘)、カラボスと青い鳥の二役が[[エンリコ・チェケッティ]]であった{{Sfn|渡辺真弓|2014|pp=39-40}}。上演時間は4時間半で、舞台美術・衣装をはじめとする制作費には膨大な予算がつぎ込まれ、帝室劇場でもっとも費用がかかったバレエとして評判になった{{Sfn|デブラ・クレイン、ジュディス・マックレル|2010|p=361}}{{Sfn|鈴木晶ほか|2012|p=66}}{{Sfn|森田稔|1999|p=187}}。
初演前日の[[ゲネプロ]]を鑑賞した[[アレクサンドル3世|皇帝アレクサンドル3世]]の感想は、ただ一言「とても可愛らしい」というもので、チャイコフスキーは日記に「皇帝陛下は僕を非常に軽くあしらった」と記している{{Sfn|森田稔|1999|pp=186-187}}{{Sfn|小松佑子|2017|p=329}}。初演に対する貴族や批評家の反応は冷淡なものが多かったが、観客からの支持は公演を重ねるごとに高まり、ついにはチケットが売り切れるまでになった{{Sfn|森田稔|1999|pp=187-188}}。その後も本作はマリインスキー劇場のレパートリーとして上演され続け、初演から6年後の1896年には、[[ミラノ]]の[[スカラ座]]で初の国外上演も行われた{{Sfn|森田稔|1999|pp=208-210}}{{Sfn|渡辺真弓|2014|p=40}}。
===改訂演出===
チャイコフスキーが作曲した3つのバレエ作品(『[[白鳥の湖]]』、『眠れる森の美女』、『[[くるみ割り人形]]』)は、いずれも初演以降、多数の改訂演出が発表されてきた{{Sfn|キーワード事典編集部|1995|p=106}}。そのうち『眠れる森の美女』は、改訂演出であってもプティパによる原振付を尊重している場合が多く、他の2作に比べると後世における改変の度合いは少ない{{Sfn|キーワード事典編集部|1995|pp=109-110}}{{Sfn|ダンスマガジン編集部|1998|p=116}}。以下、いくつかの改訂演出を挙げる。
===
[[File:Lydia Lopokova as Aurora in The Sleeping Beauty.jpg|thumb|150px|バレエ・リュス全幕版に主演した[[リディア・ロポコワ|L・ロポコワ]]]]
[[1921年]]11月から翌年2月にかけて、[[セルゲイ・ディアギレフ]]率いる[[バレエ・リュス]]は、[[ロンドン]]で、『眠れる森の美女』全幕を『眠り姫』(''The Sleeping Princess'')のタイトルで上演した{{Sfn|渡辺真弓|2014|pp=43-44}}。従来のバレエ・リュスは新作バレエを中心に上演しており、本作のような全幕の古典バレエはレパートリーに入っていなかったが、この頃は新作を発表できる振付家が不在であったことと、ディアギレフがチャイコフスキーの傑作を西欧へ紹介したいという思いを抱いていたことから、上演の運びとなった{{Sfn|渡辺真弓|2014|pp=43-45}}{{Sfn|鈴木晶|1994|p=187}}。振付を手掛けたのは、{{仮リンク|ニコライ・セルゲエフ|en|Nicholas Sergeyev}}と[[ブロニスラヴァ・ニジンスカ]]である{{Sfn|渡辺真弓|2014|pp=43-44}}。セルゲエフはマリインスキー劇場の元舞台監督で、ロシアから亡命した際に、プティパ版『眠れる森の美女』の[[振付師#振付の記録・舞踊譜|舞踊譜]]を持ち出していた{{Sfn|渡辺真弓|2014|pp=43-44}}。ニジンスカはその舞踊譜を元に、[[マイム]]で演じられていた場面をダンスに置き換えたり、新たな振付を追加したりといった改変を加えた{{Sfn|渡辺真弓|2014|p=44}}。また、[[レオン・バクスト]]が豪華な舞台美術をデザインし、出演者も一流のダンサーが揃えられた{{Sfn|渡辺真弓|2014|p=44}}。
にもかかわらず本作は、バレエ・リュスに前衛的な作品を期待していた人々の支持を得ることができず、観客からも批評家からも不評であった{{Sfn|鈴木晶|1994|p=190}}。公演は当初予定していた上演期間の終了前に打ち切られ、ディアギレフは多額の借金を背負い、衣装や舞台美術もすべて差し押さえられた{{Sfn|渡辺真弓|2014|p=44}}{{Sfn|鈴木晶|1994|p=190}}。しかしこの公演は、イギリスに『眠れる森の美女』を紹介し、後の[[ロイヤル・バレエ団]]による全幕上演のきっかけを作った点や、ニジンスカが振付家として本格的に活動する契機となった点で、後のバレエ史に影響を与えている{{Sfn|渡辺真弓|2014|p=45}}。なお、バレエ・リュスは1922年5月に『眠れる森の美女』の抜粋版である『オーロラ姫の結婚』を制作して[[パリ・オペラ座]]で初演し、その後はこの抜粋版をレパートリーとして上演し続けた{{Sfn|渡辺真弓|2014|p=45}}。
