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== 概要 ==
[[H-IIBロケット]]に搭載されて[[種子島宇宙センター]]から打ち上げられ、高度約400[[キロメートル]]上空の[[地球周回軌道|軌道]]上を周回する[[国際宇宙ステーション]](ISS)へ食糧や衣類、各種実験装置などの最大6.2[[トン]]の補給物資を送り届ける<ref name="読売20200522"/>。その後、使わなくなった実験機器や使用後の衣類などを積み込み、[[大気圏再突入|大気圏に再突入]]させて[[断熱圧縮]]によって焼却する。ISSとの接続には[[ハーモニー (ISS)|ハーモニー]]付近に設置された[[カナダアーム2|ロボットアーム]]で掴んでハーモニーの下部の[[共通結合機構]] (CBM) (CBM)に結合させる方法が採られる。初号機以降、主要機器の国産化が進められたことにより3号機でHTVの開発は完了し、4号機以降は運用機として量産が行われている<ref name="kounotori3">{{cite web|url=http://iss.jaxa.jp/htv/mission/htv-3/library/presskit/htv3_presskit.pdf|title=宇宙ステーション補給機「こうのとり」3 号機 (HTV3)ミッションプレスキット|date=2012年7月26日|accessdate=2018-09-26}}</ref>。三菱重工業はプライムメーカーとして開発に携わり、全部で約350社の企業が開発に参画している<ref name="mhi graph 174">{{Cite web|url=https://www.mhi.com/jp/expertise/showcase/graph/pdf/174_all.pdf|title=『三菱重工グラフ』2014年 No.174|publisher=三菱重工業|date=2014-1|accessdate=2018-10-16}}</ref><ref>{{Cite web|url=http://fanfun.jaxa.jp/c/media/file/media_jaxas_jaxas051.pdf|title=JAXA's No.051|publisher=JAXA|date=2013-08-01|accessdate=2018-11-09}}</ref>。
 
2009年の技術実証機(1号機)から2020年の9号機まで全ての補給ミッションを完遂し、その役割を終えた。<ref>{{Cite web|title=「こうのとり」(HTV)のこれまでの歩み {{!}} JAXA 有人宇宙技術部門|url=https://humans-in-space.jaxa.jp/htv/kounotori/|website=humans-in-space.jaxa.jp|accessdate=2021-07-22|language=ja}}</ref>
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[[File:H-2_Transfer_Vehicle.jpg|200px|thumb|宇宙ステーションとドッキングするHTVの当時の予想図。]]
 
[[1988年]]、日本、[[カナダ]]、[[アメリカ合衆国]]、および[[欧州宇宙機関]] (ESA) (ESA)加盟国の政府間で宇宙基地協力協定(IGA)が署名された<ref name="jigohyoukanituite">{{cite web|url=https://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2011/01/06/1299994_2.pdf|title=宇宙ステーション補給機技術実証機(HTV1) プロジェクトに係る事後評価について|publisher=[[JAXA]]|author=虎野吉彦|accessdate=2018-10-16}}</ref>。[[1993年]]に[[ロシア連邦]]も加わり、[[1994年]]に現在の国際宇宙ステーション計画が誕生した<ref name="jigohyoukanituite"/>。こうした中で、1994年7月の宇宙ステーション計画の了解覚書協議において、[[アメリカ航空宇宙局]](NASA)は宇宙ステーションへの輸送を、国際パートナーが[[スペースシャトル]]での輸送経費を実費負担する方式から、各パートナーごとが輸送能力を提供することを原則とする方式への変更を提案した<ref name="jigohyoukanituite"/>。
 
これを受け、日本の[[宇宙開発事業団]](NASDA)は[[1995年]]に宇宙ステーション補給機の概念設計を開始し、[[1997年]]にHTV開発に着手した<ref name="jigohyoukanituite"/>。[[1998年]][[2月24日]]に署名された宇宙基地了解覚書(MOU)においては、日本が国際宇宙ステーションへの補給義務を負うことが国際的に約束された<ref name="jigohyoukanituite"/>。
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[[File:Oleg Skripochka in HTV2.jpg|200px|thumb|与圧部の内部。]]
 
