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m →‎プロトタイプベースの考案(1985 - 90): Lispにおけるメタクラス(クラスメタオブジェクト)、メタオブジェクトプロトコル、Flavors、CLOS、シンボル、フレーム諸々の関係と、具体的な実装手法の記述が事実と異なるためLispに関する記述は取り除きました。プロトタイプ指向とLispの関係はもし必要であれば別途調査して記述する必要があると思います。 https://web.media.mit.edu/~lieber/Lieberary/OOP/OOP.html を参照等々 おおよそ流れですが、smalltalkにflavorsが影響を受けています。flavorsがmixin手法の大元ですがmopはありません(メタオブジェクト方式でない)、OOPに似ていますがフレームはAI方面の手法です。CLOSはAI研究とも無縁ではないのでフレームとも多少関係があります。MOPはCLOSと共に生れ概念が整理されたといっていいと思います。これらの関係が正しく記述されていないと思います。
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[[ファイル:Object oriented design object.jpg|境界|右|フレームなし|265x265ピクセル]]
{{プログラミング・パラダイム}}
{{Wikibooks|オブジェクト指向|オブジェクト指向}}
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=== 継承 ===
既存オブジェクトのデータ構成とメソッド構成を引き継いで、新しい派生オブジェクトを定義する仕組みが継承と呼ばれる。引き継ぐ際には新たなデータとメソッドを自由に追加できるので、派生オブジェクトの構成は既存要素+追加要素になる。ここでの既存オブジェクトは基底オブジェクトと読み替えられる。基底は親、派生は子とも読み替えられる。継承が重視される[[抽象データ型|ユーザー定義型]]と同義オブジェクトは、型として用いられであ[[クラス (コンピュータ)|クラス]]あることが多継承の使用は重視されて。クラスベースでは基底をスーパークラス、派生をサブクラスと呼ぶ。一つのスーパークラスを継承するのは単一継承と呼ばれる。複数のスーパークラスを継承してそれぞれの要素を引き継ぐのは多重継承と呼ばれる。[[統一モデリング言語|UML]]では汎化と特化の関係で表現されている。メソッドの抽象化に焦点を当てた継承の方は{{仮リンク|実装継承|en|Inheritance_(object-oriented_programming)}}などと呼ばれる。UMLでは実現と実装の関係で表現されている。実装継承は特定のオブジェクトたちに共通した振る舞い側面を抜き出して抽象化する仕組みを指し、その抽象オブジェクトは[[インタフェース (抽象型)|インターフェース]]、[[トレイト]]、{{仮リンク|プロトコル(OOP)|en|Protocol (object-oriented programming)|label=プロトコル}}などと呼ばれる。
 
=== ポリモーフィズム ===
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=== Simulaの開発(1962 - 72) ===
1962年、ノルウェー計算センターで[[モンテカルロ法]]シミュレーションを運用していた計算機科学者[[クリステン・ニゴール]]は、[[ALGOL|ALGOL60]]を土台にしてProcessと呼ばれる[[コルーチン]]機構を加えたプログラミング言語「[[Simula]]」を公開し、続けてその拡張にも取り組んだ。ニゴールの同僚で、1963年にSimulaを[[メインフレーム|汎用機]][[UNIVAC I|UNIVAC]]系統上で運用できるように実装した計算機科学者[[オルヨハン・ダール]]は、Processにローカル変数構造を共有する複数の手続き(サブルーチン)を加えてパッケージ化する言語仕様を考案した。程なくしてALGOL60コンパイラに準拠していての限界を悟ったニゴールとダールは、1965年からSimulaを一から再設計するように方針転換した。その過程で彼らは、計算機科学者[[アントニー・ホーア]]が考案して1962年のSIMSCRIPT([[FORTRAN]]用のスクリプト)に実装していたRecord Classを参考にしている。Record Classはソースコード水準の抽象表現を、各[[メインフレーム|汎用機]]に準拠した[[マシンコード]]水準の実装符号に落とし込む段階的データ構造のプログラム概念であった。これをモデルにした[[継承 (プログラミング)|継承]]とその構造上に成り立つ仮想手続き(仮想関数)の仕組みも考案され、この両機能を備えたProcessのパッケージ化を「[[クラス (コンピュータ)|クラス]]」とし、クラスをメモリに展開したものを「[[オブジェクト (プログラミング)|オブジェクト]]」とする言語仕様がまとまり、1967年に「[[Simula|Simula67]]」が初公開された。オブジェクトという用語は、[[MIT]]の計算機科学者[[アイバン・サザランド]]が1963年に開発した[[Sketchpad]]([[CAD]]と[[GUI]]の元祖)の設計内にあるObjectが先例であった。Simula67コンパイラはまず[[UNIVAC I|UNIVAC]]上で運用され、翌年から汎用機[[バロース B5000|バロースB5500]]などでも稼働されて北欧、ドイツ、ソ連の各研究機関へと広まり、1972年には[[IBMメインフレーム|IBM汎用機]][[System/360]]などにも導入されて北米全土にも広まった。その主な用途は物理シミュレーションであった。{{Quotation|''influenced by Sketchpad, Simula, the design for the ARPAnet, the Burroughs B5000, and my background in Biology and Mathematics, I thought of an architecture for programming.''