====マリインスキー・バレエ====
プティパ版を初演した[[マリインスキー・バレエ]]では、初演以後、本作の改訂が度々行われてきた。[[1922年]]の{{仮リンク|フョードル・ロプホーフ|en|Fyodor Lopukhov}}版では、プロローグで踊られる「リラの精の[[ヴァリアシオン (バレエ)|ヴァリアシオン]]」を従来よりも高度な振付に変更したり、第3幕の「オーロラ姫のヴァリアシオン」の楽曲を、プティパが初演時に用いた「金の精の踊り」からチャイコフスキーのオリジナル曲に戻したりといった改変が行われた{{Sfn|赤尾雄人|2010|pp=26-27}}。[[1952年]]に初演された{{仮リンク|コンスタンチン・セルゲエフ|en|Konstantin Sergeyev}}版は、現在に至るまで長く踊り継がれている演出であり、1989年にはセルゲエフ自身による再改訂が行われ、全体をプティパの原振付により近づける試みがなされた<ref>{{Cite web|url=https://www.mariinsky.ru/en/playbill/repertoire/ballet/spkras2/ |title=The Sleeping Beauty |publisher=[[マリインスキー劇場]] |accessdate=2021-05-07}}</ref>{{Sfn|渡辺真弓|2014|p=41}}。また[[1999年]]には、{{仮リンク|セルゲイ・ヴィハレフ|en|Sergei Vikharev}}によって、プティパによる初演版の復元上演が行われた{{Sfn|渡辺真弓|2014|p=41}}。
===
今日上演されている『眠れる森の美女』の多くはプティパ版を改訂したものであるが、物語設定を大きく変更し、現代的に再解釈した演出もある。オーロラ姫を[[薬物依存症]]という設定にした[[マッツ・エック]]版(1996年)や、ペローの原作に登場する[[オーガ|人食い鬼]]の挿話を加え、性や暴力といったテーマを描き出した[[ジャン=クリストフ・マイヨー]]版(2001年)などが挙げられる<ref>{{Cite web |author=Judith Mackrell |date=1999-8-23 |url=https://www.theguardian.com/culture/1999/aug/23/artsfeatures.edinburghfestival |title=Sleeping Beauty is a junkie |publisher=[[ガーディアン]] |accessdate=2021-4-28}}</ref>{{Sfn|渡辺真弓|2014|p=47}}<ref>{{Cite web |url=https://www.wowow.co.jp/detail/114512/-/01 |title=モンテカルロ・バレエ団「ラ・ベル」 |website= WOWOWオンライン|publisher=[[WOWOW]] |accessdate=2021-4-28}}</ref>。
==物語==
===原作===
バレエ『眠れる森の美女』の原作は、[[シャルル・ペロー]]による同名の[[説話|昔話]]([[1697年]]出版)である{{Sfn|デブラ・クレイン、ジュディス・マックレル|2010|p=361}}{{Sfn|シャルル・ペロー|2013|p=5}}。原作のあらすじは以下の通りである{{Sfn|シャルル・ペロー|2013|pp=8-23}}。なお、バレエでは、王女と王子が結婚に至る前半部分の筋書きのみが用いられ、後半の人食い鬼の挿話は省略されている{{Sfn|ダンスマガジン編集部|1998|p=113}}。
[[File:La Belle au Bois Dormant - Sixth of six engravings by Gustave Doré.jpg|right|thumb|230px|ペロー『眠れる森の美女』の[[挿絵]]([[ギュスターヴ・ドレ|G・ドレ]]画、1897年)]]
昔々、とある国で王女が生まれ、国中の[[妖精|仙女]]たちが[[洗礼式]]に招待されたが、ただ一人、年老いた仙女だけが招かれなかった。年老いた仙女は宴の席に現れると、王女はいずれ[[紡錘]]に刺されて死ぬだろう、と[[呪い]]をかける。しかし、ある若い仙女がその呪いを和らげ、姫は死ぬのではなく100年の眠りにつくだけだと[[予言]]する。成長した王女は予言の通り、紡錘で手を刺して眠りに落ちる。100年後、眠る王女の噂を聞いた若い王子が城を訪れると、王女は目を覚まし、2人は結婚する。
