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'''NeXT'''(ネクスト、{{lang-en-short|'''NeXT Software, Inc.'''}}<ref group="注">正式名称である社名は、'''NeXT, Inc.'''、'''NeXT Computer, Inc.'''、'''NeXT Software, Inc.'''へと変遷している。</ref>)は、[[アメリカ合衆国]][[カリフォルニア州]][[レッドウッドシティ (カリフォルニア州)|レッドウッドシティ]]を本拠地とした[[コンピュータ]]企業で、[[高等教育]]やビジネス市場向けの[[ワークステーション]]を開発製造していた。[[Apple]]の創業者の1人[[スティーブ・ジョブズ]]が
NEXTSTEPの主要な[[アプリケーションプログラミングインタフェース|API]]は、後に[[OPENSTEP]]として標準化された。NeXTは1993年に[[ハードウェア]]事業から撤退し、いくつかの[[OEM]]へのOPENSTEP仕様販売と自社製の実装の販売に注力するようになった。NeXTはまた、世界初の企業向け[[Webアプリケーションフレームワーク]][[WebObjects]]の開発でも知られている。WebObjectsは5万ドルと高価だったために広く普及することはなかったが、[[ウェブページ|Webページ]]の動的生成に基づいた初期の[[Webサーバ]]として特筆すべき例であった。
== 歴史 ==
=== 1985年
1984年、
会長として、ジョブズはMacintoshを売り込むために各地の大学や研究者をしばしば訪問していた。当時の[[フランス共和国大統領]][[フランソワ・ミッテラン]]を迎えた午餐会で、ジョブズは[[ノーベル化学賞]]を受賞した[[ポール・バーグ]]と出会った<ref name="nextbigthing72">{{cite book | first=Randall | last=Stross | title=Steve Jobs and the NeXT Big Thing | publisher=Athenium | year=1993 | page=72 | isbn=0-689-12135-0}}</ref><ref>{{Cite news|last=Shannon|first=Victoria|title=Apple losing its polish in Franc| work=International Herald Tribune|page=11|date=2006-05-22|url= http://www.iht.com/articles/2006/05/21/business/lobbyside.php }}</ref>。バーグは実験室で実際に実験しないで、[[教科書]]だけで[[遺伝子組み換え]]を学生に教えるにはどうしたらよいかで悩んでいた。遺伝子組み合えの実験にはかなり費用がかかり、当時の[[パーソナルコンピュータ]] (PC) でシミュレートするには複雑すぎた。バーグはジョブズに、彼の
ジョブズはバーグの描いたワークステーションに好奇心をそそられ、高等教育向けコンピュータ企業を1985年秋に立ち上げることを考えたが、当時
数カ月間
ジョブズは
1986年、ジョブズは有名なグラフィックデザイナーである[[ポール・ランド]]に10万ドルでブランド・アイデンティティ制作を依頼した<ref name="rand">{{cite book | first=Steven | last=Heller | coauthors=Helfand, Jessica; Lois, George | title=Paul Rand | publisher=Phaidon Press | year=2000 | page= 256|isbn=0-7148-3994-9}}</ref>。ランドは、ロゴの正確な角度(28°)や社名の正確な綴り (NeXT) などを含む100ページのブランドの詳細を示す冊子を作った<ref name="rand"/>。最初の外部からの出資は[[テキサス州]]の実業家[[ロス・ペロー]]からの資金提供だった。ペローは[[テレビ番組]]''The Entrepreneurs''で、ジョブズとNeXTの従業員を初めて見た。1987年、ペローは2000万ドルを出資し、NeXTの株式の16%を得た(つまり、この時点で会社の時価総額は1億2500万ドル)。1988年には、取締役会に参加することになった<ref>{{cite book | first=Jeffrey S. | last=Young | coauthors=Simon, William L. | title=iCon: Steve Jobs | publisher=John Wiley & Sons | year=2005 | page=134 | isbn=0-471-72083-6}}</ref>。
=== 1987年
==== 第1世代 ====
当初は、[[アドビ|アドビシステムズ]]と後に[[Display PostScript]]となる技術の開発を行っていたが、これを実装できそうな[[オペレーティングシステム]]がその時点では存在しなかったことから、[[1986年]]中ごろ会社の方針を転換。単なるローエンドのワークステーションだけでなく、これを搭載できるオペレーティングシステムならびにコンピュータを総合的に開発することとなった。これを受けて社名はNeXT Computer, Inc.に変更された。[[カーネギーメロン大学]]で[[Mach]][[カーネル]]を開発していた[[アビー・テバニアン]]が同社に参加してチームを率い、NeXTSTEPオペレーティングシステムを開発した。ハードウェア部門を率いたのは創業当時からのメンバーであるRich Pageで(かつて[[Lisa (コンピュータ)|Lisa]]開発チームの責任者だった)、ハードウェアの設計開発を行った。NeXTの最初の工場は1987年、[[カリフォルニア州]][[フリーモント (カリフォルニア州)|フリーモント]]に設けられた<ref name="nextbigthing75"/>。この工場は年間15万台のマシンを製造する能力があった<ref name="nextbigthing75"/>。NeXTの最初のワークステーションは公式には[[NeXTcube|NeXT Computer]]と名付けられたが、[[マグネシウム合金]]製のマットブラックの一辺が約1[[フィート]]の正立方体という特異な形状から、一般に "the cube" と呼ばれた<ref name="byte"/>。このデザインは、Apple IIcをデザインした[[ハルトムット・エスリンガー]]率いる [[フロッグデザイン]] に依頼したものである<ref>{{cite news| last = Bonnera| first = Paul| title = The heart of a new machine (frogdesign for NeXT computer)| work = PC/Computing Magazine| page = 144|date=February 1989}}</ref>。
