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| base of operations = [[西インド諸島]]
| rank = 船長
| serviceyears = [[
| commands = ''ラーク号'' ([[スループ]])<br />''レンジャー号'' (砲6門
}}
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== キャリア ==
=== ジェニングスの部下として ===
ヴェインの初期の人生についてはほとんど知られていない。
ジェニングスは海賊共和国として知られるニュープロビデンス島ナッソーを拠点に置いた。ヴェインは海賊が支配する港町で自由を謳歌し、財宝船からの戦利品を使って暮らし、海賊の流入以前からの入植者を脅しつけたりして気ままに過ごした<ref>ウッダード P225</ref><ref>ウッダード P269</ref>。
=== 王の恩赦 ===
[[1717年]][[9月5日]]、イギリス国王[[ジョージ1世 (イギリス王)|ジョージ1世]]が全ての海賊に対して足を洗うことを条件に恩赦を申し出た<ref>ウッダード P311</ref>。この報せは[[バミューダ]]からナッソーに届けられ、海賊たちは大きく2つの勢力に分裂してしまった<ref>ウッダード P313-314</ref>。ジェニングス、[[ベンジャミン・ホーニゴールド]]、[[ジョサイア・バージェス]]などは恩赦を支持したが、[[ジャコバイト]]でありジョージ1世に反感を覚える勢力はこの恩赦に激怒した<ref>ウッダード P314-315</ref>。[[ポールスグレイブ・ウィリアムズ]]、[[クリストファー・ウィンター]]、[[ニコラス・ブラウン]]、[[エドワード・イングランド]]、[[ジャック・ラカム]]、[[クリストファー・コンデント]]などがここに含まれ、ヴェインはそのリーダー格であった<ref>ウッダード P315</ref>。ヴェインは恩赦を受け入れようとするかつての師ジェニングスやそれに同調する者たちに深く失望し、密かに外部のジャコバイト支持者に支援を要請することにした。イギリス軍人でありながら[[ジェームズ・フランシス・エドワード・ステュアート|ジェームズ・スチュアート]]に寝返ったジョージ・カモック艦長にメッセージを送り、[[メアリー・オブ・モデナ]]に取り次いでバハマ諸島およびバミューダにジャコバイトの軍艦を派遣するよう依頼した<ref>ウッダード P316</ref>。
1718年1月、海賊たちの意見は纏まらず、ヴェインは島の防備を強化してイギリス政府と交渉すべきだと主張したが、ジェニングスはバミューダのベンジャミン・ベネット総督に投降してしまった<ref>ウッダード P318-319</ref>。コンデントも[[アフリカ]]や[[ブラジル]]に活動拠点を移す準備を始め、その他多くの海賊たちも各地のイギリス植民地に散らばってしまった<ref name="P318">ウッダード P318</ref>。ヴェインは16人の仲間を連れてスループ船ラーク号を入手し、ナッソーから近場の停泊地で海賊船として整備した<ref name="P318"></ref>。
[[2月23日]]、イギリス海軍のヴィンセント・ピアース艦長が指揮するHMSフェニックス号が王の布告を直接伝えるためにナッソーにやって来た<ref>ウッダード P319-320</ref>。島に残っていたホーニゴールドなどの恩赦の支持者たちはピアースを丁重に迎え入れ、島の抵抗勢力であるヴェインについて報告した<ref>ウッダード P321</ref>。ピアースはそれらを元にバスケス・ケイという小さな入江に潜伏していたヴェインのラーク号を捕捉<ref name="P321-322">ウッダード P321-322</ref>。勝ち目がないと見たヴェインの一味は投降せざるを得なかった<ref name="P321-322"></ref>。ピアースは国王の名の下にラーク号を没収し、ヴェインら囚人たちをナッソーへ連行した<ref name="P322">ウッダード P322</ref>。