「ストップ!! ひばりくん!」の版間の差分
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| タイトル = <nowiki>ストップ!! ひばりくん!</nowiki>
| 画像 = [[File:Stop Hibari-kun.png]]
| サイズ =
| 説明 =
| ジャンル = [[ラブコメディ]]、[[少年漫画]]、[[ギャグ漫画]]
}}
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| 他出版社 = [[双葉社]]([[完全版コミックス|完全版]]・FB)、[[ホーム社]](HMB)
| 掲載誌 = [[週刊少年ジャンプ]]
| レーベル = [[ジャンプ・コミックス]](JC)
| 開始 = [[1981年]]45号
| 終了 = [[1983年]]51号
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}}
{{Infobox animanga/Footer}}
『'''ストップ!! ひばりくん!'''』は、[[江口寿史]]による日本の漫画作品。母との死別をきっかけとして[[ヤクザ]]の大空組に世話になる事となった高校生・坂本耕作と、事実を知らなければ美少女としか見えない大空組の長男・大空ひばりを中心とした日常生活を描いた[[ラブコメディ]]である。『[[週刊少年ジャンプ]]』(WJ、[[集英社]])誌上において[[1981年]](昭和56年)45号から [[1983年]](昭和58年)51号まで多くの休載を挟みながら連載され、長期の中断を経て27年越しで完結した<ref name=" pen201508">[[Pen (雑誌)|Pen]]2015年 8/1 号 [いま読みたい、日本のマンガ] 2015/7/15発売</ref>。[[1983年]]には[[東映動画]]によりアニメ化もされた江口の代表作の一つである。
江口の意図は、ヒロインを「[[女装]]した男の子」にする事によってギャグとし、ちゃかす事によって、当時少年誌で全盛を誇っていたラブコメのアンチテーゼとなりうるギャグ漫画を制作することにあった<ref>江口寿史「文庫版あとがき」『[[「エイジ」]]』発行:ホーム社・発売:集英社〈ホーム社漫画文庫〉2004年2月23日初版発行 ISBN 9784834272918、277頁</ref><ref>印南敦史「新 家の履歴書」『週刊文春 2007年12月13日号』114頁</ref><ref name="ejwp308">「江口寿史先生インタビュー」『江口寿史 JUMP WORKS 1 ストップ!! ひばりくん!』308頁</ref><ref name="rwg">「リアルワインガイドインタヴュー」『リアルワインガイド VOL.19』115頁</ref>{{R|Asahi7}}。
大空ひばりは2000年代の「[[男の娘]]」ブームの始点であるとされている。
== 作品背景 ==
=== 連載までの経緯 ===
本作は『[[ひのまる劇場]]』の次に当たる江口3作目となる連載作品である。
江口が『ひのまる劇場』を連載際していた当時は、少年誌でラブコメディが流行していた。江口は元々[[あだち充]]や[[柳沢きみお]]の作品を好いていたものの、これらの作品の二番煎じといえるほど程度が低い作品が連載されていることに不満を抱いていた<ref name="Asahi7">{{Cite interview|interviewer=宮代栄一|title=語る 人生の贈りもの ひばりくん連載 絵に凝りすぎて 江口寿史 7|publication-date=2021-07-27|program=朝日新聞}}</ref>。そこで、江口は「惚れた美少女が実は男で、主人公が困ってしまう」という漫画を描こうと考え、ヒロインをかわいく描けば描くほど周囲がパニックに陥り、物語が動くとだろうと見込む{{R|Asahi7}}。女装への認知度は低かった当時であったが、連載開始にあたり障害となったものはなかった{{R|otonyan_v2}}。主人公の名前だけは変えてくれと言われ、「美空ひばり」であったものが「大空ひばり」になったという{{R|otonyan_v2}}{{efn2|{{要出典範囲|また、連載前の設定では、ギャグの要素として、ひばりが無駄毛(江口の弁によれば、ひばりが髭を剃るシーンを入れようとしたとのこと)の処理をするシーンを端々で描く予定だったと雑誌のインタビュー内で語っている。しかしそのアイデアは編集サイドから断固拒絶され、非常に悔しかった記憶があるという。|date=2021年7月}}}}。タイトルは[[関谷ひさし]]の『[[ストップ!にいちゃん]]』に由来する<ref>[[やまだないと]]×えぐちひさし「「時間ですよ」みたいな漫画が描きたい」『[総集編]江口寿史』156頁</ref>。また、連載当時江口は『[[イラストレーション (雑誌)|イラストレーション]]』という雑誌を読んでいたが、イラストの手法は躍動感のあるギャグ漫画には不向きだったため、扉絵で同誌から学んだ手法などを試していた{{R|Asahi8}}。ひばりの容姿服装についてはファッション誌『[[エムシーシスター]]』を参考にしていた{{R|otonyan_v2}}。
=== 連載打ち切りへ ===