王女と王子の間には2人の子供が生まれ、[[やがて王子は国王の座に就いた]]。しかし、新国王の母親にあたる女王は[[オーガ|人食い鬼]]であり、国王の留守中に王妃と孫たちを食べてしまおうと目論んでいた。女王は、王妃たちを殺して調理するよう[[シェフ|料理頭]]に命じるが、料理頭は母子3人を自宅に匿い、代わりに動物の肉を女王に食べさせる。だが、ほどなく女王は王妃と孫たちが生きていることを知り、料理頭共々[[死刑]]にしようとする。死刑執行人が[[ヒキガエル科|ヒキガエル]]や[[毒蛇]]の入った桶を用意し、そこに王妃たちを投げ込もうとしたちょうどその時、国王が帰還する。悔しがった女王は自ら桶の中に飛び込み、死んでしまった。
===主な登場人物===
*オーロラ姫 - フロレスタン国王夫妻の間に生まれた王女。
*カラボス - 悪の妖精。オーロラ姫に死の呪いをかける。
*[[ライラック|リラ]]の精 - 善の妖精。カラボスの呪いを弱め、オーロラ姫を眠りにつかせる。
*デジレ王子 - オーロラ姫と結婚する王子。
===あらすじ===
演出によって物語の展開に相違があるが、あらすじは概ね次のような内容である{{Sfn|ダンスマガジン|2008|pp=54-55}}{{Sfn|長野由紀|2003|p=150}}{{Sfn|長野由紀|2020|pp=26-27}}。
====プロローグ====
{| style="float:right;"
|-
|[[File:Uspavana lepotica, Balet SNP, Drago kamenje, foto Polzović.jpg|right|thumb|220px|プロローグ 6人の妖精たち]]
|[[File:KC Ballet Sleeping Beauty Cincinnati Ballet 2010 088 (24354957634).jpg|right|thumb|160px|邪悪な妖精カラボス]]
|}
[[フランスの歴史#ブルボン朝|17世紀のフランス]]を思わせる[[宮殿|王宮]]。フロレスタン国王夫妻の間にオーロラという姫君が誕生し、[[洗礼式]]が行われている。式には6人の[[妖精]]たちが招かれており、姫に「優しさ」「勇気」「のんき」などの様々な美質を授ける。最後にリラの精が贈り物をしようとしたとき、悪の妖精カラボスが現れる。カラボスは自分が祝宴に招かれなかったことに怒り狂い、「オーロラ姫は16歳の誕生日に、[[紡錘]]に刺されて死ぬだろう」と呪いをかける。嘆き悲しむ宮廷の人々に、リラの精は「カラボスの呪いを消し去ることはできないが、弱めることはできる。姫は死ぬのではなく眠りにつき、100年後に王子の[[口づけ]]によって目覚めるだろう」と予言する。
====第1幕====
[[File:KCB Sleeping Beauty PRESS--31 (33721399316).jpg|right|thumb|220px|第1幕 オーロラ姫]]
オーロラ姫の16歳の[[誕生日]]。美しく成長した姫の元には求婚者たちが訪れており、姫は4人の求婚者と踊る。その直後、姫は見知らぬ老婆から花束を受け取り、その中に仕込まれていた紡錘で指を刺して倒れてしまう。老婆に変装していたカラボスは正体を現すと、勝ち誇ったように去っていく。そこへリラの精がやってきて、オーロラ姫は予言通りに眠りについたのだと告げる。リラの精は、魔法でその場にいる全員を眠らせるとともに、辺りに植物を茂らせて城全体を包み込む。
====第2幕====
100年後。デジレ王子の一行が森へ[[狩り]]にやってくるが、王子は狩りを楽しめず、物思いに沈んでいる。そこへリラの精が現れ、オーロラ姫の幻影を王子に見せると、王子は姫の美しさの虜となる。王子はリラの精に導かれて城へ辿り着き、口づけによって姫を目覚めさせる。
====第3幕====
[[File:KCB Sleeping Beauty PRESS- (32949361843).jpg|right|thumb|220px|第3幕 オーロラ姫の結婚式]]
オーロラ姫とデジレ王子の結婚式が盛大に催されている。式には、[[宝石]]の精や、様々な[[童話]]の主人公たちが招かれており、[[長靴をはいた猫]]と白い猫、[[赤ずきん|赤ずきんと狼]]、{{仮リンク|青い鳥 (ドーノワ夫人)|label=フロリナ王女と青い鳥|en|The Blue Bird (fairy tale)}}などがそれぞれ個性的な踊りを披露する。人々が祝福する中、オーロラ姫とデジレ王子が[[パ・ド・ドゥ#グラン・パ・ド・ドゥ|グラン・パ・ド・ドゥ]]を踊り、物語は幕を閉じる。
===演出による違い===
『眠れる森の美女』の改訂演出は、プティパによる原振付を尊重したものが多い{{Sfn|ダンスマガジン編集部|1998|p=116}}。演出によっては一部の場面を削除することがあり、例えば、禁じられた糸紡ぎを隠れて行っていた人々が処罰される場面(第1幕)、狩りの場面(第2幕)、童話の主人公たちの踊りの一部(第3幕)等がなくなることはあるが、全体の構成が大きく変更されることは稀である{{Sfn|ダンスマガジン編集部|1998|p=116}}。
