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{{複数の問題|一次資料=2022年2月|精度=2022年3月|出典の明記=2022年3月|脚注の不足=2023年2月|内容過剰=2023年2月}}
'''反出生主義'''(はんしゅっしょうしゅぎ、はんしゅっせいしゅぎ<!-- (注記)読み仮名については過去にノートで議論がありました。[[ノート:反出生主義#「しゅっしょう」「しゅっせい」]] -->)または'''アンチナタリズム'''{{Sfn|森岡|2021|p=49}}({{lang-en-short|antinatalism}}、アンティネイタリズム<ref>{{Cite web|title=antinatalismの意味・使い方・読み方|url=https://eow.alc.co.jp/search?q=antinatalism|website=eow.alc.co.jp|accessdate=2021-06-02|language=ja|publisher=[[英辞郎]] on the WEB}}</ref>)<!-- 「無生殖主義」は「反出生主義」と同義ではないのでここには並べないほうがいい -->とは、[[人々]]が[[子供]]を持つ<!--原文では"to have children"-->ことは[[悪|不道徳]]だという[[信念]]<!--原文では"The belief"--><ref name=lexico>{{Cite web|url=https://web.archive.org/web/20220123112748/https://www.lexico.com/en/definition/antinatalism |title=ANTINATALISM English Definition and Meaning |accessdate=2022-03-29}}</ref>{{Efn2|{{Quotation|原文:"antinatalism ... The belief that it is morally wrong or unjustifiable for people to have children."<br>和訳:反出生主義 … 人々が子供を持つ〔産む〕ことは道徳的に間違っている、または正当化できないという信念。<ref name=lexico/>}}}}。[[哲学]]事典では、「反出生主義は極端に挑発的な観点であり、[[生殖]]を常時または通常許されないこととする」とされている<ref name=IEP>{{Cite web|url=https://iep.utm.edu/anti-natalism/|title=Anti-Natalism | Internet Encyclopedia of Philosophy |accessdate=2022-03-29}}</ref>{{Efn2|{{Quotation|原文:"Anti-natalism is the extremely provocative view that it is either always or usually impermissible to procreate."<ref name=IEP/>}}}}
{{関連記事|生殖に関する健康と権利||[[産児制限#産児制限と人権|産まない権利]]|自由権}}
 
哲学者の[[森岡正博]]によれば、この種の考え方は古今東西の[[哲学]]・[[宗教]]・[[文学]]において綿々と説かれてきた{{Sfn|森岡|2020|p=13-14}}。とりわけ、[[アルトゥル・ショーペンハウアー]]{{Sfn|森岡|2021|p=54}}、[[エミール・シオラン]]{{Sfn|森岡|2021|p=54}}、[[デイヴィッド・ベネター]]{{Sfn|森岡|2021|p=54}}<ref name=":2" /><!-- 2022-03-24 要ページ番号が貼られていたので一旦コメントアウト。載せるとしてもefnでなく本文でお願いします。{{Efn2|ベネターによると、人が存在することはつねに害悪である{{要ページ番号|date=2022年2月}}。人が生きていると快楽と苦痛が生じるが、もし生まれてこなければどちらも存在しない{{要ページ番号|date=2022年2月}}。そして〝快楽の不在〟は別に悪いことではないが、〝苦痛の不在〟は誰にとっても大きなメリットとなる{{要ページ番号|date=2022年2月}}。つまり、トータルで考えると、人が生まれてこないのは生まれるよりも〝つねに良いこと〟と言わざるを得ないという論{{要ページ番号|date=2022年2月}}。}} -->が反出生主義の擁護者として知られる。
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<!-- この節は[[デイヴィッド・ベネター#反出生主義]]と同内容 -->ベネターは、生まれてくることはその本人にとって常に災難であり、それゆえに子供を生むことは反道徳的な行為であり、子供は生むべきではない、と主張する。子供を生むことは、多くの動物がそうしているように単に何も考えずに性的欲求を満たすための行動である[[性行為]]の結果として引き起こされている現象であるか、または生む側の欲求を満たすために引き起こされている現象であるか(例えば子育てしてみたいといった欲求を満たすため、自分の老後の世話をしてもらおうという計算のため)、または判断するさいに生の質([[QOL]])を不当に高く評価していること([[ポリアンナ効果]])から起きている現象である、とする。[[チャイルド・フリー]]のような立場と自身の立場を明確に区別しており、チャイルド・フリーのような考え方は、自分のライフスタイルを維持することを考えて子供を持たないという立場を取るが、ベネターは親の都合ではなく、生まれてくる人間の観点に立って、その上で生むべきではない、と主張する。つまり生まないことは、多くの人に取ってはある種の我慢が必要なことではあるが、生まれてくる人間のことを少しでも真剣に考えるのならば、子供は生まずに我慢すべきだ、とする。また、地球上の理想の[[人口]]は[[0|ゼロ]]であるとし、人間は[[絶滅]]した方がよいと主張する。とはいえ即座に人類絶滅を目指すのは生まれてきてしまった人たちにとって大きい苦痛を伴うものとなるであろうから、少しずつ段階的に人口を減らしていき、最終的に絶滅する、つまりゆるやかに絶滅していくのが良いだろう、としている。また、ヒトに限らず、他の感覚を持った生物も、まったく生まれてこない方が良かった、つまり絶滅してしまった方が良い、としている。
 