当初はオカマキャラを前面に出したギャグ漫画として考えていたが、ひばりくんを可愛く描けば描く程ギャグとなる事に気付き<ref name="rwg" />、出来る限りの可愛さでひばりくんを描くようになる<ref>江口寿史「マンガで子供のやわらかい頭をかきまわしたい」『マンガの道 - 私はなぜマンガ家になったのか』94・95頁</ref>{{R|Asahi7}}。その反面、可愛く描きすぎたことによって、「ひばりくん」というキャラクターが超人的存在として一人歩きを始め、情けない行動を取らせられなくなり行き詰まるようになる{{R|ejwp308|Asahi7}}。また可愛く描く事を含めた絵へのこだわりがアシスタントの使用を困難にして原稿の完成が遅れ、1話を1週間で完成させる事ができなくなっていった{{Refnest|group="注"|江口は2021年の朝日新聞とのインタビューの中で、1本(話を)描くのに10日かかったとも話している{{R|Asahi7}}。}}<ref>「江口寿史先生インタビュー」『江口寿史 JUMP WORKS 1 ストップ!! ひばりくん!』集英社インターナショナル、310頁</ref>。江口は隔週での連載を希望するが、[[西村繁男]]が編集長を務める当時の編集部には受け入れられず<ref name="rwg" />、その結果、落稿や休載が目立つようになっていく<ref name="Asahi8">{{Cite interview|interviewer=宮代栄一|title=語る 人生の贈りもの 絵に向く関心 技磨いて扉絵に 江口寿史 8|publication-date=2021-07-28|program=朝日新聞}}</ref>。このことは劇中にも表れており、序盤で唐突に本編とは何の関係も無い話を描いてページを埋めていた{{Refnest|group="注"|例として、製作中に「[[都市伝説一覧#生物|白いワニ]]」に襲われる錯覚を起こす{{R|Asahi8}}、無意味なギャグを入れる、アシスタントに奇抜なアイデアを出すなどし、最後にはアシスタントや担当に「早く本編を書け!」と突っ込まれてようやく本編が始まるなどの描写があった。また実際に「締切を守れ」「漫画を描くのが遅い」「原稿が真っ白」という自虐的な会話も見られた。加えて連載後期では本編途中にも関係のない話を書く回が増えており、製作の行き詰りを物語っている。}}。
[[ジャンプ・コミックス]]版の最後に収録された「メイキング・オブ・ひばりくん!」<ref group="注">連載時は「パニック・イン・寿スタジオ!」というサブタイトルだった。</ref>では、終始一貫して江口が締切を守れない言い訳ともとれる内容<ref group="注">この頃になると締切前日の地点で原稿はおろかネームすら仕上がっていない事が語られている。</ref> が描かれており、最後には製作現場が崩壊した挙句、お粗末な原稿の仕上がりを詫びる担当と怒り心頭の編集長の傍らで「いきのいいネタを探しに千葉の勝浦に行く」と江口が逃げ出している<ref>江口寿史「マンガで子供のやわらかい頭をかきまわしたい」『マンガの道 - 私はなぜマンガ家になったのか』92頁</ref>。実際に、江口が連載を投げ出し、締め切り日に逃亡した事から、編集部も[[打ち切り]]という形で連載終了を決定した{{R|Asahi8}}。本作は江口が『WJ』で連載した最後の作品となっている(2020年時点)。
[[2020年]]7月放送の『[[漫道コバヤシ]]』に出演した際にも、本人の口から当時の経緯の一部が語られた。毎週締め切りに追われ、遂には翌日まで5ページを仕上げなければ間に合わない状況に追い込まれた。到底無理と判断した本人は仕事場から逃走し、締め切り時間が過ぎるまでホテルに潜伏してやり過ごした。翌日「もう終ったな」と覚悟の上で自宅に戻ると、西村編集長自らの電話があり「おう、出てこいや」と編集部への出頭を要求。そして会議室で話し合いが持たれた。本人は改めて週刊連載の限界を訴え、隔週もしくは月刊連載への変更を要望する。同時期にTVアニメも放送中のデリケートな時期であったが、厳格で知られる西村編集長はそれを許さず「うちでは面倒見きれないので、それなら余所でやってくれ」と突き放し、連載打ち切りの降板が決まった。
また、2021年7月の朝日新聞とのインタビューの中でも、同様の経緯が語られており、その際、最終回となった原稿はネームができていたものの、締め切りまで約1日しかなかったことが明かされた{{R|Asahi8}}。
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{{main|江口寿史#遅筆・放棄|打ち切り#作者の都合}}
=== 完結まで ===
[[1983年]]以来、本作は未完のままの状態であり、連載末期の分も長らく単行本未収録の状態(後記)が続いていた。本作は江口が連載を放棄してそのまま未完となった最初の作品とみなされていた<ref>斎藤宣彦+横井周子「江口寿史全漫画単行本解題」『[総集編]江口寿史』186頁</ref>。2005年、『SIGHT』 Vol.23に「2005年のひばりくん」が掲載された<ref>「江口寿史インタヴュー」『SIGHT Vol.23』ロッキング・オン〈[[ROCKIN'ON JAPAN|ロッキング・オン・ジャパン]]増刊〉73頁</ref>。2007年のインタビューで、江口は他の作品の続編への意欲を示したが、本作の続編執筆に関しては「ひばりくんは難しいけど」と否定的な発言をした<ref name="rwg" />。 2007年、『週刊少年ジャンプ』時代の江口作品をまとめた総集編『江口寿史 JUMP WORKS』の第1巻、『江口寿史 JUMP WORKS 1 ストップ!! ひばりくん!』の表紙用に新たにひばりが描き下ろされた。
再開を望む読者の声は多く、江口は彼らに向けて何らかの意思表示をする必要を感じていた{{R|otonyan_v2}}。2009年より、加筆修正と再編集を加えた『ストップ!! ひばりくん! コンプリート・エディション』が刊行を開始、表紙を江口が描き下ろした<ref name="nata"/>。そして、[[2010年]][[2月27日]]に発売された
完結を受けて「男の娘」専門誌『おと★娘』に江口のインタビュー記事が掲載された{{R|otonyan_v2}}。江口は続編について問われ、「続編を描くとしたら、突っ込んで描かないといけない感じがするんですよね」としつつ、次のようなアイデアを語っている{{R|otonyan_v2}}。
{{Quotation|19歳くらいの大学生になるのかなあ。お父さんが死んだシーン、遺影から始まるのかな、と思っているんです。心臓発作がたびたび起こっていたんで。<br/>
多分、耕作くんが主人公で、ひばりくんと一緒に住んでいるかもしれない。自然な流れとして、つぐみさんがサブさんと一緒になって、サブさんが大空組の跡目を継いで……。{{Interp|……|notooltip=1|和文=1}}<br/>