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1992年、NeXTは2万台のコンピュータを売り上げたが(これにはマザーボードをアップグレードした数も含んでいる)、同業他社に比べるとその台数は少ない。1992年の売上高は1億4000万ドルとなり、それを受けてキヤノンはさらに3000万ドルを出資することになった<ref>{{cite book | first=Jeffrey S. | last=Young | coauthors=Simon, William L. | title=iCon: Steve Jobs | publisher=John Wiley & Sons | year=2005 | page= 200 | isbn=0-471-72083-6}}</ref>。最終的にNeXTが販売したコンピュータは累計で5万台となった<ref>{{cite web | title=NeXT Fans Give Up the Ghost| work=Wired News | url= http://www.wired.com/gadgets/mac/commentary/cultofmac/2005/12/69888 | year=2005 | accessdate=2008-06-13 }}</ref>。
=== 1993年
1992年、NeXTは[[Intel486|Intel 486]]ベースの[[PC/AT互換機]]へのNeXTSTEPの[[移植 (ソフトウェア)|移植]]を開始した。この移植はNeXTの事業戦略の変化に対応したものだった。1993年末までにこの移植が完了し、NeXTSTEP 486とも呼ばれるバージョン3.1がリリースされた。実はそのリリース前の1992年に[[クライスラー]]が3000本を購入する計画を持ちかけていた<ref>{{cite news | title=Next Computer Close To a Deal With Chrysler | date=September 8, 1992 | work=The San Francisco Chronicle}}</ref>。NeXTSTEP 3.x は後に[[PA-RISC]]<ref name="RISC">{{cite news | last =Sherman | first =Lee | title =First NeXT RISC Workstation | work =NeXTWORLD | year =2004 | url = http://www.simson.net/ref/NeXT/nextworld/94.4/94.4.Apr.PA-RISC1.html | accessdate=2008-04-14}}</ref> や[[SPARC]]ベースのプラットフォームにも移植されており、結局4種類のバージョン(NeXTSTEP/NeXT、NeXTSTEP/Intel、NeXTSTEP/PA-RISC、NeXTSTEP/SPARC)が登場した。これら移植版はあまり広く使われることはなかったが、[[:en:Bank One Corporation|First Chicago NBD]]、[[スイス銀行コーポレイション]]、O'Connor and Companyなどといった組織がそのプログラミング環境に惹かれて採用した<ref>{{cite news| title = NeXTSTEP: NeXT announces new release of NeXTSTEP & NeXTSTEP Developer. (NeXTSTEP 3.2 and NeXTSTEP Developer 3.2)| work = EDGE: Work-Group Computing Report| page = 40| date = October 25, 1993}}</ref>。アメリカ連邦政府機関でも広く使われており、[[:en:United States Naval Research Laboratory|Naval Research Laboratory]]、[[アメリカ国家安全保障局]]、[[国防高等研究計画局]]、[[中央情報局]]、[[アメリカ国家偵察局]]などが採用した<ref>{{cite news| last = McCarthy| first =Shawn P.| title = Next's OS finally is maturing. (NextStep Unix operating system)| work = Government Computer News| page = 46| date = March 6, 1995}}</ref>。