{| style="float:right;"
|-
|[[File:ShipulinaTutu.jpg|right|thumb|100px|リラの精の[[チュチュ (バレエ)|チュチュ]]]]
|[[File:BakstCarabosse.jpg|right|thumb|200px|[[レオン・バクスト|L・バクスト]]によるカラボスのデザイン画]]
|}
その中で演出による違いが表れやすいのは、[[善]]の[[象徴]]であるリラの精と、[[悪]]の精カラボスの描き方である{{Sfn|ダンスマガジン編集部|1998|p=116}}。リラの精は、[[薄紫]]色の[[チュチュ (バレエ)|チュチュ]]を着た女性ダンサーが[[トゥシューズ]]で踊るのが一般的であるが、踊らずに[[マイム]]のみで演じられる場合もある{{Sfn|ダンスマガジン編集部|1998|p=116}}{{Sfn|キーワード事典編集部|1995|pp=110-111}}。カラボスはさらに演出の幅が広く、初演版のように男性が演じる場合もあれば、チュチュとトウシューズを身に着けた女性ダンサーが踊る場合や、女性がマイムで演じる場合もある{{Sfn|キーワード事典編集部|1995|pp=110-111}}{{Sfn|ダンスマガジン編集部|1998|pp=116-117}}。これらの演じ方の組み合わせによって、カラボスとリラの精を全く異なる姿にしたり、逆に[[鏡像]]のように見せたりと、善と悪の対比が様々な形で表現される{{Sfn|長野由紀|2020|p=27}}。
==作品の特徴==
[[File:KCB Sleeping Beauty PRESS--30 (33721399546).jpg|right|thumb|230px|第1幕 ローズ・アダージョ]]
本作は、単純な筋書きのおとぎ話を題材としながらも、[[バレエ#クラシック・バレエ|クラシック・バレエ(古典バレエ)]]の様式美を体現した豪華絢爛な作品として知られる{{Sfn|長野由紀|2020|p=27}}。本作の振付家である[[マリウス・プティパ|プティパ]]は古典バレエの確立者とされているが、彼の作品の特徴は、物語の筋書きよりも純粋な舞踊を見せることに重点が置かれており、かつ、作品全体が明確な形式構造に基づいていることである{{Sfn|鈴木晶ほか|2012|pp=68-69}}{{Sfn|守山実花|2004|pp=47-48}}。『眠れる森の美女』は、プティパがこの古典バレエの様式を完成させた作品であり、作品全体に、[[コール・ド・バレエ]]や、童話の登場人物などによる多様な踊り(ディヴェルティスマン)、主役2人による[[パ・ド・ドゥ#グラン・パ・ド・ドゥ|グラン・パ・ド・ドゥ]]等が秩序立って配置され、[[古典主義]]的な調和が作り出されている{{Sfn|守山実花|2004|pp=48,102-109}}。また、本作の物語も古典主義的な世界観に基づいており、悪の精カラボスの死の呪いによってもたらされた混沌が、善の精リラによって再び調和へと導かれる様が描かれている{{Sfn|村山久美子|2018|p=45}}{{Sfn|長野由紀|2003|pp=163-166}}。
本作の主役であるオーロラ姫を演じる[[バレリーナ]]には、安定したテクニックと、王女らしい華やかさが求められる{{Sfn|ダンスマガジン編集部|1998|p=117}}{{Sfn|ダンスマガジン|2008|p=55}}。特に、第1幕でオーロラ姫が登場した直後に求婚者たちと踊る「ローズ・アダージョ」は、女性が片足で立ってバランスを保持したまま4人の男性に次々と手を預けていくなど、高度な技が連続する大きな見せ場である{{Sfn|長野由紀|2020|p=27}}{{Sfn|ダンスマガジン編集部|1998|p=112}}。
==楽曲==
===楽器編成===
[[ピッコロ]]、[[フルート]]2、[[オーボエ]]2、[[コーラングレ]]、[[クラリネット]]2、[[ファゴット]]2、[[ホルン]]4、[[コルネット]]2、[[トランペット]]2、[[トロンボーン]]3、[[チューバ]]、[[ティンパニ]]、[[バスドラム|大太鼓]]、[[スネアドラム|小太鼓]]、[[タンブリン]]、[[シンバル]]、[[タムタム]]、[[トライアングル]]、[[グロッケンシュピール]]、[[ピアノ]]、[[ハープ]]、[[弦五部]]{{Sfn|音楽之友社|1993|p=84}}
===作品構成===
{{External media
| width = 320px
| topic = '''『眠れる森の美女』抜粋
| audio1 = [https://www.youtube.com/watch?v=PNE76I-0V0g