<br>([[Sketchpad]]、[[Simula]]、[[アーパネット|ARPAネット]]、[[バロース B5000|バロースB5000]]、それと専攻していた生物学と数学に影響されて僕はプログラミングアーキテクチャを思索していた)|Alan Kay}}
 
=== 構造化プログラミングの提唱(1969 - 75) ===
[[Simula]]の普及と前後して1960年代半ばになると、プログラム規模の際限ない肥大化に伴う開発現場の負担増大が顕著になり、いわゆる[[ソフトウェア危機]]問題が計算機科学分野全般で取り沙汰されるようになった。その解決に取り組んだ計算機科学者[[エドガー・ダイクストラ]]は、1969年のNATOソフトウェア工学会議で「[[構造化プログラミング]]」という論文を発表し[[トップダウン設計とボトムアップ設計|トップダウン設計]]、段階的な[[抽象化 (計算機科学)|抽象化]]、階層的な[[モジュール化]]、共同詳細化(抽象データ構造と抽象ステートメントのjoint)といった構造化手法を提唱した。ダイクストラの言う構造化とは開発効率を高めるための[[分割統治法]]を意味していた。なおこの構造化プログラミングは後に曲解されて[[制御構造|制御構造文]]を中心にした解釈の方で世間に広まり定着している。共同詳細化は抽象データ構造を専用ステートメントを通して扱うという概念である。これはSimulaの手続きを通してクラス内の変数にアクセスするという仕組みをモチーフにしていた。段階的な抽象化と階層的なモジュール化は時系列的にも、SIMSCRIPTの段階的データ構造と、Simura67の継承による階層的クラス構造を模倣したものであった。[[エドガー・ダイクストラ|ダイクストラ]]、[[アントニー・ホーア|ホーア]]、[[オルヨハン・ダール|ダール]]の三名は1972年に『構造化プログラミング』と題した共著を上梓していることから互いの研鑽関係が証明されている。その階層的プログラム構造という章の中でダールは、Simulaの目指した設計を更に明らかにした。{{Quotation|''influencedI'm bynot Sketchpad,against Simulatypes, thebut designI fordon't theknow ARPAnet,of theany Burroughstype B5000,systems andthat myaren't backgrounda incomplete Biologypain, and Mathematics,so I thought of anstill architecturelike fordynamic programmingtyping.''
<br>([[Sketchpad]]、[[Simula]]、[[僕は型ーパネット]]ンチではないが[[バロース B5000|バロースB5000]]、それと専攻全くうんざりた生物学と数学に影響されて僕はプログラミングアーキ型シスクチャムも知らない、だからまだ動的型付け思索して好んで)|Alan Kay}}1974年に[[MIT]]の計算機科学者[[バーバラ・リスコフ]]は「[[抽象データ型]]」というプログラム概念を提唱し、ダイクストラが提示したモジュールの共同詳細化を、その振る舞いによって[[セマンティクス|意味内容]]が定義される抽象データという考え方でより明解に形式化した。一方、1970年に構造化言語[[Pascal]]を開発していた計算機科学者[[ニクラウス・ヴィルト]]は、ダイクストラによる共著出版後の1975年にモジュール化言語[[Modula-2|Modula]]を提示してモジューラプログラミングというパラダイムを生み出している。このようにいささか奇妙ではあるが、Simulaのクラスとオブジェクトというプログラム概念は、巷で言われる構造化からモジュール化へといった進化の流れとは関係なく、しかもその前段階においてさながら彗星のように生まれたパラダイムであった。
 
=== Smalltalkとオブジェクト指向の誕生(1972 - 81) ===
Simula発のProcessとクラスの仕様は、[[パロアルト研究所]]の計算機科学者[[アラン・ケイ]]によるオブジェクト重視と「メッセージング」という考え方のヒントになった。ケイはプログラム内のあらゆる要素をオブジェクトとして扱い、オブジェクトはメッセージの送受信でコミュニケーションするという独特のプログラム理論を提唱した。それには関数適用風の書式を用いたオブジェクト同士の多種多様な[[委譲|デリゲーション]]と、プログラムコードとしても解釈できるデータ列を送信してそれを評価(''eval'')することで新たなデータを導出できるなどのアイディアが盛り込まれていた。オブジェクトが送るか受け取ったメッセージは任意のタイミングで評価できるので非同期通信や単方向通信をも可能にしていた。この発想の背景には[[LISP]]の影響があった。オブジェクトとメッセージングの構想に基づいて開発された「[[Smalltalk]]」はプログラミング言語と[[GUI]]運用環境を併せたものとなり、1972年に[[Alto|ゼロックスAlto]]上で初稼働された。Smalltalkの設計を説明するためにケイが考案した「[[オブジェクト指向]]」という用語はここで初めて発信された。またケイのメッセージング構想は[[MIT]]の計算機科学者[[カール・ヒューイット]]に能動的な[[プロセス代数]]を意識させて、1973年発表の[[アクターモデル]]のヒントにもなっている。しかしデリゲーションの多用とデータ列が常にコード候補として扱われる処理系は、当時のコンピュータには負荷が大きく実用的な速度を得られないという問題にすぐ直面した。Smalltalk-74とSmalltalk-76の過程で、やむなくメッセージは構想時の柔軟さが失われるほどシステム向けに最適化され、レシーバーはセレクタパターン重視のメソッド化が進み、オブジェクトは静的なクラス定義の存在感が大きくなった。{{Quotation|''Smalltalk is not only NOT its syntax or the class library, it is not even about classes. I'm sorry that I long ago coined the term "objects" for this topic because it gets many people to focus on the lesser idea.The big idea is "messaging"...''