NeXTは1993年にハードウェア事業から手を引き、社名をNeXT Software Incに変えた。そして540名いた従業員のうち300名を解雇した<ref name="employees"/>。NeXTはフリーモントの工場も含めてハードウェア事業をキヤノンに売却する交渉を行った<ref name="employees"/>。ハード関連事業を買い取った[[キヤノン]]はFirepower Systems社を設立したが、最終的には[[モトローラ]]に売却した<ref>[http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/960802/canon.htm キヤノン、PowerPC事業から撤退]</ref><ref>[https://web.archive.org/web/19970125215012/http://www.mot.com/GSS/MCG/new/press_rel/PR960731_18601.html Motorola Computer Group To Acquire FirePower(tm) Systems]</ref>。[[PowerPC]]マシンの開発も含め、全てのハードウェアの製造がストップした。[[サン・マイクロシステムズ]]のCEO[[スコット・マクネリ]]は1993年、NeXT Softwareに1000万ドルを出資し、NeXTのソフトウェアをサンのシステムに将来採用する計画を発表した<ref>{{cite news | title=Sun invests in Next, which will license NextStep OS for Sparc. | work=InfoWorld | date=November 29, 1993 | publisher=General Reference Center Gold}}</ref>。NeXTはサンと共同でNeXTSTEPのカーネル部分を除いた[[OPENSTEP]]を開発した。また、NeXTは当初の事業計画に戻り、各種オペレーティングシステム向けに開発ツールキットを販売するようになった。新製品としては、[[Microsoft Windows NT|Windows NT]]上で動作するOPENSTEPであるOpenStep Enterpriseなどがあった。また、大規模な動的Webアプリケーション構築用プラットフォームである[[WebObjects]]も開発した。WebObjectsには[[デル]]、[[ウォルト・ディズニー・カンパニー|ディズニー]]、[[ワールドコム]]、[[英国放送協会|BBC]]といった大手企業の顧客がついた<ref name="webobjects">{{cite web | date= June 16, 2005 | first=Johnny | last=Evans | title=Apple releases WebObjects as a free application | work=MacCentral | url= http://www.macworld.co.uk/news/index.cfm?NewsID=11860 | accessdate=2008-04-14}}</ref>。後にNeXTを買収した
=== 1996年 : IPO計画撤回とAppleによる買収 ===
1996年11月、スティーブ・ジョブズはNeXTを売却する目論見の元、[[株式公開#%E6%96%B0%E8%A6%8F%E6%A0%AA%E5%BC%8F%E5%85%AC%E9%96%8B%EF%BC%88IPO%EF%BC%89|IPO]]を計画していた<ref>{{Cite web|title=NeXT: Steve Jobs’ dot com IPO that Never Happened|url=https://computerhistory.org/blog/next-steve-jobs-dot-com-ipo-that-never-happened/|website=CHM|date=2017-02-07|accessdate=2021-04-05|language=en}}</ref>。その頃、
この際にキヤノンは出資を引揚げて清算した<ref>[http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/970107/canon.htm キヤノンが米NeXT社への出資を引き揚げ、電算機事業から撤退] (1997年1月7日)</ref>。
1997年、ジョブズはコンサルタントとして
=== NeXTの遺産 ===
NeXT買収により
OPENSTEPの技術はMac OS Xに引き継がれ、
NeXT買収後、NeXTSTEPのPowerPCへの移植が行われ、それと同期するように[[インテル]]版とWindows版のOpenStep Enterpriseツールキットにも改良が加えられていった。このオペレーティングシステムはRhapsodyというコード名で呼ばれ<ref>{{cite web | date=August 6, 1997 | title=What's NeXT? | work=MacObserver | first=Arlen | last=Britton | url= http://www.macobserver.com/columns/whatsnext/articles/080697.shtml | accessdate=2008-06-13 }}</ref>、全プラットフォーム共通の開発ツールキットはYellow Boxと呼ばれた。従来との互換性を保つため、[[Classic Mac OS]]用アプリケーションが動作する''Blue Box''という環境が追加された<ref>{{cite news| last = Thompson| first =Tom| title = Rhapsody with blue (Apple's next-generation operating system code-named Rhapsody)| work = Byte| page = 26|date=April 1997}}</ref>。
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1999年、この新オペレーティングシステムのサーバ版である[[Mac OS X Server 1.0]]がリリースされ、2001年には通常版の[[Mac OS X v10.0]]がリリースされた。OPENSTEPを元にしたAPIは[[Cocoa]]と改称された。RhapsodyのBlue Boxは[[Classic (ソフトウェア)|Classic]]環境と改称された。また、既存のアプリケーションを移植しやすくするため、Mac OSのToolboxに相当する環境を[[Carbon]]として搭載した<ref>{{cite news| last = Sellers| first = Dennis| title = OS X III: finally, a first-class OS| work = Computer User| page = 66|date=November 2000}}</ref><ref>{{cite news| title = Mac OS X Takes Macintosh to New Level| work = eWeek| date = July 15, 2002}}</ref>。macOSにはNeXTSTEPから受け継いだインタフェースがいくつかある。例えば[[Dock]]、[[サービスメニュー]]、[[Finder]]のブラウザビュー、NSText、フォントや色のシステムワイドなセレクタなどである。