ベネター、ジェラルド・ハリソンとジュリア・タナーらは、人間が動物に危害を加えていることを懸念し「我々の種によって毎年数十億の動物が動物製品の生産や動物実験、環境破壊の結果や残酷で嗜虐的な喜びの為に虐殺されている。彼らは我々が動物を苦しめるのは非倫理的であるとする[[動物の権利]]の思想家に賛同する傾向がある。彼らは地球上で最も破壊的な種は人類だと考える。そして新たに人間が生まれなければ人間によって新たに動物が苦しめられることはなくなる」と主張する<ref>D. Benatar, ''Better...'', op. cit., pp. 109.</ref><ref name="autoname90" />。
 
=== ヴェターとナーベソン ===
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*[[諫山創]]『[[進撃の巨人]]』(漫画、2009年 - 2021年) - ジーク・イェーガーによる「エルディア人安楽死計画」。エルディア人のジークは、自分たちの先祖である「ユミルの民」がはるか昔に行った[[民族浄化]]に対する罰として、マーレ政府から収容区での隔離生活を強制された。ジークは、自身に流れる王家の血に加え、始祖の巨人の能力を発動することによってユミルの民の人体の構造を変えることが可能であることを知ると、「全てのユミルの民から子どもが出来なくすることができる」と考える。彼が唯一心を許していたトム・クサヴァーも、自身がエルディア人であることを隠して結婚・出産をしたためにマーレ人の妻と子どもが自殺した過去を打ち明け、「自分たちは生まれなければ苦しむことはなかった」とジークに賛同を示す。<ref name=":3"/><ref name=":2"/> 批評家の[[杉田俊介]]は、このような理路を「反出生主義の特殊なモード」「反出生主義を民族・人種的な特殊性を結びつけたもの」と指摘している<ref name=":3"/>。
 
== 反出生主義の主張 ==
== 批判 ==
*悲観的な地球将来予測
人間を生み出すことに対して肯定的な意見を持つ立場は[[出生主義]]と呼ばれる。[[医療科学]]、特に[[産婦人科学]]・[[生殖補助医学]]では、[[妊娠]]・[[出産]]が推進されていて、反出生主義に対立的である<ref name="takahashi">{{Cite web |url=https://web.archive.org/web/20220219180657/https://nhkbook-hiraku.com/n/n7972361bf99d |author=高橋昌一郎・[[NHK出版]](「本がひらく」) |title=連載「哲学ディベート――人生の論点」【第2回】生まれてこないほうがよかったのか? |accessdate=2022-02-19}}</ref>。
*:環境汚染や[[温暖化]]などが現在より深刻化するであろう将来の地球に子供を存在させたくないという理由で、反出生主義が語られることがある<ref>{{Cite web|title=I wish I'd never been born: the rise of the anti-natalists|url=http://www.theguardian.com/world/2019/nov/14/anti-natalists-childfree-population-climate-change|website=the Guardian|date=2019-11-14|accessdate=2021-04-03|language=en|first=Rebecca|last=Tuhus-Dubrow}}</ref>。
*環境保護目的による人類絶滅運動
*:[[自主的な人類絶滅運動]]の支持者達は人間の活動が[[環境破壊|環境悪化]]の主な原因であるため、生殖を控えるのが「人災への人道的代替」であると論じている<ref name="autoname10">V. Baird, "The No-nonsense Guide to World Population", ''New Internationalist'', Oxford 2011, p. 119.</ref><ref name="autoname11">[http://www.youtube.com/watch?v=Rm1QojjwGdo] An NBC interview with Les U. Knight.</ref><ref name="autoname12">[http://vhemt.org] The official Voluntary Human Extinction Movement website.</ref>。
*苦痛の回避
イギリスの政党「ANP」 (The Anti Natalist Party) 反出生主義を公約に掲る。法学者[[ウィリアム・ブラックストン]]の「10人の罪人を逃しても1人の無辜を罰することなかれ」の言葉を引用し、正義の原則的に(不必要な)喜びが存在するより(不必要な)苦しみを経験しない方が良いと主張した<ref>[https://antinatalism.co.uk/2015/12/14/links-2/ What is ‘Antinatalism’?]{{リンク切れ|date=2021-04-03}} – The Anti-Natalist Party</ref>。また、公約として「子供を作る意欲を減らす為」に子供の税控除の廃止や裕福な家族への課税などを掲げた<ref>[https://antinatalism.co.uk/about/ Manifesto]{{リンク切れ|date=2021-04-03}} – The Anti-Natalist Party</ref>。
 