それから、今度は耕作くんの気持ちのほうが焦点になってきて、“ほんとに男同士でも愛し合えるのか?”と。愛し合えると僕は思うんですけれど、そんなふうにしていくと面白い感じがするんです。|江口寿史{{R|otonyan_v2}}}}
江口としては本編の続きをそのまま描くつもりはなく、描くにしても『ストップ!! ひばりくん!』というタイトルではないとしている{{R|otonyan_v2}}。後年『漫道コバヤシ』に出演した際も、「あくまで本作はギャグコメディであり、坂本耕作と大空ひばりの結末は当初から全く考えていない。ストップ!! ひばりくん!の世界観で二人を描けるのは高校卒業まで。それ以降を描くとしたら別の物語(設定)になるだろうな」と語っている。
== あらすじ ==
母を亡くし天涯孤独の身となった少年耕作は、遺言に従い、母の古い友人・大空いばりの家に身を寄せる事になる。しかし事もあろうに大空家は「関東極道連盟・関東大空組」、つまり弱小団体とはいえ
身の危険を感じて逃げようとする耕作の前にとびきりの美少女が現れ、にっこりと微笑みかける。彼女に一目惚れしてしまった耕作は大空家で生活する決心をしたが、それが運の尽きだった。つばめ・つぐみ・すずめと美人ぞろいの大空家の姉妹の中で、耕作が最初に会った一番の美少女・ひばりは実は男だった。
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== 主な登場人物 ==
=== 大空組関係者 ===
; {{読み仮名|大空 ひばり
: 本作の
; {{読み仮名|坂本 耕作
: 本作におけるもう一人の主人公であり
; {{読み仮名|大空 いばり|おおぞら いばり}}
: 関東大空組組長にして大空四姉妹(?)の父親。組の唯一の跡取りであるはずのひばりの奇行に日々心労が絶えない。かつて耕作の母に惚れていたが、結婚相手が[[マタギ]]と知って「自分は所詮ヤクザ。
: 自白剤を間違えて打たれた時に『[[クックロビン]]』の殺害をほのめかしている(※『[[パタリロ!]]』からのアンサーギャグ)。
; {{読み仮名|大空 つぐみ|おおぞら つぐみ}}
: 大空家長女。美人。駆け出しのイラストレーターで、早くに母親を亡くしている妹弟たちの母親代わりとして世話をしている。大空組と敵対する海牛組の組長の息子と恋に落ち、両家から猛反対され駆け落しようとするが、相手が実家を恐れ待ち合わせ場所に来ずに逃げ出した上、親が勧めた他の女性と結婚してしまい、失恋してしまう。
; {{読み仮名|大空 つばめ|おおぞら つばめ}}
: 大空家次女で、ひばりの2歳年上の美人。ヘアスタイルと目の色以外はひばりと瓜二つだが、男子生徒にもてている様子はない。ひばりが女の子として学校に通うのを苦々しく思っているが、男だと知れると自分も迷惑を被るので、身体検査などでひばりの正体がバレそうになると、変装して身代わりをしている。
; {{読み仮名|大空 すずめ|おおぞら すずめ}}
: 大空家三女。おませな小学生。
; サブ
: 関東大空組若頭。つぐみに惚れている。非常な男気の持ち主で、つぐみにも想いを打ち明けず、無骨ながら見守っている。
; {{読み仮名|政二
: 関東大空組組員。強面だが気が小さく喧嘩も弱い。耕作及び大空家の世話係として行動。朝、奇抜な格好で耕作を目覚めさせ、驚かす事を生き甲斐にしている。
; ひばりの母
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=== その他 ===
; {{読み仮名|椎名 まこと
: 耕作とひばりのクラスメイトで、ひばりに惚れている(ひばりが男だとは知らない)。そのため耕作に何かと因縁をつけてくる。ボクシング部に所属しており、当初は耕作よりも強かったが、徐々に差を詰められるようになっている。最後には耕作とサシの漢の対決を挑んだ。
: 家の中でも靴を履いたまま生活しており(この嗜好は父譲り)、母親からは「畳の上に靴で上がるな」と怒られている。
; {{読み仮名|可愛 理絵
: 耕作と椎名が所属するボクシング部の美人マネージャー。耕作が一目惚れをするが、理絵自身は椎名に恋心を抱いている。しかしボクシング部の合宿で椎名が理絵に対し全く興味を持っていない事実を知り、合宿後より部活動に姿を見せなくなった。ませた弟がいる。
; {{読み仮名|梶 みつを
: つばめの同級生で、つばめに強引に迫ってくる暑苦しい男(その行動はほとんど
; {{読み仮名|花園 かおり
: 耕作やひばりのクラスメイト。ひばりが学園中の注目と人気を集めていることを妬み、3人の仲間とともに、何かとひばりにイジワルを仕掛けてくる。本人いわく陰険さには自信あり。一時ひばりを男だと疑っていたが、ひばりに変装したつばめが彼女の前で胸を見せた事でその疑惑を捨てる。
; {{読み仮名|犬井 犬子
: 耕作やひばりのクラスメイトで、花園かおりの取り巻きの一人。アニメ版では「花子」という名前になっていて、政二との淡いラブロマンスがあったりしている。
; {{読み仮名|鳳 ジュン
: 女子バレー部の美人キャプテンで、女生徒たちから憧れを抱かれている。実は同性愛者で、ひばりに惚れている。宝塚系な母とハードゲイな3人の兄がいる。
; {{読み仮名|呉井寺 やすあき
: 呉井寺会親分のひとり息子。通称ヤックン。太っていて頭が大きく、唇が厚く、歯が数本抜けている。[[香川伸行|ドカベン香川]]に似ていて、[[山下清|裸の大将]]風のしゃべり方をする。親分に甘やかされ、言動はお茶目な坊やだが、実は28歳。ひばりとの結婚を希望しており、親分が手先に耕作を脅迫させるが、これを知ったひばりが軽機関銃を携えて自宅に乗り込み威嚇射撃で逆襲、「耕作に手を出したら許さない」と釘を刺す。
; {{読み仮名|本田 拓人
: 耕作やひばりのクラスメイト。その美貌で、数多くの女の子を
: ひばりを狙い続けるが尽く失敗に終わり、最後には本田とひばりが付き合っているかのような学校新聞を捏造する。その身勝手な行動からひばりの反感を買い、ひばりは仕返しとして耕作と更にいちゃつくようになる。
: 初登場時、耕作から「しかし同じクラスに君みたいなのがいたとは知らなかった」という指摘を受けた際に「なにしろ作者がいい加減だからね」という愚痴をこぼしている。
; {{読み仮名|鈴木銭馬
: 本田とともに、若葉学園
; {{読み仮名|岩咲 ひろみ|いわさき ひろみ}}