ピアースがナッソーに戻ると、ホーニゴールド、バージェスなどの穏健派の海賊船長たちが「多くの者がヴェインの処刑を不安がっている。彼らを釈放すればナッソーの住民を投降させるのに大きな意味を持つだろう」と助言してきた<ref name="P322"></ref>。ピアースはこれを受け入れ、ヴェインとその一味(エドワード・イングランドも含まれる)を釈放し、王の寛大さを示した<ref name="P322"></ref><ref>http://www.cindyvallar.com/hornigold.html</ref>。さらにピアースは新たなバハマ総督はウッズ・ロジャーズであり、夏ごろにナッソーに到着すること、恩赦を受ける者には署名入りの証明書が発行されること、その証明書をもとに保護されることなどを説明した<ref name="P323">ウッダード P323</ref>。ヴェインを連れたホーニゴールドらは去って行ったが、これは大きな過ちであった<ref name="P322"></ref>。
[[2月26日]]、フェニックス号に投降を希望する海賊たちが殺到してきた<ref name="P323"></ref>。ホーニゴールド、バージェス、ポールスグレイブ・ウィリアムズなどが名を連ね、ホーニゴールドの海賊仲間である[[ジョン・コックラム]]、[[ダニエル・スティルウェル]]、さらにジェニングスの仲間であったリー・アシュワースなども恩赦を受け入れた<ref name="P323"></ref>。ヴェインもこれに加わったが、それは表向きのことであり、密かに海賊行為の再開を目論んでいた<ref>ウッダード P323-324</ref>。3月に入ると、ヴェインの一味はボートを使って秘密裏にフェニックス号を通り過ぎ、港の入り口を通過した<ref name="P324">ウッダード P324</ref>。この一味にはエドワード・イングランド、ジャック・ラカムなど40人が参加しており、ナッソーの東部に潜伏した後にジャマイカの貿易スループ船を2隻のボートで拿捕した<ref>ウッダード P324-325</ref>。ヴェインはスループ船で港の裏口を通ってフェニックス号から見える場所まで移動し、そこで海賊旗を掲げて軍艦に見せつけるように戦利品を漁り始めた<ref>ウッダード P325-326</ref>。この侮辱を受けたピアースはただちに討伐隊を編成してボートで海賊船を目指したが、逆に撃退されてしまった<ref>ウッダード P326-327</ref>。これによって海賊たちの投降ムードは大きく変動した。住民の中にはヴェインに堂々と補給品を提供する者まで現れ、フェニックス号の存在感は薄れた<ref>ウッダード P327</ref>。ピアースは迂闊にも没収していたラーク号を個人的な商取引のために出航させたが、これもヴェインに奪い返されてしまった<ref>ウッダード P327-328</ref>。ヴェインは急速に仲間を増強し、その一味は75人にまで膨れ上がり、もはやフェニックス号では手に負えなくなってしまった<ref>ウッダード P328</ref>。[[4月4日]]、ヴェインは外洋に脱出し、その数日後にはナッソーの掌握に失敗したピアースも去って行った<ref>ウッダード P328-329</ref>。
その後、ヴェインはバハマ周辺の海域を荒らしまわり、その残酷さで悪名を轟かせた。特にバミューダのベネット総督が海賊を拘束したというニュースを聞いてからは、バミューダ船への扱いはとりわけ残酷になった<ref>ウッダード P334</ref>。また、ヴェインとその乗組員たちは襲った船の船員たちが降伏したにも関わらず、彼らに暴行を加えた。時には拷問を加えて金目の物の在り処を聞き出したりもした<ref name="P141">ブラック P141</ref>。4月14日、ヴェインはエドワード・ノース船長のエドワード・アンド・メアリ号を拿捕した。ヴェインと乗組員たちは捕虜を[[バウスプリット]]に縛り付け、目の近くに点火したマッチを近づけながら、銃を口に突っ込んで尋問したという<ref name="P141"></ref>。目玉を焼き盲にした後で撃ち殺してやると脅迫し、金目の物は奴隷も含めて全て奪った<ref>ウッダード P335</ref>。更に5月17日、ヴェインはバミューダ籍のダイヤモンド号を拿捕し、乗組員たちを殴り、吊るすなどの虐待を加えた<ref name="P141"></ref>。その頃にはラーク号はレンジャー号と改名されていた<ref name="P336">ウッダード P336</ref>。またヴェインはジャコバイトの支援を受けられると楽観視していたという<ref name="P336"></ref>。