== 研究・議論・批判 ==
人間を生み出すことに対して肯定的な意見を持つ立場は[[出生主義]]と呼ばれる。[[医療科学]]、特に[[産婦人科学]]・[[生殖補助医学]]では、より[[健康]]な[[妊娠]]・[[出産]]・[[救命]]・[[福祉]]などが増進されていて、反出生主義に対立的である<ref name="takahashi"/><ref name="tsuchiya"/><ref name=jsrm/><ref name=jsog/>。[[精神医学]]・[[心理学]]では、反出生主義が[[うつ病]]などの[[精神障害]]と強く関連しているとする研究・考察がある{{Sfn|Schönegger|2021|p=66, 86}}<ref name="matsuki"/><ref name="kayama_imidas_p3"/><ref name=king/>。
{{関連記事|生殖に関する健康と権利|[[身体的インテグリティ#政府と法律|産まれる権利(誕生権)]]|[[不妊症治療|不妊症治療(生殖補助医学)]]|医療倫理#与益原則|[[ジュネーブ宣言#最新2017年版のジュネーブ宣言全文|世界医師会“ジュネーブ宣言”]]|生命倫理学|自由権}}
 
=== 哲学・倫理学 ===
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私たちは、現に社会を生きている当事者であるという[[バイアス]]を有したなかでしか議論することはできない、このことを深く自覚しながら、研究を進めていかねばならないと感じる。{{Sfn|野崎|2020|p=39}}
}}
 
[[哲学者]]の[[高橋昌一郎]]は架空のディベート形式の記事で、ベネターらの反出生主義や[[人類]](と[[宇宙]])の消滅推進論を取り上げた<ref name="takahashi">{{Cite web |url=https://web.archive.org/web/20220219180657/https://nhkbook-hiraku.com/n/n7972361bf99d |author=高橋昌一郎・[[NHK出版]](「本がひらく」) |title=連載「哲学ディベート――人生の論点」【第2回】生まれてこないほうがよかったのか? |accessdate=2022-02-19}}</ref>。ディベートに参加した[[理学部]]の人物「D」として「僕には、[[エドゥアルト・フォン・ハルトマン|ハルトマン]]やベネターの議論は、幼稚な『[[Wikt:机上の空論|机上の空論]]』に聞こえますね。というのは、彼らの哲学は、今現実に生きている人間には何の役にも立たないからです」と述べた<ref name="takahashi"/>。また、「D」を踏まえた医学部の「E」の発言として以下のように述べた<ref name="takahashi"/>。
{{Quotation|「反出生主義」のような考え方からすると、この新生児〔重度障害児〕は「生まれてこない方がよかった」のかもしれません。
 
 
しかし、その子は、すでに生まれてきたという事実があります。僕は、医療現場では何よりも[[救命]]が優先されるべきだと考えていますから、その[[医療倫理|医療意識]]を少しでも混乱させるような考え方は、承服できません<ref name="takahashi"/>。}}
 