: ひばりと耕作の担任教師。任侠映画にはまっている。
; {{読み仮名|天地先生|あまちせんせい}}
: 暑苦しい体育教師。岩咲先生のことが好き。
; {{読み仮名|高円寺 さゆり
: 豪邸に住む、わがままなお嬢様。椎名の中学時代の後輩。黒龍高校ボクシング部員に絡まれていたのを助けてくれた耕作に惚れて、身辺を探偵を使って探っているうちにひばりの秘密を知る。耕作よりも1学年下だが強引に同じクラスに転入し、「私はオカマじゃない。こんな異常な環境からあなたを救いたい」と自分の
: アニメでは若葉学園への転入はなく、再度不良に絡まれた際に助けてくれた梶みつをに気持ちが移り、耕作への想いをあっさりと忘れる。
; {{読み仮名|白智 小五郎
: 高円寺さゆりに雇われた探偵。ひばりの秘密を探り、さゆりに報告する。『ひのまる劇場』の初期の主人公。
; {{読み仮名|理事長
: 本名はジョー明石。若葉学園の理事長。若い頃は「いばり」と台風三人組と呼ばれた極道者。ひばりが男だという事も知っているが、その事を指摘した白智小五郎に対し、「個人の趣味の問題」と相手にしていない。お風呂好き。
; {{読み仮名|江口"Candy"寿史
: 本作の作者である江口寿史本人。通称「先ちゃん」。サングラスを着用した天然パーマに肥満体質が目立つ男性だが、作者曰く「本物はこんなに太っていない」とのこと。本編のあちこちで顔を出し注釈を入れることもあるが、基本的にはページを埋めるための無意味なギャグや白いワニに襲われる錯覚を起こす事が多い。結局は本編の妨害をしていることがほとんどであることから担当からツッコミを入れられたり暴行を受けるオチがつく事がほとんど。
: 締切を守れなかったため江口本人が坊主頭になった際も、彼も同じく坊主頭になっていた。
: JC版最終回では都合上、主役になっている。
; {{読み仮名|河野"ハニーチェリー"哲郎
: 江口のアシスタント。趣味はロックバンドのようで、時折佐野元春の「Happy Man」を口ずさむ。基本的にツッコミ役。暇が多いらしく、どこでも寝られるという特技を持つ。
; {{読み仮名|[[高橋俊昌|高橋"トド"俊昌]]
: 歴代の江口の担当達。締切を守れない江口に振り回されてばかりで、かなり苦労している模様。
: 中平以前の担当は、過労や精神的ショック等が災いし全員死去し
; 白いワニ
: 未完成の「白い原稿」を象徴する存在で、作者・江口の周囲に幻覚のように現れ、彼を苦しめる。アニメ版においては、大空いばりの精神状態が憤った際にテーマ曲と共に出現する。
== テレビアニメ ==
{{出典の明記|date=2021年8月|section=1}}
[[1983年]][[5月20日]]から[[1984年]][[1月27日]]まで、[[フジテレビジョン|フジテレビ]]で金曜日19:00 - 19:30枠に於いて放送された。全35話。元々原作のストックが少なかった為、すぐに原作のエピソードを使い切ってしまい、後半は他の江口作品のストーリーを転用したり、アニメ側のスタッフが作ったオリジナルストーリーを制作している。また原作よりもラブコメテイストが強めに描かれている。2003年、全話収録のDVDボックスセットが発売された。なお、アニメ内で描かれる電柱には練馬区(東映動画の所在地)の住所表示がある。
=== 声の出演 ===
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* 大空 つばめ - [[色川京子]]
* 大空 すずめ - [[鈴木富子]]
* 若頭 サブ - [[若本規夫|若本紀昭]]
* 子分 政二 - [[西尾徳]]
* 椎名 まこと - [[森功至]]
* 春江
* 龍作
* 岩咲 ひろみ - [[川島千代子]]
* 素張田 辰五郎(通称
* 花園 かおり - [[中野聖子]]
* 花子 - [[上村典子]]
* みちこ(花園かおりの取り巻きでポニーテールの女性) - [[高木ゆう子]]
* ナオコ(花園かおりの取り巻きでショートカットの女性) - 島津博美
* 番長 - [[佐藤正治 (声優)|佐藤正治]](第3話登場)
* 梶 光男 - 塩屋浩三
* 可愛 理絵 - [[鶴ひろみ]](第4話&第5話登場)
* 海牛 文太
* 文太の父
* 素張田 小辰
* 片桐
* 板垣 大助
* 天地先生 - [[田中秀幸 (声優)|田中秀幸]](第13話登場)
* ウルトラ親分 - [[田中康郎]](第13話登場)
* 仮面親分 - [[田中亮一]](第13話登場)
* 則巻親分 - 佐藤正治(第13話登場)
* 呉井寺親分 - [[青野武]](第13話登場)
* 呉井寺 やすあき(通称
* 本田 進 - [[田中和実]](第14話登場)
* 鈴木 兵介 - [[広森新吾]](第14話登場)
* 山羽 珍庵 - [[小滝進]](第14話登場)
* 高倉 裕次郎 - [[龍田直樹]](第16話登場)
* 龍作 - [[郷里大輔]](第17話登場)
* 大曽根 - [[矢田耕司]](第17話登場)
* パンサー横畑 - 中野聖子(第21話登場)
* ジャイアントリッパー - 上村典子(第21話登場)
* 珍間 おかし - 雨森雅司(第21話登場)
* 鳳ジュン - [[三田ゆう子]](第22話登場)
* ジュンの母 - [[京田尚子]](第22話登場)
* 一刀斎 - [[塩屋浩三]](第23話登場)
* ジャンケン強盗 - [[大竹宏]](第23話登場)
* 青田刑事 - [[はせさん治]](第24話登場)
* 黒田刑事 - 青野武(第24話登場)
* 雪代 - [[雨宮一美]](第24話登場)
* 玉城 - [[蟹江栄司]](第24話登場)
* 老婆 - [[鈴木れい子]](第24話登場)
* 川鼻 広 - [[塩沢兼人]](第25話登場)
* リバヒィ - [[山本百合子]](第25話登場)
* 酋長 - 田中廉郎(第25話登場)
* ジェロニモ - 佐藤正治(第26話登場)
* 仁吉 - 大竹宏(第26話登場)
* 虎造 - [[青森伸]](第26話登場)
* 文子 - [[武藤礼子]](第27話登場)
* 森田 健作 - 塩沢兼人(第28話登場)
* 鈴木 すし丸
* 高円寺 さゆり - 山本百合子(第29話登場)
