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ガス壊疽,非クロストリジウム性ガス壊疽,クロストリジウム性ガス壊疽
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[[臨床]]上では、[[ガス壊疽]]が筋組織に及んだ状態である。
 
ガス壊疽 Gas gangrene
==関連項目==
*[[炎症]]
*[[壊死性筋膜炎]]/[[非クリストリジウム性ガス壊疽]]
*[[病理学]]/[[口腔病理学]]/[[口腔外科学]]
*[[医師]]/[[歯科医師]]/[[病理専門医]]
 
診断のポイント
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  ガス壊疽とはガス産生菌の感染による特異的嫌気性感染症で,筋肉の壊死を起こす感染性疾患の総称(広義のガス壊疽)である.
 
①筋の挫滅を伴う汚染創に発生すること以外に,糖尿病や肝硬変,閉塞性動脈硬化症などの基礎疾患をもつ患者の熱傷,褥創,糖尿病性壊疽,消化管穿孔,癌,出産,筋肉内注射,消化管・女性性器の手術などを契機に発生する.
[[Category:病理学|くりすとりしうむせいきんにくえし]]
②細菌は筋膜下,筋組織内でメタンガスや二酸化炭素を産生するために,悪臭(ドブ臭〜腐敗臭)と握雪感,捻髪音などの他覚所見を呈する.局所は壊死により創部は褐色から黒色となり,漿液血性・膿性の滲出液を認める.
[[Category:感染症|くりすとりしうむせいきんにくえし]]
③進行すると,不隠,呼吸促迫,頻脈,血色素尿,乏尿,ショックとなる.
④早期診断,早期治療の可否が予後に大きな影響を与える.局所の感染所見と局所周囲の握雪感を認めた場合,直ちに検査・治療を開始する.
⑤クロストリジウム性ガス壊疽(狭義)と,非クロストリジウム性ガス壊疽に大別される.両者は治療法が異なるため早期に鑑別する.
移送の判断基準
 ガス壊疽疑診例では,人工透析可能なICUのある施設に直ちに移送する.特にクロストリジウム性ガス壊疽では高圧酸素療法の設備がある施設が望ましい.
症候の診かた
①外傷・熱傷,注射歴や基礎疾患の有無を確認する.
②潜伏期間は受傷・術後8時間〜2週間以上.クロストリジウム性ガス壊疽では,発症後1日で四肢末端から躯幹に急激に進行することがある.
③局所の壊死を認めた場合では,触診により周囲の握雪感の有無を確認する.
④開放創,手術創では外界の空気が侵入,組織内のガス像は必ずしも診断の決め手にはならない.
検査とその所見の読みかた
①細菌学的検査:滲出液の好気性,嫌気性培養とともに,迅速に結果の得られる塗沫標本のグラム染色,検鏡を施行する.グラム陽性桿菌を多数証明すればクロストリジウム性ガス壊疽としてよい.混合感染が多く,病原菌同定困難な場合は,頻回の細菌培養が必要になる.
②X線検査:単純X線写真およびCTを施行する.壊死が進行し筋層まで達すると帯状のガス像を認め,さらに筋層の壊死を起こすと縮緬状のガス像となる.特にCTでは皮下の小さなガス像を確認でき早期診断に有用である.
③血液学的検査:初期では白血球数,CPK値の増加を認めるにすぎないが,進行するに連れ,貧血,血小板数減少,血清総ビリルビン増加,BUN増加,アシドーシスを認める.
確定診断のポイント
 前記した臨床所見があり,X線検査による筋層内のガス像とガス産生菌を証明すればガス壊疽としてよい.
鑑別すべき疾患と鑑別のポイント
①cellulitis(蜂巣炎,蜂窩織炎)
疎結合織の急性化膿性炎症である.筋肉の壊死はなく,周囲のリンパ管炎・節炎を合併することが多い.
②necrotizing fasciitis(壊死性筋膜炎)
筋膜を中心とする炎症性疾患の総称で,原則として筋肉は侵されない.
③A群溶血性連鎖球菌(S.pyogenes)によるtoxic shock-like syndrome(TSLS)
咽頭痛や筋肉痛に伴う突発的な循環不全で発症し,急激に多臓器不全を呈する疾患である.外傷と無関係に筋膜,筋層などの軟部組織の炎症所見を呈する.
④急性動脈閉塞症(急性動脈血栓症,急性動脈塞栓症)
患肢蒼白,運動麻痺,知覚異常,末梢動脈拍動消失などの虚血性変化に伴う所見が特徴.
予後判定の基準
①一般に,高圧酸素療法が無効な基礎疾患を有する非クロストリジウム性ガス壊疽の方が,クロストリジウム性ガス壊疽よりも予後が悪い.
②多臓器不全に陥った症例は予後不良である.
治療法ワンポイント・メモ
①創の開放,洗浄,ドレナージ,筋膜切開,壊死組織の切除.
*[[壊死性筋膜炎]]/[[非②高圧酸素療法:ストリジウム性ガス壊疽]]に適応.
③化学療法:クロストリジウム性ガス壊疽では,ペニシリン1800万〜2400万単位/日.
④基礎疾患管理,呼吸・循環管理,多臓器不全対策.
⑤血清療法としては,クロストリジウム性ガス壊疽に対する”ガス壊疽ウマ抗毒素”がある.