=== 生殖補助医学・産婦人科学 ===
「[[医療法人]][[社団]] 均禮会 [[府中市_(東京都)#公園など|府中の森]]土屋[[産婦人科]]」は、反出生主義が世の中に「拡散」していると述べた上で
{{Quotation|私達は「子供を持ち [[家庭]]を築けてよかった」<br>と思える[[未来]]が来るように[[応援]]します}}としている<ref name="tsuchiya">{{Cite web |url=https://twitter.com/tsuchiya_c_twt/status/1476874145770373123 |author=医療法人社団 均禮会 府中の森土屋産婦人科 |title=午後8:13 · 2021年12月31日 |accessdate=2022-03-11}}</ref>。
 
高橋昌一郎は反出生主義を取り上げた上で、[[産科医]]の[[夫律子]]の発言を引用している<ref name="takahashi"/>。夫律子は[[慶應義塾大学]][[法学部]]の卒業後、[[徳島大学]][[医学部]]を卒業して[[臨床研究]]を進めており、こう述べた<ref name="takahashi"/>。
{{Quotation|ゆくゆくは、精密な「[[出生前診断]]」に加えて、「出生前[[治療]]」ができるようになるかもしれません。私たちが追求すべきなのは、「生まれてこないほうがよかった」という子どもを1人でも減らし、「生まれてきてよかった」という子どもを1人でも増やすことだと思います<ref name="takahashi"/>。}}
 
「[http://www.jsrm.or.jp/ 一般社団法人 日本生殖医学会]」は「[[英知]]と[[Wikt:良識|良識]]を発揮して … 社会の[[リーダー|先導者]]たらん医療人を育成し … 質の高い[[生殖医療]]を提供します」とし<ref name=jsrm>{{Cite web |url=http://www.jsrm.or.jp/ |author=一般社団法人 日本生殖医学会 |title=一般社団法人 日本生殖医学会 |accessdate=2022-02-26}}</ref>{{Efn2|{{Quotation|「一般社団法人 日本生殖医学会」<br>日本生殖医学会は、英知と良識を発揮して我が国の生殖医学を発展させ、<br>社会の先導者たらん医療人を育成し国民に対して安全で安心な質の高い生殖医療を提供します。<ref name=jsrm/>}}}}、「[https://www.jsog.or.jp/ 公益社団法人 日本産科婦人科学会]」は「[[女性]]と生まれてくる[[子ども]]たちの[[幸せ]]のために … 人類・社会の[[福祉]]に貢献します」としている<ref name=jsog>{{Cite web |url=https://www.jsog.or.jp/ |author=公益社団法人 日本産科婦人科学会 |title=公益社団法人 日本産科婦人科学会 |accessdate=2022-02-26}}</ref>{{Efn2|{{Quotation|「公益社団法人 日本産科婦人科学会」<br>女性と生まれてくる子どもたちの幸せのために、<br>産科学および婦人科学の進歩・発展を図るとともに、産婦人科専門医の育成に努め、<br>人類・社会の福祉に貢献します。<ref name=jsog/>}}}}。
{{関連記事|生殖補助医学|産婦人科学}}
 
=== 精神医学・心理学 ===
==== 心理統計学 ====
心理学論文「[[ダークトライアド]]的[[パーソナリティ障害|パーソナリティ特性]]と反出生主義的見解との関連についての解析研究」によると、データ[[解析]]により《反出生主義》が《[[うつ病]]・[[精神病質]](サイコパシー)・[[権謀術数主義]](マキャヴェリズム)》等と強く関連していることが証明されている{{Sfn|Schönegger|2021|p=66, 86}}。
 
同論文いわく、「反出生主義とは[[生殖]]を[[道徳]]的誤りとする見解である」(“anti-natalism is the view that procreation is morally wrong”){{Sfn|Schönegger|2021|p=66}}。特に有名な「反出生主義的見解」(“anti-natalist view”)は、[[デイヴィッド・ベネター]]によって擁護されてきた{{Sfn|Schönegger|2021|p=66}}。データ解析の結果によると反出生主義は、ダークトライアド的パーソナリティ特性の中でも精神病質や権謀術数主義との関連度が高い{{Sfn|Schönegger|2021|p=66}}。うつ病はその関連度を高めている{{Sfn|Schönegger|2021|p=66, 86}}。
 
