「サイクリックボルタンメトリー」の版間の差分

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'''サイクリック・ボルタンメトリー'''(''Cyclic Voltammetry, CV'')とは、電極[[電位]]を直線的に掃引し、応答[[電流]]を測定する手法である。[[電気化学]]分野において、最も基本的でまた多用される測定法である。
 
==理論==
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ここで、'''Ox'''は酸化体、'''e'''は電子、'''Red'''は還元体を示す。
(例:測定物質が[[フェロセン]]であれば、Fe(III)が'''Ox'''、Fe(II)が'''Red''')
 
また、この系の[[酸化還元電位]]は''1.0V''とする。
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*電極電位を2.0Vから0.0Vまで掃引した場合を考えると、
 
# 電極電位が1.0Vよりもずっと高いときは、電極近傍の物質は全て'''Ox'''として存在するため、[[電子移動]]は進行しない。ゆえに電流値はほとんどゼロ。
# 電極電位が1.0Vに近づくと、徐々に電極から'''Ox'''への電子移動反応が進行する(上記式が右側にいく)。したがって、電極から電子が流れ出し、結果として電流値が負に増大する。(この辺を電子移動律速という。)
# 電極電位=1.0Vで、電極近傍での'''Ox'''と'''Red'''の濃度が等しくなる。
# 電極電位が1.0Vより低くなると、電極近傍の物質はほとんど'''Red'''になるため、電子移動反応が起こりにくくなり、電流値が減少してくのは。ただし、拡散によって電極近傍に'''OXOx'''が少しずつ電極近傍に運ばれてきたときだけとなりしたこれって反応するので、電流値は徐々がゼロ低下すことはない。(この辺を拡散律速という
# 電極電位が1.0Vよりずっと低くなると、電流値はほぼ一定値になる。
 
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印加した電位を横軸、応答電流値を縦軸とするグラフを描くと、以上の過程により、サイクリックボルタンメトリーからは、酸化還元電位付近にピークを持つ、特有の形状を持った曲線('''サイクリック・ボルタモグラム'''''(Cyclic Voltammogram)'')が得られる。
 
この形状から、電気化学反応の機構、あるいは物質の酸化還元電位や拡散係数などが求められる。
 
☆ちなみに上の議論は[[ファラデー電流]]のみを考慮しており、[[非ファラデー電流]]の影響は考えていない。
 
 
==装置構成==
 
*現在、サイクリックボルタンメトリーをはじめとする電気化学測定装置コンピュータ制御のものができる市販されてい装置で容易に測定でき。しかし、研究室によってはポテンショスタットとファンクションジェネレータ、およびプロッターを組み合わせて自作したものを用いていることもある(らしい)。
もっとも一般的な3電極系の場合を示す。
 
以下にもっとも一般的な3電極系の場合を示す。
*電極
**作用電極
**参照電極
**対電極
 
*====電極====
*溶液
*;作用極(''Working Electrode'') :実際に物質との電子の授受を行う電極。白金やグラッシーカーボン製のものを用いることが多い。最近では導電性ダイヤモンド電極などが注目されている。
**測定したい物質
*;参照極(''Reference Electorode'') :作用極の電位を決定する際の基準となる電極。飽和カロメル電極(SCE)や銀電極(Ag/Ag+)などがよく用いられる。
**支持電解質
*;対電極(''Counter Electrode'') :作用極で発生するのと同じ電流値を系に返すための電極。メッシュ状やコイル状の白金を用いることが多く、作用極よりもずっと大きな表面積が必要とされている。
 
*====溶液====
*現在、電気化学測定装置はコンピュータ制御のものが市販されているが、研究室によってはポテンショスタットとファンクションジェネレータ、およびプロッターを組み合わせて自作したものを用いていることもある(らしい)。
*;溶媒 :基本的にはあらゆる溶媒が使用可能である。ただし、溶媒によって電気化学的に安定な範囲([[電位窓]])が異なるため、測定したい電位範囲によって適切に選択する必要がある。無機物には水([[buffer]])・[[DMF]]・[[DMSO]]など、有機物には[[アセトニトリル]]や[[ジクロロメタン]]などが用いられることが多いようだ。測定対象によっては脱水・脱気が不可欠。
*;測定したい物質 :通常1mM前後にする。あまり薄いと測定できないが、濃すぎると副反応が起こる可能性がある。
*;支持電解質 / 支持塩(''Supporting Electrolyte / Supporting Salt'') :溶液には測定したい物質の100倍程度の量の支持電解質と呼ばれるイオン性物質を加える。水系では塩化ナトリウムや硫酸ナトリウム、有機溶媒系ではテトラアルキルアンモニウム塩などがよく用いられる。
 
==CVからわかること==
 
*[[酸化還元電位]]
*[[電気化学]]反応機構
**機構として、電子移動反応のみが進行するE、電子移動反応後に化学反応が起こるEC、さらにその後に電子移動反応が起こるECEなど、多様な電気化学反応がある。CVの波形に大きな影響を与える。
*[[拡散係数]]
*[[酸化還元電位]]
**酸化と還元の両ピーク電位の値を平均して用いることが多いが、形がゆがんでいる場合どこをピークと見なすか?という問題があり、厳密には決めにくい。
*[[電子移動速度]]や[[拡散係数]]
**掃引速度を変化させて幾つかのボルタモグラムを作製し、理論的なフィッティングを行うことでそれぞれ求まる、こともある。
*[[電位窓]]
**ただし電極材・支持塩の種類などで大きく変化する。
など
 
{{sci-stub}}
 
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