<br>(Smalltalkはその構文やライブラリやクラスをも関心にしていないという事だけではない。多くの人の関心を小さなアイディアに向かせたことから、僕はオブジェクトという用語を昔作り出したことを残念に思っている。大切なのはメッセージングなんだ。)|Alan Kay}}1980年のSmalltalk-80は、元々はメッセージを重視していたケイを自嘲させるほど同期的で双方向的で手続き的なオブジェクト指向へと変貌していた。それでも動的ディスパッチと[[委譲]]でオブジェクトを連携させるスタイルは画期的であり、1994年に発表される[[デザインパターン (ソフトウェア)|デザインパターン]]の模範にもされている。1981年に当時の著名なマイコン専門誌『[[Byte (magazine)|BYTE]]』がSmalltalkとケイ提唱のオブジェクト指向を紹介して世間の注目を集める契機になったが、ケイの思惑に反して技術的関心を集めたのはクラス機構の方であった。オブジェクト指向は知名度を得るのと同時に、Simula発の[[クラス (コンピュータ)|クラス]]とそれを理論面から形式化した[[抽象データ型]]を中心に解釈されるようになり、それらの考案者がケイの構想とは無関係であったことから、オブジェクト指向の定義はケイの手を離れて独り歩きするようになった。
 
=== C++の開発(1979 - 88) ===
[[Simula]]を研究対象にしていた[[ベル研究所|AT&Tベル研究所]]の計算機科学者[[ビャーネ・ストロヴストルップ]]は、1979年からクラス付きC言語の開発に取り組み、1983年に「[[C++]]」を公開した。C++で実装された[[クラス (コンピュータ)|クラス]]は、Simula譲りの[[継承 (プログラミング)|継承]]と仮想関数に加えて、[[レキシカルスコープ]]の概念をクラス定義とその継承構造に応用した[[アクセスコントロール]]を備えていた。C++で確立されたアクセスコントロールはカプセル化の元になったがコードスタイル上ほとんどザル化されており、その理由からストロヴストルップ自身もC++は正しくない(''not just'')オブジェクト指向言語であると明言している。1986年にソフトウェア技術者[[バートランド・メイヤー]]が開発した「[[Eiffel]]」の方は、正しいオブジェクト指向を標榜してクラスのデータ抽象を遵守させるコードスタイルが導入されていた。クラスメンバ(フィーチャー)は属性、手続き、関数の三種構成で、手続きで属性を変更し関数で属性を参照するという形式に限定されており、これは抽象データ型の[[セマンティクス|振る舞い意味論]]に沿った実装であった。アクセスコントロールはC++のアクセス修飾子による段階的レキシカルスコープ定義に対して、自身のクライアントクラスを定義する書式になり、これはモジューラプログラミングの情報隠蔽論に沿った実装であった。C++の仮想関数は延期手続き/関数として実装された。{{Quotation|''I made up the term ‘object-oriented’, and I can tell you I didn’t have C++ in mind.''
<br />(僕はオブジェクト指向という言葉を作ったけど、C++(のような言語)は考えていなかった)|Alan Kay}}1986年から[[Association for Computing Machinery|ACM]]が[[OOPSLA|オブジェクト指向会議]](OOPSLA)を年度開催し、そのプログラミング言語セクションでは[[抽象データ型]]の流れを汲む[[クラス (コンピュータ)|クラス]]・パラダイムが主要テーマにされ、それを標準化するための数々のトピックが議題に上げられている。[[モジュール性]]、情報隠蔽、[[抽象化 (計算機科学)|抽象化]]、再利用性、[[継承 (プログラミング)|階層構造]]、複合構成、実行時多態、[[動的束縛]]、[[総称型]]、[[ガベージコレクション|自動メモリ管理]]といったものがそうであり、参画した識者たちによる寄稿、出版、講演を通して世間にも広められた。そうした潮流の中で[[ビャーネ・ストロヴストルップ|ストロヴストルップ]]はデータ抽象の重要性を訴え、[[バーバラ・リスコフ|リスコフ]]は[[上位概念、下位概念、同位概念および同一概念|基底と派生]]に分けたデータ抽象の[[リスコフの置換原則|階層構造の連結関係]]について提言した。[[契約による設計]]を提唱する[[バートランド・メイヤー|メイヤー]]が1988年に刊行した『オブジェクト指向ソフトウェア構築』は名著とされ、Eiffelを現行の模範形とする声も多く上がった。ただしこれは学術寄りの意見でもあったようで、世間のプログラマの間では厳格なEiffelよりも柔軟で融通の利くC++の人気の方が高まっていた。また、Smalltalk発のメッセージ・メタファを重視しようとする流れの中で、クラスのメソッド呼び出しをオブジェクトにメッセージを送ることになぞらえる考え方が広まった。これは実行時の選択メソッドをメッセージの発送先にする意味合いで、動的/一重/多重ディスパッチの呼称の由来になっている。他方でSmalltalkの仕様に忠実であろうとする動きもあり、1984年に計算機科学者ブラッド・コックスが開発した「[[Objective-C]]」はSmalltalkをモデルにしてそれを平易化した言語であった。そのメッセージレシーバーは静的なメソッドリストにないセレクタを受け取った場合に機構優先動的ディスパッチ機構に移るというスタイル方式形式化実装された。メッセージレシーバの仕組みは[[遠隔手続き呼出し]]/[[Object Request Broker|オブジェクト要求ブローカー]]の実装に適していたので[[分散システム]]とオブジェクト指向の親和性を認識させることになった。
 
=== プロトタイプベースの考案(1985 - 90) ===
[[パロアルト研究所]]では、計算機科学者デビッド・アンガーがSmalltalkの方言として制作する「[[Self]]」を1987年に初回稼働して1990年に一般公開した。
 
Selfに導入された手法は、後に[[プロトタイプベース]]またはインスタンスベースと呼ばれるパラダイムに発展する。
 
同時にそれと、従来の[[クラス (コンピュータ)|クラス]]機構を中心にしたオブジェクト指向言語を区別するための[[クラスベース]]という言葉も生まれた。
 
=== プロトタイプベースの考案黎明(1985 - 90)91) ===