反出生主義との関係において精神病質は「r = .621」、権謀術数主義は「r = .490」と、[[有意]]に高い[[相関関係]]の数値を示した{{Sfn|Schönegger|2021|p=81}}。媒介分析(“mediation analysis”)を行ったところ、うつ病はその相関関係の数値を有意に高めていた{{Sfn|Schönegger|2021|pp=78-79, 81}}。同論文は次のように述べている{{Sfn|Schönegger|2021|p=66, 84}}。
{{Quotation|うつ病は関係的に反出生主義的見解とは別物であること、および、《反出生主義的見解》と《権謀術数主義・精神病質》との関係において、うつ病が[[媒介]]役として機能していることが判明した。この[[パターン|定型〔パターン〕]]は、追跡調査でも[[再現性|再現]]された。{{Sfn|Schönegger|2021|p=66}}{{Efn2|原文:"Depression is found to be both standing independently in a relationship with anti-natalist views as well as functioning as a mediator in the relationships between Machiavellianism/psychopathy and anti-natalist views. This pattern was replicated in a follow-up study"{{Sfn|Schönegger|2021|p=66}}.}}}}
{{Quotation|我々は反出生主義と[[抑うつ]]気分に関して、[[抑うつ現実主義]]的な議論の系統を過信すべきでないと主張する。{{Sfn|Schönegger|2021|p=84}}{{Efn2|原文:"We claim that one ought not be overly confident in the line of depressive realist argumentation with regard to antinatalism and depressive mood"{{Sfn|Schönegger|2021|p=84}}.}}
}}
{{See also|ダークトライアド|パーソナリティ障害|うつ病|[[精神病質者|精神病質者(サイコパス)]]}}
 
==== 社会精神医学・社会心理学的考察 ====
[[精神科医]]の熊代亨は、反出生主義と類似している「[[親ガチャ]]」概念は[[先天性|先天]]的・[[遺伝]]的問題と[[後天性|後天]]的問題との両方を扱っていて、「[[毒親]]」よりも[[虚無主義]]的(ニヒリスティック)であるとしている<ref name="kumashiro">{{Cite web |title=それにしても、親ガチャというスラングが響く社会の、なんと暗いことだろう!|url=https://blog.tinect.jp/?p=72672 |website=Books&Apps |accessdate=2022-02-19 |language=ja}}</ref>。反出生主義でも親ガチャでも、道徳的問題を自分の代で断ち切るなら子供を作らないという考え方になり、そのような方向性の社会に「未来があるとは思えない」という<ref name="kumashiro"/>。
 
[[香山リカ (精神科医)|香山リカ]]は2020年に、ベネターの哲学書における反出生主義を論点とした上で
{{Quotation|このところ反出生主義が注目されている理由のひとつには、社会や環境などの「外的要因の悪化」もある。だとするとなおのこと、それと夏以降の日本で起きている[[自殺]]者の増加とは連動しているとも考えられる。}}
と述べた<ref name="kayama_imidas_p1">{{Cite web |title=「生きづらさ」と「生まれてこなければ良かった」~「反出生主義」は何を伝えようとしているのか |url=https://imidas.jp/josiki/1/?article_id=l-58-266-20-11-g320 |website=情報・知識&オピニオン imidas |accessdate=2022-02-26 |language=ja}}</ref>。そして同氏は、[[コロナ禍]]でうつ状態になったり「もう生きていたくない」と訴えたりする人々の[[緩和医療|苦痛を少しでも緩和]]し、生きる意欲を回復できるよう全力で知識と経験をもって対応していくと述べている<ref name="kayama_imidas_p3">{{Cite web |title=「生きづらさ」と「生まれてこなければ良かった」~「反出生主義」は何を伝えようとしているのか |url=https://imidas.jp/josiki/3/?article_id=l-58-266-20-11-g320 |website=情報・知識&オピニオン imidas |accessdate=2022-02-19 |language=ja}}</ref>。もし反出生主義が「何かの[[本質]]」であるとしても、「『人生の中断もやむなし』などとは絶対に思わない」としている<ref name="kayama_imidas_p3"/>。同時に、[[微視的]](ミクロ)な見方と[[巨視的]](マクロ)な見方を併せ持って反出生主義の行方を追っていくつもりだという<ref name="kayama_imidas_p3"/>。
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と述べた<ref name=king/>。
 
