「カルスの奪還」の版間の差分

'''行進曲'''『'''カルスの奪還'''』（[[ロシア語|露]]:Взятие Карса）は[[モデスト・ムソルグスキー|ムソルグスキー]]が作曲した[[オーケストラ|管弦楽]]のための[[行進曲]]。「荘厳行進曲」「凱旋行進曲」「[[トルコ行進曲]]」等と呼ばれる。演奏時間は5分前後。

原曲は、オペラ・バレエ「ムラーダ」のために作曲した「公と僧侶たちの行進」。1872年にロシア帝室劇場支配人のゲデオノフは、自身の台本によるオペラ・バレエ「ムラーダ」を[[アレクサンドル・ボロディン|ボロディン]]、[[ツェーザリ・キュイ|キュイ]]、ムソルグスキー、[[ニコライ・リムスキー＝コルサコフ|リムスキー＝コルサコフ]]及び[[レオン・ミンクス|ミンクス]]との合作として企画、各人に作曲を依頼した。ムソルグスキーが割り当てられたのは第2幕、第3幕の音楽であったが、残念ながら計画は中止となり、ムソルグスキーの作曲分もお蔵入りとなった。その後、リムスキー＝コルサコフは単独で「ムラーダ」を完成させ、こちらは1892年に初演されている。

1880年、皇帝[[アレクサンドル2世]]即位25周年の記念祝賀行事の一つとして、皇帝が在位中に起きた重要事件等を活人画で上演する企画が持ち上がり、ロシアの作曲家12名に対し各場面の付随音楽を作曲するよう依頼があった。依頼に応え、ボロディンは「[[中央アジアの草原にて]]」を、[[ピョートル・チャイコフスキー|チャイコフスキー]]は「ロシアの対トルコ宣戦の報を受けたときのモンテネグロ」を作曲したが、ムソルグスキーは[[露土戦争 (1877年)|露土戦争]]（1877年-1878年）時のロシア軍によるトルコの要衝[[カルス (都市)|カルス]]占領を描くこととなり、旧作「公と僧侶たちの行進」にトルコ風の中間部を加え、完成したのが本作である。その後、活人画上演の企画自体は中止となったが、同年10月30日に[[エドゥアルド・ナープラヴニーク|ナープラヴニーク]]の指揮により初演され成功を収めた。

[[三部形式]]。[[トランペット]]等による序奏に続き、勇壮な行進曲の主題が[[トロンボーン]]で奏される。大休止の後、東洋的な主題の中間部に入るが、この部分の[[メロディ]]は[[ミリイ・バラキレフ|バラキレフ]]が収集した[[クルド人]]の民謡から採られたと言われる。その後、序奏、行進曲主題の順に再現される。