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[[秦]][[始皇帝]]は[[車軌]]の統一を行った。車軌とは[[馬車]]についた2つの車輪の幅のことである。当時は車輪が通ってできる轍が[[軌条|レール]]のような役割をしており、車はこの轍にはまるように走っていたと考えられている。車軌の異なる馬車が同じ道を通ることは困難であるため、これを統一して流通を容易にした。
 
=== 街道と運河の整備 ===
[[File:RomaViaAppiaAntica03.JPG|left|thumb|[[ローマ街道]]の一例、[[アッピア街道]]]]
[[ローマ帝国]]時代には、[[ローマ]]から各地に向かう[[石畳]]の[[道路]]が整備された。これらは[[ローマ街道]]と呼ばれる。「帝国内の各地にいち早く軍隊を派遣することが出来る」という軍事目的であったが、ここから「すべての道はローマに通ず」という言葉も生まれた。ドイツの観光街道の1つ「[[ロマンチック街道]]」は、そのローマ街道が起源である。また、イタリアの「[[アッピア街道]]」もローマ街道を起源としており、石畳などはほぼ当時のままの形で残されている<ref>「図説 人類の歴史 別巻 古代の科学と技術 世界を創った70の大発明」p144-145 ブライアン・M・フェイガン編 西秋良宏監訳 朝倉書店 2012年5月30日初版第1刷</ref>。ローマ街道のほかにも、当時それぞれの地域で覇権を握った[[国家]]によって建設された街道がいくつか存在する。日本では[[江戸時代]]に[[五街道]]が制定され、江戸を中心とした各地への交通網が出来た。国土に遍く整備された街道は[[中央集権]]国家の存立には不可欠なものであった。
 
一方、街道の成立に伴って、その沿道には都市が生まれた。例えば、道路が川を横切る地点(渡津)は交通が滞留しやすく、都市が成立しやすい。また、古くからある街道は、後の時代において新設される主要な交通路のルートに選定されている場合が多く、[[高速鉄道]]や[[高速道路]]の多くは古くからの街道沿いに建設されている場合が多い。そのため、街道沿いの都市は現在も交通の要衝であり続けていることがほとんどであり、今や大都市に成長している例も少なくない。一方で、移動可能な速度によって都市の間隔は決まるために、交通インフラの高速化によって、都市間の競争が起こり古くからの都市が衰退する場合もある。
 
陸上の街道に対し、水上交通では[[運河]]が各地で整備された。とくに18世紀末のイギリスでは「[[運河熱]]」と呼ばれる運河建設ブームが巻き起こり、これによって発達した運河網は安定した大量輸送を各地で確保し、イギリスにおいて産業革命を推進する基盤のひとつとなった<ref>「商業史」p172 石坂昭雄、壽永欣三郎、諸田實、山下幸夫著 有斐閣 1980年11月20日初版第1刷</ref>。
 
=== 鉄道と蒸気船 ===
[[File:Steam locomotive rocket.png|thumb|[[リバプール・アンド・マンチェスター鉄道]]に使用された[[ロケット号|蒸気機関車]]]]
近代における交通は、[[機械]]を利用した交通手段の発達なしに語ることはできない。その先駆けとなったのは、[[蒸気機関]]の発明である。蒸気機関の発明は海陸の2つの輸送機械、すなわち蒸気機関車と[[蒸気船]]を出現させ、以後の交通を一変させた<ref>「エネルギーの物語 わたしたちにとってエネルギーとは何なのか」p117-119 マイケル・E・ウェバー著 柴田譲治訳 原書房 2020年7月22日第1刷</ref>
 
今日のような[[原動機]]の動力を用いた鉄道の出現は[[1804年]]の[[リチャード・トレビシック|トレビシック]]による[[蒸気機関車]]の発明を待たなければならない。ただこの時点ではまだ実用に耐えるものでは無かった。実用化は[[ジョージ・スチーブンソン|スチーブンソン親子]]によってなされ、[[1830年]]、蒸気機関車による世界初の旅客鉄道が[[リヴァプール]]-[[マンチェスター]]に開通した<ref name="#3">「日本鉄道史 幕末・明治編」p2 老川慶喜 中公新書 2014年5月25日発行</ref>。その有用性はすぐに認められ、以降、世界中で鉄道建設が進められることになった。ヨーロッパやアメリカでは19世紀中頃<ref name="#3"/>、日本を含むその他の地域では19世紀末から20世紀初頭にかけて、空前の鉄道建設ラッシュが起こり<ref>「鉄路17万マイルの興亡 鉄道から見た帝国主義」p3 クラレンス・B.デイヴィス, ケネス・E.ウィルバーン・Jr. 編著 原田勝正・多田博一監訳 日本経済評論社 1996年9月25日第1刷</ref>、現在も運行される主要な路線のほとんどはこの時代に、極めて短期間のうちに完成された。
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=== 自動車と飛行機の発明 ===
[[File:1885Benz.jpg|thumb|[[カール・ベンツ]]発明の[[ベンツ・パテント・モトールヴァーゲン|自動車]]|左]]
[[File:First flight2.jpg|thumb|1903年、[[ライト兄弟]]による初飛行]]
19世紀末に[[File:First flight2.jpg|thumb|1903年、[[ライト兄弟内燃機関]]が発明されると、交通はさらに進歩した。石油という液体燃料を使用し、軽くて強力な内燃機関の登場によって、主に個人向けに使用される輸送機関である自動車の普及や<ref>「エネルギーの物語 わたしたちにとってエネルギーとは何なのか」p121-122 マイケル・E・ウェバー著 柴田譲治訳 原書房 2020年7月22日第1刷</ref>、空中を飛ぶ輸送機関であ飛行]]機の発明が可能となった<ref>「エネルギーの物語 わたしたちにとってエネルギーとは何なのか」p128-129 マイケル・E・ウェバー著 柴田譲治訳 原書房 2020年7月22日第1刷</ref>。19世紀末にはガソリン自動車が発明され、当初は高価だったものの[[1908年]]にアメリカで[[フォード・モデルT]]が発売されると、一般大衆への普及が進んだ。一方、1903年に[[ライト兄弟]]によって飛行機が発明されたのち、飛行機は急速に発達を遂げ、第一次世界大戦後には旅客機の定期運行がはじまり、1927年には[[チャールズ・リンドバーグ]]が[[大西洋横断飛行|大西洋横断単独無着陸飛行]]を成功させた<ref>「交通工学総論」p16 高田邦道 成山堂書店 平成23年3月28日初版発行</ref>。
 
第二次世界大戦後には世界各国でも道路の整備が進み、自動車価格が中流階級が購入可能なものになると[[モータリゼーション]]が進展して、鉄道の衰退や、都市の[[郊外化]]といった社会への変化も引き起こすことになった。飛行機の改良も進み、1960年代には[[ジェットエンジン]]の本格導入によって飛行機の大型化と高速化が進んだ<ref>「新版 交通とビジネス【改訂版】」(交通論おもしろゼミナール1)p71 澤喜司郎・上羽博人著 成山堂書店 平成24年6月28日改訂初版発行</ref>。また、世界中で[[地球温暖化]]問題が表面化する中で、[[化石燃料]]である[[ガソリン]]を利用して[[二酸化炭素]]などの[[温室効果ガス]]を排出する自動車の利用方法が問われるようになってきている。