元[[臨床心理士]]の春井星乃は、「反出生主義と記者登場対談は、人類共通の『[[親子関係]]と子供の意識[[発達]]』の問題よると、[[19界]]的な[[代]]の流れの2つ点で哲学者ショーペンハウアー関係言及している」と言たよに、反出生主義的な思想は新しくない<ref name=harui_p1>{{Cite web |url=https://nazology.net/archives/31733 |author=ナゾロジー編集部、春井星乃 |title=なぜ生んだ?反出生主義者の「深層心理」を心理学的に分析してみた 1 |accessdate=2022-02-26}}</ref>。春井は「反出生主義の登場には、人類共通の『[[親子関係]]と子供の意識[[発達]]』の問題と、[[世界]]的な[[時代]]の流れの2つが関係している」と言う<ref name=harui_p1/>。まず子供の意識発達について春井はこう述べた<ref name=harui_p2>{{Cite web |url=https://nazology.net/archives/31733/2 |author=ナゾロジー編集部、春井星乃 |title=なぜ生んだ?反出生主義者の「深層心理」を心理学的に分析してみた 2 |accessdate=2022-02-26}}</ref>。
{{Quotation|さすがに「私は反出生主義です」と公言している方にお会いしたことはないけれど、「こんなに苦しいのなら生まれたくなかった」とずっと言っていた女性の患者さんはいましたね。 … 彼女の場合、母親との関係で作られた「生きている価値がない自分」という自己イメージや、母親の考え方で生きてしまっていることで、うつなどの症状が生じていました。 …
 
 
具体的な親の自分に対する態度や言葉を[[批判]]するよりも、産む産まないという議論の方が問題の[[本質]]に届かない表面的なものになるから、親も自分もそこまで傷つかずに済むということなのかもしれません。<ref name=harui_p2/>}}
春井が言うには、「子供は親を[[客観]]的に見て、否定するべきところは否定して、自己を育てて行かなければならない」<ref name=harui_p3>{{Cite web |url=https://nazology.net/archives/31733/3 |author=ナゾロジー編集部、春井星乃 |title=なぜ生んだ?反出生主義者の「深層心理」を心理学的に分析してみた 3 |accessdate=2022-02-26}}</ref>。しかし親が神のように扱われている[[インド]]では、子供の意識発達は「[[親不孝]]」であるため批判されてしまい、子供は打つ手がなくなる<ref name=harui_p3/>。そのような「親[[絶対主義]]」に対する精一杯の抵抗がインドの反出生主義である可能性はある<ref name=harui_p3/>。インドほどではないが、日本でも親絶対主義が無意識的圧力として存在し、先述のうつ病患者もそれに苦しんでいた<ref name=harui_p3/>。
 
記者が「本当に人間には成長もないし、生きる意味もないんでしょうか?」と尋ねると、春井は「私はそうは思っていません」と答え、以下のように述べた<ref name=harui_p4>{{Cite web |url=https://nazology.net/archives/31733/4 |author=ナゾロジー編集部、春井星乃 |title=なぜ生んだ?反出生主義者の「深層心理」を心理学的に分析してみた 4 |accessdate=2022-02-26}}</ref>。
次に春井は、[[脱近代主義]](ポストモダニズム)と[[格差社会]]からの影響を挙げた<ref name=harui_p3/>。[[1970年代]]から思想界ではポストモダンな[[相対主義]]が主流になり、[[価値観]]は人それぞれでいい、人類共通の[[真実]]や価値など存在しないとされるようになった<ref name=harui_p3/>。人間には主体性など無く、ただ[[無意識]]のシステムに動かされているだけなので、「[[成長]]」は[[幻想]]に過ぎないとされる<ref name=harui_p3/>。また格差拡大によって生活苦の人が増加し、努力が以前よりも報われにくくなり、人生に希望を持てない人が増えた<ref name=harui_p3/>。
{{Quotation|やっぱり、人生を少しでも楽に幸せに生きるためには、まず父親母親はどういう人なのか、自分は親や家庭環境からどういう影響を受けて育ってきたのかをよく見極めて、それと自分とはまったく別物なんだとすることが大切なんです。<br>それができずに親の影響をそのまま生きてしまうと、様々な精神病理や生きにくさが生じてきます。 …
 
 
たとえば精神科医で自傷行為などの研究をされている[[松本俊彦]]さんは、信頼できる大人は10人中3人くらいしかいないから、少なくとも8人には助けを求めてほしいとおっしゃっているそうです。私も本当にそう思います。<ref name=harui_p4/>}}
{{関連記事|[[日本社会精神医学会|社会精神医学]]|社会心理学}}
 