* 白智 小五郎 - [[宮内幸平]](第29話登場)
* 金田 金助 - [[滝口順平]](第30話登場)
* 執事 - はせさん治(第30話登場)
* ハンセン石松 - 佐藤正治(第32話登場)
* 看護婦 - [[頓宮恭子]](第34話登場)
* 梶の母 - [[つかせのりこ]](第34話登場)
=== スタッフ ===
* 企画
* 原作
* 音楽
* キャラクターデザイン
* 美術デザイン
* シリーズディレクター
* プロデューサー
* 製作担当
* 特殊効果
* 撮影
* 編集
* 録音
* 効果
* 選曲
* キャスティング協力
* 演出助手
* 製作進行
* オーディオディレクター
* 記録
* 現像
* 制作
=== 主題歌 ===
; オープニングテーマ
: 作詞
; エンディングテーマ
: 作詞
上記2曲を収録したEPレコードは、[[キャニオン・レコード]](現在の[[ポニーキャニオン]])から発売された。2曲とも後にCD化されている。オープニングテーマは[[大杉久美子]]によるカヴァーバージョンが存在する。なお、「コンガラ・コネクション」のギターは、当時まだ無名だった[[布袋寅泰]]がスタジオ・ミュージシャンとして演奏している。
=== 各話リスト ===
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=== 放送局 ===
キー局・制作局であるフジテレビではローカルセールス枠で放送されたことから、フジテレビ系列の[[基幹局]]でも[[テレビ西日本]]<ref>テレビ西日本の金曜日19:00 - 19:30枠では、1983年9月まで『[[アーノルド坊やは人気者]]』(海外作品。[[CBCテレビ|CBC]]・[[東北新社]]配給)。10月からは『別冊・[[笑っていいとも!増刊号]]』を放送。</ref> など放送されなかった局や、[[東海テレビ放送|東海テレビ]]<ref>東海テレビの金曜日19:00 - 19:30枠では、自社制作『[[家族対抗チャンスクイズ]]』を放送。</ref>、[[関西テレビ放送|関西テレビ]]<ref>関西テレビの金曜日19:00 - 19:30枠では、自社制作『[[阪急ドラマシリーズ]]』を放送(フジテレビでも別枠で放送)。</ref> 等時差ネットした局があった。また、[[テレビ新広島]]<ref>テレビ新広島の金曜日19:00 - 19:30枠では、自社制作・[[中国電力]][[一社提供]]『[[クイズクロス5]]』を放送。</ref> では本放送終了後の1984年7月より放送が開始されたが、小学校・中学校の夏休み期間中の特別編成による集中放送であった。
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* [[テレビ熊本]]:月曜 17:00 - 17:30
===
* ストップ!! ひばりくん! DVDコレクション I(2003年2月26日、ユニバーサルミュージック)<ref>[https://tower.jp/item/958658/%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%83%E3%83%97!!%E3%81%B2%E3%81%B0%E3%82%8A%E3%81%8F%E3%82%93!DVD%E3%82%B3%E3%83%AC%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3-I%EF%BC%9C%E9%80%9A%E5%B8%B8%E7%89%88%EF%BC%9E DVDコレクション I(TOWER RECORDS)]</ref>
* ストップ!! ひばりくん! DVDコレクション II(2003年2月26日、ユニバーサルミュージック)<ref>[https://tower.jp/item/966100/%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%83%E3%83%97!!%E3%81%B2%E3%81%B0%E3%82%8A%E3%81%8F%E3%82%93!DVD%E3%82%B3%E3%83%AC%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3II DVDコレクション II(TOWER RECORDS)]</ref>
* ストップ!! ひばりくん! DVD-BOX デジタルリマスター版(2014年9月26日、ベストフィールド){{R|tc-ent}}
== 反響 ==
=== 売り上げ ===
{{節スタブ|1=<nowiki/>
* 発行部数
* 視聴率
}}
テレビアニメの放映当時、家庭用ビデオデッキはまだそれほど普及しておらず、家庭内には厳しいチャンネル争いがあるのが一般であった。本作テレビアニメの裏番組には『[[ドラえもん (1979年のテレビアニメ)|ドラえもん]]』があり、1983年10月からは『[[銀河漂流バイファム]]』の放送が開始され、同じ時間帯に『ひばりくん』『ドラえもん』『バイファム』が並ぶ状況となった。ライターの早川清一朗は、当時の状況を振り返って、「時代の最先端を行くジェンダー論を取り込んだアニメと『ドラえもん』。果たして子を持つ親はどちらを見せたがるかと言えば、それは『ドラえもん』になってしまいます。」と述べている<ref>{{Cite web |author=早川清一朗 |date=2020-05-20 |url=https://news.infoseek.co.jp/article/magmix_28173/ |title=裏番組が強すぎたアニメ『ストップ!! ひばりくん!』「男の娘」に少年たちは衝撃 |accessdate=2021-08-10}}</ref>。『ドラえもん』のために本作テレビアニメは視聴者獲得で苦戦することになった<ref name="tc-ent">[https://www.tc-ent.co.jp//products/detail/BFTD-0105 想い出のアニメライブラリー 第26集 ストップ!! ひばりくん! DVD-BOX デジタルリマスター版。TCエンタテインメント株式会社]</ref>。
=== 批評 ===
