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==師部輸送(師部転流)==
[[ファイル:Translocation from the source to the sink within the phloem.svg|thumb|400px|right|'''師部輸送のしくみ'''. 赤丸はスクロース. ① ソース (source) から師管 (sieve tube) へのスクロースの積み込み. ② 浸透圧による師管への水の流入. ③ ソース側からシンク側への転流. ④ 師管からシンク (sink) へのスクロースの積み降ろし. ⑤ 浸透圧による木部への水の流出.]]
[[光合成]]によってつくられた[[糖]]は、師部の師要素からなる師管や師細胞組織を通して植物体全体に輸送される。この輸送は、'''師部輸送''' (篩部輸送、phloem transport) とよばれる<ref name="Iwasa2013師部輸送">{{cite book|author=巌佐庸, 倉谷滋, 斎藤成也 & 塚谷裕一 (編)|year=2013|chapter=師部輸送|editor=|title=岩波 生物学辞典 第5版|publisher=岩波書店|isbn=978-4000803144|page=606}}</ref>。師部輸送によって運ばれる水溶液には大量の糖 (主に[[スクロース]]、ときに[[オリゴ糖]]または[[糖アルコール]]) が含まれ、また[[アミノ酸]]や[[無機塩|無機養分]]も含まれている<ref name="Iwasa2013師部輸送" />。さらに[[植物ホルモン]]や[[伝令RNA]] (mRNA) も輸送され、植物体全体の情報交換の通路ともなっている<ref name="Iwasa2013師部輸送" /><ref name="キャンベル36">{{cite book|author=池内昌彦, 伊藤元己, 箸本春樹, 道上達男 (監訳)|year=2018|chapter=36 維管束植物の栄養吸収と輸送|editor=|title=キャンベル生物学 原書11版|publisher=丸善出版|isbn=978-4621302767|pages=899–920}}</ref>。このような師部輸送によって運ばれる液は、'''師管液''' (篩管液、phloem sap) とよばれる<ref name="キャンベル36" />。師部輸送では、師管断面積 1 cm<sup>2</sup> あたり1時間に数グラムの物質が輸送され、また輸送速度は時速 1 m に達することがある<ref name="Iwasa2013師部輸送" /><ref name="キャンベル36" />。
 
木部による水や無機養分の輸送 ([[道管#木部輸送|木部輸送]]) が根から気孔がある部分へ向けての一方通行の輸送であるのに対して、師部輸送の方向は時期や植物の状態によって変動する<ref name="キャンベル36" />。このような師部輸送において、師管液を供給する側を'''ソース''' (source)、師管液を受け取る側を'''シンク''' (sink) という<ref name="キャンベル36" />。同一の器官が時期によってソースとなったりシンクとなることがあり、例えば貯蔵器官は光合成が活発に行われている時期にはシンクとなり、早春など活発な活動を開始する前にはソースとなる。シンクとソースの間の師部輸送の仕組みは、基本的にシンクよりソースの方が浸透圧が高いことによって生じる水の流れであると考えられている。この仮説は'''圧流説''' (pressure flow theory) とよばれ、[[エルンスト・ミュンヒ (林学者)|エルンスト・ミュンヒ]] (1930) によって提唱された<ref name="Iwasa2013師部輸送" /><ref name="キャンベル36" />。ただし被子植物以外の師部輸送 (師管ではなく師細胞組織が用いられる) が、圧流説で説明できるか否かは明らかではない<ref name="キャンベル36" />。