1981年頃から知名度を高めていたオブジェクト指向の生みの親である[[アラン・ケイ]]がその影響を言及していた[[LISP]]コミュニティでは、[[Smalltalk]]が提唱するEverythingIsAnObjectの理念に沿ったオブジェクト指向の導入が1984年頃から模索されるようになり、1985年に[[MIT人工知能研究所]]の[[LISPマシン]]上で、LISPのオブジェクト指向拡張版と称された「Flavors」が運用実装された。そのデザインは変数名/関数名となるシンボル型を[[Cons (Lisp)|コンス]]スロットに収納する[[連結リスト|リスト]]フレームの形式化された静的定義と、シンボル型をその都度評価(''eval'')して変数実体/関数実体の参照につなげる動的多態実装などにまとめられていた。ここでスロットのシンボル型を逐次判別するというOOP風の[[動的型付け]]が生まれ、またパーツ化したシンボル型構成をフレームにアタッチするという[[ミックスイン]]の機能が考案された。その動的型付けは後年に[[ダックタイピング]]の名で定義化されている。1988年に発表された「[[Common Lisp Object System]]」ではFlavorsのデザインがLISP本来の[[関数型言語|関数型]]思想へと回帰されて、引数値のダックタイピングの活用で[[多重ディスパッチ]]できる汎用関数を中心にしたデザインへと仕上げられた。汎用関数とクラス定義可能な値は共に動的可変のメタオブジェクトとされたのでミックスインの対象になり、汎用関数へのミックスインはデコレータや[[パイプライン処理|パイプライン]]の類似機能も表現して後の[[アスペクト指向プログラミング|アスペクト指向]]のルーツにもなった。この[[LISP]]思想と[[オブジェクト指向]]の融合デザインは「[[The Art of the Metaobject Protocol|メタオブジェクトプロトコル]]」の名でまとめられて1991年に[[パロアルト研究所]]フェローから著述発表されており、これがEverythingIsAnObject思想をより具体化した[[プロトタイプベース]]のルーツにもなっている。また、同研究所の計算機科学者デビッド・アンガーがSmalltalkの方言として制作していた「[[Self]]」を1987年に初回稼働して1990年に一般公開した。Selfにも導入されていたメタオブジェクトプロトコル相当の仕様が、後に[[プロトタイプベース]]と呼ばれるパラダイムに発展した。同時にそれと従来の[[クラス (コンピュータ)|クラス]]機構を中心にしたオブジェクト指向言語を区別するための[[クラスベース]]という言葉も生まれた。{{Quotation|The Art of the Metaobject Protocol ―<br />
''some of the most profound insights, and the most practical insights about OOP''<br />(オブジェクト指向への最も深遠な洞察と、最も実用的な見識の数々)|Alan Kay}}
=== コンポーネントとネットワーク(1989 - 97) ===
ネットワーク技術の発展に連れて、データとメソッドの複合体であるオブジェクトの概念は、[[分散システム]]構築のための基礎要素としての適性を特に見出される事になり、[[IBM|IBM社]]、[[アップル (企業)|アップル社]]、[[サン・マイクロシステムズ|サン社]]などが1989年に共同設立した[[Object Management Group|OMG]]は、企業システムネットワーク向け分散オブジェクトプログラミングの標準規格となる[[CORBA]]を1991年に公開した。その前年に[[マイクロソフト|マイクロソフト社]]は[[ウェブアプリケーション]]向けの分散オブジェクト技術となる[[OLE]]を発表し、1993年には[[Component Object Model|COM]]と称する[[ソフトウェアコンポーネント]]仕様へと整備した。この[[Component Object Model|COM]]の利用を眼目にしてリリースされた「[[Microsoft Visual C++|Visual C++]]」「[[Visual Basic]]」は[[World Wide Web|ウェブ]]時代の新しいプログラミングスタイルを普及させる先駆になった。この頃に[[抽象データ型]]のメソッドを通したデータ抽象、データ隠蔽、[[アクセスコントロール]]および分散オブジェクト=[[プロセス間通信]]の[[インタフェース (情報技術)|インターフェース]]機構によるプログラムの抽象化といった概念は、[[カプセル化]]という用語にまとめられるようになった。クラスの[[継承 (プログラミング)|継承]]が最もオブジェクト指向らしい機能と見なされていたのが当時の特徴であった。継承構造を利用したサプタイピングは[[多態性]]という用語に包括され、多重継承の欠点が指摘されると分散オブジェクトのそれに倣った[[インタフェース (抽象型)|インターフェース]]の多重実装設計が取り上げられた。こうしてカプセル化の誕生と連動するようにしていわゆるオブジェクト指向の三大要素がやや漠然と確立されている。1996年にサン社がリリースした「[[Java]]」は三大要素が強く意識された[[クラスベース]]であり、その中の分散オブジェクト技術は[[JavaBeans|Beans]]と呼ばれた。類似の技術としてアップル社も[[MacOS]]上で[[Objective-C]]などから扱える[[Cocoa]]を開発している。また、1994年から96年にかけて「[[Python]]」「[[Ruby]]」「[[JavaScript]]」といったオブジェクト指向スクリプト言語がリリースされ、[[プロトタイプベース]]という新しいプログラミングスタイルを定着させている。1994年の[[ギャング・オブ・フォー (情報工学)|GOF]][[デザインパターン (ソフトウェア)|デザインパターン]]の発表と、1997年に[[Object Management Group|OMG]]が標準[[モデリング言語]]として採用した[[統一モデリング言語|UML]]は、オブジェクト指向プログラミングの標準化を促進させた。{{Quotation|''... there were two main paths that were catalysed by Simula. The early one (just by accident) was the bio/net non-data-procedure route that I took. The other one, which came a little later as an object of study was abstract data types, and this got much more play.''<br>(Simulaを触媒にした二本の道があった。最初の一本はバイオネットな非データ手法で僕が選んだ方。少し遅れたもう一本は抽象データ型、こっちの方がずっと賑わっている。)|Alan Kay}}