NeXTSTEPのプロセッサに依存しない機能はmacOSにも残った。各バージョンはPowerPCとx86アーキテクチャの両方でコンパイルできるよう保持されていたが、2005年まではPowerPC版だけが公にリリースされていた。2005年6月6日、
== 特徴 ==
{{出典の明記|date=2021年5月|section=1}}
NeXTワークステーションは、米国では大学とともに金融機関が主な販売先であり、日本では[[大阪大学]]や[[広島大学]]、[[神奈川大学]]に数百台規模で導入された。しかし、独自のハードウェアだったため、[[オープン標準]]で作られる[[PC/AT互換機]]の高性能化と低価格化に追随できなかった。
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後期には画面表示のためのDisplay [[PostScript]]と共に、現在の[[OpenGL]]あるいは[[DirectX]]に相当する3Dkitと呼ばれる3D表示フレームワークにQuickRenderManを搭載し、[[PIXAR]]の「[[RenderMan|PhotoRealistic RenderMan]]」(1バージョン古いものがデモとして)がバンドルされ、RenderManを標準で使用することができた。[[RenderMan]]のシーン記述ファイルRIBは、「3次元表示のための PostScript」とも呼ばれる。
先進的で洗練された仕様には熱狂的なヘビーユーザを生み出した。
また、
== 系譜 ==
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== 企業文化とコミュニティ ==
ジョブズは
; 給料
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== コンピュータ業界に与えた影響 ==
NeXTは商業的に成功したとは言えないが、コンピュータ業界に与えた影響は大きい。NeXTcubeとNEXTSTEPがリリースされた1988年以降、他社はNeXTのオブジェクト指向システムをエミュレートし始め<ref>{{cite news | author=Smith, Carrie | title=NeXT means business now. | work=Wall Street & Technology | date=May 1994 | publisher=General Reference Center Gold}}</ref>、[[オブジェクト指向プログラミング]]とグラフィカルユーザインタフェースがより一般化していった。
シャープの矢板事業部は[[X68000]]シリーズに続く次のプラットフォームとして試作機を製作しており、その仕様においてはNeXTを強く意識したものであったとされる。一部の層に対して一定のヒヤリングも秘密裏に行われたが、結局日の目を見ることは無かった。
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マイクロソフトは1991年に[[:en:Cairo (operating system)|Cairoプロジェクト]]を発表。Cairoの仕様にも同様のオブジェクト指向ユーザインタフェースが含まれていた。プロジェクト自体は最終的に中止されたが、一部の要素はその後のプロジェクトに受け継がれた。1994年、マイクロソフトとNeXTは共同でOPENSTEPを[[Microsoft Windows NT|Windows NT]]上に移植する作業を開始し、1996年9月、OPENSTEP Enterpriseとしてリリースされた<ref>{{cite news | author=Smith, Carrie | title=NeXT, Microsoft tackle objects: NT to gain OpenStep port. | work=PC Week | date=November 7, 1994 | publisher=General Reference Center Gold}}</ref><ref>[https://archive.is/20120708152944/findarticles.com/p/articles/mi_m0EIN/is_1996_August_27/ai_18615631/ NeXT Software Introduces OPENSTEP Enterprise to Develop Distributed Enterprise and Intranet Applications; Most Proven Enterprise Object-Oriented Solution Now Available on Windows NT]</ref>。
WebObjectsは当初5万ドルという高価格で発売されたためもあり<ref name=birthdaywo>{{cite web |work=MacObserver|url= http://www.macobserver.com/article/2006/03/28.14.shtml |title=Happy Birthday: WebObjects at 10 |accessdate=2008-06-13 |last=Stewart |first=Graham |year=2006}}</ref>、広く使われることはなかったが、動的ページ生成が可能な初期のWebサーバとして歴史的に重要であると言えよう。WebObjectsは2010年以降
== 脚注 ==
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