国際宇宙ステーション (ISS) (ISS)の船内用補給品を搭載する区画。[[国際標準実験ラック]] (ISPR) (ISPR)またはHTV補給ラック (HRR) (HRR)を合計8個搭載することができる。HRRは飲料水、食料、衣類等を輸送する際に用いるラックで、物資は物資輸送用バッグ(Cargo Transfer Bag:CTB)と呼ばれるISS標準のバッグでHRRに収められる。また5号機からは与圧部の底面の空間を利用した新たな補給ラック(HRR Type-D)が搭載可能となっている<ref name=fanfun150817 />。搭載可能なCTBの数は、初号機では標準サイズ換算で208個だったが、2号機では230個に、5号機では242個に<ref name=fanfun150817>{{Cite web|url=http://fanfun.jaxa.jp/topics/detail/5278.html|title=「こうのとり」の荷づくり(8月17日改訂版)|work=ファンファンJAXA|publisher=JAXA|date=2015年8月17日|accessdate=2015-08-26}}</ref>、6号機からは248個に増えている<ref name="kounotori7"/>。
 
また、レイトアクセス(速達サービス、打上げ10日前から80時間前までの積み込み)対応可能なのは初号機では標準サイズ換算で4個だったが、2号機では30個に、3号機では80個に、5号機からは92個に増えている<ref name="kounotori7"/>。レイトアクセスでは、4号機以降は標準サイズCTBの約4倍の体積のM02バッグを搭載できるようになり、バッグへ搭載可能な質量も5号機からは、それまでの20kgから70kgへ引き上げられるなど様々な改善が施されている<ref name="kounotori7"/>。
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輸送する物資は種子島宇宙センターにて、重量・寸法を測定し、寸法が規定値外であれば所有者に規定値内に収めるよう要請し、小さすぎる場合は隙間材であるスペーサーを入れ固定される<ref name="jaxas 036">{{Cite web|url=http://fanfun.jaxa.jp/c/media/file/media_jaxas_jaxas036.pdf|title=JAXA's No.036|publisher=JAXA|date=2010-12-28|accessdate=2018-11-09}}</ref>。これらの搭載される物資は、こうのとりの重心が規定の範囲内に収まるように、搭載レイアウトの計算に基づいて組み替えて積み込まれる<ref name="jaxas 036"/>。
 
補給品はISS乗員が乗り込んで搬出するため、内部はISSと同じ1[[気圧]]の環境に保たれるほか、単独飛行中も気温は一定に制御される<ref name=fanfun150817 />。ISSを離れる際には、ISSの不要品(使用済みラック等の廃棄物)を積み込み、HTVごと大気圏に突入して廃棄される。補給キャリア与圧部は、HTVとISSの結合部でもある。先端部分には共通結合機構 (CBM) (CBM)を装備しており、ISSのモジュールに結合することができる。通常、HTVは[[ハーモニー (ISS)|ハーモニー]](ノード2)の地球側結合部に接続される<ref name="kounotori7"/>。
 
「きぼう」では空気循環用ファンは海外メーカーのファンを使用していたが、HTVでは初号機から国産の低騒音ファンを用いている<ref name="mitsubishigihou htv2010"/>。
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国際宇宙ステーション(ISS)の船外の宇宙空間に設置される[[材料曝露実験装置]]や予備部品を搭載する区画。過去の宇宙機では実績のない2.7m × 2.5mという大開口部を有しており、その中に曝露パレットを収納することができる。曝露パレット(Exposed Pallet: EP)は、「きぼう」船外実験プラットフォーム係留専用型と、多目的曝露パレット型の2タイプが用意されている。また、非与圧部の搭載能力は5号機までは1.2トンであったが、6号機からはISS用新型リチウムイオンバッテリ6台を一度に打ち上げるため、搭載能力が1.9トン(カーゴ搭載用の棚構造の質量を含む)に増強されている<ref name="kounotori7"/>。
 
