「請求権」の版間の差分
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国務請求権との関係を補訂 |
英米法理学の claim を加筆 |
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'''請求権'''(せいきゅうけん)とは、他人に対し、一定の行為を請求することができる[[権利]]のことである。
なお、[[法学]]で「請求権」という語を使う場合、伝統的に[[ドイツ]]法学の Anspruch の訳語として使われてきた。しかし、最近では[[イギリス|英]][[アメリカ合衆国|米]]の[[法哲学|法理学]]において権利概念の分類の一つとして claim という語を用いることがあり、その訳語として「請求権」という語が使われることもある。
== ドイツ法学に由来する請求権概念 ==
'''請求権'''('''せいきゅうけん''')とは、他人に対し行為(作為又は不作為)を請求することができる権利のことである。もっとも、このような定義によると、ほぼ同様の定義をする[[債権]]との関係が不明確になり、両者の関係が問題となる(実際、両者は厳密に区別して使用されているわけではない)が、この点を考察するためには請求権概念が生み出された歴史を概観する必要がある。
歴史的に見ると、[[ローマ法]]では、現在と異なり[[実体法]]と[[手続法]]とが未分化であり、それゆえ実体法上の権利と手続法上の権利との関係も未分化の状態にあった。具体的には、[[民事訴訟]]で救済の対象となる個々の権利の類型が、それぞれ固有の手続と結びつけられており、そのような権利を actio として把握する構成を採っていた。その結果、裁判所に訴えを提起して救済を求める権利である actio を離れて実体法上の権利を認識することはできなかった。
その後、
若干具体的にいうと、ある物の[[所有権]](実体法上の権利)を有している者 (X) が、当該物を他人 (Y) に奪われた場合、Xの所有権は、当該物を返還するようYに対して要求できる権利(請求権)として把握される。そして、そのような返還請求権を満足させるための民事訴訟法上の権利として、裁判所に対して訴えを提起し審判を受ける権利(訴権)が把握される。
もっとも、請求権の発生原因となる実体法上の権利が債権(例:損害賠償を請求することができる権利)である場合は、請求権と債権との関係が不明瞭になるが、請求権は相手に対し行為を請求できる権利に尽きるのに対し、債権は受領し保持する作用をも含む[[財産権]]であると一般的に説かれている。ただし、
== 英米法学に由来する請求権概念 ==
英米の法理学においては、W. N. ホーフェルド (Wesley Newcomb Hohfeld) による法的関係の分析以来、権利概念を、その帰属主体と他人との関係から claim, liberty (又は privilege), power, immunity に分けて考察することが行われている。そして、ここでいう claim の訳語として'''請求権'''の語が用いられる。
ここでいう請求権は、ある者 (X) が他人 (Y) に対して一定の行為を請求する権利を持ち、YはXに対してそれを履行する義務を負うという対応関係がある場合における、Xの地位を表わすものとして用いられる。
つまり、ドイツ法学に由来する請求権概念は、実体法上の権利と訴権とを媒介する概念として用いられるのに対し、英米法学に由来する請求権概念は、他人との関係を念頭に置いた概念であるという差異があり、両者は対応する概念ではない。
== 憲法上の「請求権」 ==
[[日本国憲法]]が保障する各種の[[人権]]の分類に際し、国・公共団体に対して何らかの請求ができることを共通の性質として取り出した上でまとめる場合があり、日本の高等学校における憲法教育などで「請求権」の名称で扱われ
しかし、[[憲法]]学上は、'''請願権'''、'''裁判を受ける権利'''、'''国家賠償請求権'''、'''刑事補償請求権'''をまとめて'''[[国務請求権]]'''と呼ぶことが通常であり、一般的には請求権という語は用いられない。
== 関連項目 ==
* [[私法]]
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