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'''家事審判法'''('''かじしんぱんほう''';[[1947年|昭和22年]][[12月6日]][[法律]]第152号)とは、[[家庭裁判所]]が管轄する'''家事審判事件'''及び'''家事調停事件'''の手続について定めた[[日本]]の[[法律]]。[[1948年]][[1月1日]]から施行された。
 
家庭内紛争の処理は、複雑な感情の交錯する家族関係を対象とし訴訟的処理になじまないことが多いこと、その性質上非公開で行う必要が高いこと等に鑑み、[[訴訟]]の形式によらない非公開の手続で処理することを図っている。
 
家事審判法が扱う手続は、家庭内の事項について訴訟の形式によらずに公権的な判断をすることを目的とする'''家事審判手続'''と、家庭内の紛争について[[調停]]を行う'''家事調停手続'''がある。なお、家庭裁判所が扱う訴訟は、[[人事訴訟法]](平成15年法律第109号)により規律される。
==家事審判事件==
 
== 家事審判事件 ==
家事審判法の対象となる家事審判事件は、家事調停の対象となりうるか否かにより'''甲類審判事件'''と'''乙類審判事件'''に区別される。
 
=== 甲類審判事件 ===
審判の対象となる事項につき手続上対立する当事者が想定されず、当事者の合意による任意処分が考えられないため、家事調停の対象とすることが予定されていない家事審判事件である。その対象についてはり、9条1項甲類及びとして掲げられた事件、その他の法律で具体的に規定甲類とみなされる事件を指す
 
調停の対象にならないのは、紛争性が希薄なため手続上対立する当事者が想定されず、当事者の協議による任意処分が考えられないためである。
この類型に該当する事件の例としては、[[後見開始]]の審判、[[失踪宣告]]、子の氏の変更の許可、[[死後離縁]]の許可、[[相続放棄]]申述の受理、遺言執行者の選任などがある。
 
この類型に該当する事件の具体例として、[[後見開始]]の審判、[[失踪宣告]]、子の氏の変更の許可、[[養子縁組]]の許可、[[死後離縁]]の許可、[[相続放棄]]申述の受理、遺言執行者の選任、氏又は名の変更の許可などがある。
===乙類審判事件===
甲類審判事件と異なり手続上対立する当事者が想定され、当事者の協議による解決が期待できるため、家事調停の対象となりうる家事審判事件である。その対象については9条1項乙類及びその他の法律で具体的に規定される。
 
=== 乙類審判事件 ===
乙類審判事件として審判の申立てをしても後述する乙類調停事件として調停の申立てをしても構わないが、審判事件として申立てをした場合でも、家庭裁判所はいつでも調停に付することができる(11条)。
家事調停の対象とすることが想定される家事審判事件であり、9条1項乙類として掲げられた事件、その他法律で乙類とみなされる事件を指す。
 
甲類審判事件と異なり、紛争性が高いために手続上対立する当事者が想定され、当事者の協議による解決が期待できされ。そのため、家庭裁判所はいつでも調停の対象に付すこなりうる家事審判事件が可能である。その対象については9(111項)。後述する乙類及びそ調停事件として調停他の法律で具体的に規定される申立てをしても構わない
なお、婚姻取消し又は離婚訴訟の附帯処分とされる場合(人事訴訟法32条を参照)を除き、訴訟の対象にはならない。そのため、[[日本国憲法|憲法]]82条1項に定める裁判の公開原則との関係で問題がある。この点について[[判例]]は、家事審判は権利義務の存否を確定する手続ではなく、権利義務の存在を前提に家庭裁判所が後見的立場からその具体的な内容を定める処分であり、処分の前提となる権利の存否について訴訟を提起することは可能であるから、違憲ではないと判断している(最高裁昭和40年6月30日大法廷決定民集19巻4号1089頁など)。
 
この類型に該当する事件の具体例として、[[婚姻費用分担]]に関する処分、子の監護に関する処分(養育費など)、[[離婚]]後の[[財産分与]]に関する処分、[[親権者]]の指定又は変更、[[遺産分割]]に関する処分などがある。
 
なお、この類型は紛争性が高いが、婚姻取消し又は離婚訴訟の附帯処分とされる場合(人事訴訟法32条を参照)を除き、[[訴訟]]の対象にはならず[[非訟事件]]として扱われる。
==家事調停事件==
家庭裁判所で扱う調停事件であるが、調停が成立しなかった場合の扱いや直ちに合意どおりの内容の調停を成立させられるか否かにより、'''乙類調停事件'''、'''一般調停事件'''、'''23条事件'''に区別される。
 
===乙類 家事調停事件= ==
家庭裁判所が扱う調停事件であるが、調停が成立しなかった場合の扱いや直ちは、前述合意どおり内容の調停を成立させられるか否かにより、'''乙類審判調停事件として審判が行わ'''、'''23条事件'''、'''一般調停事件'''に区別さる類型である。
この類型に該当するものが一部を除き訴訟の対象にならないことなどについては、乙類審判事件で説明したことと同様である。
 