ヴェインの一味が[[4月28日]]にナッソーへ戻った時には、さらにバミューダ船3隻、ジャマイカ船3隻、ニューヨーク船1隻、ボストン行きの船1隻を獲物にしており、一味の人数も90人以上に増えていた<ref>ウッダード P336</ref>。その数日後、ナッソーに黒髭こと[[エドワード・ティーチ]]が帰還した<ref name="P337">ウッダード P337</ref>。ヴェインはティーチらと旧交を温めたものと思われる<ref name="P337"></ref>。
ヴェインはその後もジャコバイトの援軍を待ち続けたが、ついにそれが訪れることはなかった<ref name="P354">ウッダード P354</ref>。やがてヴェインは援軍よりも先に国王に任命された新総督がやって来るだろうと悟った<ref name="P354"></ref>。海賊共和国の崩壊を覚悟したヴェインは、5月末、エドワード・イングランドやラカムを集め、クルックド島近くでかつての仲間であるジョン・コックラムの弟が船長を務めるリチャード&ジョン号を奪い取った<ref>ウッダード P354-355</ref>。ヴェインにとっては恩赦を受け入れた元海賊も獲物だったのである<ref>ウッダード P355</ref>。
6月、ヴェインは数隻を拿捕し、その内1隻の指揮をエドワード・イングランドに任せた<ref name="P356">ウッダード P356</ref>。ヴェインの操舵手はラカムが引き継ぎ、一味は捕らえたフランス船を旗艦とした<ref name="P356"></ref>。さらに[[6月23日]]には[[ポルトープランス]]近くのレオガヌ港にて別のブリガンティン船サン・マルタン号を捕えて乗り換えている<ref name="P356"></ref>。一味はこの航海でさらに[[ロードアイランド]]のドレイク号、[[アンドロス島]]からの熱帯材を満載したアルスター号、ロードアイランドのイーグル号、そしてナッソーの港で2隻のスループ船ダブ号とランカスター号を拿捕した<ref>ウッダード P356-357</ref>。ランカスター号の船長はかつてナッソーの政府高官であったトマス・ウォーカーの息子ニールが船長を務めていた<ref name="P357">ウッダード P357</ref>。この大規模な戦果を挙げたヴェインは勢いよく上陸し、ホーニゴールドなど恩赦を受け入れた海賊に対して横柄な態度を取った<ref name="P357"></ref>。そして入港する船をことごとく拘束し、約20日間の間総督のごとく支配した<ref name="P357"></ref>。この大騒ぎの後、ヴェインはサン・マルタン号に大砲を装備し、出航の準備を整えた<ref name="P357"></ref>。ヴェインの計画ではブラジルに行き、そこでコンデントや[[オリビエ・ルバスール]]などと合流しようとしていた<ref name="P357"></ref>。
=== ウッズ・ロジャーズとの対決 ===
[[File:Charles Vane, Defying the Governor, from the Pirates of the Spanish Main series (N19) for Allen & Ginter Cigarettes MET DP835025.jpg|thumb|総督に反抗するチャールズ・ヴェイン Allen & Ginterのシガレットカード「Pirates of the Spanish」(N19)シリーズ]]
[[7月
ヴェインは次々と船を奪っては乗り換えている。まず[[バルバドス]]のスループを拿捕し、
さらにその頃、[[スティード・ボネット]]討伐のため、