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:[[クラスベース]]のオブジェクト指向。メソッド記述の関数呼び出し形式への統合、[[多重ディスパッチ]]、クラスの動的な再定義等を特徴とする。
;[[Python]] 1994年
:[[プロトタイプベース]]のオブジェクト指向スクリプト言語。[[基本データ型]]や[[コンテナ (データ型)|コレクション型]]などよく使われるデータ要素を全て組み込みのオブジェクトにしている。それらは[[手続き型プログラミング|手続き型]]スタイルでも気軽に扱える。コレクション型を扱うのに適した[[関数型プログラミング|関数型]]構文も導入されている。関数もオブジェクトな/変数で柔軟に扱える。オブジェクトは自由にプロパティとメソッドを付け足し付け替えして様々に応用可能きるようデザインされている。オブジェクトは[[ダックタイピング]]で型判別されるので変数ないし/関数の型宣言と型注釈は撤廃されている。ゆえに[[動的な型付け|動的型付け]]重視である。Pythonのプロトタイプはクラスと呼ばれている。多重継承可能であり親クラス要素の参照サーチ順序はC3線形化で解決されている。アクセスコントロールはなくデータ抽象を軽視するコードスタイルと相まってカプセル化は備えられていない。多態性は事実上メソッドの動的バインディングで行わになっている。カプセル化は軽視さている。後期バージョンで型ヒントが追加され、それに伴い[[ジェネリクス]]も導入された。
;[[Java]] 1995年
:[[C++]]をモデルにしつつ堅牢性とセキュリティを重視した[[クラスベース]]のオブジェクト指向言語。静的型付け重視である。パッケージ中心のカプセル化、単一のみの継承、仮想関数と多重実装可な[[インタフェース (抽象型)|インターフェース]]による多態性と、基本に忠実なクラスベースである。C++風の[[ポインタ (プログラミング)|ポインタ]]と値型インスタンスは除外されて参照型インスタンスに統一した。[[例外処理]]を整備し[[演算子オーバーロード]]を除外した。オブジェクト指向と[[マルチスレッド]]の調和が図られ、[[ソフトウェアコンポーネント|コンポーネント指向]]による動的クラスローディングの存在感が高められている。クラスメタデータを操作できる[[リフレクション (情報工学)|リフレクション]]は初期から採用された。中期から[[ジェネリクス]](パラメトリック多相)と[[アノテーション|メタアノテーション]](アドホック多相)が導入され、ラムダ式と関数型インターフェースを軸にした[[関数型言語|関数型構文]]も採用された。[[仮想マシン]]上で実行される。[[仮想マシン]]と[[ガーベジコレクション]]の技術は比較的高度と見なされている。
;[[Delphi]] 1995年
:[[Object Pascal]]を発展させたもの。それと同様にこちらも基本に忠実なクラスベースで静的型付け重視であった。当初はデータベース操作プログラム開発を主な用途にして公開された。クラスとレコード([[構造体]])に同等の比重が置かれていた。一時期Javaの対抗馬になった。
;[[Ruby]] 19951996
:[[Python]]を意識して開発されたオブジェクト指向スクリプト言語。[[Smalltalk]]を一つの理想にしてより万人向けの言語を目指し、動的型付けを重視している。日本で誕生してグローバル化したプログラミング言語である。[[LISP]]とSmalltalkのメタプログラミング的なオブジェクト指向から、Pythonと[[JavaScript]]のプロトタイプベースなオブジェクト指向までのスタイルとコーディング手法を幅広く取り入れており、様々な有用なプログラミング手法を採用している技のデパートのような言語である。
;[[JavaScript]] 1996年
:[[プロトタイプベース]]のオブジェクト指向スクリプト言語。型宣言と型注釈を撤廃して[[ダックタイピング]]する[[動的な型付け|動的型付け]]重視である。すべてをオブジェクトにする[[Smalltalk]]の思想に忠実な言語であり、[[Python]]と似ているがそれよりも[[プロトタイプベース]][[関数型スタイルプログラミング]]性質を追求している。定数、変数、構造体、関数とインスタンスをほぼなどが全て等な性質のオブジェクトにされいる。返り値無しの関数はnew指定でインスタンス生成用の写像になり、その関数のローカル要素がインスタンスのプロパティとメソッドを自由付け足したり付け替えできるようにデザインされている。new指定関数は共通のプロトタイプを持つインスタンス(クローンオブジェクト)を継続生成する。JavaScript構築と用い方がプログラミング上のキーポインスタンスはトになっており、[[クロージャ]]に近いことから[[高階関数]]も自然表現されて[[第一級関数]]、デコレータ、[[パイログイン処理|パイプライ]]といった多種多様な働き方とそ組みも実わせを柔軟に表していできる。[[ウェブアプリケーション|WEBアプリケーション]]開発を主な用途にして公開されたのでオブジェクトは[[GUI]]パーツの構築にも最適化されている。[[ECMAScript]]として標準化されており、2015年版からは[[クラスベース]]向けの構文もサポートするようになった。
;[[C Sharp|C#]] 2000年
:[[Java]]を強く意識してマイクロソフト社が開発したクラスベースのオブジェクト指向言語。Javaよりも[[マルチパラダイムプログラミング言語|マルチパラダイム]]の性質が強化されており、言語仕様も比較的大規模と言える。ステートメント書式と各種データ型の取り扱いに、C++譲りの柔軟性と融通的を残しながら様々な[[糖衣構文]]サポートも加えてコーディング上の利便性がより高められている。[[マルチスレッド]]仕様も整備されている。アドホック多相では拡張メソッド、インデクサ、演算子オーバーロードなどを備えている。パラメトリック多相では[[共変性と反変性 (計算機科学)|共変/反変]]も扱える[[ジェネリクス]]を備えている。サブタイプ多相はクラスは単一継承でインターフェースは多重実装と基本通りである。[[関数型言語|関数型構文]]も整備されており、特にメソッド参照機能であるデリゲートの有用性が高められている。デリゲートは[[イベント駆動型プログラミング|イベント駆動構文]]の平易な表現も可能にしている。基本は[[静的型付け]]であるが、動的束縛型と[[ダックタイピング]]による[[動的型付け]]の存在感が高められているので漸進的型付けの言語と見なされている。[[.NET Framework]]([[共通言語基盤]]=仮想実行システム)上で実行される。
