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|独自研究=2012年10月
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'''アルコールハラスメント'''({{和製英語|alcohol harrassment}}
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飲酒の強要等の社会問題は広く[[パワーハラスメント]]の一種として捉えられることもあるが、アルコールハラスメントは[[日本]]でアルコール飲料に関する嫌がらせを意味する概念としして用いられている和製英語である<ref name="kosekenpo" />。日本では、アルコールハラスメントが原因での死亡者がでたことをきっかけとして[[1980年代]]以降に急速に問題視されはじめた<ref>{{Cite book|和書|editor=外池良三|title=世界の酒日本の酒ものしり辞典|publisher=東京堂出版|edition=初版|date=2005-08-15|pages=22ページ|id=ISBN 4-490-10671-8}}</ref>。▼
この問題に関する日本の代表的な組織である
#'''飲酒の強要'''
#:上下関係
#'''イッキ飲ませ'''<ref name="kosekenpo" />。
#:一気に飲ませること(「イッキ、イッキ」などと、一気に、つまり一度うつわに口をつけたらそのまま飲み干すことを強要すること)。また飲む速度を競わせること<ref name="kosekenpo" />。
#'''酔いつぶし'''<ref name="kosekenpo" />。
#飲めない人への配慮を欠くこと▼
#:はじめから、誰かが酔いつぶれる状態になることを[[意図]]して飲み会を行うこと。意図があるので明らかな'''[[傷害罪|傷害罪(傷害行為)]]に当たる'''。
#:本人の体質や本人の意向を無視して飲酒をすすめる行為や宴会などの場に酒類以外の飲み物を用意しないことなどである<ref name="mutou2017" />。▼
▲#'''飲めない人への配慮を欠くこと'''<ref name="kosekenpo" />
#酔ったうえでの迷惑行為▼
▲#:本人の体質や本人の意向を無視して飲酒をすすめる行為や、宴会などの場に酒類以外の飲み物を用意しないこと、また飲めな
▲#'''酔ったうえでの迷惑行為'''<ref name="kosekenpo" />
#:酔ってたとえばいわゆる「悪ふざけ」を始めたり、言葉でからんだり、暴言をはいたり、暴力をふるったり、セクハラなどをすること<ref name="kosekenpo" />
なお、飲酒の強要・一気飲ませ・意図的な酔いつぶしなどは、一般に、なんらかの立場の優位(先輩であること、上長であること、社長であることなど。英語で言う「パワー」)を悪用して行われるので、それらは一般に[[パワーハラスメント]]の一種でもある。
▲なお、ハラスメント(嫌がらせ)の一種と捉えられているものの、実質的には飲酒を強要する行為は単なる嫌がらせを超える人権侵害行為であり、死者が出ている事例もあり傷害行為にあたるとの指摘もある<ref name="kosekenpo">{{Cite web |url=http://www.kosekenpo.or.jp/UploadedFiles/2017_12(1).pdf|title=すこやか特集 |publisher=コーセー健康保険組合|accessdate=2019-03-27}}</ref>。
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=== 酒の功罪、体質の多様性、飲酒の強要の背景 ===
アルコールを受け付けない体質は多くが遺伝性の要因によるものである<ref name="kosekenpo" />。特に日本人は約35%がアルコールの解毒能力が弱く急性アルコール中毒に陥りやすい[[ALDH2]](2型アルデヒド脱水素酵素)ヘテロ欠損型の体質であり遺伝的にお酒に弱いと言われている<ref name="mutou2017" />。▼
もともと酒類には良い面と、悪い面がある。一面としては、軽度の飲酒は楽しい気分になり(注 - あくまでお酒を飲める体質の人であれば、の話である)、人間関係を円滑にする潤滑剤の役目を担う場合もあるが、他方で、過度なアルコール摂取は[[めまい|眩暈]]・吐き気といった不快な症状をもたらし、しばしば[[嘔吐]]に至る。特に、酒類が飲めない体質の人(内臓でのアルコール代謝・分解ができなかったり、その速度が遅い体質の人)にとっては酒は一種の[[毒物]]であり、微量でも体調を悪化させるものであり、健康を害するものである。また、急激・大量の飲酒は、酒に弱かろうが強かろうが、[[急性アルコール中毒]]の原因となり、端的に言えば[[死]]の原因ともなりうる。また[[酔っ払い]]つまり酔った状態の人というのは、理性や自制心を失い、さまざまな迷惑行為を行い、しばしば事故や犯罪も起こす。飲酒が原因で恒久的に評判を落としたり、酒を飲んでやらかしたことが原因でキャリアをすっかり棒に振ってしまう人も多い。また酒は、たちの悪い習慣性の[[アルコール中毒]]も引き起こす。
アルコールを受け付けない体質は、多くが遺伝性の要因によるものである<ref name="kosekenpo" />。本人の落ち度ではまったくないし、飲酒の回数や訓練などで改善するものでもない。
一方、社会的要因も挙げられている。例えば、飲酒の強要は上下関係、伝統、社会的な習慣などから心理的圧力をもたらすことがある<ref name="mutou2017" />。なお、飲酒の強要などの問題は、上下関係や長幼の序を重んじる東アジアに特有のものとの分析がある一方、アメリカでの大学生による飲酒事故などからそのような背景のみではないとの分析もある<ref name="masaki2013" />。▼
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▲=== 日本 ===