▲ヴェインは次々と船を奪っては乗り換えている。まず[[バルバドス]]のスループを拿捕し、配下のイェーツ他25名を乗り込ませた。次には[[大砲]]12門搭載のブリガンティン、船名は「レンジャー」と改名された。ヴェインはその性格ゆえに嫌われていた。彼はイェーツのスループ船とそれに乗船している乗組員に対して横柄であり、いつも蔑ろにした。人手の少ないイェーツの船に多数の黒人奴隷を積み込んだことも彼らの反感を買う要因となり、嫌気がさしたイェーツはついにヴェインの一味から離脱して国王の赦免を受けることを決めた<ref name=":2">チャールズ・ジョンソン『海賊列伝(上)』P181</ref>。
[[9月14日]]、ロジャーズはヴェインの一味がバハマ諸島アバコ島のグリーン・タートル・ケイに潜伏しているという情報を得た<ref>ウッダード P390</ref>。ヴェインはそこで戦利品の分配や傾船修理、そしてナッソーに関する情報収集を行っていた<ref name="P391">ウッダード P391</ref>。ロジャーズはホーニゴールドおよびジョン・コックラムを[[私掠船]]の指揮官に任命し、武装したスループ船を与えてヴェインの逮捕に向かわせたが、彼を捕らえることはできなかった<ref>ジョンソン P194-P199</ref>。だがホーニゴールドたちは代わりにウルフ号の船長ニコラス・ウッドオールを連行した<ref>ウッダード P391-392</ref>。ウッドオールは恩赦を受けた元海賊で、ロジャーズの目を盗んでヴェインに物資や情報の提供をしていたのである<ref name="P391"></ref>。ロジャーズはウルフ号を没収し、ウッドオールを投獄した<ref>ジョンソン P197</ref>。
▲その頃、[[スティード・ボネット]]討伐のため、[[サウスカロライナ植民地]]のロバート・ジョンソン総督によって派遣されたウィリアム・レット大佐が、ヴェインに物資を掠奪されてしまったという船に出会った。彼らはレットに一味が南に向かったという情報を話したが、これはヴェインの嘘であり、実際には北進していた。これによりヴェインはレットの手から逃れる<ref name=":3">チャールズ・ジョンソン『海賊列伝(上)』P182</ref>。
=== 落日 ===
ヴェインは
再起を図ったヴェインはいくつかの船を襲って船員を仲間に加えた後、[[ホンジュラス湾]]のボナカ島で[[ジャマイカ]]籍のスループ船を奪い、これを海賊船とした。だがヴェインに最期の時が迫っていた。1719年2月、ヴェインの船は嵐で難破してホンジュラス湾の無人島に漂着した。数ヶ月後、ようやく船が通りがかったが、この船の船長はかつて海賊だったホルフォードという人物で、ヴェインの顔見知りであった。ヴェインは救助を求めたが、彼の性根を知っているホルフォードはこれをにべもなく拒否して行ってしまった。その後また別の船が通りがかり、今度は救助されるが、その船の船長はホルフォードの知り合いであった。正体を見破られたヴェインは足かせをはめられてジャマイカに連行され、[[裁判]]ののち[[絞首刑]]に処された<ref name=":6">
== ヴェインが登場する作品 ==
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== 脚注 ==
{{Reflist|25em}}
== 参考資料 ==
*Menefee, S.P. "Vane, Charles," in ''Oxford Dictionary of National Biography,'' vol. 56 (2004): pp. 94-95.
*Pickering, David. ''Pirates''. CollinsGem. HarperCollins Publishers, New York, NY. (2006):p-75.
*コリン・ウッダード(著)、大野晶子(訳)、『海賊共和国史 1696-1721年』2021年7月、パンローリング株式会社
*チャールズ・ジョンソン(著)、朝比奈一郎(訳)、『海賊列伝(上)』2012年2月、中公文庫
*クリントン・V・ブラック『カリブ海の海賊たち』増田義郎訳、1990年9月、新潮選書
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