精神科医の[[斎藤環]]は、本作は「女性的な外見と男性的な内面を対比させることで」大空ひばりとの「目まぐるしい日常」を実現しているものであるとし、異性装のキャラクターたちによる「服装倒錯の連続」として捉えることができると解説している<ref>{{cite book|author=Saitō, Tamaki|author-link=斎藤環|translator1=Vincent, J. Keith|translator2=Lawson, Dawn|title=Beautiful Fighting Girl|chapter=A Genealogy of the Beautiful Fighting Girl|publisher=[[ミネソタ大学ツインシティー校|ミネソタ大学出版局]]|date=2011-03-16|isbn=978-0-8166-5450-5|page=110}}</ref><ref>{{cite book|author=Denison, Rayna|title=Anime: A Critical Introduction|chapter=Anime, Video and the Shōjo and Shōnen Genres|publisher=Bloomsbury Academic|date=2015-12-03|isbn=978-1-84788-479-4}}</ref>。マンガ評論家の[[中野晴行]]は、大空ひばりが(本当は)少年であり、かつヤクザの跡取りでもあるという複合した設定が、本作をユニークで傑出したギャグマンガにしていると評し、この成功はまた、少女たちを単にかわいく描くだけでなく、いい味を持たせ、色気も醸し出せる江口の能力によるところが大きいとしている{{R|daimokuroku}}。(一般に)ひばりの繊細な描き方は、ギャグマンガであることを読者が忘れてしまうほど魅力的だとされている{{R|asagei}}。ライターの島田一志は、80年代の空気感を見事に切り取りつつ、年月を経ても古びない時代を超越したクールな絵と評している{{R|shimada}}。
{{Quote box
| quote = 私はその時小学生、ちょうどオシャレにこだわりだした頃で、Tシャツ1枚買うのにも母を連れ回したりしていたのですが、その頃のオシャレの参考は、テレビや雑誌でも他の誰でもなく“ひばりくん”でした。
| source = —[[YUKI (歌手)|Yuki]]{{R|gendai44-45}}
| align = right
| width = 20%
}}
雑誌『Cyzo』に寄稿した漫画評論家のJyamaoは、本作ではその全体的に軽快・ポップな文体のために、わいせつまたは不道徳な女装が生じておらず、テレビアニメがゴールデンタイムに放映できたのもそのためであろうと推測している{{R|cyzo}}。Jyamaoは、女装を伴うギャグと比べ、ヤクザの組員を取り巻くギャグは性質が極端であると指摘し、今日では薬物ネタを含む一部のギャグはユーモアとは受け取られないだろうと述べている{{R|cyzo}}。マンガ解説者の[[新保信長|南信長]]は、高いファッションセンスを持つキャラクターを描いたパイオニアとして、本作の江口を賞賛している。南は、本作が少年漫画のファッションを「シンボル」から「アクセサリー」へと事実上変化させたと評している{{R|gendai44-45}}。江口の細部へのこだわりも賞賛しており、例えばある回で耕作が[[コンバース・オールスター|チャック・テイラー・オールスターズ]]を履いている点を挙げている{{R|gendai44-45}}。
=== 影響 ===
『[[ガーディアン]]』紙は[[ジャパン・ソサエティー]]の美術展を紹介した記事において、江口が『[[すすめ!!パイレーツ]]』や本作の創作を通じ、実質的に[[J-POP]]現象全体への道を開いたとしている{{R|jpop}}。中学時代に本作を読んだ『[[テガミバチ]]』の作者・[[浅田弘幸]]は、本作の新しいセンスに憧れ、絵にも影響を受けた{{R|gokui}}。[[火浦功]]による小説『[[未来放浪ガルディーン]]』の主人公の一人は「大空ひばり」がモデルになっている<ref name="vol1p295t296">{{Cite book|和書|title=未来放浪ガルディーン① 大熱血。|isbn=4-04-162702-8|author=[[火浦功]]|chapter=大無謀対談ー"ガルディーン"のつくりかた|coauthors=[[出渕裕]]、[[ゆうきまさみ]]|publisher=[[角川書店]]|series=[[角川文庫]]|date=1986-08-25|edition=11版|pages=295-296}}</ref>。[[幾夜大黒堂]]『[[境界のないセカイ]]』は18歳になると「性別の選択」が可能になる世界を描いた漫画作品であるが、幾夜は第1巻の内田啓子編を本作や『[[プラナス・ガール]]』のフォーマットに準じて描いたと述べている{{R|ikuya}}。
島田一志は2020年の論稿において、大空ひばりが異性装者やゲイに対する差別や偏見を排除し、80年代の人々の認識を変えた原動力のひとつになったのではないかと述べている{{R|shimada}}。江口も何人かの読者が本作に影響され女装を始めたと報告している{{R|qj}}。島田は、ギャグであるはずのひばりの女装が、実際は「あなたの好きなように生きればいい」というマイノリティへのメッセージになっており、読者に対し「マイノリティであることは悪いことではなく“個性”」という感覚を秘かに植えつけた可能性を指摘している{{R|shimada}}。
江口本人は本作のような「オカマの面白さ」を扱った作品として、後に「BREAK DOWN」<ref>江口寿史「BREAK DOWN」『[[江口寿史の爆発ディナーショー]]』[[双葉社]] 1991年7月1日 ISBN 4575281123、69 - 72頁</ref>等を描いている。
=== 男の娘の系譜における大空ひばり ===
