「非可換幾何」の版間の差分

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概要など
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[[数学]]における'''非可換幾何'''(ひかかんきか、<em lang=en>noncommutative geometry</em>)とは[[交換法則|可換性]]が成り立たない(「[[二項演算|積]]」について ''xy'' と ''yx'' が一致しない)ような[[多元環|代数構造]]に対する空間的・幾何学的な解釈を研究する分野である。通常の[[幾何学]]では様々な構成物[[関数 (数学)|関数]]に関して可換性が要求されるが、その条件を外すことによってどんな現象がとらえられるかが追求される。
 
== 動機概要 ==
[[20世紀]]における数学の発展の過程幾何学的なものである空間[[図形]]と、その上の[[関数 (数学)|関数]]のなす代数系のあいだに密接な関係があることが認識されてい。一般的にそのよう関数ちは[[可換環]]をなす。例えば、[[位相空間]] ''X'' に対して ''X'' の上で[[連続 (数学)|連続]]な[[複素数]]値関数のなす[[環 (数学)|環]] ''C''(''X'') がその例対応するようなってい、一般的に図形の上で定まような関数たちは[[可換環]]をなすさらに、(''X'' が[[コンパクト空間|コンパクト]][[ハウスドルフ空間|ハウスドルフ]]空間であるときなど)多くの重要で妥当な状況設定のもとではじめに考えていた空間 ''X'' は ''C''(''X'') 関連づけられた関数たちのなす代数系から復元できることが知られている。したがって一定性質を持った図形に対応するようなとき ''X'' は代数系を可換環の枠組みの中で公理的に特徴づけ、それらの代数系を考察することでもとの図形に関する幾何構造学的な情報もつ取り出すこも言えができだろう
 
一方、[[量子力学]]において物理量を互いに非可換な作用素として表すパラダイムを端緒として、[[関数解析学]]などのいくつかの場面で、あるいは[[数理物理学]]などの応用において「非可換分野で仮想的図形・空間上の関数たちを表すべき代数系として[[非可換環|非可換な環]]があらわ見いださ。可換環との対応がつくことが知られている普通の幾何学的な図形との間の象に対し応の類推から、非可換な環はそこ通常の図形からの何らかの変形を表していると見なすことができる。したがって位相的な不変量をこの新しい空間非可換環のカテゴリーに拡張対し、可換環から図形の情報を引き出るこも理きに用いられた方法の動機付け適用することで非可換環が表している仮想的な図形に対する幾何学的な情報を定式化することができる。こうして非可換な環から、それが表す「非可換空間」にまりいての幾何学的な情報を得ることができるようになるがこのときを「空間」という言葉自体はもはや[[中間項]]としてのみしか存在するしていないことに注意しければならない
 
量子力学における物理量がヒルベルト空間上の有界線型作用素として表されるように、非可換空間に対応するべき非可換環の例ははじめ[[作用素環論]]によって多く与えられており、アラン・コンヌらにより作用素環論を中心とした非可換幾何が大きく発展させられているが、1980年代の[[量子群]]、1990年代の非可換代数幾何など作用素環論の枠組みを超えて数学の様々な分野で非可換な幾何学のパラダイムが発展させられている。
 
== 非可換な作用素環 ==
非可換な [[C*-環]]はしばしば'''非可換空間'''とよばれる。これはゲルファント表現]]によって可換 [[C*-環]]は[[局所コンパクト空間]]双対連続関数のなす代数系と見なせるこ、さらにもとの連想空間は可換C*-環から[[関手|自然に]]復元することがでる。したがって非可換な [[C*-環]]は通常の(局所)コンパクト空間を何らかの意味で変形した非可換な空間を表していると考えることができる。例えば局所コンパクト空間上の(連続または離散)力学系から図形の空間的な情報と力学系による時間発展の情報の両方を持つ非可換なC*-環が得られる。<!-- これは一般には任意の C*-環 ''A'' に対し、その既約表現のユニタリ同値類の集合 ''Â'' を対応させることができ、可換な場合の対応はこの特別な例として得られている。-->
 
局所コンパクト空間から得られる[[測度空間]]と可換[[フォン・ノイマン環]]の間の双対性から、非可換フォン・ノイマン環は'''非可換測度空間'''とよばれることもある。
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'''非可換な可微分[[多様体]]'''についての研究も非可換幾何の研究の大きな部分をなしている。通常の可微分多様体はその上のなめらかな関数のなす可換環と、接束、余接束などの[[ベクトル束]]へのなめらかな切断によって特徴づけられる。これら切断の空間はなめらかな関数のなす[[多元環|代数]]上の[[加群]]の構造を持っている。また、この代数上の微分写像を理解するためには[[外微分]]や[[リー微分]]、[[共変微分]]の概念が重要な役割を果たす。非可換な場合には、問題になっている代数が非可換となり、微分形式の環と、外微分の概念を非可換環に対して意味を持つように定式化する必要がある。
 
== 非可換アフィン・スキーム ==
[[概型|スキーム]]上の(準)[[連接層]]やとくに[[代数多様体|射影代数多様体]]上の上の(準)[[次数付き加群連接層]]の層のなす[[アーベル (数学)]]の変形を考えることで、非可換スキームや非可換射影代数多様体と呼ぶべき対象が得られる。
 
== 非可換空間の例 ==
; ワイルの量子化
:古典解析力学において導入される[[シンプレクティック空間|シンプレクティック]]な[[位相空間 (物理)|相空間]]が[[正準交換関係]]を満たすような位置作用素と運動量作用素で生成によって表される非可換の位相空間へと変形される。
 
; 葉層構造の葉の空間
:多様体上に[[葉層|葉層構造]]があたえられたとき、同じ葉の上にある点を同一視して得られる葉の空間はしばしば、「絵に描ける図形」や可微分多様体などの「普通の図形」と比べて病的と見なされるような性質を持った空間になってしまう。各葉の上で[[畳み込み]]を積とする非可換な代数を考え、それをすべての葉についてあわせて得られる非可換な作用素環が葉の空間の上の関数の環を表していると考えることができる。
 
; 群作用による商空間
:群 ''G'' が位相空間 ''X'' に[[群の作用|作用]]しているとする。''G'' の[[群環]]と ''X'' 上の関数環の接合積によって非可換な[[作用素環]]が得られる。これの[[環 (数学)|中心]]が ''G'' の作用で不変な ''X'' 上の関数のなす代数に対応し、したがって古典的な意味での ''X'' の ''G'' 作用による商空間(の上の関数)を表していることになる。
 
== 歴史 ==