* 「きぼう」船外実験プラットフォーム係留専用型(I(I)は、「きぼう」の船外実験プラットフォーム (EF) (EF)に取り付ける曝露実験装置を2 - 3個搭載する。HTVがISSに接続されると、パレットは[[カナダアーム2]]で把持されて補給キャリア非与圧部から引き出され、きぼうのロボットアーム (JEMRMS) (JEMRMS)に受渡した後、EFの先端に仮置きされる。HTV技術実証機ではこのタイプが使用され、日米の曝露実験装置2個を搭載した。HTV2号機では米国の曝露機器2台を運搬したが、このI型が使われた。
* 多目的曝露パレット型(EP(EP-MP型)は、カナダアーム2により引き出された後、ISSのトラス上のモービル・ベース・システム(Mobile Base System: MBS)に仮置きするタイプと、I型と同様にEFに仮置きするタイプの2つがある。ORUには様々なものがあるが、ISSのバッテリORU(軌道上交換ユニット)の場合は6個搭載することができる。EP-MP型は、HTV3号機から使われる。
 
=== 電気モジュール ===
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[[H-IIBロケット]]で高度200km/300kmの楕円軌道に打ち上げられたHTVは、NASAの追跡・データ中継衛星[[TDRS]]との通信を開始し、[[筑波宇宙センター]]にあるHTV管制センター(HTV-CC)の管制を受ける。HTVが正常であることが確認されると、約3日間掛けて国際宇宙ステーション(ISS)から23kmの位置まで接近する。
 
この距離では、「きぼう」に設置された近傍域通信システム(Proximity Communication System: PROX)<ref>{{Cite web|url=http://iss.jaxa.jp/glossary/jp/ki/prox.html|title=ISS関連用語集 近傍通信システム|publisher=JAXA 宇宙ステーション・きぼう広報情報センター|accessdate=2018-11-09}}</ref>との通信が可能になる。きぼうに搭載されている[[グローバル・ポジショニング・システム|GPS]]受信機を利用したGPS相対航法 (RGPS) (RGPS)により、ISSと同じ高度で、ISSの5km後方の接近開始点(AI点 ({{en|Approach Initiation Point}}))))に投入される。AI点まで正常な状態が確認できれば、AI[[マニューバ]]({{en|AI Maneuver}})により接近を継続する。何らかの理由で接近を中断したい場合は、AI点にて相対的に停止(ISSと一定の位置関係を保持)する。
 
=== 接近 - ISSへの結合 ===
まず、RGPSによりISSの下方500mのRバー <ref>{{Cite web|url=http://iss.jaxa.jp/iss_faq/inf/orb_docking.html|title=ランデブ/ドッキング|work=質問&回答集 (Q&A)|publisher=宇宙航空研究開発機構 宇宙ステーション・きぼう広報・情報センター|date=2009-09-06|accessdate=2015-08-26}} </ref>開始点(R-bar Initiation:RI)に接近する。きぼう (JEM) (JEM)の下部には反射板(コーナーキューブリフレクタ)が取り付けられており、これに[[レーザー]]を当てて正確な位置を測定しながら、ゆっくりと接近する(ランデブセンサ航法)。接近速度は毎分1 - 10mで、ISSもしくは地上から接近の一時停止や一旦後退、中止などの操作ができる。途中300mの位置で一旦停止し、[[ヨーイング|ヨー]][[マニューバ]]を実施してヨー姿勢を0°に戻し、接近を再開する。最終的に、きぼう (JEM) (JEM)の下方約10mの把持点 (BP ((BP({{en|Berthing Point}})) ))で、HTVは停止する。
 
[[プログレス補給船]]や[[欧州補給機]] (ATV) (ATV)と異なり、HTVは自動ドッキングは行わない。他のCBMを使用するモジュールと同様、HTVは[[カナダアーム2]]で握持されて手動操作で結合する。まず、HTVは安全確保のため全てのスラスタを停止して待機する。次に、カナダアーム2がHTVを握持し、ハーモニーの地球側結合部に取り付ける。
 