;[[Scala]] 2003年
:[[クラスベース]]のオブジェクト指向と[[関数型プログラミング]]を融合させた言語。[[クラス (コンピュータ)|クラス]]機構と関数型の[[型システム]]に同等の比重が置かれており静的型付け重視である。[[ミックスイン]]相当の[[トレイト]]と、[[共変性と反変性 (計算機科学)|共変/反変]]および抽象タイプメンバを扱える[[ジェネリクス]]を連携させた多態性が重視されておりオブジェクトを様々に[[派生型|派生型付け]]できる。シングルトンオブジェクトの役割が形式化されて従来のクラス静的メンバの新解釈にも用いられている。専用の定義書式により[[イミュータブル]]なオブジェクトが重視されている。上述の派生型付けスタイルとオブジェクト引数の[[逆写像|抽出]]構文と[[パターンマッチング|パターンマッチング式]]の併用連鎖計算は[[モナド (プログラミング)|モナド]]を彷彿とさせて独特の関数型スタイルを表現できる。[[Java仮想マシン]]上で動作するJavaテクノロジ互換言語である。
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:(''class'')の仕組みを中心にしたオブジェクト指向を[[クラスベース]]と言う。クラスはデータメンバとメソッドをまとめたものであり、[[プログラム意味論|操作的意味論]]を付加された静的[[構造体|レコード]]とも解釈される。クラスはインスタンスのひな型であり、インスタンスはクラスを実例化(量化)したものである。クラスはカプセル化、継承、多態性の三機能を備えていることが求められている。カプセル化はデータメンバとメソッドの可視性を指定する機能である。継承は自身のスーパークラスを指定する機能である。多態性はオーバーライドと[[仮想関数テーブル]]を処理する機能である。コンストラクタとデストラクタの実装も必要とされている。前者はインスタンス生成時に、後者はインスタンス破棄時に呼び出されるメソッドである。
;プロトタイプ
:(''prototype'')の仕組みを中心にしたオブジェクト指向を[[プロトタイプベース]]と言う。プロトタイプとは識別名&中間参照ペアの集合体を指す。この集合体は一般にフレームと呼ばれる。識別名&中間参照ペアの割り当て箇所は一般にスロットと呼ばれる。スロットにはデータメンバとメソッドの識別名&中間参照ペアが代入されるので、プロトタイプはクラスと同様にデータメンバとメソッドをまとめたものになる。プロトタイプは言語によってはクラスと呼ばれている。プログラマはシステムが提供する基底プロトタイプに、自由にデータメンバとメソッドを付け足して任意の派生プロトタイプを作成できる。プロトタイプは「型」相当であり、それを複製する方式で生成されるインスタンスは「値」相当である。データメンバとメソッドはその参照にインスタンスを必要とするものと、しないものに分かれる。前者はインスタンスメンバ、後者は静的メンバに相当するものである。インスタンスにも自由にデータメンバとメソッドを付け足すことができる。インスタンスはそのプロトタイプへの参照を保持しており、プロトタイプはその親プロトタイプへの参照を保持している。これは継承相当の機能になっている。インスタンスへの自由なメンバ付け替えは多態性相当の機能になっている。ただしプロトタイプは動的な[[関数型言語]]由来の仕様なので、クラスを用いるOOPの三大要素とはまた違った視点から眺める必要がある。
;[[メッセージ (コンピュータ)|メッセージ]]
:オブジェクト指向で言われるメッセージ(''message'')は、複数方面の考え方が混同されている曖昧な用語になっている。元々はSmalltalkから始まったメッセージングベースのオブジェクト指向の中心メカニズムである。以前はクラスベースの方でもメソッドの呼び出しをメッセージを送るという具合に考えることが推奨されていた。メッセージはオブジェクトのコミュニケーション手段と標榜されているが、その忠実な実装内容はそれほど知られていないのが実情である。最も混同されているものに[[アクターモデル]]があるが、そこで言われる非同期性とオブジェクト指向で言われる遅延性は現行の実装スタイルではそれほど共通していない。[[リモートプロシージャコール]]と[[Object Request Broker|オブジェクトリクエストブローカー]]の働き方もメッセージパッシングと呼ばれることが多いが、その仕様と機能は動的ディスパッチに該当するものである。メッセージのオブジェクト指向的運用はメッセージングと名付けられているが、普通にメッセージパッシングとも呼ばれている。具体的な機能例としてはSmalltalk、Objective-C、Selfの[[メッセージ転送|メッセージレシーバー]]と、Rubyのメソッドミッシングなどがある。ただしこれらは[[アラン・ケイ]]のメッセージング構想の忠実な再現にまでは到っていない。
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:(''instance'')はクラスベースではクラスを実例化(量化)したものであり、実装レベルで言うとデータメンバ群と仮想関数テーブルをメモリ上に展開したものになる。プロトタイプベースではプロトタイプを複製する方式で生成されたオブジェクトを指す。実装レベルで言うとメモリ上に展開された識別名&中間参照ペアの動的配列になる。
;[[フィールド (計算機科学)|データメンバ]]
:(''data member'')はクラスまたはオブジェクトに属する変数。言語によってフィールド(分節)、プロパティ(特性)、アトリビュート(属性)、メンバ変数、属性と呼ばれる。データメンバは、クラスデータメンバとインスタンスデータメンバに分かれる。クラスデータメンバは静的データメンバとも呼ばれる。その中で定数化されたものはクラス[[定数 (プログラミング)|定数]]と呼ばれる。クラスデータメンバはクラス名の名前空間でスコープされたグローバル変数と同じものであり、プログラム開始時から終了時まで確保される。インスタンスデータメンバはインスタンス生成時にメモリ上に確保されるものであり、その破棄時に消滅する。インスタンスデータメンバの参照にはそのthis参照が必要である。プロトタイプベースでは、プロトタイプで定義されたデータメンバでそのアクセスにインスタンス(self)を必要としないものが静的データメンバになる。
;[[メソッド (計算機科学)|メソッド]]