[[オランダ公共放送]]公式YouTubeより
}}
以下の楽曲構成は、初演時の台本に基づく{{要出典|date=2021年5月}}。
[[File:Tchaikovsky - Спящая красавица - Sleeping Beauty ouverture.ogg|right|thumb|序奏、広間の行進曲]]
:1-a 序奏 (Introduction)
:1-b 広間の[[行進曲]] (Marche de salon)
:2-a 妖精の入場 (Entrée des fées)
:2-b
:3 グラン・パ・アンサンブル
::a) 甘美な[[アダージョ]]、短い[[アレグロ]] (Grand adage suave. Petit allégro)
::b) [[ヴァリアシオン (バレエ)|ヴァリアシオン]] - 夾竹桃の精 (Variation - Candide)
::c) ヴァリアシオン - 流麗に、三色ヒルガオの精 (Variation - Coulante - Fleur de farine)
::d) ヴァリアシオン - パンくずの精 - こぼれ落ちて (Variation - Miettes - qui tombent)
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::b) カラボスのマイム (Scène mimique de Carabosse)
::c) リラの精のマイム (Scène mimique de la Fée des lilas)
;第1幕「オーロラ姫の4人の求婚者」(Les quatre fiancés de la Psse. Aurore)
[[File:KCB Sleeping Beauty PRESS--33 (33377687470).jpg|right|thumb|250px|第1幕 村人の大ワルツ]]
:5-a 序奏 (Introduction)
:5-b 編み物をする女たちの情景 (Scène des tricoteuses)
:6 村人の大[[ワルツ]](
:7 オーロラ姫の入場 (Entrée d'Aurore)
:8 グラン・パ・ダクション (Grand pas d'action)
::a)
::b) 女官と小姓達の踊り (Danse des demoiselles d'honneur et des pages)
::c) オーロラ姫のヴァリアシオン (Variation d'Aurore) - プティパの依頼により末尾を改変
::d) コーダ (Coda)
:9 終曲 (Scène finale)
::a) つむをもったオーロラ姫の
::b) 呪文 (Le charme)
::c) リラの精の到着 (L'arrivée de la Fée des lilas)
;第2幕第1場「デジレ王子の狩」(
:10-a 間奏曲 (Entr'acte)
:10-b 王子の狩の情景 (Scène de la chasse royale)
:11 目隠し鬼ごっこ (Colin-maillard)
:12 貴婦人たちの
::a) 情景 (Scène)
::b) 公爵夫人の踊り (Danse des Duchesses)
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::d) 伯爵夫人の踊り (Danse des Comtesses) - プティパにより初演時カット
::e) 侯爵夫人の踊り (Danse des Marquises) - プティパにより初演時カット
:13 コーダ、[[ファランドール]] (Coda - Farandole)
:14-a 情景と狩人たちの出発 (Scène et départ des chasseurs)
:14-b リラの精の入場 (Entrée du Fée des lilas)
:15 パ・ダクション (Pas d'action)
::a) オーロラ姫の幻の入場 (Entrée de l'apparition d'Aurore)
::b) 甘美なアダージョ (Grand adage suave) - プティパの依頼により冒頭部のハープの[[カデンツァ]]を拡大
::c) ニンフのワルツ - コケティッシュな短いアレグロ (Valse des nymphes – Petit allégro coquet)
::挿入曲:[[リッカルド・ドリ
::挿入曲:ブリアンツァ嬢のヴァリアシオン(no. 23-b の金の精のヴァリアシオン)
::c) オーロラ姫のヴァリアシオン (Variation d'Aurore) - プティパにより初演時カット
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:18 交響的間奏曲 (Entr'acte symphonique) - プティパにより初演時カット