==== 手動での結合 ====
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* 「きぼう」保管ラック(PSRR)1台
* HTV補給ラック(HRR。食料・日常品・実験用品など) 7)7
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* [[きぼう#超伝導サブミリ波リム放射サウンダ(SMILES)|超伝導サブミリ波リム放射サウンダ]] (SMILES)(SMILES)
* 沿岸海域用ハイパースペクトル画像装置および<br />[[大気圏]]/[[電離圏]]リモート探知システム実験装置<br />(HICO(HICO & RAID Experimental Payload: HREP)HREP)
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!こうのとり<br />2号機
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* 食料・飲料水<ref group="注">当初アメリカから搬送予定だったが、費用がかさむため、NASAの要請により種子島宇宙センター内の貯水池の水(すなわち水道水)に変更。2010年11月17日付『[[南日本新聞]]』報道による。</ref>・衣服・保守部品などの補給物資<ref name="tsumini_yoatsu" />
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* カーゴ輸送コンテナ (CTC)(CTC)<ref name="htv2_nasapl">{{Cite web|url=http://iss.jaxa.jp/htv/htv2_nasapl.html|title=HTV2号機の打上げに向け、曝露パレットにNASAの物資を搭載|publisher=JAXA 宇宙ステーション・きぼう 広報・情報センター|date=2010-09-29|accessdate=2015-08-26}}</ref>
* フレックス・ホース・ロータリ・カプラ(FHRC)<ref name="htv2_nasapl" />
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!こうのとり<br />3号機
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* 水棲生物実験装置 (AQH)(AQH)
* NASAの[[触媒]]反応器(水再生システムの一部)
* 「きぼう」の冷却水循環ポンプ
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* 「きぼう」搭載用ポータブル冷凍・冷蔵庫(FROST)
* 「きぼう」輸送用ポータブル保冷ボックス(ICE Box)
* 超小型衛星 (CubeSat) 4(CubeSat)4
* 再突入データ収集装置(i-Ball)
* 超高感度[[4K解像度|4K]]カメラ
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!こうのとり<br />5号機
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* 小動物飼育装置 (MHU)(MHU)
* 静電浮遊炉(ELF)
* 多目的実験ラック2(MSPR-2)2)
* 簡易曝露実験装置(ExHAM)2号機
* 超小型衛星(CubeSat)18機
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* 細胞培養装置追加実験エリア(Cell Biology Experiment Facility-Left:CBEF-L)
* 小型衛星放出機構(JEM Small Satellite Orbital Deployer:J-SSOD)
* 超小型衛星(CubeSat) 3(CubeSat)3
* 小型衛星光通信実験装置(Small Optical Link for International Space Station:SOLISS)
* [[惑星]]表面の柔軟地盤の[[重力]]依存性調査(Hourglass)
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* 超小型衛星搭載用地球観測衛星用カメラ(iSIM)
* 固体燃焼実験装置(SCEM)など FLARE 実験関連品
* きぼう宇宙放送局(Space Frontier Studio KIBO) 関連品
* 生鮮食品、衣類等の生活用品、宇宙食など
* 米国実験ラック(Express Rack 11B:ER11B)
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== 他の輸送手段との比較 ==
HTVはスペースシャトルに次いで船外物資の輸送を実現した宇宙船である<ref name="mitsubishigihou htv2010">{{Cite web|url=https://www.mhi.co.jp/technology/review/pdf/471/471070.pdf|title=技術論文 宇宙ステーション補給機(HTV)の開発|publisher=[[三菱重工業]]|date=2010|accessdate=2018-10-07}}</ref>。スペースシャトルが退役した2010年時点で、ISSへ物資を輸送する手段はHTVのほか、ロシアの[[プログレス補給船]]と、欧州の[[欧州補給機]] (ATV) (ATV)があった。しかしプログレスとATVは、共通結合機構(CBM、ハッチ形状は1.27m(=50インチ) ×)× 1.27mの[[正方形]]の物資を通すことができる角丸正方形)より小さなドッキング装置のハッチ(直径80cm)を用いるため、国際標準実験ラック (ISPR) (ISPR)はこのドッキング装置のハッチを通過することができず、輸送できなかった。また、定期的に交換するバッテリーなどの軌道上交換ユニット (ORU) (ORU)も輸送することができなかった。これらの補給品は従来、スペースシャトルの[[多目的補給モジュール]] (MPLM) (MPLM)や曝露機器輸送用キャリア (ICC(ICC-VLD) VLD)で輸送していたが、シャトルが退役したことで、[[ドラゴン (宇宙船)|ドラゴン宇宙船]]の[[商業軌道輸送サービス]]による物資輸送が始まった2012年までは、HTVが唯一の輸送手段であった。国際標準実験ラック (ISPR) (ISPR)に関しては、計画中のものも含めてもHTV以外に輸送できる宇宙機はない。
 