:(''method'')はクラスまたはオブジェクトに属する関数。言語によってはメンバ関数とも呼ばれる。データメンバの参照に特化したものはゲッター(''getter'')アクセッサ(''accessor'')と呼ばれる。データメンバの変更に特化したものはセッター(''setter'')ミューテイタ(''mutator'')と呼ばれる。メソッドは、クラスメソッドとインスタンスメソッドに分かれる。クラスメソッドは静的メソッドとも呼ばれる。クラスメソッドはクラス名の名前空間でスコープされたグローバル関数と同じものである。インスタンスメソッドを呼び出すにはそのthis参照が必要である。プロトタイプベースでは、プロトタイプで定義されたメソッドでそのアクセスにインスタンス(self)を必要としないものが静的メソッドになる。
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:(''super'')は、継承構造のインスタンスメソッド内で用いられるものであり、現行クラスの直上スーパークラスのメソッドとデータメンバにアクセスするための参照である。オーバーライドやドミナンスを無視して、スーパクラスのメンバを呼び出すための仕組みである。
;アクセスコントロール
:(''access control'')は、カプセル化の情報隠蔽に基づいた機能であり、クラス内のデータメンバとメソッドの可視性を決定するもの。可視性とはそれにアクセス(参照/変更)きる範囲を意味する。これはレキシカルスコープ基準とクライアント基準の二通りがあるが、前者の方が一般的である。広く使われているレキシカルスコープ基準の可視性はプライベート、プロテクト、パブリックの三種が基本である。プライベートは同クラス内のメンバからのみ、プロテクトは同クラス内と派生クラス内のメンバからのみ、パブリックはどこからでもアクセス可能である。クライアント基準の可視性はクラス内のメンバへのアクセスを許可するクライアントクラスないしフレンドクラスを定義する方法で決められる。言語によってはそのクライアントクラス指定の許可は同時にそのサブ派生クラス指定の許可も兼ねている。この場合は事が多く、継承関係を利用したによるクラス群の一括クライアント定義可能であにする。
;コピーコンストラクタ
:(''copy constructor'')は、メソッドの引数に対する値インスタンスの値渡しの時に呼び出されるコンストラクタである。値渡しはインスタンス内容全体のメモリコピーであり、基本データ型では特に問題は生じないが、そうでないクラスのインスタンスでは例えばあるリソースへの参照を保持している場合に好ましくない保持重複が発生する事になる。呼び出されたコピーコンストラクタは値インスタンスを受け取り、単純コピーが許されない部分に任意の処理を施して生成した値インスタンスのコピーを引数へと渡す。
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;[[メタクラス]]
:(''metaclass'')は{{仮リンク|メタオブジェクトプロトコル|en|Metaobject|label=}}に準拠した機能名であり、実装方式は言語毎に違いがある。メタクラスは、クラスのデータメンバ、メソッド、スーパークラス、内部クラスなどの定義情報を記録した[[メタデータ]]である。メタクラスのインスタンス(実例化)がクラスになる。クラスベースのメタクラス機能は、実装レベルではシステム側が用意している特別なシングルトンオブジェクトと考えた方が分かりやすい。それにはほとんどの場合システム側が提供する抽象インターフェースを通してのみアクセスできる。メタクラスの情報内容参照ないし閲覧/変更できる機能はリフレクションと呼ばれる。プロトクライプベーの変更、インスタンス実例クラスに直ちに反映され複製元であプロトタイプベーまたはクラメタクラス機能ではも備えておりデータンバとメソッドの静的な事前定義の他、実行時にも動的にデーメンバとメソッドを付け替えできる。プロトタイプないしクラスもプログラマが自由に扱えるオブジェクトになるので、メタクラスのそのまたメタクラスを定義できる[[形而上学|形而上]]関係も存在し、基底メタクラスと派生メタクラスを定義できる[[継承 (プログラミング)|継承]]関係も存在する。またメタクラス/クラスの実体を指す「eigenclass」とってったプログラム概念も存在する。
;[[リフレクション (情報工学)|リフレクション]]
:(''reflection'')は、メタクラス内容を参照または閲覧/変更する機能であるが、言語ごとに変更できる内容範囲は言語ごとに異なっている。データメンバではデータ型、識別子、可視性が変更対象になる。メソッドではリターン型、識別子、パラメータリスト、可視性、仮想オーバーライド指定が変更対象になる。双方の追加定義と削除もできる事がある。スーパークラスも変更できる事がある。メタクラスの変更はそのまま関連クラスと関連インスタンスにリフレクション(反映)される。ただし反映範囲はこれも言語によって異なる。
:また、実行時の文字列(char配列やString)をデータメンバとメソッドの内部識別子として解釈できる機能もリフレクションに当たであり、上述のメタクラス操作よりもこちらの方がよく用いられる。これは実行時の文字列によるデータを用いてのデータメンバの参照と/メソッド呼び出し動的なアクセスを可能にする。
;[[アノテーション|メタアノテーション]]
:(''metadata annotation'')はクラスに任意の情報を埋め込める機能である。情報とは文字列と数値からなるキーワード、シンボル、テキストである。プログラマが自由な形式で書き込んで随時読み取るものであるが、システムから認識される形式のものもある。実装レベルではメタクラスに書き込まれてリフレクション機能またはその[[糖衣構文]]で読み取ることになる。[[マーカーインタフェース|マーカーインターフェース]]の拡張とも見なされている。メタアノテーションはクラス単位だけでなく、言語によってはインスタンス単位やメソッド単位でも埋め込むことができる。アドホック多相とされる。
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;[[モジュール]]
:(''module'')は1個以上のクラスをまとめたものである。ここでは[[手続き型プログラミング|手続き型]]や[[構造化プログラミング]]でのそれではなく、OOP言語で扱われているモジュール概念について説明する。ただしその定義は言語間で様々である。上述のパッケージと同等の機能にしているが、オブジェ言語もある。ミット指向下スインモジューために使われる変数と関数のメンバグープをそれにしてトレイトと同等の機能にしている言語っぱらある。また、クラス群の動的ローディング(遅延バインディング)と情報隠蔽に焦点を当てたプログラム概念である。情報隠蔽は[[カプセル化ソフトウェアコンポーネント]]相当の機能にしている言語もある。この動的ローディングは遅延バインディングと同なり自身実行中プロセスへ内包クラス外部公開(輸出)と内部隠蔽逐次追加定義できる。自身が参照する他モジュールは輸入すると可能にしてう形式で明確に宣言される。動的ローディング用途のモジュールでは内包する基底クラスの詳細を明らかにしつつも、その派生クラスの種類と詳細を明らかにしていないケースが多々あるので、その派生クラスを代入するための動的束縛型は特に不透明型(''opaque type'')と呼ばれる。不透明型はもっぱら型制約と併せて用いられる。