おたく文化史研究家・吉本たいまつによれば、本作はその後の「男の娘」ブームの直接の先祖であるとされている。吉本は、江口が男女の描画コードを明示的に転倒させることでギャグを生み出している一方、そこにおいて「性別を越境する妖しい魅力」をも作り出していたと分析する。男性キャラクターに対して女性の描画コードを使い、受け手の認識を混乱させる試みは、吉本によれば[[手塚治虫]]の『[[リボンの騎士]]』にまで遡るとされ、本作では『リボンの騎士』より明確に「男の子でもかわいければ恋愛・性の対象にしてもよい」という視点が打ち出されているとされている。吉本は、描画コードの転倒は、その後も漫画表現の中に根付いて継続していったとし、[[奥浩哉]]『[[変 (漫画)|HEN]]』、[[小野敏洋]]『[[バーコードファイター]]』(ともに1992年)をその例として挙げている{{R|taimatsu}}。
「オトコの娘年表」(『おと★娘』VOL.7)の構成を担当した来栖美憂は、「オトコの娘文化」の始点はどこかと論じることから始めている。それによれば、[[江戸川乱歩]]の[[少年探偵団#小林少年|小林少年]]、[[横山光輝]]『[[伊賀の影丸]]』の影丸の女装の頃には、一部に熱狂的なファンがついていたという。そこへ「大きな一石を投じ」ることになったのが本作であるとし、「ひばりくんの可愛さは衝撃的であり、彼が近代女装美少年文化の始点という評価に異を唱える者はまずいないだろう」と断じている{{R|otonyan_v7}}。一方で来栖は、『オトコノコ倶楽部vol.1』において本作を「女装系漫画のルーツ」とみなす認識に異を唱えている。ラブコメのアンチテーゼとして書かれた本作であるが、結局本作の流れを継いだのは『[[きまぐれオレンジ☆ロード]]』などのポップなラブコメであった。系譜を作り得なかった本作は、その意味において「ルーツ」とまでは言えないと述べている<ref>[https://web.archive.org/web/20110208171542/http://josotsusin.jp/contents/content/53 女装通信 - 女装少年の系譜/第一回【メジャー漫画・2000年編】(『オトコノコ倶楽部vol.1』のコンテンツより)](2011年2月8日時点の[[インターネットアーカイブ|アーカイブ]])</ref>。『おと★娘』における来栖の分析では、本作の流れは一旦少女漫画に受け継がれつつ、『バーコードファイター』で多くの児童の価値観を再び揺るがしたとされている{{R|otonyan_v7}}。
漫画評論を行っている[[永山薫]]もまた、現在の男の娘漫画に直結する先駆的作品として本作を挙げている。家族が嘘をついて耕作をからかっているだけという可能性を指摘しつつ、「実は男の子なんだけど、本当は女の子かもしれない」という想像の余地を読者に残す本作の手法は、後の[[松本トモキ]]『プラナス・ガール』(2009年)に継承されたとしている{{R|nagayama}}。
一方、あしやまひろこは2015年の、本作を「男の娘作品」の古典として挙げた論稿において、大空ひばりには「男の娘」の本質の一部が欠けていたと分析している。あしやまはひばりを『プラナス・ガール』の主人公・藍川絆と比較し、「容姿と行動で男の主人公を翻弄する小悪魔」という点では通じるものがあるとしつつ、両者には決定的な違いがあると論じた{{R|ashiyama}}。すなわち、大空ひばりは、主人公と家族以外の世間には女性として紹介され、かつ認知されている。また性同一性障害やオカマとして扱われる一面もあり、ポジションはギャグキャラクターである。対して藍川絆は、常に女装で生活していながら、性自認は一貫して男性であり、にもかかわらず学園中からアイドルとして扱われているのである{{R|ashiyama}}(この点には永山も注意を与えている{{R|nagayama}})。あしやまは『プラナス・ガール』では男の娘の可愛さが性別の範疇を超越するものとして表現されていると評し、両者の対比の中に80年代から現代に至るまでのパラダイムシフトを見出せるとしている{{R|ashiyama}}。
『プラナス・ガール』などの後、男の娘ブームは収束に向かった{{Refnest|「男の娘ブーム自体は全体として収束して、いまは低空飛行で安定」{{R|ido}}。「2015年現在、二次元表現における「男の娘」ブームは、終わりを告げたように思える」{{R|taimatsu}}。}}。『オトコノコ倶楽部』の創刊者で、『オトコノコ時代』の編集長であった井戸隆明は、ブームの頃に面白いコンテンツがあまり出てこなかったことを衰退の原因の一つに挙げている{{R|ido}}。その上で、本作を次のように評価している。
{{Quotation|絶対的にかわいい、小悪魔的な男の娘というのは『ひばりくん』を超えるものはもうないんじゃないかと。ただ、あれを描ける時代というのもあったと思います。ニューハーフブームはあったにしても、ひばりくんの実態がはっきりとはわからないんですよ。それに翻弄されるというのがギャグマンガとして成り立ったのは時代性でしょうね。いま同じようなことをやってもたぶん成立しない。|『オトコノコ時代』編集長・井戸隆明{{R|ido}}}}
井戸は、今後も大きな波は再びやってこないだろうと予測し、男の娘的なもののメルクマールといえるものは、結局、本作や『バーコードファイター』になるだろうとしている{{R|ido}}。
== 書誌情報 ==
6度にわたって刊行されている。
最初に発行されたジャンプ・コミックス(JC)版の単行本には最後の4話が未収録であった。1991年に発売された[[完全版コミックス|完全版]]は、JC版に未収録だった4話のうち3話を収録したものの、連載最後の回は収録しなかった。最終回の収録は1999年の短編集『江口寿史の犬の日記、くさいはなし、その他の短篇』([[ベストセラーズ|KKベストセラーズ]])が最初となる。その後2004年に発行された文庫版(ホーム社)はこの最終回も含んでおり、一応の全編収録となった。
『ストップ!!ひばりくん! コンプリート・エディション3』に最終話が加筆掲載された(前出)。なお第2巻(2009年)に単行本未収録の「Jの告白」のエピソードが初掲載された。
ただし、JC版の時点で、コマ割りに手を加える、『ジャンプ』掲載時の2話を1話にまとめ直すなど、大きく手を加えている話が多々あるため、未収録のページが存在する。
* ストップ!! ひばりくん!