:19 眠りの城の情景 (Scène du château de sommeil)
:20 情景と終曲 - オーロラ姫の目覚め (Scène et final – Le réveil d'Aurore)
;第3幕「デジレ王子とオーロラ姫の結婚式」(Act III, Les Noces de Désiré et d'Aurore)
[[File:KCB Sleeping Beauty PRESS--13 (32919141054).jpg|right|thumb|250px|第3幕 長靴をはいた猫と白い猫]]
[[File:KCB Sleeping Beauty PRESS--2 (33721396536).jpg|right|thumb|250px|第3幕 青い鳥とフロリナ姫]]
:21 行進曲 (Marche)
:22 グラン・[[ポロネーズ]](おとぎ話の人物たちの行列) (Grand polonaise dansée, a.k.a. The Procession of the Fairy Tales)
:グラン・ディヴェルティスマン (Grand divertissement)
:23 パ・ド
::a) 入場 (Entrée)
::b) 金の精のヴァリアシオン (Variation de la fée-Or) - 初演時はプティパによりブリアンツァ嬢のヴァリアシオンとして第2幕に移動
::c) 銀の精のヴァリアシオン (Variation de la fée-Argent) - 初演時はプティパにより「金・銀・サファイアの精のパ・ド
::d) サファイアの精のヴァリアシオン (Variation de la fée-Saphir) - プティパにより初演時はカット
::e) ダイヤモンドの精のヴァリアシオン (Variation de la fée-Diamant)
::f) コーダ (Coda)
:挿入曲:猫の入場(チャイコフスキーによる10小節の序奏)
:24 パ・ド
:25 パ・ド
::a) 入場 (Entrée)
::b) [[シンデレラ]]とフォルチュネ王子のヴァリアシオン (Variation de Cendrillon et Prince Fortuné) - 初演時はプティパにより「青い鳥のヴァリアシオン」に変更
::c) 青い鳥とフロリナ姫のヴァリアシオン (Variation de l'Oiseau bleu la Princesse Florine) - 初演時はプティパにより「フロリーネ姫のヴァリアシオン」に変更
::d) コーダ (Coda)
:26 パ・ド
:挿入曲:パ・ド
:27 [[ベリー (フランス)|ベリー]]人の
:28 [[パ・ド・ドゥ#グラン・パ・ド・ドゥ|グラン・パ・ド・ドゥ・クラシック]] (Grand pas de deux classique)
::a) 入場 (Entrée)
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::d) オーロラ姫のヴァリアシオン (Variation d'Aurore) - プティパの依頼により初演時はリッカルド・ドリーゴにより編曲
::e) コーダ (Coda)
:29 [[サラバンド]] - トルコ人、エチオピア人、アフリカ人とアメリカ人のカドリーユ (Sarabande – quadrille pour Turcs, Éthiopiens, Africains et Américains)
:30-a 全員のコーダ (Coda générale)
:30-b アポテオーズ - [[ルイ14世 (フランス王)|ルイ14世]]の姿をした[[アポロン]]、妖精に囲まれた太陽の光によって輝いている (Apothéose – Apollon en costume de Louis XIV, éclairé par le soleil entouré des fées)
==
{{External media
| width = 310px
| topic = '''組曲『眠れる森の美女』(抜粋)'''
| audio1 = [https://www.youtube.com/watch?v=42WWTJgYcxc 組曲『眠れる森の美女』より第1・2・5曲]<br />
({{仮リンク|イヴ・アベル|label=Y・アベル|en|Yves Abel}}指揮、{{仮リンク|北オランダ交響楽団|en|Noord Nederlands Orkest}}による演奏)<br />
[[オランダ公共放送]]公式YouTubeより
}}