なお、プログレスとATVはハッチを通過できる小型の補給品のほか、ISSの推進剤を補給するためのタンクとパイプを搭載しているが、HTVでは推進剤を輸送する能力はない。プログレスとATVはISSの進行方向最後尾にドッキングすることもあり、自らの推進機能を利用してISSをリブースト(微小な空気抵抗により自然に高度が下がっていくISSを、運用要求に応じた高度まで押し上げること)することができるが、HTVはISSの最前部に進行方向に対して垂直に結合することもあり、リブースト能力は持たない。
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=== LED照明の採用 ===
補給部与圧区内の照明にはISS共通の[[蛍光灯]]が使用されている。この蛍光灯はアメリカ製で、割れても[[ガラス]]や[[水銀]]が飛散しないなど宇宙での使用に対応した特別品である。ISS計画の遅れや延長による経年劣化もあり、ISS内で点灯しなくなるものが相次いでいる。そこで、HTV用に[[発光ダイオード]] (LED)を使用した[[LED照明]]装置が開発され、2010年打ち上げの2号機から搭載された。この照明装置は[[パナソニック電工]]がJAXAの事業公募制度「宇宙オープンラボ」 に応募して採用されたもので、LEDは蛍光灯と比べ劣化や故障が起きにくく、万一故障しても20個のLEDと2組の電源回路を使用するため完全に不点灯になる可能性が低いとされている。まずHTVで使用されるが、引き続きISS本体にも採用するため、検討が行われている<ref>{{Cite press release|url=http://panasonic-denko.co.jp/corp/news/0811/0811-1.htm|publisher=パナソニック電工|title=世界初 JAXAが開発中の宇宙ステーション用補給機へLED照明の採用が決定 壊れにくく、長寿命、高品質のLED照明技術が評価されました|date=2008-11-05|deadlinkdate=2017年10月|archiveurl=https://web.archive.org/web/20081221230132/http://panasonic-denko.co.jp/corp/news/0811/0811-1.htm|archivedate=2008年12月21日}}</ref>。蛍光灯、LED照明いずれの場合もISSからの離脱前に取り外され、ISSでの予備品として保管されている。
 
=== メインエンジンとスラスタの国産化 ===
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== 後継機の計画 ==
=== 新たな宇宙機 (HTV(HTV-X)X) ===
{{main|新型宇宙ステーション補給機}}
 
宇宙ステーション補給機、H-IIBロケット、きぼうなどを利用した日本の宇宙ステーション計画は毎年400億円ほどの費用がかかり、日本の宇宙予算全体に占めるその高額さが問題視されてきた。これを解消するために、[[2015年]]5月、[[文部科学省]]宇宙開発利用部会において、[[2016年]]から[[2020年]]に打ち上げられる3機のHTVのうち1機を、設計を全面的に変更した「新たな宇宙機」とする構想が明らかにされた<ref name="mext_20150520_15_1" />。また、同年夏に文部科学省は、現行型のHTVの打ち上げは2019年度に打ち上げる9号機までとし、2021年度以降はコストを半減させた新たな宇宙輸送機「HTV-X」を使用することを構想した<ref name = "jaxa150702">{{Cite web|url=https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/059/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2015/07/16/1359656_5.pdf|title=HTV-X(仮称)の開発(案)について|publisher=文部科学省、JAXA|date=2015年7月2日|accessdate=2015-08-25|format=PDF}}</ref><ref name="mainichi150819">{{Cite web|title=こうのとり:H2Bロケットで打ち上げ成功 JAXA|publisher=毎日新聞|archiveurl=https://web.archive.org/web/20150819181952/http://mainichi.jp/select/news/20150820k0000m040083000c.html|url=http://mainichi.jp/select/news/20150820k0000m040083000c.html|archivedate=2015年8月19日|deadlinkdate=2015年8月19日|accessdate=2018-10-16}}</ref>。なお、従来から検討されてきた[[#回収機能付加型宇宙ステーション補給機 (HTV-R)|#回収機能付加型宇宙ステーション補給機(HTV-R)]]については計画が中止されている。
 
