「擾乱」の版間の差分
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[[大気]]は常に流体しているが、この[[流体]]という大きな時間的・空間的にも大きなスケールの中で、ある程度の乱れを起こしている。例えば、[[偏西風]]、[[偏西風波動]]のなかでは[[高気圧]]や[[低気圧]]、[[台風]]などといった大きなスケールの流体の中で相対的に小さなスケールの運動が見られる。しかし、偏西風や偏西風波動などが年中起こっているのに対して、高気圧や低気圧などは発生したいり消滅したりを年中繰り返している。つまり、低気圧や高気圧などに比べて偏西風は相対的にスケールの大きな現象と考えることができる。これは、川の流れを観察しているとき、川の流れという大きなスケールの現象のなかで、大きな[[渦]]や小さな渦が発生したり消滅したり、地形などの影響で部分的には 流れの形を変えているようなことと同じである。このことから、大気の流体という大きなスケールの現象に対して、通常の場合それよりも小さなスケールの運動が常に起きており、その運動は時間とともに刻々と変化している。このような大気の乱れた現象を[[気象学]]では'''擾乱'''(disturbance)と呼んでいる。また、この擾乱の内、波動性の擾乱(これを[[波動擾乱]]という)をもつものを[[大気擾乱]](atmospheric disturbance)という。
擾乱は厳密には「大気の[[定常状態]]からの乱れ」というふうに定義されている。定常状態とは今述べた例のように、着目している現象(例えば川の場合だと流れの中で起きる小さな渦など)よりも時間的にも空間的にもスケールが大きな現象のことをいう(この場合は川の流れ)。ただし、気象学ではかなり広義に用いられる用語であり、低気圧や低気圧の発生が見込まれる領域のことを擾乱といったりもする。
擾乱は大気中に[[力学的・熱力学的不安定]]が生じたときに発生する。すなわち、その不安定な状態を解消しようとして起きる運動が擾乱である。例えば、偏西風波動により[[気圧の尾根]]から[[気圧の谷]]に吹く[[風]]は、地上よりも上空のほうが[[気圧]]が高いという力学的不安定が生じるために、それを解消しようと[[下降気流]]が発生し、結果的に高気圧という擾乱が生じる。しかし、ここで不安定が解消された以上、これ以上大きな擾乱が発生することはできない。よって、この擾乱の時間的・空間的スケールが決定してしまうのだ。
例えば、発生してから数秒間で消える[[つむじ風]]などは、時間的にも空間的にも非常にスケールの小さい現象だ。大気中で暖められた空気の塊が上昇する[[熱泡]]なども、時間的・空間的に小さいスケールをもつ。[[竜巻]]、[[積乱雲]]なども数時間の間発生すうだけで、様々な擾乱からみると比較的スケールが小さい。このような秒から1時間単位の擾乱を[[マイクロスケール]]の擾乱と呼ぶ。また、規模の大きな積乱雲による雷雨や竜巻などは数時間にも及ぶことが多いんで、これらの数時間単位の擾乱を[[メソスケール]]の擾乱と呼ぶ。また、低気圧、高気圧、[[海陸風]]、[[熱帯低気圧]]などの数日間に及ぶ擾乱を[[総観スケール]]の擾乱、[[超長波]]、[[プラネタリー波]]、[[ロスビー波]]などの数ヶ月単位で起こる規模の大きな擾乱を[[地球スケール]]の擾乱と呼んでいる。(ただし、高気圧などは地球スケールになることもある)この例から、時間的スケールが大きい擾乱ほど空間的スケールが大きいということも分かる。
→[[人文学的擾乱]]
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