本作は、以下の5曲から成る演奏会用[[組曲]]としても演奏される{{Sfn|池辺晋一郎|2014|pp=169-173}}{{Sfn|音楽之友社|1993|p=90}}。これはチャイコフスキー自身の選曲によるものだが、作曲者の生前は内容が固まらず、まとまったのはチャイコフスキーの死後であった{{Sfn|池辺晋一郎|2014|p=168}}。
# リラの精(プロローグより序奏)
# アダージョ/パ・ダクション(第1幕よりローズ・アダージョ)
# パ・ド・カラクテール(第3幕より長靴をはいた猫と白猫の踊り)
# パノラマ(第2幕より)
# ワルツ(第1幕より)
この他、バレエ『眠れる森の美女』の上演直前であった1889年の暮れに、楽譜出版社の[[ユルゲンソン (出版社)|ユルゲンソン]]から、本作の[[ピアノ]]独奏用編曲版が出版されている{{Sfn|小松佑子|2017|pp=320-321}}。編曲は、作曲者から依頼を受けた[[アレクサンドル・ジロティ]]が行った{{Sfn|小松佑子|2017|pp=320-321}}。
また、バレエの上演直後である1890年初頭、チャイコフスキーはユルゲンソンに対してピアノ[[連弾]]版の出版を依頼し、ユルゲンソンは当時17歳の[[セルゲイ・ラフマニノフ]]に編曲を注文した{{Sfn|小松佑子|2017|p=331}}。この編曲版にはチャイコフスキーとジロティが校正を加えたが、チャイコフスキーはラフマニノフの編曲が気に入らず、ジロティに不満を漏らしていた{{Sfn|小松佑子|2017|p=331}}。
==脚注==
{{Columns-list|colwidth=16em|
{{Reflist}}
}}
==参考文献==
*{{Cite book |和書 |author=[[赤尾雄人]]|year=2010 |title=これがロシア・バレエだ! |publisher=[[新書館]] |isbn=9784403231193|ref={{SfnRef|赤尾雄人|2010}}}}
*{{Cite book |和書 |author=[[池辺晋一郎]]|year=2014 |title=チャイコフスキーの音符たち 池辺晋一郎の「新チャイコフスキー考」 |publisher=[[音楽之友社]] |isbn=9784276200685|ref={{SfnRef|池辺晋一郎|2014}}}}
*{{Cite book |和書 |author=[[小倉重夫]]|year=1989 |title=チャイコフスキーのバレエ音楽 |publisher=[[共同通信社]] |isbn=4764102234|ref={{SfnRef|小倉重夫|1989}}}}
*{{Cite book |和書 |author=小倉重夫|year=1997 |title=バレエ音楽百科 |publisher=音楽之友社 |isbn=4276250315|ref={{SfnRef|小倉重夫|1997}}}}
*{{Cite book |和書 |author=音楽之友社|year=1993 |title=作曲家別名曲解説ライブラリー⑧ チャイコフスキー |publisher=音楽之友社 |isbn=4276010489|ref={{SfnRef|音楽之友社|1993}} }}
*{{Cite book |和書 |author=キーワード事典編集部|year=1995 |title=キーワード事典 作曲家再発見シリーズ チャイコフスキー |publisher=[[洋泉社]] |isbn=4896911679|ref={{SfnRef|キーワード事典編集部|1995}}}}
*{{Cite book |和書 |author=デブラ・クレイン、ジュディス・マックレル |translator= 鈴木晶、赤尾雄人、海野敏、長野由紀|year=2010 |title=オックスフォード バレエダンス事典 |publisher=[[平凡社]] |isbn=9784582125221 |ref={{SfnRef|デブラ・クレイン、ジュディス・マックレル|2010}}}}
*{{Cite book |和書 |author=小松佑子 |year=2017 |title=チャイコーフスキイ伝 下巻 アダージョ・ラメント―ソはレクイエムの響き |publisher=[[文芸社]] |isbn=9784286181851|ref={{SfnRef|小松佑子|2017}}}}
*{{Cite book |和書 |author=[[鈴木晶]] |year=1994 |title=踊る世紀 |publisher=新書館 |isbn=4403230385|ref={{SfnRef|鈴木晶|1994}}}}
*{{Cite book |和書 |author=鈴木晶ほか |year=2012 |title=バレエとダンスの歴史 欧米劇場舞踊史 |publisher=[[平凡社]] |isbn=9784582125238 |ref={{SfnRef|鈴木晶ほか|2012}}}}