2015年12月8日に開催された[[宇宙開発戦略本部]]で宇宙基本計画工程表が改訂され、現行型は2019年度に打ち上げる9号機までとし、2021年度以降にHTV-Xに移行することが、宇宙基本計画として正式に決定された<ref name = "kihon151208">{{cite web|url=https://www8.cao.go.jp/space/plan/plan2/kaitei_fy27/kaitei_fy27.pdf|title=宇宙開発戦略本部決定 宇宙基本計画工程表(平成27年度改訂)|publisher=宇宙開発戦略本部|date=2015-12-08|accessdate=2015-12-12|format=PDF}}</ref>。HTV-Xと仮称された<ref name="mext_20150702">{{Cite web|url=http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/059/shiryo/1359656.htm|title=宇宙開発利用部会(第22回) 配付資料|publisher=[[文部科学省]]研究開発局|date=2015-07-02|accessdate=2015-08-02}}</ref>この新型宇宙機では、開発費用削減のため与圧部は大きな改変を加えずに引き続き活用する一方、前述の[[#太陽電池のパドル化|太陽電池のパドル化]]が図られるとともに、これまで分割されていた[[#推進モジュール|推進系]]と[[#電気モジュール|電気系モジュール]]がサービスモジュールに集約されるなど、構造設計が大幅に見直されている。こうしたシステムの効率化や軽量化により、輸送能力を保ったまま製造費用を半減するとしている。
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HTVは人間を乗せての打ち上げこそ行わないものの、ISS係留中に人が立ち入ることができる安全性を有し、無人での単独飛行が可能な宇宙船であることから、HTVを基点とした発展型が構想されてきた。なお、これらの構想は論文や暫定的な計画等で公表されているが、いずれも要素技術の開発に留まったか構想段階で留まっている等、正式に開発が決定したものではない<ref>{{Cite web|title=宇宙輸送系の現状と展望|publisher=宇宙航空研究開発機構(JAXA)将来宇宙輸送系研究センター|author=中安英彦|archiveurl=https://web.archive.org/web/20150826064052/http://laplace.ele.kyutech.ac.jp/lecture1/space_environment/2006/goka_9.pdf|url=http://laplace.ele.kyutech.ac.jp/lecture1/space_environment/2006/goka_9.pdf|archivedate=2015年8月26日|deadlinkdate=2005年12月7日|accessdate=2018-10-16}}</ref><ref name="ISTS_2008-g-14">{{Cite web|author=Takane Imada, Michio Ito, Shinichi Takata|date=2008-06|url=http://archive.ists.or.jp/upload_pdf/2008-g-14.pdf|title=Preliminary Study for Manned Spacecraft with Escape System and H-IIB Rocket|format=PDF|publisher=26th ISTS|accessdate=2010-12-25}}</ref>。
 
=== 回収機能付加型宇宙ステーション補給機 (HTV(HTV-R)R) ===
2010年に、2011年のスペースシャトルの退役によりISSから実験試料などを持ち帰る手段が減少することが確実となった。2010年の時点で確実に使用可能な手段は[[ソユーズ|ソユーズ宇宙船]]のみであり、ソユーズに搭載できる物資は1機あたり60kgに限られることから、日本独自の物資回収手段となるHTV-Rの開発構想が持ち上がった<ref>{{Cite web|url=http://www.jaxa.jp/press/2010/04/20100414_sac_fy22_2.pdf|title=独立行政法人宇宙航空研究開発機構の平成22年度の業務運営に関する計画(年度計画)|accessdate=2015-08-26|date=2010-03-31|format=PDF}} 4. 国際宇宙ステーション(ISS)(2)宇宙ステーション補給機(HTV)の開発・運用</ref>。HTV-Rの実現により、将来の有人宇宙船開発に向けて大気圏再突入の経験を積むこともできるとされた。
 
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# 与圧部置換型(オプション2)
 
