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{{SCOTUS判例
|訴訟当事者=マーベリー対マディソン
|裁判年月日=1803年2月24日
|事件名=''William Marbury v. James Madison, Secretary of State of the United States''<br>(マーベリー対マディソン事件)
|判例集=5 U.S. 137; 1 Cranch 137; 2 L. Ed. 60; 1803 U.S. LEXIS 352
|裁判要旨=1789年の裁判所法13条(Judiciary Act of 1789 § 13)は、憲法に定める合衆国最高裁判所の権限を越えた権限を認めるものであり、違憲である。議会は、憲法に反する法律を制定することはできない。憲法の解釈は、合衆国最高裁判所の役割である。
|裁判長=[[ジョン・マーシャル]]
|裁判官=[[ウィリアム・クッシング]]、[[ウィリアム・パターソン]]、[[サミュエル・チェイス]]、[[ブッシュロッド・ワシントン]]、[[アルフレッド・ムーア]]
|多数意見=マーシャル
|多数意見賛同=パターソン、チェイス、ワシントン<br>(クッシングとムーアは意見と裁判に参加していない。)
|少数意見=-
|参照法条=アメリカ合衆国憲法第1章、第3章、裁判所法13条(Judiciary Act of 1789 § 13)
}}
'''マーベリー対マディソン事件''' (Marbury v. Madison, 5 U.S. 137(1803)) は、[[アメリカ合衆国最高裁判所]]の判決で、世界で初めて[[違憲審査制]]を確立した事件として著名である。
 
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そのうちの一つにワシントン特別区における治安判事の任命であったが、本件における上告人[[ウィリアム・マーベリー]]は、本件で問題になった治安判事に任命された者の1人であった。彼の任命の上院における同意は、任期満了前日の[[3月3日]]深夜であったため、[[アメリカ合衆国国務長官|国務長官]][[ジョン・マーシャル]]は、辞令に押印し、封緘するところまで行ったものの、辞令の交付まで至らず、任期満了を迎えた。その後、就任した新国務長官[[ジェームズ・マディソン]]は彼への辞令交付を保留した。
 
これに対して、上告人マーベリーは被上告人マディソンに対し辞令を交付するよう職務執行令状を求めて合衆国最高裁判所に提起した。なお、当時の裁判所法13条(Judiciary Act of 1789 § 13)において「最高裁判所は、……法の一般原則と慣例により認められた場合、合衆国の下に設置された裁判所または官職を奉ずる者に対し、職務執行令状を発する権限を有する。」としていた。
 
ちなみに、本件においては辞令を出した張本人マーシャルが合衆国最高裁判所首席裁判官として判決を出している。
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この矛盾は制定法が憲法と抵触したときに生じる重要な問題を提起していた。マーシャルは憲法に抵触している制定法は無効で裁判所は法的審査の原則に従って、憲法に従う義務があると判断した。この立場を支持するため、マーシャルはもし裁判所がそれを無視した場合に存在する憲法の状態は成文憲法をもっている意味がないことを意味することを指摘した。マーシャルは「いかなる目的で権限は制限され、いかなる目的で(合衆国最高裁判所の権限が)列挙されている事項に制限され、これらの制限がいかなる時も抑制されて判断されるべきだろうか」と述べ、司法権の本質が裁判所にこのような決定をすることを要求していると主張した。なぜなら、裁判所の任務は事件に判決を下すことであり、それぞれの事件で法をどのように適用する権能を有しているからである。最後に、マーシャルは憲法擁護の宣誓義務や、憲法の最高法規条項において、「合衆国の法律」の前に、「憲法」を列挙していることを指摘した。
 
結局、1789年の裁判所法は違憲無効であって、マーベリーが救済を求めるためには、下級審にもう一度訴訟を提起すべきだとした。しかし、当時の法律にはマーベリーが求める救済を下級裁判所に提起することを認める規定がなかったため、マーベリーは訴訟を断念せざるを得なかった。
 
== 参照文献 ==