*{{Cite book |和書 |author=ダンスマガジン |year=2008 |title=バレエ・パーフェクト・ガイド |publisher=新書館 |isbn=9784403320286|ref={{SfnRef|ダンスマガジン|2008}}}}
*{{Cite book |和書 |author=ダンスマガジン編集部|year=1998 |title=バレエ101物語 |publisher=新書館 |isbn=9784403250323|ref={{SfnRef|ダンスマガジン編集部|1998}}}}
*{{Cite book |和書 |author=ダンスマガジン編集部|year=1999 |title=ダンス・ハンドブック |publisher=新書館 |isbn=4403250378|ref={{SfnRef|ダンスマガジン編集部|1999}}}}
*{{Cite book |和書 |author=長野由紀|year=2003 |title=バレエの見方 |publisher=新書館 |isbn=4403230997|ref={{SfnRef|長野由紀|2003}}}}
*{{Cite journal |和書|author=長野由紀 |title=バレエ名作ガイド 眠れる森の美女 |date=2020-10-01 |publisher= 新書館|journal=ダンスマガジン |volume=第30巻第10号|ref={{SfnRef|長野由紀|2020}}}}
*{{Cite book |和書 |author=シャルル・ペロー|translator=[[工藤庸子]] |year=2013 |title=いま読む ペロー「昔話」|publisher=羽鳥書店 |isbn=9784904702420 |ref={{SfnRef|シャルル・ペロー|2013}}}}
*{{Cite book |和書 |author=村山久美子 |year=2001 |title=ユーラシア・ブックレット15 知られざるロシア・バレエ史 |publisher=[[東洋書店]]|isbn=4885953375|ref={{SfnRef|村山久美子|2001}}}}
*{{Cite journal |和書|author=村山久美子 |title=プティパ名作ガイド 巨匠が手がけた名作の背景 |date=2018-07-01 |publisher= 新書館|journal=ダンスマガジン |volume=第28巻第7号|ref={{SfnRef|村山久美子|2018}}}}
*{{Cite book |和書 |author=[[森田稔]] |year=1999 |title=永遠の「白鳥の湖」 チャイコフスキーとバレエ音楽|publisher=新書館 |isbn=4403230644|ref={{SfnRef|森田稔|1999}}}}
*{{Cite book |和書 |author=守山実花 |year=2004 |title=もっとバレエに連れてって! |publisher=[[青弓社]]|isbn=4787271784 |ref={{SfnRef|守山実花|2004}}}}
*{{Cite book |和書 |author=渡辺真弓 |year=2014 |title=チャイコフスキー三大バレエ 初演から現在に至る上演の変遷 |publisher=[[新国立劇場|公益財団法人新国立劇場運営財団情報センター]] |isbn=9784907223069 |ref={{SfnRef|渡辺真弓|2014}}}}
==関連項目==
*[[眠れる森の美女 (1959年の映画)]] - [[ウォルト・ディズニー・カンパニー|ディズニー]]が製作した[[アニメーション映画]]。チャイコフスキーによる『眠れる森の美女』の楽曲を編曲して使用している。
== 外部リンク ==
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** [https://musopen.org/ja/music/2231-the-sleeping-beauty-suite-op66a/ The Sleeping Beauty (suite), Op.66a] - 『Musopen』より
** [http://en.tchaikovsky-research.net/pages/The_Sleeping_Beauty_(suite) The Sleeping Beauty (suite)] - 『Tchaikovsky Research』より
{{眠れる森の美女}}
236 ⟶ 309行目:
[[Category:眠れる森の美女|はれえ]]
[[Category:1890年代の楽曲]]
[[Category:
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