== 脚注 ==
226 ⟶ 267行目:
|issue = 1
|publisher = [[サンノゼ州立大学|San José State University]]
|year = 2022
|pages = 119-138
|doi = 10.31979/2151-6014(2022).130109
|ref = harv}}
 
=== 心理学 ===
* {{Cite journal |
|last = Schönegger
|first = Philipp
|title = What’s up with anti-natalists? An observational study on the relationship between dark triad personality traits and anti-natalist views 〔反出生主義者の調子はどうか? ダークトライアド的パーソナリティ特性と反出生主義的見解との関連についての解析研究〕
|journal = [[:en:Philosophical_Psychology_(journal)|Philosophical Psychology 〔哲学的心理学〕]]
|volume = 35
|issue = 1
|publisher = [[テイラーアンドフランシス|Taylor & Francis 〔テイラーアンドフランシス〕]]
|year = 2021
|pages = 66-94
|doi = 10.1080/09515089.2021.1946026
|ref = harv}}
 
== 関連書籍 ==
238 ⟶ 293行目:
 
== 関連項目 ==
{{Div col}}
* [[出生主義]]
* [[主義]] - [[思想]] - [[哲学]] - [[倫理学]]/道徳学
** [[去勢派]]/スコプツィ
* [[人類の絶滅]]
** [[自主的な人類絶滅運動]]
*** [[悲観的な人類絶滅運動]]
** [[尊厳死]] - [[安楽死]] - [[自殺]]
* [[チャイルド・フリー]]
** [[悲観主義]]
** [[チャイルド・フリー]]
* [[産児制限]]
* [[人権]] - [[子どもの権利]]
** [[産児制限#産児制限と人権]]
** [[自由権]] - [[生殖に関する健康と]]
*** [[生殖に関する健康と権利]]
*** [[身体的インテグリティ#政府と法律|産まれる権利(誕生権)]]
* [[プロライフ]]
*** [[産児制限#産児制限と人権|産まない権利]]
* [[生殖補助医療]]/生殖補助医学/不妊症治療
* [[プロライフ]] - [[産めよ増やせよ]]
{{Div col end}}
 
== 外部リンク ==
254 ⟶ 316行目:
*{{Cite web|title=生まれることは悪いことか? では産むことは? 【特別対談】川上未映子×永井均 反出生主義は可能か〜シオラン、べネター、善百合子|Web河出|url=https://web.kawade.co.jp/bungei/3600/|accessdate=2021-04-02|publisher=[[河出書房]]|author=[[川上未映子]];[[永井均]]|date=2020-05-22}}
*{{Cite web|url=https://utcp.c.u-tokyo.ac.jp/blog/2021/06/post-976/|title=【報告】東京大学共生のための国際哲学研究センター(UTCP)シンポジウム「反出生主義の含意と射程――「生まれてこなかった方がよかったのか」をなぜ問うのか」|accessdate=2021-07-12|publisher=東京大学 共生のための国際哲学研究センター(UTCP)|author=山野弘樹|date=2021-06-17}}
* "[https://scholar.google.co.jp/scholar?lr&q=%22right%20to%20be%20born%22&hl=ja&as_sdt=0%2C5&authuser=0 right to be born]" - [https://scholar.google.co.jp/scholar?lr=&q=%22%E7%94%9F%E3%81%BE%E3%82%8C%E3%82%8B%E6%A8%A9%E5%88%A9%22&hl=ja&as_sdt=0,5 生まれる権利]、[https://scholar.google.co.jp/scholar?lr=&q=%22%E7%94%9F%E3%81%BE%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%8F%E3%82%8B%E6%A8%A9%E5%88%A9%22&hl=ja&as_sdt=0,5 生まれてくる権利]、[https://scholar.google.co.jp/scholar?lr=&q=%22%E8%AA%95%E7%94%9F%E6%A8%A9%22&hl=ja&as_sdt=0,5 誕生権]、[https://scholar.google.co.jp/scholar?hl=ja&lr=&as_sdt=0%2C5&q=%22%E5%87%BA%E7%94%A3%E6%A8%A9%22&btnG= 出産権]
* {{Cite web|title=現代生命哲学研究|url=http://www.philosophyoflife.org/jp/|accessdate=2021-05-02|publisher=早稲田大学人間総合研究センター|author=[[森岡正博]]}}