オプション0は、従来のHTVをほぼそのまま流用できるため、回収できる重量は小さくなるものの、最も早く回収能力を獲得できることが利点とされた。オプション1は、経費を抑えるため、従来のHTVに対して与圧部から非与圧部に設置する帰還モジュールへのアクセス経路を追加し、非与圧部に収まる大きさで有人機に近い水準の帰還能力と300キログラムの回収能力を獲得する案であり、オプション2は与圧部全体を将来の有人機に近い形状の回収モジュール(HTV(HTV Return Vehicle: HRV)HRV)に置き換え、有人機に近い形状での帰還能力と無人機として1.6トンの回収能力を獲得する案であった。HRVは最大直径4.4m、高さ3m、重量6.5tとされ、帰還時は揚抗比0.3程度の揚力飛行をすることでペイロードに優しい小さな減速度を実現予定であった。<ref>{{Cite journal|author=渡邊泰秀|year=2014|title=回収機能付加型HTV(HTV-R)の研究|journal=日本機械学会誌 2014. 1|volume=Vol. 117 No.1142|page=55}}</ref>
オプション0は、従来のHTVをほぼそのまま流用できるため、回収できる重量は小さくなるものの、最も早く回収能力を獲得できることが利点とされた。
オプション1は、経費を抑えるため、従来のHTVに対して与圧部から非与圧部に設置する帰還モジュールへのアクセス経路を追加し、非与圧部に収まる大きさで有人機に近い水準の帰還能力と300キログラムの回収能力を獲得する案であり、オプション2は与圧部全体を将来の有人機に近い形状の回収モジュール(HTV Return Vehicle: HRV)に置き換え、有人機に近い形状での帰還能力と無人機として1.6トンの回収能力を獲得する案であった。HRVは最大直径4.4m、高さ3m、重量6.5tとされ、帰還時は揚抗比0.3程度の揚力飛行をすることでペイロードに優しい小さな減速度を実現予定であった。<ref>{{Cite journal|author=渡邊泰秀|year=2014|title=回収機能付加型HTV(HTV-R)の研究|journal=日本機械学会誌 2014. 1|volume=Vol. 117 No.1142|page=55}}</ref>
 
採用案はオプション2で、2012年8月の[[宇宙政策委員会]]第2回会合時点で、2018年度以降の打上げが検討されていた<ref>{{Cite web|url=https://www8.cao.go.jp/space/comittee/dai2/siryou2-15.pdf|title=宇宙ステーション補給機への回収機能の付加(HTV-R)|accessdate=2015-08-26|format=PDF}}</ref>。しかし、[[2013年]]10月の第57回宇宙科学技術連合講演会では、予算の問題から開発期間の短縮を図った上記の設計は意味がなくなったとして、デザインを全面的に一新した[[ドラゴン (宇宙船)|ドラゴン]]宇宙船に近い案が公表されている<ref>{{Cite web|url=http://togetter.com/li/574977|title=第57回宇宙科学技術連合講演会|publisher=[[Togetter]]|date=2013-10-10|accessdate=2013-10-26}}</ref><ref>{{Cite web|url=http://archive.ists.or.jp/upload_pdf/2013-g-16.pdf|title=Concept Study of HTV-R (HTV-Return)|language=英語|format=PDF|publisher=JAXA|date=2013年|accessdate=2015-05-24}}</ref>。
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=== 有人宇宙船 ===
JAXAは[[2015年]]に有人宇宙船開発の判断を行い、[[2025年]]に実用化することを掲げていた。HTVはISS係留中に宇宙飛行士が立ち入るため、有人宇宙船に相当する安全性を備えていることから、日本の有人宇宙船開発の基本になるものと位置付けられている。このため、上述の回収機能付加型宇宙ステーション補給機 (HTV(HTV-R) R)を実用化するなど、有人宇宙船の要素技術を開発し、2015年までに有人宇宙船の開発計画をまとめる方針であった。構想では[[2020年]]までにHTV-Rを発展させた有人回収カプセルと、無人の有翼再使用型回収システムを開発する。これらを統合し、2025年までに再使用型有人宇宙船を開発するとしていた。
 
