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'''ハウスキーパー'''(Housekeeper)は、近代以前の[[大英帝国イギリス]]圏内の大きな屋敷において、全てのける女性[[家事使用人]]の一種であり、食料貯蔵室の管理する女性使用人全体の監督を行う上級職。一家の女主人に代わり家庭内の整備と統御を行う。中流最上層と上流階級家庭あるのみ見られた
 
== 概要 ==
屋敷の女主人(主婦)の指示を受け、料理部門以外の女性使用人を指揮・管理する。ちなみに料理部門の管理は料理人(Cook)が行い、女主人から直接指示を受ける。
現在では女性家事使用人自体を指す言葉として「ハウスキーパー」が使われるが本来は最上位の女性使用人を指す言葉であった(1)。ビートン婦人の"Book of Household Management"によれば、ハウスキーパーは家庭の命令系統において第二位に位置する(2)。経済的余裕を誇示するために実務から遠ざけられ、家庭の奥深くに祭り上げられた女主人の職能の代行である。そのため、家庭全体の管理がその職務となる。具体的にはまず女性使用人の管理があり、また世帯における出納管理も行う。管理職としての業務以外では保存食の加工とその管理も彼女の職務と考えられた。そのうえ、応急手当や軽い病気の症状改善に用いる薬品の調合など、初歩的な医療行為についての知識も必要とされた(3)。
 
通常、男性使用人の長である[[執事]](butler)とは、ほぼ同格の少し下となるが、屋敷内を全て女主人が仕切っている場合は、女主人との連絡役として執事より上に立つ場合もある。
 
== 雇用者 ==
女中頭と訳される場合も有るが、格下の[[メイド]]頭も女中頭と訳される場合があり紛らわしい。また、[[家政婦]]は本来、ハウスキーパーの訳だが、現在の日本では「お手伝いさん」と同義語として使われている。
中流階級家庭に広く家事使用人が見られた[[ヴィクトリア朝]]においても、ハウスキーパーを置くことができたのはごく一部であり、年1500から2000ポンドの収入がハウスキーパーを雇用する最低ラインであったとされる(4)。中流階級と見做される最低限の収入は年200ポンドであり、上層中流階級といえども年1000ポンド程度のであったことを考えると、最低でも1500ポンドという条件は一般的な中流家庭の収入を大きく凌駕している。そのため、ごく一部の上流家庭か、下層上流階級よりも裕福な銀行家、大貿易商などの中流階級最上層の家庭のみがハウスキーパーを置くことが可能であった。ハウスキーパーを置く余裕のない中流階級家庭では、女主人が直接、女性使用人を監督した。ハウスキーパーが置かれた家庭では彼女の他に最低でも五、六人の使用人(料理人、男性使用人、および三、四人の女性使用人)が雇われているのが普通であった(5)。
 
== 地位 ==
ハウスキーパーは女主人の代行者であり、料理人、小間使い以外の女性使用人すべてを統括する。家令が置かれる場合を除いて、ハウスキーパーは[[執事]]と同じく使用人としては最高位に位置し、未婚・既婚を問わず、ハウスキーパーは名に「ミセス」を付けて呼ばれた。執事とハウスキーパーは家長と女主人、それぞれの雇い主に由来する別々の指揮系統に属するため、どちらが上とは言うことができないが、家長の代行という点で権威の点で執事がやや上であった。しかし公的な立場では執事に一歩譲るとしても、男性使用人自体が希少であり、屋敷内における実際上の影響力という点ではハウスキーパーに敵うものはいなかった。ハウスキーパーは下級の女性使用人に対する全ての権限を持っており、生殺与奪の権を握っていたと言っても過言ではない。鍵束の音とともに屋敷を見回るハウスキーパーは年若い使用人(必ずしも女性使用人に限らない)の恐怖の象徴とも言われ、下級の使用人がハウスキーパーに反抗することは極めて少なく、場合によっては管理下にある若い使用人の給料を着服する不心得なハウスキーパーも存在した(6)。
 
 
 
== 脚註 ==
:(1)当時でも、現在のように"Housekeeper"という語が曖昧な定義のまま使われる場合があった。ホーン、2005、p.84
:(2)Beeton, 2000, p.33
:(3)ホーン、p.87-91
:(4)前掲書、p.85
:(5)この内訳はハウスキーパーを雇用する家庭より1ランク下の家庭(年収1000ポンド程度)。Huggettによればハウスキーパーを雇用可能な年収1500以上の家庭で雇用する使用人は男2人、女4人(Huggett, 1977, p.54)。
:(6)マーロウ、1994、p.176
 
 
== 参考文献 ==
*P.ホーン 『ヴィクトリアン・サーヴァント』 子安雅博訳、英宝社、2005年
*S.マーロウ 『イギリスのある女中の生涯』 徳岡孝夫訳、草思社、1994年
*Beeton, Isabella. Book of Household Management. Oxford : Oxford University Press, 2000
*Huggett, Frank E. Life Below Stairs. London : Book Club Associates, 1977
 
 
[[カズオ・イシグロ]]の『日の名残り』では、ハウスキーパは執事とほぼ同格の少し下だったが、映画『ゴスフォード・パーク』のハウスキーパは執事と同格以上に描かれている。
== 関連項目 ==
* [[家庭内労働者事使用人]]
* [[ヴィクトリア朝]]
*[[執事]]
* [[メイド社会史]]
* [[バトラー]]
 
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