;[[モンキーパッチ]]
:(''monkey patch'')はモジュールやスクリプトファイルなどの動的ローディングを用いて、インタプリタ実行後またはコンパイル後のソースコード内容を変化させる手法である。ソースコードに特定専用のフィルター処理を記述しておき、その中で任意の箇所を動的ローディングされたモジュール内のクラスや関数や変数で置き換えさせる事で、その時の配置モジュールに合わせた処理内容の変化ができを起こせる。モジュールを外せば専用のフィルター処理は無効になる。この置き換え(パッチ当て)は遅延バインディング相当である。ソースコードを変えなくてよいのが条件である。
;[[ジェネリクス]]
:(''generics'')は、クラスメンバの任意の「型」を総称化したままのクラス定義を可能にし、そのクラスをインスタンス化する各構文箇所で「型」の詳細を決定できるようにしたコンパイル時の静的な機能である。言語によっては[[テンプレート (プログラミング)|テンプレート]](''template'')と呼ばれる。ここでの「型」とはデータメンバの型やメソッドの引数値/返り値/計算値の型を指している。クラス内のそれらを総称化して型変数にし、コンストラクタ呼び出し時の仮型引数に実型引数を適用すると、型変数に実型引数を当てはめたインスタンスが生成される。総称化された型を持つクラスはジェネリッククラスと呼ばれる。特定の型に依存しないクラスを汎用的に定義できるので、型が違うだけの重複コードを削減できるという利点がある。パラメトリック多相とされる。言語によっては、ジェネリッククラス同士を[[共変性と反変性 (計算機科学)|共変性と反変性]]による継承関係で結ぶことができる。これはジェネリッククラスに適用する実型引数の継承関係を、そのジェネリッククラス同士の継承関係にシフトする仕組みである。<code>class 猫 extends 動物</code>とすると<code>List<猫></code>は<code>List<動物></code>のサブクラスになる。共変性は実型引数の継承関係をそのままジェネリッククラスの継承関係にシフトするが、反変性ではこれを逆にする。共変性では<code>List<猫></code>は<code>List<動物></code>のサブクラスだが、反変性では<code>List<動物></code>は<code>List<猫></code>のサブクラスになる。[[共変性と反変性 (計算機科学)|共変性と反変性]]はまとめてバリアンス(''variance'')と呼ばれる事がある。
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:オブジェクト指向下の関数オブジェクト(''function object'')は、メソッドそのものをオブジェクトして扱うというプログラム概念である。関数型プログラミングの[[クロージャ]]をモデルにしている。インスタンスを単に関数名らしく見せるための糖衣構文である( )[[演算子オーバーロード]]や、メソッドシグネチャを型種にした[[関数ポインタ]]型の変数である[[デリゲート (プログラミング)|デリゲート]]などの実装形式がある。デリゲート変数にはインスタンスメソッドへの参照が代入されてクラス種類とそのインスタンス種類による処理の多相を表現できる。プロトタイプベースにおける関数はオブジェクトそのものと言える存在であり、ローカル変数がプロパティ存在になっているのでクロージャが自然表現できる他、写像の型として解釈されるローカル変数はメソッドの表現手段になる。そのメソッドの引数構成もプロパティ存在になっている場合はそれも変更できてクラスベースにおけるリフレクションを自然表現する。
;[[コルーチン]]
:オブジェクト指向下の[[イテレータ]][[ジェネレータ (プログラミング)|ジェネレータ]]、デコレータは、コルーチン(''coroutine'')機構に基づいている。通常のサブルーチンがコールする側の復帰アドレスだけをスタックに積むのに対して、コルーチンはコールする側とコールされる側双方の復帰アドレスをスタックに積むというサブルーチン機構である。各要素への作用が記されたオペレータが[[無名関数]]やラムダ式などの形態で[[コンテナ (データ型)|データコンテナ]]に渡されると、各要素をフェッチするデータコンテナと、フェッチされた要素を参照ないし加工するオペレータが交互に[[コールスタック]]を用いて連携動作を繰り返す。イテレータはデータコンテナの各要素にオペレータを適用してそのまま扱う結果値に置き換えていく機能である。ジェネレータは(A)データコンテナを複製してその複製先の各要素にオペレータが反復処理を終えた後にその総和値や選別リスト適用していくという更新コンテナ生成する機能である。デコ、(B)オペレータはメソッドをデータコンテナと見なしそメソッド内での関数コールをそれぞれ要素を選別していき最後に全選別要素を結合したコンテナを生成する機能(C)オペレータがフェッチされた関数名と引数欄データコンテナ見ながら任意走査して各要素処理総和値挿入生成する機能の三種がある。
;[[メッセージ転送|メッセージレシーバー]]
:(''message receiver'')はメッセージを受け取ることに特化されたメソッドである。メッセージレシーバーはインスタンスのデフォルトで呼び出される窓口レシーバーの形態と、指定メソッドが存在していない時に呼び出される補足レシーバーの形態がある。窓口レシーバーのメッセージはセレクタと引数のペアまたはそのどちらかだけという書式である。窓口レシーバーは極めて柔軟なプロセスを実現できるが、実装の煩雑さとオーバーヘッドが大きくなる。セレクタは識別子またはペア引数の注釈になる文字列である。セレクタはメソッドへの自動分岐が主な用途になるが、そのフィルター処理と取りこぼし処理の中でただのキーワードとしても自由に解釈できる。補足レシーバーのメッセージはメソッド名文字列と引数配列という書式になっており、いかなるメソッドシグネチャにも該当しなかった取りこぼしになる。このメソッド名文字列と引数配列を自由に解釈して柔軟な処理を行える。補足レシーバーの機能名はメソッドミッシングなどである。