2008年6月に発表された構想<ref name="ISTS_2008-g-14" />によれば、HTVの推進モジュールに4人乗りの有人カプセルを組み合わせることを基本とする。最小構成の重量は6tで、H-IIA202型ロケットでの打ち上げも可能だが、脱出ロケットを持たないため有人打ち上げはできない。最大構成では、脱出ロケットや居住モジュールも搭載され、H-IIBロケットの2段目を大型化して対応する。なお、この構想は2001年に[[宇宙開発事業団|NASDA]]先端ミッション研究センターが構想を発表した「[[ふじ (宇宙船)|ふじ]]」と共通点が多い<ref>{{Cite web|title=日本独自の有人宇宙船構想|publisher=宇宙開発事業団先端ミッション研究センター|author=野田篤司|archiveurl=https://web.archive.org/web/20040603201811/http://giken.tksc.nasda.go.jp/Group/sentan/mission/2/index.html|url=http://giken.tksc.nasda.go.jp/Group/sentan/mission/2/index.html|archivedate=2004年6月3日|deadlinkdate=2017年10月|accessdate=2015-08-26}}</ref>。
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これは、ロシアの宇宙ステーションと同じ手法である。ミールやISSのロシア製モジュールの多くは[[TKS (宇宙船)|TKS宇宙船]]を基に開発したため、自力でISSにドッキングすることが可能で、ISSの高度や姿勢を制御するのにも使われている。また中国の神舟宇宙船も、軌道船と組み合わせて宇宙ステーションとして使用することが想定されている。
 
JAXAの一案では、HTVを基にした推進モジュールや、HTVで輸送される太陽電池アレイ、居住モジュールを打ち上げ、これと既存のきぼうを組み合わせることで日本独自の小型宇宙ステーション ([[宇宙ステーション#計画段階の宇宙ステーション|JSS]]) を実現する。なお、宇宙政策シンクタンク「宙の会」がこれとほぼ同じ趣旨の構想を発表しているが、こちらはきぼう以外にもISSのモジュールを流用しているため、より大型である。
 
== 情報漏洩事件 ==
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== 備考 ==
* HTVのアイデアそのものは古く、H-IIロケット開発時のイラストには、先端に[[共通結合機構]] (CBM) (CBM)を装備した与圧キャリアらしきものを搭載したH-IIロケットもある。また、この構想の延長として、能力を2倍から3倍に向上したH-IIロケット派生型を用いて、宇宙ステーションの日本実験棟(後のきぼうに相当)を独自に打ち上げることも検討された<ref>{{Cite book|和書|author=五代富文|date=1994-04-30|title=国産ロケットH-II宇宙への挑戦 最先端技術にかけた男たちの夢|publisher=[[徳間書店]]|pages=228-229|isbn=4-19-860100-3}}</ref>が、これは実現しなかった。
* {{see also|HTV技術実証機#プロジェクトの効率性に対する分析}}
 
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* [[きぼう]]
* [[スペースシャトル]]
* [[HOPE (宇宙往還機)|HOPE(宇宙往還機)]]
* [[国際宇宙ステーションへの無人宇宙飛行の一覧]]
 
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{{Commonscat|H-II Transfer Vehicle}}
* JAXA 宇宙航空研究開発機構
** [https://www.jaxa.jp/projects/rockets/htv/index_j.html HTV 宇宙ステーション補給機 (ロケット・輸送システム)]
** [https://www.jaxa.jp/countdown/h2bf1/index_j.html HTV/H-IIB特設サイト]
** [https://iss.jaxa.jp/htv/ HTV 宇宙ステーション補給機 (宇宙ステーション・きぼう 広報・情報センター)]
* [http://www.youtube.com/watch?v=-dwg9qXwNCA For Future Space Transportation Mission〜HTV/H-IIB打ち上げ紹介ビデオ〜]、JAXA
* [http://www.youtube.com/watch?v=rWOZRXiGyoE H-II Transfer Vehicle〜日本初 宇宙ステーション補給機HTVプロジェクトの軌跡]、JAXA
* [http://www.youtube.com/watch?v=nImjdbdK6K8 HTV宇宙ステーション補給機ミッションダイジェスト1]、JAXA
* [https://www.mhi.co.jp/technology/review/pdf/471/471070.pdf 技術論文「宇宙ステーション補給機(HTV)の開発」]『三菱重工技報』Vol.47 No.1 (2010) 1(2010)低炭素社会特集
* [http://www.mhi.co.jp/technology/review/pdf/561/561040.pdf 技術論文「国際宇宙ステーションへ,そして月へ –HTV-X の開発-」]『三菱重工技報』Vol.56 No.1 (2019) 1(2019)新製品・新技術特集
* [http://www.mitsubishielectric.co.jp/society/space/satellite/iss/htv.html 宇宙ステーション補給機こうのとり(HTV)]三菱電機株式会社宇宙システム総合サイト