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* 江口寿史の犬の日記、くさいはなし、その他の短篇([[ベストセラーズ|KKベストセラーズ]]) - 1999年2月5日初版発行 ISBN 4-58-419553-6
* 江口寿史 JUMP WORKS 1 ストップ!! ひばりくん!(発行:集英社インターナショナル・発売:集英社) - 2005年8月24日初版発行 ISBN 978-4-79-762001-6
== 脚注 ==
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=== 出典 ===
{{reflist
<ref name="otonyan_v2">[[#otonyan_v2|来栖美憂(聞き手)「『ストップ!! ひばりくん!』ついに完結!! 江口寿史スペシャルインタビュー」、『おと★娘』VOL.2、99-102頁。]]</ref>
<ref name="otonyan_v7">[[#otonyan_v7|「おと☆娘特製 オトコの娘年表」、『おと★娘』VOL.7、103-105頁。]]</ref>
<ref name="ikuya">[[#eureka_201509|幾夜大黒堂インタビュー「境目と境界の漸近線 - 『境界のないセカイ』の向こう側」、『ユリイカ』2015年9月号。]]</ref>
<ref name="nagayama">[[#eureka_201509|永山薫「大きな声ではいえないオトコノコ漫画の秘密」、『ユリイカ』2015年9月号。]]</ref>
<ref name="ashiyama">[[#eureka_201509|あしやまひろこ「女装と男の娘の容姿と身体」、『ユリイカ』2015年9月号。]]</ref>
<ref name="ido">[[#eureka_201509|井戸隆明インタビュー「“オトコノコ”はどこにいる」、『ユリイカ』2015年9月号。]]</ref>
<ref name="taimatsu">[[#eureka_201509|吉本たいまつ「ショタ・女装少年・男の娘 二次元表現における「男の娘」の変遷」、『ユリイカ』2015年9月号、210-224頁。]]</ref>
<ref name="qj">[[#qj|「ハロルド作石×江口寿史 - FEATURES.1 マンガ最前線」、『Quick Japan』Vol.59。]]</ref>
<ref name="gendai44-45">[[#gendai|南信長「〈ファッションリーダー〉としての江口寿史」、『現代マンガの冒険者たち』、44-45頁。]]</ref>
<ref name="asagei">{{cite web|url=http://www.asagei.com/excerpt/15006|title=我が青春の週刊少年ジャンプ(3)江口にとっては極限状態も楽しい思い出|publisher=[[徳間書店]]|work=Asagei Plus|date=2013-08-16|accessdate=2016-04-25}}</ref>
<ref name="daimokuroku">{{cite web|author=[[中野晴行]]|archiveurl=https://web.archive.org/web/20121209003943/http://www.daimokuroku.com/?index=somme&date=20120608|url=http://www.daimokuroku.com/?index=somme&date=20120608|title=第101回 元祖「男の娘」? あべこべの笑いを超えたミラクルワールド 江口寿史『ストップ!!ひばりくん!完全版』|publisher=eBook Initiative Japan|date=2012-06-08|archivedate=2012-12-09|accessdate=2016-04-25}}</ref>
<ref name="cyzo">{{cite web|url=http://www.cyzo.com/2016/03/post_27235_entry.html|title=過激発言連発!! 打ち切り&発禁になった伝説の女装男子マンガ『ストップ!! ひばりくん!』『おカマ白書』|publisher=Cyzo|date=2016-03-25|accessdate=2016-04-25}}</ref>
<ref name="jpop">{{cite web|url=https://www.theguardian.com/technology/gamesblog/2009/mar/30/nintendo|title=Going Krazy in New York: anime, manga and the language of videogames|work=[[ガーディアン]]|date=2009-03-30|accessdate=2016-04-24}}</ref>
<ref name="gokui">{{cite web|url=http://jumpsq.shueisha.co.jp/contents/manganogokui11/interview1.html|title=ジャンプSQ.若手作家が聞く「マンガの極意!」浅田弘幸先生&濱岡幸真先生《1》浅田先生、「少年漫画」のルーツ|publisher=[[集英社]]|accessdate=2016-04-26}}</ref>
<ref name="shimada">{{Cite web |author=島田一志 |date=2020-11-27 |url=https://realsound.jp/book/2020/11/post-662030.html |title=『ストップ!! ひばりくん!』なぜ時代を超えて愛される? 江口寿史が投げかけたメッセージ |accessdate=2021-08-10}}</ref>
}}
== 参考文献 ==
* 「江口寿史先生インタビュー」『江口寿史 JUMP WORKS 1 ストップ!! ひばりくん!』集英社インターナショナル、308 - 311頁
* 江口寿史「マンガで子供のやわらかい頭をかきまわしたい」『マンガの道 - 私はなぜマンガ家になったのか』[[ロッキング・オン]]2005年3月29日、ISBN 9784860520472、66 - 109頁
* 「リアルワインガイドインタヴュー」『リアルワインガイド VOL.19』寿スタジオ、2007年10月15日発行、114 - 117頁
* 印南敦史「新 家の履歴書」『週刊文春 2007年12月13日号』[[文藝春秋]]、112 - 115頁
* 『[総集編]江口寿史』[[河出書房新社]]〈KAWADE夢ムック文藝別冊〉2003年1月31日、ISBN 4309976433
* {{Cite book |和書 |title=おと★娘 |volume=VOL.2 |series=ミリオンムック |publisher=[[ミリオン出版]] |date=2011-01-25 |isbn=978-4813064190 |url= |ref=otonyan_v2}}
* {{Cite book |和書 |title=おと★娘 |volume=VOL.7 |series=ミリオンムック |publisher=ミリオン出版 |date=2012-04-26 |isbn=978-4813065944 |url= |ref=otonyan_v7}}
* {{Cite journal |和書 |journal=[[ユリイカ (雑誌)|ユリイカ]] |volume= |issue=2015年9月号 特集=男の娘 —“かわいい”ボクたちの現在— |publisher=[[青土社]] |date=2015-08-27 |isbn=978-4791702947 |ref=eureka_201509 }}
* {{Cite journal |和書 |journal=[[Quick Japan]] |volume=59 |issue= |publisher=[[太田出版]] |date=2005-03-15 |isbn=978-4872339383 |ref=qj}}
* {{Cite book |和書 |author=南信長 |title=現代マンガの冒険者たち |publisher=[[NTT出版]] |date=2008-05-15 |isbn=978-4757141773 |url= |ref=gendai}}
== 関連項目 ==
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