==== 企業内アルコールハラスメント ====▼
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== 日本 ==
=== 日本の[[企業]]では、上述の5つの問題行為がおこなわれがちである。
たとえば、誰かを歓待しようとする場合に、(歓待しようとする側にノウハウやアイディアが少なく(いわゆる「ひき出し」が少なく)、やたらと安直に酒宴を行おうとする愚かな者が多く、その結果、しばしば酒宴が行われてしまうが、招かれた側は、(心理的に断りづらいので)酒宴の場に、やむなく身を置いてしまうことになるが、そもそも酒を飲みたくない人や飲めない人がかなりの割合で含まれており、結果として、酒宴を行おうとする者の意図とは反対に、むしろ迷惑がられること、不快に思われることもしばしば、ということになる。<ref>慎重な人は、事前にひとりひとりの酒に対する嗜好を尋ねておき、ひとりでも酒の苦手な人がいれば、酒宴以外の手法を選び、酒抜きで歓迎する手法を選ぶ。世の中には、歓待する手法は無数にある。</ref>
人の状態はさまざまで、アルコールが代謝できない体質の人、酒に弱い体質の人、酒で心理的なガードがゆるむのを心底嫌っている人、酒癖が悪い人(つまり酒を飲むと、トラブルを引き起こしてしまいがちな人)で酒を自重している人などがおり、それらのタイプの人々を総計すると、実際には相当な割合に達している。本当は、事前に社内アンケートなどを行って、ひとりひとりの人の酒に対する態度・嗜好を尋ねておいたほうがよいのだが、それを行わないずさんな人が多すぎるのである。
なお「歓待」のつもりの酒宴が飲酒の強要の場になってしまっているというパターンは、企業の組織内部で従業員同士でやらかしてしまう場合もあるし、また企業の従業員(特に営業担当の従業員)が(組織の外の)顧客を相手にやらかしてしまう場合もある。
特に日本の[[企業]]組織内部では、上下関係にまつわる心理的な圧力は強く、そもそもパワーハラスメントが行われがちで、その結果アルコールハラスメントも行われがち、という状況にある。企業のメンバーどうしで開かれる酒宴では、しばしば上司が「部下の労をねぎらう」というつもりで杯をすすめる、という(良くない)風習がある。「上司から勧められた杯を返すことは、礼を失する行為」などという間違った観念が長らく横行してしまったため、杯を進められた部下の側には相当な心理的な圧力がかかり、本当は断りたいが断れない、という状況に置かれてしまうことになる。
また、女性社員が、上司にこびて、一種の「点数かせぎ」をするために酌をしてまわる行為も行われることがあるが、これは弱い立場の者の行為なので、いわゆる「パワハラ」にはあたらないが、こうした行為でも酌を断りづらい雰囲気をつくってしまうと、その上司が酒を飲みたくないと思っている場合(上司だからといって飲みたいと思っているとは限らない)は、(女性従業員の意図に反して)やはりアルコールハラスメントの一種になってしまう。
アルコールハラスメントの問題は、日本では、[[1980年代]]以降に急性アルコール中毒で死亡する20代の若者が続出したことから注目されるようになった。特に1980年代から1990年代にかけて[[大学生]]などの'''イッキ飲み'''が急性アルコール中毒死の原因として注目され、社会問題として取り沙汰されるようになると、死亡した大学生の遺族らによる呼び掛けによって、社会運動のキーワードとしてこの語は広まった。
[[大韓民国|韓国]]など[[儒教]]思想の色濃い地域では、この[[ヒエラルキー]]を重視する同思想の関係から目上の者が目下の者に飲酒を勧めた場合、社会通念上でも固辞することをタブーのように捉える・あるいは固辞されると面目が潰されたと感じる傾向がある。この問題は[[爆弾酒]]のような飲酒方法にも絡む。
アメリカの大学ではヘイジング(hazing)と呼ばれる「新入りいじめ」の問題があり、この言葉自体は飲酒の強要を指すものではないが、特定のサークルや社交クラブに加わる通過儀礼としてゲーム感覚の飲酒が課され、酒がヘイジングの道具として使用されることで飲酒事故に発展する例がある<ref name="masaki2013" />。このような問題への対策としてアメリカの多くの大学では飲酒関連問題に対応する委員会が設置されアルコールポリシーが定められている<ref name="masaki2013" />。
▲=== 危険性 ===
▲==== イッキ飲み ====
イッキ飲み(一気飲みとも)は、1980年代頃から大学生らの間で流行した、一息に酒を飲み干す行為のことで、当初は[[ビール]]などの[[アルコール度数]]の低い酒を大ジョッキで飲み干す、一種のお座敷芸だった。しかしこれが次第に、場を盛り上げるために「コール」(英:callと同義)と呼ばれる囃し立てと共に他人に強要されるようになってくると、場をしらけさせているとして下戸までもがイッキ飲みを強要されるようになってきた(→[[場の空気]])。
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[[塩川正十郎]]の甥が大学で一気飲みを強要されて急性アルコール中毒で急死し、当時[[官房長官]]だった塩川は朝日新聞への投書でこの風潮に問題提起している。
飲酒に伴う危険に関して、従来は平均飲酒量や一定期間での総飲酒量で評価されることが多かった<ref name="mutou2017" />。しかし、ビンジ・ドリンキング(binge drinking、無茶飲み)と呼ばれる非日常的な大量飲酒のリスク(事故、虚血性心臓病、[[アルコール依存症]]など)も注目されるようになっている<ref name="mutou2017">{{Cite web |url=https://www.hiroshima-kokuhoren.or.jp/hokensya/pdf/h29_shiryou_b.pdf|title=武藤岳夫「アルコール健康障害の理解と対応~生活習慣病との関連を中心に~」|publisher=広島県国民健康保険団体連合会|accessdate=2019-03-27}}</ref>。
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