なお、23条事件や一般調停事件の対象となる事件について民事訴訟や人事訴訟を提起しようとする場合は、まずその前に家庭裁判所調停の申立て手続しなければならないとされてい経る必要がある(18条1項、調停前置主義)。
対象となる類型は、乙類審判事件と同様である。
 
===一般 乙類調停事件 ===
調停が成立しなかった場合に、前述の乙類審判事件として審判が行われる類型の事件である(具体例は乙類審判事件と同じ)。
[[人事訴訟法]](平成15年法律第109号)の対象となる事件のうち後述の23条審判事件の対象にはならない調停事件、その他家庭に関する事件についての調停事件である。[[離婚]]調停が典型的なものである。
 
=== 23条事件 ===
調停が成立しなかった場合は、家事審判法24条に基づく調停に代わる審判をすることも可能であるが、乙類調停事件と異なり自動的に別の手続に移行するわけではない。調停不成立後に裁判所の判断を求めたい場合は、それが法律を適用して解決できるものであれば(法律を適用して解決できないものは訴訟の対象にはならないので)[[民事訴訟法]]や人事訴訟法の規定に基づき、民事訴訟又は人事訴訟を別途提起することになる。
以下の事項目的対象とする調停事件である。
 
* [[婚姻]]の[[無効]]又は[[取消し]]
なお、一般調停事件の対象となる事件につき訴訟を提起する場合は、まず家庭裁判所に調停の申立てをしなければならないとされている(18条1項、調停前置主義)。
 
===23条事件===
以下を目的とする調停事件である。
* [[婚姻]]の[[無効]]又は[[取消し]]
* [[養子縁組]]の無効又は取消し
* [[協議離婚]]の無効又は取消し
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* 民法773条の規定により父を定めること
* 身分関係の存否の確定
これらの事項は当事者の合意による任意処分が不可能できない考えられている(例えば、認知が無効であったかどうかについては、当事者の合意で決めることはできない)。そのため、当事者間に合意が成立しその原因の有無に争いがない場合でも直ちに調停を成立させず、合意を相当と認めた場合に23条に基づき合意に相当する審判をする。

そもそも調停を成立させることができないのに調停事件として扱われる理由は、目的申立て対象以外の事項につき調停いて合意が成立することもありうからためである(この場合は、23条審判は不要)。
 
合意に相当する審判がされても、2週間以内に異議を申し立てることが可能であり、異議の申立てがされた場合は、審判の効力がなくなる(25条1項、2項)。
 
調停が成立しなかった場合、自動的に別の手続には移行しない。裁判所の判断を求めたい場合は、人事訴訟法の規定に基づき人事訴訟を別途提起する必要がある。
 
==家事= 一般調停事件 ===
合意に相当する審判がされても、2週間以内に異議を申し立てることが可能であり、異議の申立てがされた場合は、審判の効力がなくなる(25条1項、2項)。調停が成立しなかった場合に自動的に別の手続に移行するわけではないことは一般調停事件と同様であり、裁判所の判断を求めたい場合は人事訴訟法の規定に基づき人事訴訟を別途提起することになる。なお、家事審判法24条の調停に代わる審判ができるか否かについては見解が分かれている。
以下の事項を対象とする調停事件である。
* 人事訴訟法の対象となる家庭内の紛争のうち、前述の23条事件に該当しないもの(離婚、離縁など)
* その他一般に家庭に関する事件
 
調停が成立しなかった場合は、家事審判法24条に基づく調停に代わる審判をすることも可能であるが、乙類調停23条事件と異なり同様、自動的に別の手続に移行するわけではない。調停不成立後その場合に裁判所の判断を求めたい場合は、それが法律を適用して解決できるものであれば(調停の場合は法律を適用して解決できすることが要求されないものも対象になるが、訴訟の場合は法律を適用して解決できるものしか対象にはならとすることができないので)[[民事訴訟法]]や人事訴訟法の規定に基づき、民事訴訟又は人事訴訟を別途提起することになる。
一般調停事件と同様、調停前置主義の対象になる(18条1項)。
 
== 付随法令 ==
家事審判法の対象となる紛争については、対象により利害関係を有する者に差異があったり、処理すべき事項に差異があったりする。そのため、手続等に関し細かい事件類型に応じて個別的に規定を設ける必要があるが、家事審判法には一般的な規定しか置かれていない。
 
具体的な事件類型に応じた規定については、[[最高裁判所]]の規則制定権([[日本国憲法]]77条1項)に基づき、'''家事審判規則'''(昭和22年最高裁判所規則第15号)及び'''特別家事審判規則'''(昭和22年最高裁判所規則第16号)が定めを置いている。
 
== 関連事項 ==
* [[家庭裁判所]]
* [[人事訴訟法]]